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最新パーツ性能チェック ― 第219回

AMD派待望の「RX Vega」はハイエンドGPUにおける周回後れを取り戻せるか?

 2017年の自作PC界隈を激しく動かしているのはAMDが次々と投入する新製品なのは言うまでもない。そしていよいよ8月21日、開発コードネーム“Vega”の名で知られていたハイエンドクラスのビデオカード「Radeon RX Vega 64」が発売された。

Vega 64搭載の最上位モデル(左)は水冷クーラー搭載、普及価格帯のVega 64(中央)は“V”のロゴ付きのLimited Editionと通常版の2種類となる。一番右はやや遅れて発売されるVega 56だ

 Radeonのハイエンドラインは2015年にHBM1メモリーを世界に先駆けて採用した「Radeon R9 Fury X」を最後に更新が停止。PolarisベースのRX 400および500シリーズはミドルクラス向けを想定した製品だったため、約2年にわたりRadeonのハイエンドは空前の“大空位時代”だったわけだ。

 ハイエンドビデオカードが欲しいが、GeForceではなくRadeonが欲しい! とこだわっていた人にとって、今回のVegaは待ちに待った一品となるはずだ。

 発売されるVega 64はリファレンスデザインのものが主となるが、リファレンスデザインでもクーラーデザインの違いで3種類(水冷1種、空冷2種)あるが、今回入手したのは一番スタンダードな空冷クーラーを搭載したモデルだ。

Radeonのハイエンド大空位時代に終止符を打った「Radeon RX Vega 64(右)」と「同56(左)」。どちらもリファレンス仕様のものを入手できた

 AMDによれば米国におけるRadeon RX Vega 64の価格は499ドルと“ハイエンドにしては安い”ことを武器にしているが、米国以外では世界規模で割高な設定になっており、日本でも税抜7万4000円前後とやや高額な値段になっているのが残念だ。

 今回はVega 64のほかに、後日発売予定の準ハイエンドモデル「Radeon RX Vega 56」のリファレンスカードも入手できた。果たしてVegaはハイエンドに飢えていたRadeon派を満足させる出来なのだろうか? さまざまなベンチを通じて検証してみたい。

Vega 64の評価キットに入っていたVegaのダイのモックアップ。大きなVegaダイのすぐ脇に2基のHBM2チップが配置されている

HBM2&Infinity Fablicをはじめ、内部は大きく変化

 まず最初にVega 56/64のスペックを眺めてみよう。VegaのアーキテクチャーはGCN(明言されていないがおそらく第5世代)だが、従来のGCNベースのGPUと内部の構成を大きく変えてきている。

 SP数はFury Xと同じ4096基であるため、高クロック化してメモリーをより新しいHBM2メモリーに変換しただけのようにも見えるが、Vegaは単純な数値の上下以上の改善が含まれている。以降、アーキテクチャー的な見どころをかいつまんで解説する。

各ビデオカードの比較表
  Radeon RX Vega64
Liquid Cooled
Radeon RX Vega64 Radeon RX Vega56 Radeon R9 Fury X Radeon RX 580X
開発コードネーム Vega10 Vega10 Vega10 Fuji Polaris20
製造プロセス 14nm
FinFET
14nm
FinFET
14nm
FinFET
28nm 14nm
FinFET
Compute Unit数 64基 64基 56基 64基 36基
ストリーミング
プロセッサー数
4096基 4096基 3586基 4096基 2304基
ベースクロック 1406MHz 1274MHz 1156MHz - 1257MHz
ブーストクロック 1677MHz 1546MHz 1471MHz 1050MHz 1340MHz
テクスチャー
ユニット数
256基 256基 256基 256基 144基
ROP数 64基 64基 64基 64基 32基
メモリークロック(相当) 1890MHz? 1890MHz 1600MHz 1GHz 8GHz
メモリータイプ HBM2 HBM2 HBM2 HBM1 GDDR5
メモリーバス幅 2048bit 2048bit 2048bit 4096bit 256bit
メモリー搭載量 8GB 8GB 8GB 4GB 8GB
消費電力(Typical) 345W 295W 210W 275W 185W
外部電源 8ピン×2 8ピン×2 8ピン×2 8ピン×2 8ピン
「GPU-Z」で入手したVega 64(左)と56(右)の情報をチェックしてみたが、今回使用したバージョン(2.2.0)ではGPU-Z側が対応していないため、どちらも表記抜けやミスが多い
今回入手したVegaのリファレンスカードの表裏(56も64も共通)。一見するとRX 480のリファレンスカードと同じようだが、RX 480は表面のクーラーカバーがプラスチック製だったが、Vegaでは金属製となり高級感が増している
外部電源はVega 56/64ともに8ピン×2構成。コネクターの付け根にはLED「GPU Tach」が仕込まれており、動作中の負荷に応じて点灯する個数が増減する。スイッチで点灯色を変えられるなど、Fury Xとほぼ同じものが載っているようだ
映像出力は最近増えてきたDVIなし、DisplayPort多めの構成

「CU(Compute Unit)」から「NCU(Next Compute Unit)」へ

 Vegaも系譜的にはGCN世代ではあるが、内部の設計や構造にかなり手が入っている。ストリーミングプロセッサー(SP)16基を4つ束ね、キャッシュなどの回路を付けた「Compute Unit」のスケールでどんな製品になるかが決まる。

 だがVegaは従来のCUを改善した「NCU」を採用することで、従来よりもDirectX12への対応度や16bitのデータの計算処理性能、さらにはパイプライン深度を抑制することで高クロック動作への適応度を高めている。GCNの正統進化系とは言うが、Vegaの進化は従来のGCNよりも皮のムケ方が激しい進化といえるだろう。

Polaris世代のGPUと比較すると、VegaはDX12への互換性がさらに高くなった、という意味の表。今まで非対応だった機能にも対応した……というのが売り
GPU内の処理は32bitデータで扱われることが多いが、精度的に16bitで十分なことも多々ある。Vegaが持つRapid Packed Mathという仕組みを利用すれば、16bit演算を2倍の効率で行うことが可能になる
Packed Mathや高クロック対応などがVega世代のGPUの売り。特にRapid Packed Mathを上手く使えば、最大15%程度の処理性能向上が見込める……とAMDは力説する

HBM2とメインメモリーが合体する「HBCC(High Bandwidth Cache Controller)」

 Vega 56/64はコンシューマー用GPUとしては始めてHBM2メモリーを採用しているが、このメモリーは(AMDによれば)VRAMではなく“広帯域キャッシュ(High Bandwidth Cache)となる。とはいえゲームなどの処理から見れば、VRAMと扱いは変わらないので実質的にVegaのVRAM搭載量は8GBである、といえる。

 Fury X世代のHBM1と比べ、メモリーバス幅は半分になったものの、2チップで8GB(Fury Xは4チップで4GB)という大容量なものになっている。しかし、現在のGeForce系ハイエンドでは11GBや12GB搭載されている製品がある点からすると、Vegaの8GBというのはなんとも心細い気もする。

 だがここで“広帯域キャッシュ”という言葉が活きてくる。Vegaではシステムのメインメモリーの一部領域をVRAMに組み込めるのだ。多用するデータのみHBM2側に置いておき、不要なデータはマザー側のメインメモリー側に置く。これならVRAM多量使用時に速度のペナルティーを受けにくくなる。

メインメモリー中に、GPUを使う処理が6つあった時(上)、HBM2+HBCCなら6つの処理に必要なデータを全て置くことができる(右下)が、従来型のGPUではデータの塊をまるっとVRAMに置くことができないため、4種類のデータしか置けないのだ

 この“どの程度メインメモリーを割り当てるか”については「Radeon設定」内で指定できる。割り当て量を設定してもシステムから見える空きメモリーに変化がないことから、設定を有効にした瞬間メモリー領域が分断されるのではなく、広帯域キャッシュが溢れはじめた段階で確保される設計であると推測できる。

 HBCCのメモリー空間は最大512TBまで確保できるので、VegaのVRAM搭載量は“実質無限”といったところだが、現実問題としてゲーミング用途ではよほど厳しい設定をしない限りは8GBを使い切るケースはレアだ。ゲーマーではなくGPUで汎用計算をさせたい人のための機能といってよい。

Radeon設定で「HBCC Memory Segment」をオンにすることでHBCCは本来の挙動となる(オフなら普通のVRAMとして動作)
メインメモリー16GB搭載マシンでは最大15.9GBまで割り当てを指定できたが、最大値まで指定したからといって、すぐにメインメモリーの空きが減るわけではない

 また、ハードウェア的にはHBM2を制御するコントローラー「HBCC」はZenアーキテクチャーで採用されたInfinity Fablicを用いてGPUコア部分と連結される点も設計的に注目すべき点だろう。HBCCやPCI Express、ディスプレー出力エンジンなどとGPUコアが結びついているが、これを拡張してCPUコアと連結すれば……Zen+Vegaな第8世代APU“Raven Ridge”のできあがりだ。

Vegaのブロック図。HBM2周りの回路は図中下に飛び出している部分となる。GPUのメインブロックとは別になっており、Ryzenなどにも使われているInfinity Fablicで接続されている。PCI ExpressのコントローラーもInfinity Fablic経由で接続されている(らしいが、図の描き方が間違っていると思われる)

パワーは6段階に調整可能

 Vega 56/64の典型消費電力はかなり大きい。GeForce系のTDPと直接比べられる数値ではないが、外部電源が標準で8ピン×2になっているだけあって、GeForce系よりも消費電力は確実に大きい。だがVegaにはユーザーによって最大パワーを6段階に調整することができるのだ。

 Vegaのカード上部には小さなスライドスイッチが搭載されている。Radeonのモデルにもよるが、ミドルクラスのRadeonでは単なるバックアップBIOSへの切替用として機能しているものが多いが、Vegaではカードの最大パワー切替スイッチとして利用する。スイッチが映像出力端子側がデフォルトの“プライマリー”、外部電源コネクター側が“セカンダリー”となり、若干パワーが抑制される。

カードの上部には小さなスイッチを備える。出力端子側(デフォルト)が“プライマリー”、外部電源コネクター側が“セカンダリー”ポジションとなる。サードパーティー製カードで搭載されるかはメーカー次第といったところだ

 さらにWindows上の「Radeon設定」の中には、さらにこのスイッチのモードとは別に「パワーセーブ」「バランス」「ターボ」の3種類のモードを切り替えることができる。スイッチで2通り、設定で3通りなので都合6通りのパワーモードが選択できるのだ。

「Radeon設定」→「ゲーム」→「グローバルWattman」にある一番上のスライダーでVegaの動作モードを3段階に調整できる。日本語化が中途半端だが一番省電力なものから「パワーセーブ」「バランス」「ターボ」の3種類が用意されている

 スイッチとWatttmanプロファイルの組み合わせでVegaのTDPは以下の表のように変化する。

VegaのTDP
パワーセーブ バランス ターボ
165W 220W 253W
150W 200W 230W
198W 264W 303W
165W 220W 253W
150W 165W 190W
135W 150W 173W

ゲーム画面の見やすさを改善する
「Enhanced Sync」

 ゲーム向けの新しいVsyncモードである「Enhanced Sync」も、Vegaの新要素のひとつだ。これはGeForce系がPascalで最初に実装した「FastSync」のRadeon版というべきもので、フレームレートが液晶のリフレッシュレートよりも(ある程度)低い場合は垂直同期をオフにして、画面が描画できたそばから表示(スタッタリング防止)、逆にリフレッシュレートが高い場合は最新の“レンダリング済み”画像だけを出すようにしてティアリングと出力遅延を抑えるというもの。

 ただEnhanced SyncはVegaの設計に依存しているとはレビュアーズガイドの中でも言及されておらず、FastSyncのように後から旧世代GPU用に解放される可能性も十分考えられる。

Enhanced Syncは垂直同期の新しいオプションとして追加された。特にゲーム側の対応は必要ないようだ

検証環境は?

 今回性能検証に使用したシステムは以下の通りだ。比較対象はVega 64にはGTX 1080のFounders Edition、Vega 56にはGTX 1070のFounders Editionをぶつけてみる。良い感じに実売価格が下がってきたPolaris世代のハイエンドGPU(だったもの)にどの程度差を付けるかが見どころとなるだろう。

 なお、Vega 56/64のパワーモードは特別な表記なき限り、すべてデフォルト設定(プライマリー&バランス)に固定している。

テスト環境
CPU Intel Core i7-7700K(4GHz、最大4.5GHz)
マザーボード ASRock Z270 GAMING K6(Intel Z270)
メモリー Corsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
ビデオカード Radeon RX Vega 64リファレンスカード
Radeon RX Vega 56リファレンスカード
GeForce GTX 1070 Founders Edition
GeForce GTX 1070 Founders Edition
SSD Intel SSDPEKKW512G7X1(NVMe M.2 SSD、512GB)
Crucial「CT1050MX300SSD4/JP」(M.2 SATA SSD、1.05GB、データ用)
電源ユニット Silverstone SF850F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OS Windows 10 Pro 64bit版(Creators Uptade)
ラトックシステム ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」

GTX 1070/1080と互角の戦いをみせる

 最初のベンチはいつもの「3DMark」のスコアー比べだ。“Fire Strike”“Fire Strike Ultra”“Time Spy”の3種類のテストを実施した。

「3DMark」のスコアー

 Vega 64はGTX 1080 FE、Vega 56はGTX 1070 FEに近いが、やや上回る程度。比較対象のGeForceがOC版であれば、さらに差は縮まるだろう。

 2年待ったハイエンドが1年前のハイエンドと同格というのはなんとも物足らない気持ちにはなる。だがここしばらくPascalにやりたい放題やられていたハイエンドGPUゾーンにRadeonが戻ってきたという点は歓迎すべきだろう。

 ここで消費電力やワットパフォーマンスもチェックしておこう。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ実施中のピーク値を“高負荷時”とした。さらに前掲のTime Spyのスコアーを高負荷時の消費電力で割ったものを、ざっくりとではあるが“ワットパフォーマンス”として比較するとしよう。

システム全体の消費電力

 HBM1メモリーを搭載したFury Xは当時のハイエンドRadeon(R9 300シリーズ)に対して消費電力が抑えられたことで話題を呼んだが、今回のVega 64の消費電力は驚くほど大きい。

 リファレンスですら8ピン×2の外部電源を必要としている段階でなんとなくは察していたが、Pascal世代のGeForceのワットパフォーマンスをかえって強調する結果となってしまった。

 Vega 56もGTX 1070 FEに比べ60W近く消費電力が増えてしまっているが、64に比べれば相当大人しい印象だ。比較に使うGeForce系カードがOCモデルだと、Vega 56は結構良い勝負になるかもしれない。

1WあたりのTime Spyのスコアー

 ワットパフォーマンス、ここでは1WあたりのTime Spyのスコアーも仮想敵であるGeForce系に惨敗している。このワットパフォーマンス悪化がHBM2+HBCCにあるのか、NCUの設計そのものにあるのか、はてはInfinity Fablicにあるのか、原因を特定することはできないが、今後登場すると思われるVegaベースのミドルクラスが出ればわかってくるだろう。

 ついでに「VRMark」のスコアーも計測してみた。Vega 56がGTX 1070相当であればVegaはVRに好適なGPUであることはむしろ当然といえるが、果たしてどうだろうか。

「VRMark」のスコアー

 GeForce系が良いスコアーを挙げているが、現行VRシステムを想定したOrange Roomにおける平均fpsはどのカードも200fpsを超えており、どのGPUを使っても快適にVRを楽しめることを示唆している。

 それでは実ゲームベースのベンチマークに入るが、まずはDX11ベースのゲームから始めよう。まずは「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」の公式ベンチを使う。画質は“最高品質”、画面解像度はフルHD/WQHD/4Kの3通り(以降同様)で計測した。スコアーでは今ひとつピンと来ないのでテスト中の平均fpsも比較する。

「FF XIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチのスコアー
「FF XIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチの平均フレームレート

 FF14はもともとNVIDIAの“GameWorks”を活用して作られているので、GeForce系が圧倒的に有利。ここでのベンチ結果もそれを反映したものとなった。とはいえ、一番スコアーが低かったVega 56でもWQHDで平均60fps以上だせるパワーを持っている。Radeonしか使いたくないが、RX 580ではちょっとパワーが……という人にはVegaは福音となるだろう。

 続いては「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」のベンチマーク機能を利用する。このゲームの一番重い設定(ウルトラ)ではGameWorksの機能の中でも特に重い“Turf Effects”などがふんだんに使われているため、Radeonは相当不利。Turf Effectsがオフになる1段階下の“非常に高い”設定で計測した。

「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」1920×1080ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」2560×1440ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」3840×2160ドット時のフレームレート

 フルHD環境ではVega惨敗……GeForce系に最適化されているゲームなので予想通りだったが、WQHD以上になるとわずかにVega 56/64の方が良い結果を出している。HBM2の効果なのかNCUがすごいのかまでは不明だが、GeForce系有利なゲームでも負荷が高いとVegaが光る局面もある……ということがわかった点は収穫だった。

 続いては「Overwatch」を試す。画質は“エピック”、レンダー・スケールは100%に固定した。テストはマップ「King's Row」でBotマッチを遊んだ時のフレームレートを「Fraps」で測定した。

「Overwatch」1920×1080ドット時のフレームレート
「Overwatch」2560×1440ドット時のフレームレート
「OverWatch」3840×2160ドット時のフレームレート

 このゲームではどの条件でもGeForceがVegaを上回る結果をみせた。特にVega 56の最低fpsは今回試した4枚のカードの中で落ちこみやすいことが確認できた。Vegaが有利・不利は負荷ではなくゲームエンジンとの相性と言った方がよいだろう。

 ついでに今大人気のPUBGこと「PLAYERUNKOWN'S BATTLEGROUNDS」でも試してみた。プレイヤーが最初に集う小島で走り回った時のフレームレートを「Fraps」で3回ずつ測定し、一番平均fpsの高いものを採用した。グラフには一応最低・最高fpsを入れてあるがこのゲームはGPUが強力でも“フレームレートが落ち込むときは落ち込む”ゲームなので、平均fpsを重視することをオススメする。

「PLAYERUNKOWN'S BATTLEGROUNDS」1920×1080ドット時のフレームレート
「PLAYERUNKOWN'S BATTLEGROUNDS」2560×1440ドット時のフレームレート
「PLAYERUNKOWN'S BATTLEGROUNDS」3840×2160ドット時のフレームレート

 このゲームでもOverwatchと傾向は同一。3DMarkでは同格のGeForceに勝てたが、実ゲームではGeForceを完全に上回るのは厳しいようだ。

 これまで見てきたゲームは全てDirectX11ベース。だがDirectX12への対応度を高めたVegaは、DirectX12ベースのゲームで性能を論じるのが適切なのでは……と考える人もいるだろう。

 それならば次に行うべきテストは「Ashes of the Singlarity」だろう。画質は“Extreme”、ゲーム内のベンチマークモードを利用して計測する。テスト中はさまざまなシーンが表示されるが、シーンの負荷(Normal/Medium/Heavy)別に集計された平均fpsをそれぞれ比較する。

「Ashes of the Singularity(DX12)」1920×1080ドット時のフレームレート
「Ashes of the Singularity(DX12)」2560×1440ドット時のフレームレート
「Ashes of the Singularity(DX12)」3840×2160ドット時のフレームレート

 一見するとどの解像度でもVegaは競合するGeForceに一歩及ばない……という風に見えるが、それは軽いシーン(Normal Batch)の結果だけの話。Normalを無視してMediumとHeavy Batchのみの数値に注目すると、今度はVegaが全解像度において優勢となる。描画オブジェクトの数が一線を越えるとSP数の多いVegaが輝き出すということだろうか。

 続いては「Hitman」のベンチマークモードを利用する。画質は各項目を一番重くした最高画質設定とし、結果の「GPU Average」のみを比較した。

「Hitman(DX12)」の平均フレームレート

 HitmanではVega 56/64の明暗が分かれた。Vega 64はGTX 1080 FEとほぼ同じだがわずかに及ばなかったが、Vega 56はGTX 1070 FEよりもわずかに上回っている。

 次はAMD肝入りのタイトルである「Sid Meier's CIVILIZATION VI」を試す。画質は各設定を一番重くした最高画質設定とし、ゲーム内ベンチマーク機能のGPUテストを実施した。このベンチマークは結果がフレーム時間(1フレーム描くのに要する時間)で出てくるため、グラフではフレームレートに変換している。

「Sid Meier's CIVILIZATION VI(DX12)」1920×1080ドット時のフレームレート
「Sid Meier's CIVILIZATION VI(DX12)」2560×1440ドット時のフレームレート
「Sid Meier's CIVILIZATION VI(DX12)」3840×2160ドット時のフレームレート

 さすが起動時にAMDのロゴが出るだけあって、VegaのパフォーマンスはGeForceを(わずかだが)上回っている。

 Windows10ストアアプリである「Gears of War 4」もDirectX12ベースのゲームだ。画質はプリセットの“最高”とし、ゲーム内蔵のベンチマークモードで計測している。

「Gears of War 4」1920×1080ドット時のフレームレート
「Gears of War 4」2560×1440ドット時のフレームレート
「Gears of War 4」3840×2160ドット時のフレームレート

 これまでの結果からDirectX12ベースのゲームではVegaはGeForceを常に上回るのでは……と考えていたが、このテストはその仮説の反証となってしまった。フルHDにおいては平均fpsと最低fps(の下から5%点)の差がGeForceよりも大きい点は、Ashes of the SinglarityのNormal BatchでGeForceよりも奮わないことに関係があるのだろうか?

 最後のゲームはDirectX12ではないが、Vulkanを利用したゲームの代表として「DOOM」を試す。画質はプリセットの“ウルトラ”に異方性フィルタリング16xを追加した設定とした。テストはシングルキャンペーンの“ファウンドリー”内の一定のコースを移動した時のフレームレートを「OCAT」で測定した。

「DOOM(Vulkan)」1920×1080ドット時のフレームレート
「DOOM(Vulkan)」2560×1440ドット時のフレームレート
「DOOM(Vulkan)」3840×2160ドット時のフレームレート

 負荷の低いフルHDではVega 64とGTX 1080 FEはほぼ同等、Vega 56はGTX 1070 FEに対しやや有利といったところだが、WQHDになるとVega環境は一気にフレームレートの落ち込みが激しくなった。4Kで最低fpsの落ち込みが解消されたように見えるのは、負荷が重いせいで平均fpsが下がっているせいだと思われるが、Vegaの方がフレームレートが安定しづらいと言ってよいだろう。

パワーモード設定でどう変化するか?

 一通りゲームのベンチが終わったところで、Vegaの6段階のパワーモード(スイッチの位置で2段階、Wattman設定で各々3段階)がパフォーマンスと消費電力にどのような影響を及ぼすか調べてみた。性能の評価は「3DMark」のスコアーで行なう。消費電力の測定条件は前述の通りだ。

Vega 64のパワーモードによる「3DMark」のスコアーの違い
Vega 64のパワーモードによるシステム全体の消費電力の違い
Vega 56のパワーモードによる「3DMark」のスコアーの違い
Vega 56のパワーモードによるシステム全体の消費電力の違い

 Vegaではパワーモードごとに最大パワーが微妙に変わると解説したが、この結果は前掲の表に近いものとなった。特にWattman側でパワーセーブモードにすれば、プライマリーモードでも消費電力はかなり抑えられる。もちろん性能は下がるが、Vega導入のネックが消費電力にあるならば、このモードを上手く利用して飼い慣らすことをオススメしたい。

 ただ今後各メーカーから出てくるOCモデルでは、このモードによる損得計算がだいぶ変わってくる可能性もある。この結果はあくまでリファレンスデザインのカードでの結果と考えていただきたい。

 このパワーモードの違いはGPUのクロック推移の違いとなって現れる。「HWiNFO64」を使い、Vega 64のクロックとGPU温度を追跡したのが次のグラフだ。アイドル状態からスタートし「Ghost Recon: Wildlands」を起動、そのまま30分プレー状態で放置している。室温は約28度、バラック組みに近い状態だがエアコンの風が当たらないようカバーをかけている。

Vega 64におけるパワーモードとGPU温度推移
Vega 64におけるパワーモードとGPUクロックの推移

 まず温度については、バランスとターボモードならばGPU温度は86度あたりで上下する(開始時点でのGPU温度が統一されていないのは筆者のミスだ。この点はお詫びしたい)。

 ところがバランスにすると76度まで一気に下がる。ピーク性能はさておき、リファレンスデザインのカードで使うならワットパフォーマンスや温度的にパワーセーブモードが扱いやすくてよいのではなかろうか。

 クロック推移のグラフについても、温度と同様の傾向がみられる。パワーセーブモードでは1345MHz前後で安定するのに対し、ターボとバランスモードでは1465MHzあたりに多くの点が集まっている。バランスよりターボの方がより上のクロックを示す頻度が高くなるが、同時に下がる頻度も高くなる。

 リファレンスデザインのクーラーでは冷却が間に合わず、クロックを維持できないことは明らかだ。このあたりは独自設計の強力なGPUクーラーを搭載したOCモデルだと、もう少し違った傾向が見えてくると思われる。

HBM2は夢を見るためのものか?

 以上でVegaのレビューは終了だ。ゲームにもよるがシングルカードでGTX 1080 FEまたは1070 FEとほぼ同等の性能を発揮できている点はまず評価すべきだろう。

 この時点でGTX 1080Tiに遠く及ばないのは自明であり、これでハイエンドを名乗って良いのかという議論もあるだろうが、Radeonハイエンドの大空位時代に終止符を打ったことは喜ばしいことだ。Fruid Motion VideoやFreeSyncがなければ嫌だ、あるいはGeForceは飽きた(懲りた)という人にとっては、歓迎すべき製品ではなかろうか。

Radeon RX Vega 64/56は、GeForce GTX 1080/1070とほぼ同等の性能を発揮できているが、ワットパフォーマンスの悪さがマイナス要因

 ワットパフォーマンスの悪さはマイナス要因だ。パワーセーブモードにすれば消費電力はかなり抑制できるものの、Core XシリーズやRyzen Threadripperといったエンスージアスト向けCPUと併用するなら相応の電源ユニットが必要になるだろう。パワー食いでも性能で突き抜けていれば面白いが、残念ながらVegaにはそこまでの性能はない。

 というわけでVegaはゲーマー必携のビデオカードではなく、AMDやRadeonブランドが好きなユーザーが夢を見たい時に使う製品と言わざるを得ない。性能よりもRadeonであることに喜びを見いだすのであれば、迷わず飛び込むと良いだろう……流通量が少なすぎて秋葉原でも発売日に買える店舗が限られているそうだが。

【関連サイト】

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