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最新パーツ性能チェック ― 第228回

Ryzen 7 2700Xを速攻OCレビュー! 競合比較で見えてくる新Ryzenのポテンシャル

文● 清水貴裕 編集●ジサトラショータ

 みなさんごきげんよう!オーバークロック界の頂点(Pinnacle)を目指して日々奮闘しているオーバークロッカーの清水です。ダジャレが寒い?それはきっと液体窒素の使い過ぎで室温が下がったからです。

 さて、本日解禁の“Pinnacle Ridge”ことAMDの第2世代Ryzenプロセッサーですが、気になるのはそのオーバークロック耐性。プロセスルールが14nmから12nmに微細化したことが、どうオーバークロック耐性に影響を及ぼすのでしょうか。特に新Ryzenのブーストクロックの高さは印象的で、「Ryzen 7 2700X」のブースト時の最大動作クロックは4.35GHzと、前世代の「Ryzen 7 1800X」(4.1GHz)より250MHzも高くなっています。実際のところ、常温環境でRyzen 7 1800Xを4.35GHzまでOCするのはなかなか難しかったので、オーバークロック耐性には期待が持てると言っていいでしょう。

 この記事では、Ryzen 7 2700Xを使用した手動オーバークロック中心の検証を実施してみました。OCメモリーでのパフォーマンス向上具合やメモリーICとの相性検証、CPUクーラー交換による冷却力比較など、個人的に気になった部分を掘り下げています。なお、単体ではパフォーマンスが分かりにくいため、Intel「Core i7-8700K」を用意してのベンチマーク比較も行ってみました。定番ベンチマークから3Dゲーム、エンコード等において、両者のパフォーマンス特性を比較しています。ライバル製品との違いって、とても気になる部分ですよね。

今回のAMDプラットフォームの検証環境。写り込んでいる怪しいボンベは気にしないで下さい。
AMDプラットフォームの検証環境
CPUAMD「Ryzen 7 2700X」
マザーボードASRock「X470 Taichi」
ASRock「X470 Gaming K4」
CPUクーラーCRYORIG「A80」(280mmラジエター、14cmファン×2基)
メモリーG.SKILL「F4-3600C15D-16GTZ」(DDR4-2933で使用、8GB×2)
グラフィックスカード「Phantom Gaming X Radeon RX580 8GB OC」(Radeon RX580)
電源ENERMAX 「MaxTytan EDT1250EWT」(80PLUS TITANIUM、1250W)
グリスThermal Grizzly「Kryonaut」
OSWindows 10 Pro(64bit)
ケースIRIS OHYAMA「メタルラック」(耐荷重:1枚あたり約100kg)
電力計Electronic Educational Devices「Watts Up? PRO」
インテルプラットフォーム(比較機)の検証環境
CPUIntel「Core i7-8700K」
マザーボードASRock「Z370 Extreme4」
CPUクーラーCRYORIG「A80」(280mmラジエター、14cmファン×2基)
メモリーG.SKILL「F4-3600C15D-16GTZ」(DDR4-2666で使用、8GB×2)
グラフィックスカード「Phantom Gaming X Radeon RX580 8GB OC」(Radeon RX580)
電源ENERMAX 「MaxTytan EDT1250EWT」(80PLUS TITANIUM、1250W)
グリスThermal Grizzly「Kryonaut」
OSWindows 10 Pro(64bit)
ケースIRIS OHYAMA「メタルラック」(耐荷重:1枚あたり約100kg)
電力計Electronic Educational Devices「Watts Up? PRO」

オーバークロック設定の変更点は?

 さっそくオーバークロック耐性のチェック!といきたいところですが、まずはAM4プラットフォームにおけるオーバークロックの基本設定のおさらいからまいりましょう。結論から言うと、設定方法は第1世代のRaven Ridge時代から変わっていません。ですので、新型に買い換える人も安心です。

Ryzen 7 2700XのCPU-Z画面。定格設定状態だと、動作クロックが負荷に応じて細かく動きます。

 ただしX370マザーボードをすでにお持ちの方は、CPUだけを買い替えても、新たに実装されるブースト機能「Precision Boost Overdrive」は利用できないので注意が必要です。一方で、自動オーバークロック機能の「XFR 2」は300シリーズのマザーボードとX付きの第2世代Ryzenの組み合わせでも利用可能となっているようです。

今回使用したASRockの「X470 Taichi」(左)と「X470 Gaming K4」(右)。フェーズ数はTaichiが16で、Gaming K4が12と、オーバークロックを意識した設計となっています。

 ちなみに極冷編を除く全体的な検証には「X470 Gaming K4」を用いていますが、検証時のUEFI上でアンコア電圧のSOC Voltageの表記が別の名前になっていたため、UEFI画面のキャプチャー時は「X470 Taichi」を使用しました。

OC Modeの選択画面。

 400シリーズのマザーボードでは、メーカーオリジナルの設定と「AMD CBS Setting」というAMD側が用意した設定の2つが選択可能になっています。ここでは、メーカーオリジナル設定を選びます。

動作クロックと電圧の設定画面。

 メーカーオリジナル設定を選んだら、動作クロックとCPU電圧の設定を行います。AMDプラットフォームではCPU倍率が0.25倍刻みで設定可能となっていますので、メモリーやアンコア部分の動作クロックに影響を及ぼすベースクロックの設定をしなくても細かいチューニングが可能です。

メモリー設定の画面。

 メモリーの動作クロックがCPUの内部バスである「Infinity Fabric」の動作速度と同期しているRyzenシリーズでは、メモリーの動作クロックを引き上げることでしか内部バスのオーバークロックが出来ません。パフォーマンスに大きく影響する部分なので設定は必須です。

 ASRock製マザーボードの場合は、「OC Tweaker」タブのXMP設定画面で設定する方法と、AdvancedタブのAMD CBSから設定する方法の2種類があります。個人的には、後者は階層の深い部分にあって設定が見付けにくいので、XMP設定画面から動作クロックやアクセスタイミングを変更する方が簡単でお勧めです。

アクセスタイミングの設定画面

 レイテンシよりも動作クロックの方がパフォーマンスに影響するので、過度にタイトな設定は必要ありません。ただし、手動設定する事で数ランク上のクロックで動作させられる場合があるだけでなく、安定性が向上する場合もあるので、上級者の方は試してみる価値があると思います。

電圧の詳細設定画面。

 動作電圧は常用モードであるStabel Modeを選択するのが吉です。電圧の動作モードは常に一定値が入るFixed Mode、負荷時の電圧降下を抑えてくれるCPU Load-Line Calibrationは最も効果の少ないLevel 1がお勧めです。

 DDR4-3200を超えるオーバークロックメモリーを使用する場合は、アンコア電圧であるVDDCR_SOC Voltageを設定すると安定性が向上します。DDR4-3600MHzなどの高クロック製品を使用する場合であっても、1.2Vまでに抑えた方が耐久性を考えると安心できます。

 アンコア部分はかなりデリケートなので、まずは定格で様子を見て、安定しない場合に少しずつ昇圧して変化を探るようにするのがセオリーです。

 高クロックでのベンチマーク完走を狙う場合は、CPU OVPやCPU OCPなどの保護機能を無効化した方がいい場合が多いです。安全性とのトレードオフとなるので、リスクを理解した上で設定しましょう。

OC Modeを選択すると、クレイジーなOCer向けの設定が可能に……

 余談ですが、極冷オーバークロックをターゲットにしたOC Modeを選択するとCPU電圧は最大で2.5Vまで設定可能になりました。ASRock専属オーバークロッカーのNickshihさんに確認したところ、「クレイジーなオーバークロッカーのために圧倒的な電圧設定を可能にしたぜ」というコメントを頂きました。これは液体窒素を家に常備している僕のみたいな人向けの機能なので、良い子は設定したらダメ絶対。常温環境でやると火が出る案件です。

省電力機能の設定画面
Core Performance Boostの設定画面

 また、動作クロックが振れすぎるとオーバークロック時に不安定になる場合があるので、省電力機能を無効にして動作クロックが固定されるように設定します。今回は、Cool'n'QuietとC6 Mode、Core Performance Boostの3つを無効化すると動作クロックが固定されました。意外と見落としがちな設定なので、既にAMDプラットフォームを使っている人もチェックしてみて下さい。

 以上でオーバークロック設定は完了です。ここでの最大のコツは、一気に電圧や動作クロックを上げすぎないこと。まずはCPUの定格電圧からスタートして、CPU倍率を0.25倍刻みで上げていき、ベンチマークを走らせて安定性を確認する方法が失敗が少なくてお勧めです。

 限界に達した後は、0.2V刻みで昇圧して動作クロックの伸びをチェックすると良いでしょう。昇圧で伸びなくなるポイントが絶対にあるので、そこから先の深追いをしなければ事故率もグッと下がります。

気になるオーバークロック耐性はいかに?

42倍設定でのCINEBENCH R15を実行結果。

 さて、ここからは実行編です。設定解説時に作った4.2GHzの設定でWindowsを起動し、CINEBENCH R15を実行したところあっさりとクリアーしました。CPU温度も64℃までしか上がらず、動作もかなり安定していたので、今回の個体では常用が狙えそうなラインだと思います。

 一方で、やはり気になったのは起動中のベースクロックの振れ幅です。100MHzで安定するのではなく、99.7〜99.8MHzまで下振れしてしまう現象が確認されました。パフォーマンスに僅かながら影響する部分なので、今後のBIOS更新に期待したいと思います。

42.75倍でのCINEBENCH R15実行結果。

 最終的に42.75倍設定での完走に成功し、マルチスレッドスコアは1901cbを記録。CPU温度が75℃までしか上昇しておらず、マザーボードの電源回路の発熱も少なかったので、まだまだ余裕があるように思えましたが、これより上ではベンチマークが完走しませんでした。

 複数の個体を試さないと結論は出せませんが、今のところ常温環境での5GHz超えが狙えるほどのオーバークロック耐性はない印象です。シュリンクしたとは言え、オーバークロック時の挙動は第1世代と同じ傾向にあるようですね。

無負荷時の最大動作クロック

 オーバークロック機能を搭載したASRockのソフトウェア「F-Stream」を使って無負荷時の最大動作クロックを確認したところ、4.439GHzまでのオーバークロックに成功しました。CPU電圧の設定スライダーが右に振り切っており心臓に悪いです。覚悟を決めてこの状態で「CINEBENCH R15」を実行してみましたが、当然の如くブルースクリーンになりました。

 この検証から分かる通り、Ryzen 7 2700Xの4.35GHzという最大ブーストクロックは、限界動作クロックの約100MHz下となっていて、かなり攻めた値になっていることが分かります。メーカー純正チューンによって、僕がオーバークロッカーとしての職を失う日が近付いている事を感じさせます。引退した暁には地元の岡山県でラーメン屋を開く夢があるので、その日まで頑張りたいと思います。(泣)

ベンチマークでライバルと徹底比較!

 新Ryzen登場で誰もが気になることといえば、ライバルのアイツとのパフォーマンス比較。ということで、Core i7-8700Kとの比較を実施してみました。Ryzen 7 2700Xは定格と4.2GHz、Core i7-8700Kは定格と5.0GHzに設定しています。

「CINEBENCH R15」のグラフ

 結果を見てみると、シングルスレッド性能は動作クロックの高いCore i7-8700Kの圧勝ですが、マルチスレッド性能は定格のRyzen 7 2700Xが5GHzのCore i7-8700Kよりも約8.6%高速なスコアーを記録しました。コア数の多さが大きなアドバンテージとなる動画編集やクリエイティブ系の用途においては、このマルチスレッド性能の高さが活きてきそうです。

 Ryzen 7 2700Xの定格状態でのベンチマーク中の動作クロックは、マルチスレッドテスト中は4GHz前後、シングルスレッドテスト中は4.0〜4.35GHz前後で推移していました。シングルスレッド性能のスコアーが定格と4.2GHzで一緒なのは、ブーストクロックが上述した値で振れているため、平均値が4.2GHz前後になるからだと思われます。シングルスレッド性能を定格と同等に維持するためには、最低でも4.2GHzまでオーバークロックする必要があるとも言えます。

「PCMark 10 v1.0.1493」のグラフ。

 「PCMark 10」のスコアーはCore i7-8700Kの圧勝。このベンチマークはシングルスレッド性能が重要となるようで、動作クロックの高いCPUの方が良いスコアーが出るようです。

「3DMark v2.4.4264」のFire Strikeテストのグラフ

 「3DMark」Fire Strikeテストのスコアーは、定格状態ではRyzen 7 2700Xが有利ですが、オーバークロックした場合は5.0GHzのCore i7-8700Kがトップとなりました。マルチスレッド性能を計測するPhysics Testの結果は8コアのRyzen 7 2700Xが有利ですが、シングルスレッド性能の高さがフレームレートに影響するGraphics Testにおいては、動作クロックの高いCore i7-8700Kが高いスコアを記録しています。

 注目したいのは、Ryzen 7 2700Xを全コア4.2GHzにオーバークロックした際に、Graphics Testのスコアが約0.5%低下している点です。一部の処理においては最大4.35GHzまでブーストする定格状態の方が有利な場合もあるようです。

「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」のグラフ。画質が最高品質、解像度がフルHD(1920×1080ドット)、フルスクリーンの設定で計測を行いました。

 「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」も同じようにCore i7-8700Kが有利な結果になりました。このベンチマークも動作クロックの高さが効いているようです。ただし、平均フレームレートで見ると定格状態のCore i7-8700Kが75.121fpsだったのに対し、Ryzen 7 2700Xは74.060fpsと僅かな差です。

 Ryzen 7 2700Xのスコアは定格とオーバークロック状態でほぼ同じスコアを記録しています。このベンチマークにおいては、無理にオーバークロックする必要はないほどに定格状態が完成されている印象です。

「Rainbow Six Siege」のグラフ設定は、画質が最高設定、解像度がフルHD(1920×1080ドット)という設定で計測しました。最少値と最大値は計測ごとのブレがかなり大きいため、平均値のみを採用しています。

 実ゲームとしてはベンチマーク機能が付いている「Rainbow Six Siege」を使用しました。僅かな差ではありますが、動作クロックの高さが平均フレームレートに影響するようで、Ryzen 7 2700XとCore i7-8700Kの差は定格時で0.9fps、オーバークロック時で1.4fpsとなりました。他のタイトルでどうなるかは分かりませんが、数値的にはプレイ上体感できるほど の違いは出ない気がします。

「TMPGEnc Video Mastering Works6」のグラフ。素材はドライブレコーダーで撮影した520MBのフルHD解像度のMOVファイルで、これをMP4ファイルへとエンコードする際の処理時間を計測しました。

 「TMPGEnc Video Mastering Works6」を使用して、H.264形式でのエンコードテストも実施しました。マルチスレッド処理のエンコードだけあって、Ryzen 7 2700Xが全体的に有利な結果となっており、定格状態で5.0GHzにオーバークロックしたCore i7-8700Kと同じタイムを記録しているのは驚きです。この性能を実現するとして、Ryzen 7 2700Xは定格なので付属のリテールクーラーでも問題ありませんが、Core i7-8700Kは1万円以上するハイエンドクーラーが必要となっているので、コストパフォーマンスではRyzenに分があるでしょう。

CPU温度のグラフ

 各テスト中のCPU温度も取得してみました。プラットフォームが違うので単純に比較できませんが、CINEBENCH R15の実行中を覗いて、オーバークロック状態のRyzen 7 2700XがCore i7-8700Kの定格状態よりも低い温度を記録しています。

 これはCPU内部の熱伝導材がグリスではなくハンダな点が影響していると推測出来ます。昇圧しているのにも関わらずCPU温度の上昇が少ないのは、ハンダの熱伝導率の高さが効いているようです。

 定格からオーバークロック設定した際のCINEBENCH R15実行中の温度上昇幅は、Ryzen 7 2700Xが6℃なのに対し、Core i7-8700Kは18℃も上昇しています。データからも読み取れる通り、OCするにあたってはハンダ採用のCPUだと安心感があります。

PCの消費電力のグラフ

 消費電力については、マルチスレッド処理の場合はオーバークロックでスコアーが向上する分、電力が増えてもトレードオフとしては悪くありません。しかし、パフォーマンスが僅かにしか向上していない「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を見ると、消費電力は26W増えています。使うソフトやゲームタイトルによっては、オーバークロックによってワットパフォーマンスの悪化が懸念されるので、4.2GHz前後での常用は消費電力値とパフォーマンス向上のバランスをしっかりとチェックした方が良さそうです。

CPUクーラー選びはどうする?

 Ryzen 7 2700XにはRGB LEDが搭載された新型CPUクーラー「Wraith Prism」が付属しています。付属品とは言いながら、銅製ベースに4本のヒートパイプを搭載するという非常に豪華なCPUクーラーで、第1世代の最上位モデルにはCPUクーラーが付属していなかったこともあり、お得感があります。

RGB LEDがかっこいい新型クーラー「Wraith Prism」
「Wraith Max」との違いはヒートパイプが直接触れるダイレクトタッチ式ベースになっている点。グリスはあらかじめ塗布されています。

 しかし我々が気になるのは冷却力!ということで、4種類のサードパーティー製CPUクーラーと比較検証してみました。負荷テストには「Prime95 Small FFTs」を使用し、10分間連続で負荷を掛けた際の最大CPU温度を計測しました。

出演者一覧。後列左の怪しい銅の塊は記事の最後で出てきます。
CPUクーラー検証の使用製品一覧
AMD「Wraith Prism」(10cmファン、トップフロー)
サイズ「虎徹 MarkII」(12cmファン、サイドフロー)
CRYORIG「H5 ULTIMATE」(14cmファン、サイドフロー)
CRYORIG「R1 ULTIMATE」(14cmファン×2基、サイドフロー)
CRYORIG「A80」(280mmラジエター、14cmファン×2基)
CPUクーラーの温度グラフ

 Prime 95と言えば激重で有名なストレステストソフトですが、CPU付属の「Wraith Prism」でも最大85℃に抑えているのは評価出来ます。ただし、ファンの回転数が上がった際の動作音は、10cmファンだけあって少し耳につく印象です。

 定格状態ではCPUの発熱が少ないからか、エントリー帯のサイズ「虎徹 MarkII]とミドル帯のCRYORIG「H5 ULTIMATE」、ハイエンド帯のCRYORIG「R1 ULTIMATE」の3製品で温度差の開きが少ない結果になりました。

 一方、動作クロックを4.2GHz、CPU電圧を1.45Vに設定した状態では、280mmラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーのCRYORIG「A80」のみが10分間のストレステストをパス。CPU温度が85℃を超えると動作が不安定になりやすくなり、空冷クーラーだと30秒も経たないうちにフリーズしてしまいました。いかにして負荷時のCPU温度を70℃台に保てるかが、オーバークロック成功のキーとなりそうです。

 クーラーのアップグレードに関しては、オーバークロック状態での4.2GHz超えでの安定常用を狙う場合は、280mmクラス以上の大型ラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーを選んだ方が良いと思われます。また、大型の空冷クーラーはグラフィックスカードの熱を吸いやすいという弱点があるので、グラフィックスカードが高温になるゲーミングPCにおいても、簡易水冷クーラーを選ぶメリットがあると言えます。

気になるOCメモリーの効果を徹底検証

 OC設定編でお話した通り、Ryzenシリーズではメモリーの動作クロックがCPUの内部バスである「Infinity Fabric」の動作速度と同期しており、この速度がパフォーマンスに直結しています。メモリーの動作クロックを引き上げることでしか内部バスのオーバークロックができないのです。ということで、DDR4-2133MHzからDDR4-3600MHzまでの全てのメモリー対比で、メモリーOCがどれほどのパフォーマンス向上に繋がるのか検証してみました。

 使用したメモリーはSamsung B-dieを搭載するG.SKILLの「Trident Z(F4-3600C15D-16GTZ)」で、レイテンシはCL16を基本に設定。DDR4-2133MHzとDDR4-2400MHz時のみ、CL16設定で動作クロックとのバランスが崩れてスコアーが大幅に低下する現象が発生したためCL15としました。ベンチマークにはCINEBENCH R15を使用し、CPUクロックはスコア計測に影響を及ぼさないようにするため、全コア4.2GHzに固定しています。

メモリーのオーバックロック時のグラフ

 基準となるのはCPUのメモリーコントローラが対応しているDDR4-2933MHzのマルチスレッドスコアです。DDR4の初期や低価格帯の製品に多いDDR4-2133MHzのスコアーはDDR4-2933MHz時のよりも約2.8%低い値を記録しています。これはCPUの動作クロックに換算すると、30〜40MHz程のスコアー差になります。動作クロックの低いメモリーを流用する場合は、相性だけでなく性能の面でもデメリットがあると言えます。

 DDR4-3200MHzまでの製品はDDR4-2666MHzの製品との価格差が少ない場合があるので、予算内でなるべく高いクロックの製品を選ぶのが良いでしょう。

 今回テストした結果では、第1世代のRyzenよりもクロックの高いオーバークロックメモリーの動作が安定している印象です。DDR4-3600MHzクラスのIntelプラットフォーム向けのオーバークロックメモリーがXMPを読み込んだだけで安定動作するのは、個人的にかなり高評価です。AMDプラットフォームでは、Intelプラットフォームよりもメモリーオーバークロックでパフォーマンスを向上させやすいので、メモリー選びにこだわってみるのは良い選択でしょう。

メモリーの相性はどうなった?

 第1世代のRyzen発売時に大きな話題となったメモリーの相性問題。第2世代での挙動が気になったので、手持ちのDDR4メモリーを使って検証してみました。テストしたのは全て片面実装のモジュールで、2枚挿しのみです。

メモリー相性一覧
メーカー製品名メモリーIC容量動作クロックアクセスタイミング起動CINEBENCH R15備考
CORSAIRCMD16GX4M4B3200(2枚で使用)Samsung E-die4GB×2枚DDR4-320016-18-18-36-54-1T××
CORSAIRCMD16GX4M4B3400(2枚で使用)Samsung E-die4GB×2枚DDR4-340016-18-18-36-54-1T××
CrucialBLS8G4D240FSCMicron8GB×2枚DDR4-240016-16-16-39-55-1T1765cbネイティブ2400
G.SKILLF3-3000C15Q-16GRR(2枚で使用)Hynix MFR4GB×2枚DDR4-300015-15-15-35-50-1T××
G.SKILLF3-3300C16Q-16GRKD(2枚で使用)Hynix MFR4GB×2枚DDR4-330016-16-16-36-52-1T1780cb3200で起動
G.SKILLF4-2400C15Q-32GTZR(2枚で使用)Samsung B-die8GB×2枚DDR4-240015-15-15-35-50-1T1765cb非ネイティブ2400
G.SKILLF4-3200C14D-16GTZRXSamsung B-die8GB×2枚DDR4-320014-14-14-34-48-1T1786cbRyzen対応モデル
G.SKILLF4-3600C15D-16GTZSamsung B-die8GB×2枚DDR4-360015-15-15-35-50-1T1794cb
G.SKILLF4-4400C19D-16GTZKKSamsung B-die8GB×2枚DDR4-440019-19-19-39-58-1T××無謀だった

 定番のSamsung製のB-dieを搭載する片面8GBのモジュールは、ネタ枠のDDR4-4400MHzのモジュールを除いてXMP設定であっても安定動作しました。

 一方で、Samusung製のE-dieや、Hynix製のMFR等の、DDR4初期から何年か採用されていたICを搭載するモジュールは、XMP動作でほとんどが不安定でした。唯一、G.SKILLのF3-3300C16Q-16GRKDだけがXMP設定で動作しましたが、ほとんどの物はXMP設定では動作が厳しいと思われます。こちらはHynix MFRの終息間際の製品で動作クロックが高く、アクセスタイミングとのバランスが良いことが影響している可能性があります。

 第1世代のRyzenの最初期に見られたようなDDR4ー2133MHzでさえも起動出来ないといった症状はなく、DDR4-2133MHzであれば古いモジュールでも安定動作するので、流用も現実的と言えるでしょう。

 ただし、両面実装や4枚挿しの環境ではまた違ったデータが得られるはずなので、今後詳しく検証してみたいです。

極冷オーバークロック時の挙動はいかに?

逸般的な自作PC(逸脱の意)

 深夜販売のオーバークロックデモの準備をしていたので、エクストリームオマケ編として極冷オーバークロックの情報も少しお届けしたいと思います。

5.55GHzでのCINEBENCH R15実行結果。

 最終的に5.55GHzでCINEBENCH R15のマルチスレッドテストをパスし、2495cbというスコアを記録しました。この時の温度は-194℃でCPU電圧は1.8Vですが、その後はかなり粘っても2500超えは達成できませんでした。これはイベントで達成せよとのオーバークロックの神様の思し召しなのかもしれません。

 第1世代のRyzenでは零下に落ちるとメモリーコントローラーの耐性ダウンという持病がありましたが、Ryzen 7 2700Xではその現象が発生しませんでした。常温環境だけでなく極冷環境でもメモリーコントローラーの挙動が改善されたようです。

5.75GHz時のCPU-Z画面。

 無負荷時の最大動作クロックは5.75GHzを達成しました。この時の温度は-194℃でCPU電圧は1.9Vです。心の中の悪魔に支配された右腕がマウスを動かして一時は2.0Vまで昇圧されましたが、耐性には変化がありませんでした。悪魔はさらに2.5V設定を試みようとしましたが、イベント前に壊すわけにはいかないので深追いを止めました。(笑)

定格スペックの高さに驚き

 今回検証してみて感じたのが、定格状態での完成度の高さです。僕が手動設定する限界クロックの約100MHz下までブーストするのには正直驚きました。とはいえ、マルチスレッド処理では手動での全コアオーバークロックが活きてくるので、チューニングの余地も十分にあります。

 熱伝導率の高いハンダがCPU内部の熱伝導材として使われているので、変な温度の突き上げもなく扱いやすいので、常用オーバークロック設定は作りやすい印象です。ただし、4.2GHzを超えるような高クロック常用は、ハイエンドの大型ラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーを使う必要があるのでPCケースを選びそうです。

 メモリーまわりの挙動で、オーバークロックメモリー使用時の安定性が向上している点と、古いモジュールとの相性が緩和されている点も評価したいポイントです。DDR4-2133MHzだと速度は劣りますが、普通に使うぶんには問題は全くないのでメモリー流用の敷居は下がったと思います。

 今回は時間が無く試すことが出来なかった他のCPUの挙動も期待できるので、引き続き多くのモデルを検証してみたいと思います。

●関連サイト

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