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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 ― 第442回

年内にVegaの延長となる12LPのGPUをリリース AMD GPUロードマップ

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

 前回に引き続き、AMDのCES Tech Day 2018の話題を取り上げよう。今回はGPUまわりである。 AMDは今回のTech DayでGPUに関してはVega Mobileと7nm Vegaの2つを示した。

2018年はVega Mobileと7nm Vegaの年になる

Vega MobileとVega Mの違いとは?
Vega Mはインテル専用のカスタムチップ?

 まずはVega Mobileについてだ。今回発表があったのは、モバイル向けディスクリートGPUである。一見すると、インテルのKaby Lake-Gに搭載されているVega+HBM2を、単体で切り出したパッケージに見える。

Vega Mobileを示すCEOのLisa Su氏

 特徴としては厚みを1.7mmに抑えたことで、薄型ゲーミングノート、あるいは薄型ワークステーションにもフィットする、というのが同社の説明である。

Vega Mobileに関する情報はこれだけだ

 説明がこれだけしかないのでさっぱり中身がわからないのだが、これはなんだろうか? というのが次の疑問である。最初は、上に書いたように「インテルのKabyLake-Gに搭載されているVega M+HBM2を、単体で切り出したパッケージ」かと思ったのだが、どうも違うようだ。

 下の画像はこのVega Mobileと従来のVegaを比較したものだ。ぱっと見、Vega MobileのダイサイズはVegaのほぼ半分に見える。

これはScott Herkelman氏(VP&GM, Radeon Gaming Business Unit)が示したもの。CES Tech Day 2018は撮影禁止で、これはAMD提供の写真をむりやり引き伸ばしたものである

 ところがKaby Lake-Gについては、24CU(Compute Unit)と説明されている。もともとのVegaのダイは64CUなので、半分ではなく8分の3しかCUがないことになる。

 当初、KabyLake-Gに搭載されたVega Mは、本来32CUのものを8CU無効化して24CUにしたのだろう、と想像していた。念のため、ダイサイズを確認してみることにした。

 KabyLake-Gに搭載されているVega Mコアのサイズは、CES 2018を取材した小山氏の写真を元に、無理やり変形してみた。

縦横比は正確でないので、縦方向と横方向、別々にHBM2との比率を計算することになる

 幸いなことにHBM2チップの外形寸法は7.75×11.87mmとわかっているので、あとは画像の比率から算出すると、Vega Mのダイはおおよそ14.85×12.04mmで、178.8mm2となる。

 次はVegaのダイである。こちらは以前Vega 56/64のレビューを行なった際にメカニカルサンプルがAMDより提供されている。ここからVegaのダイは19.05×25.51mmで、486.0mm2と推定される。

ダイをAMDが提供した理由は、メカニカルサンプルなしだとVegaのビデオカードをバラしてチップの写真を撮ろうとするライターが多数いたためと思われる。いや筆者だってこれがなかったら、ためらわずにVega64カードをバラしますよ

 最後がVega Mobileである。最初の画像の手元を拡大して歪み補正したのが下の画像だ。

Vega Mobileのダイを、がんばって拡大して補正してもご覧の通り。これ以上拡大するとボケけがひどくなるばかりだった

 同じように推定すると17.51×13.24mmで、231.8mm2ほどとなる。つまり、明らかにVega MとVega Mobileのダイが違うという計算になる。
 ラフな計算だが、CU数がほぼダイサイズに比例すると仮定すると、ダイサイズ比は以下のようになる。

Vega : Vega Mobile : Vega M = 486.0 : 231.8 : 178.8 ≒ 1 : 0.48 : 0.37

VegaのCU数が64なので、それぞれのCU数は以下のようになる。
Vega Mobile  64×0.48 ≒ 31
Vega M     64×0.37 ≒ 24

 写真を見るとわかるが、Vega Mobileの画像が一番解像度が荒いので、ここは誤差が一番大きい。したがって、実際にはもう少しダイサイズが大きい(240mm2強)とすれば、CU数は32になる計算だ。

 そう思って発表を聞きなおしてみると、AMDはVega MobileについてVega Mという呼び方を一度もしておらず、一方インテルはこれをVega Mと明確に称しているあたり、KabyLake-Gに搭載されるVega Mコアは、KabyLake-G専用チップではないかという疑いが非常に濃厚になってきた。

 実際、下のスライドもあるあたり、Vega Mはインテルにのみ供給されるカスタムチップというのが実情に近いと思われる。

Kaby Lake-Gは24個のCUがしっかり描かれているのに、Vega MobileはブラックアウトしてCU数を明示してないあたりもそれを物語る

 話を戻すと、筆者はVega Mobileは、Vega32と呼ばれていた32CU構成のダイではないかと推定している。

7nmプロセスのVEGAは機械学習向け

 さて、次が7nm世代のVegaの話である。最初に登場するのはRadeon Instinct向けの製品である。

7nm世代のVegaは、Volta世代のキャッチアップを狙ったものだろう

 この7nm世代のチップは2018年中にサンプリングが始まることが予告されている。ただ、だからといって今年中に製品出荷が始まるという意味ではないだろう。

Radeon Instinctのサンプル出荷ではなく、GlobalFoundriesから7nmのVegaチップのサンプリングが2018年中に始まる、の意味だろうと思われる

 今回の発表は、あくまで製品の存在を発表したに留まっており、現実問題として出荷は2018年の終わりか、下手をすると2019年になると思われる。

 しかも最初はRadeon Instinct向けである。したがってコンシューマーグラフィックス向けは当然後回しとなる。既存のRadeon Instinctはいずれもビデオ出力を持っておらず、当然この7nm Vegaチップを使った製品もビデオ出力は持たないだろうから、「価格に目をつぶってGPUカードとして買う」という使い方もできなそうだ。

 この7nm Vegaに関しては、あわせて機械学習用のライブラリーも提供されることが明らかにされている。

機械学習用のライブラリーも提供される。MIOpenやROCmなどは以前から提供されていたため、ここにあるものがすべて新規提供というわけではないが、バージョンアップなども含んでいると理解すればいいだろう

Vegaの延長にあるであろう
5.5世代GCNのGPUが2018年に登場か?

 最後がロードマップである。今回提示されたロードマップが下の画像だ。念のために以前のものと比較していただくとわかるが、以前はVegaも14nm+(12LP)を使う予定だったので、7nmについてはVegaを最優先で投入したということになる。

Vegaは、12LPはスキップして、先に7nmに行くことを決断した形だ
2017年5月のロードマップ

 理由はなんとなくわからなくもない。NVIDIAのVoltaのキャッチアップには、とにかくCU数を増やす必要がある。そのためには12LPでは不十分で、先行して7nmを、ということだろう。

 今年中にサンプリング、ということはもうテープアウトは終わっているか、ほとんど終わりに近い状態でないと間に合わないわけで、そこから逆算すると昨年の早い時期にはこの決断がなされていた可能性は高い。

 さて、問題はコンシューマー向けの製品ロードマップだ。AMDはVega Graphicsに関して、デスクトップは既存のRX Vega 64/56を引き続き2018年も投入していくとしている。では、2018年にはGPUの新製品は出ないのか? というとそれも早計だろう。

 というのは、Mark Papermaster氏に「あなたはGTC(Globalfoundries Technology Conference)で12LPを使ったVegaを出すと発表しませんでした?」と誘い水をかけてみたところ「それは正確ではない言い方だ。私は、AMDが2018年にクライアント向けCPUとGPU製品を、12LPを使ってリリースする予定だと説明した」という返事が返ってきた。

 実際Globalfoundriesの12LPのプレスリリースにはPapermaster氏のコメントとして“We plan to introduce new client and graphics products based on GF's 12nm process technology in 2018 as a part of our focus on accelerating our product and technology momentum.”とある。

 ここで意味しているのは、AMDはVegaについては12LPを使う予定はないが、Vegaではない12LP採用製品を2018年中に出す、という言明である。

 「ではその12LPを使ったGPU製品はどうなっています?」と確認したところ「それはまだ説明するには時期尚早」という返事であった。

 ここからは筆者の推測である。技術的にはVegaの延長にあるであろう製品が12LPを利用して開発中なのは間違いない。Vegaの延長、というのは内部のCUの構造はおそらくVegaと変わらないと思われることだ。

 Vegaは第5世代のGCNであるが、この新製品はその後に開発に着手しているわけで、第6までいかない(第6世代はVega 7nmになるだろう)までも第5.5世代くらいの構造と思われる。

 ただし高価なHBM2は搭載せず、またHBCC(High Bandwidth Cache Controller)も内蔵しない。Vegaの動作にHBCCが必須ではないのは、Ryzen APUが証明している(こちらもHBCCは内蔵しない)。HBM2を使わないのであれば、HBCCも不要だからだ。その代わり相対的に廉価なGDDR6を利用することになると思われる。

 発表はおそらく6月のCOMPUTEXの前後、実際の製品リリースは7月になるのではないかと筆者は想像している。もっとも連載441回でも書いたとおり、第2世代Ryzenが4月に発売なので、そのあたりでプレビューが紹介される可能性もあるかもしれない。

 また、デスクトップ向けVega Mobileの投入もおそらくないだろう。このコアが32CUのVega 11に相当するものになると思われるが、デスクトップ向けには性能価格比が悪すぎる。こちらは引き続きモバイル向けのみであろう。

 唯一デスクトップ向けにありそうなのは、連載421回で説明した、Radeon RX Vega Nanoくらいだろう。あるとすれば、これがCOMPUTEXあたりのタイミングというところだ。

Vega 12がなにになるかが鍵となる2018年AMD GPUロードマップ

 以上を加味して制作した(今回は本当に情報が皆無なので、Vega 12のところは100%筆者の推測である)のが下図のロードマップである。

2016年〜2018年のAMD GPUのロードマップ

 Vega 12というコード名は以前から流れていて、当時はVega 10ベースのFire Pro向け製品といわれていたが、実際にはここにVega 10が入っているところをみると違うのは確実だ。

 ただVega 12というコード名があることも事実なので、これをGDDR6を利用する製品にあててみた。シェーダーの構成や動作周波数・消費電力などはまったくの推測である。

 ちなみにVega 11についてはデスクトップに降りてくる気配が皆無なのでロードマップから省いた。また7nm Vega(これがVega 20だろう)についてもRadeon Instinct向けで、Radeon Vega Frontier Editionの後継になりそうな製品は2019年以降になりそうなので、こちらもロードマップからは省いている。

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