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最新パーツ性能チェック ― 第226回

ZenとVegaが合体した「Ryzen G」は低予算自作における革命だった!

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ

 2018年2月12日、AMDは開発コード“Raven Ridge”の名で知られていたSocket AM4向けAPU(GPU統合型CPU)の最新モデル「Ryzen R3 2200G」および「Ryzen 5 2400G」を正式発表した。今回は秋葉原における深夜販売はないが、翌13日から実店舗にて販売が開始される。

 これまでのSocket AM4マザーボードでは、CPUパワーを重視してRyzenシリーズを選べばビデオカードが必須、内蔵GPUを重視してAMD AシリーズAPUを選べばCPUパワーがRyzenや競合CPUに比べ劣るという苦しい2択を迫られていた。

 だが今回の「Ryzen G」シリーズでは、CPUはRyzenと同じZenベース、GPU部はRadeon RX Vegaベース。現役のAMD AシリーズはExcavatorと第3世代GCN(Tonga、Fiji)で周回遅れ感があるのは否定できなかったが、Ryzen Gで何もかも一新されたという訳だ。

 本邦における初値はRyzen 3 2200Gが税込み1万3300円程度、Ryzen 5 2400Gが2万1300円程度となる。北米価格はそれぞれ99ドルと169ドルであるため、気持ちRyzen 3の方が割高ではあるが、元値が安いため十分お買い得感は出ている。

 今回はAMDからお借りしたRyzen Gシリーズ評価キットを利用し、ライバルであるCore i3やCore i5ベースのシステムとの比較を行うことにする。果たしてAMDの現行IPで固めたAPUは低予算自作のセオリーを変えることができるのか? 様々なベンチマークを通じて検討してみたい。

評価キットの内容物。Ryzen G対応BIOSに更新済みのMini-ITXマザーとDDR4-3200のRyzen対応メモリーがセットになっていた
Ryzen 5 2400Gの表面と裏面。表面の刻印がなければ、既存のSocket AM4用CPUと見分けることは困難だ
Ryzen Gシリーズには純正CPUクーラー「Wraith Stealth」が同梱される。発光機能を持たない最もシンプルなタイプだ

Ryzen 2000シリーズの内容を先取り

 それでは今回発売されたRyzen Gシリーズのスペックを従来のCPU/APUと比較してみよう。同価格帯にあるRyzen 1000シリーズのCPUとスペックを比べると、Ryzen Gシリーズは若干クロックが高めになっているほか、メモリーの上限がDDR4-2933まで引き上げられている点が重要だ。GPUを内蔵しているにも関わらず、TDPは65Wに収まっている部分も興味深い。

 そしてRyzen Gが採用したGPUコアはVegaベースだが、CU(Compute Unit)は8基ないし11基と、CPUコアと同一パッケージ内に入れるためにVega 56の5分の1から7分の1にダウンサイズされている。さらにGPUや周辺回路を内包した結果からか、外部GPUへの接続バスはPCI-Express Gen3のx8が上限であるなど、これまでのRyzenとは微妙に仕様が違う点もある。

Ryzen Gシリーズと既存のAMD製CPU/APUを比較
製品名 Ryzen 5 2400G Ryzen 5 1400 Ryzen 3 2200G Ryzen 3 1300X A12-9800E
アーキテクチャー Zen Zen Zen Zen Excavator
コア/スレッド数 4/8 4/8 4/4 4/4 4/4
ベースクロック 3.6GHz 3.2GHz 3.5GHz 3.5GHz 3.1GHz
ブーストクロック 3.9GHz 3.4GHz 3.7GHz 3.7GHz 3.8GHz
L3キャッシュ 4MB 8MB 4MB 8MB -
搭載GPU Vega 11 - Vega 8 - Radeon R7
CU数 11基 - 8基 - 8基
SP数 704基 - 512基 - 512基
GPUクロック(最大) 1250MHz - 1100MHz - 900MHz
対応メモリー DDR4-2933 DDR4-2666 DDR4-2933 DDR4-2666 DDR4-2400
外部GPU接続 PCI-E Gen3 x8 PCI-E Gen3 x16 PCI-E Gen3 x8 PCI-E Gen3 x16 PCI-E Gen3 x8
TDP 65W 65W 65W 65W 35W
「CPU-Z」でRyzen Gの情報を拾ってみた。左がRyzen 3 2200G、Ryzen 5 2400Gとなる

 内部構造的にはInfinity Fablicを起点に、4基の物理コアを持ったCCXと、Vegaベースのグラフィックスコアが接続される。CCXを2基備える上位Ryzenシリーズから、片方のCCXをVegaに置換したモデルであるため、物理コアは4コアが限度。CCX2基にVegaコアを入れるのは、発熱的に無理があるようだ。

Ryzen Gのブロック図。Ryzen 7が備える2基のCCXのうち片方をVegaに置換し、映像出力用の回路等を付け加えたものがRyzen Gという理解でよいだろう(AMD資料より抜粋)

 さてRyzen Gの型番が従来の1000番台でなく2000番台に増えた理由は、Ryzen GシリーズのCPUコアはRyzen 1000シリーズより改良されているためだ。CCXの基本構造は同じだが、各コアの負荷に応じてクロックを調整する“Precision Boost”が“Precision Boost 2”に更新されている。

 Precision BoostはCPUの使用状況をチェックする。3コア以上がアクティブなら“全コアブースト”2コア以下なら“2コアブースト”という2つのステートに切り替え、クロックを調整していた。Precision Boost 2も基本は同じだが、クロックの調整幅がより細かくなった。結果として中途半端にコアを使う時は、Ryzen 1000シリーズよりも(わずかだが)高クロックになるためパフォーマンスが稼げる、というものだ。

Precision Boost(橙色)とPrecision Boost 2(黄色)の挙動の違い。横軸はアクティブな論理コア数、縦軸がクロックを示す。2コアブーストと全コアブースト時のクロックは同じだが、Precision Boostはすぐクロックを落としてしまうのに対し、Ryzen Gに搭載されたPrecision Boost 2はアクティブな論理コア数増加に応じて緩やかにクロックを下げていく
上のグラフをもう少しわかりやすくしたもの。「OCCT」で負荷をかける論理コア数を増やしていくと、除々に各コアのクロックが下がっていくことが示されている

 Ryzen Gシリーズも全て倍率ロックフリーであり、OC用のツール「Ryzen Master」もVer 1.2以降でRyzen GのOCにも対応する。Ryzen 1000シリーズやThreadripperと共用のツールになっているせいか、本来RyzenやRyzen Gシリーズでは不要なメモリーアクセスモードの設定項目が残されているが、やれることは同じのようだ。

Ryzen MasterはVer 1.2以降でRyzen Gに対応する。中盤やや下の「APU GFX Speeds」でGPUのクロック変更も可能だ

GPUは付加機能に謎あり

 続いてGPU部を見てみよう。Ryzen Gの内蔵GPUはVega 56/64をスケールダウンしたものだが、HBM2のメモリコントローラー(HBCC)は当然のことながら省かれている。さらにフレームレートに制限を加えて省電力化する「FRTC(Frame Rate Target Control)」など省略されている機能もあるが、検証時のドライバー(GPU部は17.7ベース)では、Radeon設定内にFRTCの設定が見られた。

 また、本来サポートされるであろう(レビュアーズガイドに明確な記載なし)録画機能「Radeon ReLive」については省略されているなど、かなり急造感のあるドライバーであることは否定できない。

「GPU-Z」でRyzen Gの内蔵GPUの情報を拾ってみた。今回の検証環境ではGPU-Z v2.5.0より新しいものだとフリーズするため、あえて旧バージョンを使用している

 加えて、動画の再生を滑らかにする「Fluid Motion Video」に関しては、検証用ドライバーには項目が出現しなかったため試すことはできなかった。この機能に関してはBristol Ridge世代のメーカー製PCでも無効化されている事例もあるので、Ryzen Gシリーズでのサポートに関してはまだ不透明と言わざるを得ない。

Ryzen Gシリーズも「Radeon設定」で各種設定を行う。検証用ドライバーでは本来サポートされないはずのFRTCの項目が存在した
本来ならここにFluid Motion Videoの設定があるはずだが、検証時では拝むことはできなかった
FreeSyncはRyzen Gシリーズでもサポートされる。この図の上ではサポートされてないと表示されているが、筆者の液晶がFreeSync非対応だったためだ

Ryzen Gを使えばローエンドGPU並みのPCを安価で組める!

 では検証に入る前に、Ryzen Gがいったいどのような層をターゲットにした製品なのかを明確にしておこう。Ryzen 1000シリーズは内蔵GPUを持たないため、内蔵GPUを標準搭載するインテルのメインストリームCPU(今ならCoffee Lake)と比較すると、微妙に使いづらい面があった。

 特に低予算でRyzen 3や5の下位モデルを使ってPCを一台組もうと思ったら、ローエンドビデオカードを買わなければならないのは大きな痛手だ。

 Ryzen Gシリーズは低予算でも、高性能なグラフィック描画性能を持つPCが組めることを武器にしている。AMD Aシリーズの時代でもインテル製内蔵GPUより描画性能が高かったが、Ryzen GのターゲットはGT 1030やRX 550といったローエンドGPUだ。

 つまり、安価なインテル製CPUとローエンドGPUでPCを組むなら、Ryzen Gを使った方がより手軽で同等の性能が出るよ、ということだ。そして当然のことだが、Ryzen Gの内蔵GPU性能はインテル製内蔵GPUよりも圧倒的に高い、というアピールも行っている。

 そこでざっと値段を比較したのが以下の表だ。マザーボードはATX、メモリーは4GB×2とし、Ryzen Gシリーズを含めた4種類のCPUで、コアパーツの調達価格にどの程度の差が出るかを比較したものだ。ストレージや電源ユニット、OS等の値段は省いているが、高性能内蔵GPUでビデオカードが要らないぶん、確かにインテル製CPUより安く組める。

Ryzen Gシリーズと、それに価格的に競合するCPUで組んだ場合、コア部分はどの程度の予算になるかを比較したもの。Ryzen Gシリーズはメモリーが高くつくが、マザーが安くビデオカードが不要なぶん、トータルではCore i5やi3よりも安く組める

Ryzen Gの性能は内蔵GPUの常識を覆す出来

 それでは今回の検証環境を紹介しよう。Ryzen Gシリーズの検証環境はAMDから送付された検証キットをそのまま使用している。そして比較用に前世代のAPUからA12-9800E、そしてインテル製CPUはCore i3-8100およびCore i5-8400、GeForce GT 1030搭載カードを用意した。

 また、Ryzen GシリーズとCore i3/i5のメモリーは検証キットに入っていたDDR4-3200をそのまま使用しているが、メモリークロックは基本的に各CPUがサポートする上限とした。即ちRyzen GシリーズはDDR4-2933、Core i5-8400はDDR4-2666、Core i3-8100はDDR4-2400となる。

 さらに、検証キットに含まれていたAM4マザーでは開発版BIOSの関係か、A12-9800Eをブートさせることはできなかったため、別途マザーボードとメモリーを用意している。ストレージ、電源、OS、電力計はRyzen G環境と同じモノを流用。

【Ryzen G環境】
CPU AMD「Ryzen 3 2200G」(3.5GHz、最大3.7GHz)、AMD「Ryzen 5 2400G」(3.6GHz、最大3.9GHz)
マザーボード GIGABYTE「GA-AB350N-Gaming WIFI」(AMD B350)
メモリー G.Skill「F4-3200C14D-16GFX」(DDR4-3200 8GB×2、DDR4-2933として使用)
ストレージ Intel「SSDPEKKW512G7X1」(NVMe M.2 SSD、512GB)
電撃 SilverStone「SST-ST85F-PT」(850W、80PLUS Platinum)
OS Windows 10 Pro 64bit版(Fall Creators Update)
電力計 ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」
【AMD Aシリーズ環境】
CPU AMD「A12-9800E」(3.1GHz、最大3.8GHz)
マザーボード MSI「X370 GAMING PRO CARBON」(AMD X370)
メモリー Crucial「W4N2400BMS-8G」(DDR4-2400 8GB×2)
【インテル環境】
CPU Intel「Core i5-8400」(2.8GHz、最大4GHz)、Intel「Core i3-8100」(3.6GHz)
マザーボード GIGABYTE「Z370 AORUS Gaming 7」(Intel Z370)
グラフィックス ASUS「GT1030-SL-2G-BRK」

 それでは定番ベンチマークから見ていこう。まずはCPUの力比べでは定番の「CINEBENCH R15」だ。

「CINEBENCH R15」のスコアー

 マルチは速いがシングルは遅め、というのはRyzen 1000シリーズで明らかになった弱点だが、残念ながらRyzen Gでもその傾向は同じだ。4コア8スレッドのRyzen 5 2400Gは6コア6スレッドのCore i5-8400よりCPUのパフォーマンスは下だ。

 だがRyzen 3 2200GのマルチコアテストのスコアーとCore i3-8100のそれはかなり良い勝負をしている。だがA12-9800Eのスコアーの低さを考えると、Ryzen GでAPUは爆発的に進化したといえるだろう。

 続いては総合性能をチェックする「PCMark10」を利用する。テストは全ワークロードを実行する“Extended”テストを実施した。総合スコアーのほかに、テストグループごとのスコアーも比較しよう。このテストではGPUも使われるため、インテル環境ではGT 1030カードを装着した状態(“w/GT 1030”表記)と、内蔵GPUのみで使用した状態(“w/iGPU”表記)も計測している。

「PCMark10」Extendedテストのスコアー
「PCMark10」Extendedテスト内のテストグループ別スコアー

 GT 1030を使用した場合はGPUの性能よりもCPUの力比べの側面が出てくる。即ちCINEBENCH同様、CPUのパフォーマンスの良いCore i5-8400がトップだが、Ryzen Gシリーズも大差ないスコアーを出せている。一方Core i5/i3で内蔵GPUだけを使った場合は、Ryzen Gシリーズは圧倒的優位に立つ。

 さらにテストグループ別スコアーを眺めてみると、オフィス系アプリでのパフォーマンスを見るProductivity、写真編集やCGレンダリングといった性能をみるDigital Contents Creationテストで良いスコアーを出している。Core i5/i3の内蔵GPU環境で総合スコアーが低いのは、Gamingのスコアーが足を引っ張っているからだ、という点も2番めのグラフから確認できたはずだ。

 それでは本命のグラフィック周りのパフォーマンスをチェックしてみよう。まずは定番「3DMark」を使用する。

「3DMark」のスコアー

 今回は内蔵GPUがメインなので、テストは軽めの“Sky Diver”と“Fire Strike”を中心に攻めてみた。どのテストにおいてもCore i5-8400とGT 1030の組み合わせがトップであることは間違いないが、Ryzen 5 2400Gは「CPU内蔵GPUだけで」この組み合わせに肉薄している点に注目。

 勝つことはできなかったが、数千円安い予算でほぼ同等の性能を、よりシンプルなパーツ構成で得ることができるというのは、非常に注目すべき点であろう。さらに言えば、Ryzen 5 2400GならばCore i3-8100とGT 1030の組み合わせを超えることができる。

 残念ながらRyzen 3 2200GはGPUのスペックが低いぶんスコアーも低いとしか言いようがないが、それでもA12-9800Eに比べると格段にパフォーマンスが高い。

 続いては「VRMark」のスコアーも比べてみよう。スペック的にVRに適した製品ではないことは明らかだが、一応確認しておきたい。

「VRMark」のスコアー

 今回用意したどの構成であっても、一番軽いOrange Roomの平均fpsは41fps未満であった。よってVR不適であるのは言うまでもないが、注目して頂きたいのは各テストごとのスコア傾向の違い。OrangeおよびBlue Roomは概ね3DMarkと同傾向だが、唯一DirectX12ベースであるCyan RoomだけはRyzen 5 2400Gが首位に立ち、Ryzen 3 2200GもCore i5-8400とGT 1030の組み合わせに匹敵するスコアーを出している。GPUのベースがVegaだけに、よくチューニングされたDirectX12での描画性能はかなり良好なようだ。

実ゲームでもコスパを考慮すればとても優秀!

 ここからは実ゲームベースのテストに入る。まずは「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター(FF14)」の公式ベンチを使用する。ビデオカードのレビューではフルHDから4Kまで解像度を変化させてチェックするが、今回は解像度をフルHDに固定し、画質が“最高品質”と“標準品質(ノートPC用)”の時にどうスコアーが変化するかチェックすることにしたい。

「ファイナルファンタジーXVI:紅蓮のリベレーター」公式ベンチのスコアー
「ファイナルファンタジーXVI:紅蓮のリベレーター」公式ベンチ実行中の平均fps

 3DMarkではかなりの健闘をみせていたRyzen Gのパワーは、FF14ベンチでは見る影もない。Core i5/i3の内蔵GPUには余裕で勝てているが、GT 1030には全く歯が立たないといったところか。だがFF14ベンチはGeForceが非常に有利であること、さらにRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの結果に大きな差がないことから、ドライバーの不具合である可能性も高い。製品が実際に発売され、ドライバーの完成度が上がれば、もう少しGT 1030に迫れることを祈りたい。

 続いては「ファンタシースターオンライン2(PSO2)」のキャラクタークリエイト体験版(Episode4)のベンチマーク機能を利用する。画質は軽めの“4”および“3”で計測した。

「ファンタシースターオンライン2」のキャラクタークリエイト体験版(Episode4)のスコアー

 PSO2ベンチもNVIDIA肝いりのベンチであるが、FF14ほどガチガチなGeForce寄りという訳ではない。むしろCPUパワーに引きずられる傾向が強いので、シングルスレッド性能が低いRyzen Gではあまりスコアーが出ない。ここでもGT 1030とインテル製CPUの組み合わせの前には全く歯が立たない印象だ。

 しかし、内蔵GPUパワーだけで勝負させると、Ryzen Gシリーズはインテル製CPUに対しほぼ2倍のスコアーを叩き出している。Ryzen 5 2400Gで画質3であれば、だいたい60fpsを出せている。この事実を考えると、Ryzen Gシリーズがいかに革命的な製品であるかがわかるだろう。

 続いてはそろそろゲームエンジンが大幅刷新されるという「World of Tanks」のベンチマーク“Encore”を試してみた。画質は“最低”および“中”の2通りで計測するが、解像度はフルHDに固定している。

「World of Tanks: Encore」のスコアー。A12-9800Eの中画質におけるテストはスペック不足により実施不能

 スコアーの順位的なものはPSO2ベンチの結果に近いが、こちらではRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの差がしっかりついている。このベンチでも最低設定ではインテル製CPUとGT 1030のペアに完膚なきまでに叩きのめされているが、このベンチでもCPUの処理性能が影響しやすいためこれだけの差がついたとかんがえられる。

 だが中設定では負けはしているものの、Ryzen Gはかなりインテル製CPUに迫っているといえるだろう。Ryzen 5 2400Gなら、中設定でも50fps近くに落ち込むことがあったが、概ね60fpsあたりでウロウロしていた。描画負荷の軽いゲームに限定すれば、Ryzen Gシリーズのコスパはとてつもなく高い。

 ここまでかなりGeForce寄りのベンチが多かったので、特にVegaと相性の良いDirectX12ベースの「Forza Motorsport 7」も試してみた。画質は“低”または“中”をベースにしたものを使用したが、前者はMSAAなし&異方性フィルタリングは4x、後者はMSAA x2&異方性8xに設定した。また、オンオフのように2段階しかない設定については、全てオフ(またはより軽い選択肢)に統一している。

「Forza Motorsport 7」低設定におけるフレームレート
「Forza Motorsport 7」中設定におけるフレームレート

 これまでGT 1030に叩きのめされてきたRyzen GがForzaでは一気に逆転、インテル製CPU&GT 1030の組み合わせよりもはるかに高フレームレートを叩き出した。まだドライバーの熟成が足らないのか、もしくはメインメモリーをVRAMとして使う仕組みがボトルネックなのかまでは分からないが、Ryzen G環境ではベンチ中にフレームレートが激しく落ち込むポイントが何点か存在した。

 ただ内蔵GPUでも驚くほど高いフレームレートが得られていることは疑いの余地はない。ドライバーの熟成でどこまでフレームレートが安定するかが見ものだ。

 リアル作業系のベンチも少しだけ試してみよう。まずは「Lightroom Classic CC」最新版にRAW画像(4000×6000ドット、NEF形式)を200枚インポートし、レンズ補正をかけた上でDNGに変換する時間と、DNGを最高画質のJPEGに変換する時間をそれぞれ比較した。JPEG変換時はスクリーン向けのシャープネスを適用している(適用量は標準)。

「Lightroom Classic CC」によるRAW画像変換時間

 このテストは時間を計測しているのでグラフのバーが短いほど優秀ということになる。その意味ではインテル製CPUに対しRyzen Gシリーズは完敗といえるだろう。メモリークロックはRyzen Gの方が速いので、単純にCPUの馬力の差といえる。

 ただA12-9800Eの惨状(Bulldozer系なので仕方ないとも言えるが)を考えると、APUとしてはとてつもなくパワーアップした、という考え方もできる。

 続いては「Premiere Pro CC 2018」で編集した4K動画(再生時間約3分半)を「Media Encoder CC 2018」でエンコードする時間を比較する。コーデックはH.264を使用、さらにドライバーの問題からかRyzen Gではデコード処理にGPGPUを使うとフリーズしたので、全てCPU側で処理させている。

「Media Encode CC 2018」による4K動画エンコード時間

 順位的にはLightroomと同様にインテル製CPUの方が優秀であるといえるが、Ryzen 5 2400GとCore i5-8400、Ryzen 3 2200GとCore i3-8100の差はそう大きくはない。このテストに限っていえば、十分選択肢に入るレベルの性能といえるだろう。

 最後に消費電力をチェックしよう。“アイドル時”とはシステム起動10分後の安定値、“高負荷時”とは「OCCT」の“Power Supply”テストを5分回した時点での安定値をそれぞれ計測している。

システム全体の消費電力

 グラフのバーの長さだけ見ると、Ryzen Gシリーズの高負荷時の消費電力がヤバそうな感じに見えるが、OCCTのPower Supplyテストで限界まで回しても150Wを超えない程度に収まっている。Core i5/i3とGT 1030の組み合わせは高負荷時はよいが、アイドル時はRyzen Gよりも明らかに消費電力が増えている。

 ちなみに、ゲーム中の消費電力はRyzen 5 2400Gでも90から100Wといった所で推移している。

メモリークロックの違いでどう変化する?

 最後に2つの素朴な疑問について考えてみたい。まず1つめはRyzen Gの内蔵GPUのパフォーマンスだ。これまでCore i5/i3と組み合わせて計測したが、GT 1030をRyzen Gと組み合わせれば内蔵GPUと直接性能が比較できるはずである。

 そこで3DMark、FF14ベンチ、そしてForza 7の3つのテストにおいて、Ryzen G環境にGT 1030を追加して再検証してみたのが下のグラフだ。

Ryzen G環境にGT 1030を追加した時の「3DMark」のスコアー
Ryzen G環境にGT 1030を追加した時のFF14ベンチのスコアー
Ryzen G環境にGT 1030を追加した時のForza 7のフレームレート(画質低設定)

 今回実施したテストはGeForce寄りかVega寄りかでかなり傾向が割れたが、Ryzen G環境にGT 1030を組み合わせると、Ryzen Gであまり奮わなかったベンチで高スコアーが出るようになる。CPUパワーのせいで微妙に結果が悪くなるが、スコアー差の大半はGPUのパフォーマンスであるということが確認できたはずだ。

 そしてメモリークロックの差でどの程度性能に影響が出るかについても疑問だ。メモリーは(当然ながら)高クロックになれば値段も高くなる。DDR4-2933あるいは3000が欲しいが、予算を絞りたいならDDR4-2400あたりで慎ましく自作した方が良いはずだ。

 そこでここでは同じメモリーモジュールに対し、BIOS上でメモリークロックを上げ下げし、それが各ベンチでどのような影響を及ぼすか調べてみた。

メモリークロックを変化させた時の「CINEBENCH R15」のスコアー
メモリークロックを変化させた時の「3DMark」のスコアー
メモリークロックを変化させた時のFF14ベンチのスコアー
メモリークロックを変化させた時のForza7のフレームレート

 どのベンチにおいても、メモリークロックを上げ下げすると、数%単位であるがスコアーが変化する。特にFF14ベンチでは、クロックの低いメモリーを使うだけでRyzen 5 2400Gが下位のRyzen 3 2200Gを下回ってしまった。

 FF14ベンチは特にメモリークロックが効くので、結果がやや誇張されている可能性もあるが、Ryzen Gを使うのであればなるべく高クロックメモリーを手に入れた方がよいということが分かったはずだ。

低予算自作に革命来たる。あとはドライバーの熟成が急務

 以上でRyzen Gのファーストレビューは終了となる。本当はもっと試したいこともあったが、BIOSが土壇場で更新されたため間に合わなかったのが残念だ。ただ評価用ドライバーは決して出来の良いものではなかったため、ドライバーやBIOSの熟成度が上がった段階で、機会があれば再チェックしておきたい。

 ドライバーやBIOSが荒削りな状況とはいえ、Ryzen Gのパフォーマンスは実に良好だ。確かにCore i5/i3とローエンドビデオカードの組み合わせにRyzen Gが完敗するケースはいくつか見られたものの、ビデオカードなしでできるシステムがここまで高パフォーマンスが出るのは驚愕としか言いようがない。

 Ryzen Gシリーズの登場によって、GT 1030やRX 550クラスの立つ瀬はなくなりそうだといってよい。もちろんAM4マザーのシェアを考えれば、ローエンドのビデオカードがなくなる訳はない。だがこれから低予算で軽いゲームが遊べるゲームを組もうと考えるなら、Ryzen Gシリーズを選ばない理由はない。低予算PC自作における革命的な製品といえるだろう。

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