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最新パーツ性能チェック ― 第227回

“Pinnacle Ridge”こと第2世代Ryzenで、CPUパワー競争はさらに過熱する

文● 加藤勝明 編集●ジサトラショータ

 2018年4月19日、AMDは開発コードネーム“Pinnacle Ridge”の名で知られていた新CPU「Ryzen 2000」シリーズの販売を開始した。2017年に自作PC業界に大激震をもたらしたRyzen 1000シリーズの後継というべき製品で、14nmプロセスのZenを改良し、12nmLP(LP:Leading Performanceの略)プロセスにシュリンクした「Zen+」を採用している。先ごろ発売されたVega(GPU)入りのAPU「Ryzen G」シリーズも2000番台の番号が振られているが、こちらのCPU部は14nm+プロセスである。そこで本稿では、新しいZen+ベースのCPUを“第2世代Ryzen”と呼ぶことにしたい。

 今回発売された第2世代Ryzenは8コア16スレッドの「Ryzen 7 2700X」「同2700」と6コア12スレッドの「Ryzen 5 2600X」「同2600」の4モデル。価格は下表の通り、ライバルであるCoffee Lake-Sベースのインテル製CPUを強く意識した設定となっている。特に最上位のRyzen 7 2700XはCore i7-8700Kの北米価格より1ドル安く設定されており、第1世代Ryzenで成功を確信したAMDが、第2世代でライバルを追い落としにきたという強い意志を感じさせるものになっている。諸般の事情で国内価格はCore i7-8700Kよりわずかに高い値段設定となったが、とはいえ今回はRyzen 7 2700Xも含め、全モデルにCPUクーラーが付属する。K付きCore i5/i7はCPUクーラー別売であることを考えると、特別割高であるとは言えない価格設定だ。むしろThreadripperやRyzen 1000シリーズの状態を考えると、かなり頑張った結果といえるだろう。

第2世代Ryzenの価格(原稿執筆時点では19日の予約販売価格)を中心に価格をまとめてみた。Ryzen 1000シリーズのうち1600より下は価格が改定され、今後も販売が継続される。インテル製CPUは実売価格だが、Ryzen 1000シリーズおよびThreadripperの価格は第2世代Ryzenの“自作為替レート”の差をみるために国内初出時を掲示している

 今回編集部では、第2世代Ryzen評価キットに含まれていたRyzen 7 2700XおよびRyzen 5 2600Xに加え、独自ルートで2700および2600の無印モデルも入手。第2世代Ryzenがどの程度のポテンシャルを持っているのか、さまざまなベンチマークを通じて検証していきたい。

↑Ryzen 7 2700Xのパッケージ。型番以外は従来のものと共通
↑今回入手したCPUの表面と裏面。こちらも従来の製品からほとんど変化していない
↑Ryzen 7 2700Xには“Wraith Prism”が、Ryzen 5 2600XにはLED機能のない“Wraith Spire”がそれぞれ同梱される

価格以上のインパクトがある第2世代Ryzen

 最初に第2世代Ryzenのスペックをチェックしてみよう。12nmLPプロセスに移行したことで、前世代の弱点のひとつであった動作クロックは引き上げられたが、ブースト時最大クロックの刻みが500MHzになっている。

 今回はプロセスシュリンクとクロック向上がメインなのか、CPUの基本設計は変わっていない。ソケット形状もAM4を継承しており、AGESA 1000a以降のBIOSを搭載した300シリーズマザー、あるいは新しいZ470マザーで運用できる。全モデル倍率ロックフリーである点も継承済みだ

 ちょっと気になるのは、前世代のナンバリングでは「Ryzen 7 1800X」が最上位だったにも関わらず、今回の最上位が「Ryzen 7 2700X」となった理由だ。AMDの担当者に訊ねたところ「インテルの最上位で使用される“700”のナンバーに合わせた」という見解が得られたが、個人的な予想としては、インテルから今年登場することがほぼ確定路線の8コア版Coffee Lake-Sが実際にリリースされた場合、対抗馬として高性能な800ナンバーのモデルが登場する可能性はあると考えている。

↑第2世代Ryzenのスペック
↑第2世代Ryzenのスペック
↑「GPU-Z」でRyzen 7 2700Xおよび2700の情報を拾ってみた。8コア16スレッドであること、L2やL3キャッシュの容量は前世代から変わらず
↑同様にRyzen 5 2600Xおよび2600の情報

 さて、第2世代Ryzenの技術的な部分については、ひとまずポイントとなるところだけをまとめて解説しよう。

ポイント1:メモリーまわりの改善

 第2世代Ryzenではメモリーまわりに大きな改善が加えられた。先代Ryzenでは最高DDR4-2666まで対応であったものが、Ryzen Gと同じDDR4-2933に引き上げられている。

 ただし、無条件で最大クロックで動かないのはこれまで通りで、DDR4-2933動作には「シングルランクのモジュール2枚」かつ「マザーボードの基板が6層(以上)」が条件となる。とはいえ検証してみたところ、良質なOC版メモリーモジュールとマザーボードを使えば、4枚挿しでもDDR4-2933動作は問題なく達成できた。

 価格優先のマザーボードでは4層基板の製品が主流なので、フルスペックでの動作を希望するならしっかり選ぶ必要がある。ハイエンド志向の人には別に気にするようなことでもない要件だが、低予算で組みたい場合は、メモリーの動作クロックに制約がかかる可能性があることは頭に入れておきたい。

第2世代Ryzenのメモリー構成とクロックの関係(レビュワーズガイドから作成)。メモリーがシングルランクで2枚、かつマザーが6層基板ならDDR4-2933まで対応するが、マザーが4層ならDDR4-2666までとなる

ポイント2:新機能「Precision Boost 2」&「XFR2」

 第2世代Ryzen特有の新機能は、CPUのクロックを負荷状況等により引き上げる“Precision Boost”と“XFR”の改良だ。それぞれ“Precision Boost 2”と“XFR2”と呼ばれる。

 まずPresicion Boost 2だが、これはRyzen Gシリーズに搭載されたものと同一だ。負荷のかかったアクティブなコアが2コア以内なら“Precision Boost”、3コア以上だと“All-Core Boost”という2つのステートを持ち、SenseMIテクノロジーを利用して得られた発熱や消費電力等の情報をもとにCPUのクロックを25MHz単位で細かく調整する。先代Precision BoostではAll-Core Boostになるとベースクロック付近に落ちてしまうが、Precison Boost 2ではAll-Core Boostになってもギリギリまで高いクロックを維持するよう務める。All-Core Boostになってもすぐに熱や電力が限界になることはない、という知見が得られたからこその改善なのだ。

↑Ryzen 7 1800Xと2700XでOCCTを実行する論理コアを1から16まで増やした(横軸)時、実クロック(縦軸)はどう変化するかを示した図。Precision Boost 2を持つ2700Xは徐々にクロックが落ちていくが、1800XはAll-Core Boost状態に入ると一気にクロックが下がってしまう(レビュワーズガイドより抜粋。以下同様)

 そしてもう一つのXFR2は、Precision Boost 2を補強する機能。Ryzenには温度や消費電力がこの程度なら◯◯MHzブーストしてもどの環境でも問題なく動作する、という内部的なテーブルがあり、それに従ってPrecision Boost 2はCPUの動作クロックにブーストをかける。だが現実にはこのテーブルは安全側にマージンが確保しており、実際にはもう少しブーストしても大丈夫な領域がある。XFR2は温度状態を詳しくチェックし、そのマージンを使ってさらなるブーストをかけるというものだ。要するに、CPU温度を下げるほどXFR2で得られる性能ゲインも期待できるということになる。

↑Ryzen 7 2700Xを室温32℃、TDP95W対応の並性能のクーラーで冷やした時を100とした時、同じ32℃でもWraith Prismを使えばCINEBENCH R15のスコアーは4%増、クーラーをNoctuaの高性能クーラーにして“室温20℃環境で”運用すると7%に増えた、とAMDは謳っている

 Precision Boost 2もXFR2も、適切にマシンをセットアップすれば特別な設定なしで動作する。後で紹介する検証環境では、これらの機能を選択的にオン・オフするBIOS上の設定は確認できなかった。

ポイント3:さらに限界へ挑む「Precison Boost Overdrive」

 Precision Boost 2とXFR2をさらに強化する機能「Precision Boost Overdrive」は、第2世代Ryzenの新機能だ。Precision Boost 2とXFR2が発動した状態よりさらにクロックを高い状態に保つというもので、「Ryzen Master」で有効化して利用する。こちらは型番に「X」がつく2モデルのみ利用可能だが、現段階では“Future feature in development”となっており有効化させることはできない。後日対応版のRyzen Masterが出たら詳しくチェックすることとしたい。

↑恐らくPrecision Boost Overdriveはこういうものだろう……という想像図。第2世代RyzenはPrecision Boost 2でクロックがブーストされるが、XFR2とPrecision Boost Overdriveを使えばさらに上積みできる
↑Ryzen Masterはv1.3以降で第2世代Ryzenに対応する。X470マザー環境だと、中央の“Precision Boost Overdrive”ボタンが反応するが、原稿執筆時点のビルドでは“Future feature in development”と出るだけで反応しない。X370だとこのツールチップ自体が出ないので、X470マザー特有の機能と考えられる

検証環境は?

 それでは今回の検証環境を紹介しよう。前述の通り19日に発売された第2世代Ryzen全4モデルと、インテルのCore i7とi5から1モデルずつ、さらに初代Ryzenからも2モデル、合計8CPUを横並びで比べてみる。Ryzen 1000シリーズでは論理コア数でインテル製CPUを圧倒したものの、クロックが上がりきらないことやZenが持つボトルネックのおかげで“マルチスレッドは速いがシングルスレッドは遅い”、“CGレンダリングやH.264のエンコードは良いがゲームは駄目”という評価があったが、第2世代Ryzenはこれを覆せるのだろうか?

 今回Ryzen環境のマザーはZ470で統一、メモリークロックは各CPUの定格に合わせてある。即ちRyzen 1000シリーズとCore i5/i7はDDR4-2666、第2世代RyzenはDDR4-2933とした。インテル環境も表記していない部分は全て共通のパーツを使用している。

AMDプラットフォームの検証環境
CPUAMD Ryzen 7 2700X(8C16T、3.7GHz〜4.35GHz)、AMD Ryzen 7 2700(8C16T、3.2GHz〜4.1GHz)、AMD Ryzen 5 2600X(6C12T、3.6GHz〜4.25GHz)、AMD Ryzen 5 2600(6C12T、3.4GHz〜3.9GHz)、AMD Ryzen 7 1800X(8C16T、3.6GHz〜4GHz)、AMD Ryzen 5 1600X(6C12T、3.6GHz〜4GHz)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)
CPUクーラーWraith Prism
メモリーG.Skill F4-3200C14D-16GFX(DDR4-3200 8GB×2、DDR4-2933または2666で運用)
グラフィックスカードASUSTeK ROG-STRIX-GTX1080TI-O11G-GAMING(GeForce GTX 1080Ti)
ストレージIntel SSDPEKKW512G7X1(NVMe M.2 SSD、512GB)
電源Silverstone SST-ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OSWindows 10 Pro 64bit版(Fall Creators Uptade)
電力計ラトックシステム REX-BTWATTCH1
インテルプラットフォーム(比較機)の検証環境
CPUIntel Core i7-8700K(6C12T、3.7GHz〜4.7GHz)、Intel Core i5-8600K(6C6T、3.6GHz〜4.3GHz)
マザーボードGIGABYTE Z370 AORUS Gaming 7(Intel Z370)
CPUクーラーEnermax ETS-N31
↑今回の検証はASUSTeK製のX470マザー「ROG STRIX X470-F GAMING」を使用している。チップセットのヒートシンクにCDの表面のような虹色に光る加工がしてある、今期も売れ筋上位が予想されるモデルだ
↑Spectre/Meltdown対策も行った上でテストを行った。左がIntel環境、右がRyzen環境となっている。Ryzen環境はまだBIOSの提供が遅れているようだが、OS側でセキュリティホールを塞いだ状態

Ryzen 7 2700Xが圧倒的な伸びをみせる

 いつものように定番のCPUベンチマーク「CINEBENCH R15」のスコアー比べから始めよう。同じ8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xと1800Xの違いはもちろんだが、シングルスレッド性能でダントツの強さを誇るCore i7-8700Kにどこまで食らいつけるかに注目したい。

↑「CINEBENCH R15」のスコアー

 マルチスレッドテストで8コア16スレッドのRyzen 7が強いのは既に分かっていたことだが、12nmLPプロセスでクロックを上げた第2世代Ryzenのパワーは凄まじい。特にRyzen 7 1800Xに対する2700Xのスコアーの伸びは驚異的だ。下位モデルのRyzen 7 2700とのスコアー差が大きいのは、クロックが高いのはもちろんだが2700XのTDPが105Wと大きく、XFR2を活かしやすいからだと考えられる。

 一方、6コア12スレッドCPUのペア(Ryzen 5 2600X/2600 vs Core i7-8700K)で見ると、RyzenはまだCore i7-8700Kに追いつけていない。同コア数CPU対決なら、1コアあたりの性能が高いインテルが優勢ということだ。

 シングルスレッド性能はCore i5/i7が相変わらず強い。だが、Ryzen 7 2700Xはシングルスレッドでも178ポイントというスコアーを出しており、第1世代Ryzenに比べれば格段に強化されていると言える。シングルの弱さが指摘されてきたRyzenだが、ここへ来てDevil's Canyon(Core i7-4790K)並のシングルスレッド性能に仕上げてきた点は多いに評価すべきだろう。2700や2600等のXなしモデルはそれなりにシングルスレッドも遅いが、X付きであれば、Haswell以降のCore i5/i7をリプレースするに足るパフォーマンスが得られるだろう。

 もう少しマルチスレッド性能が重視されるベンチマークで力比べをしてみよう。まずはCGレンダラーベースのベンチマーク「V-Ray Benchmark」を利用する。CUDAを利用したモードもあるが、ここではCPUのみを使ったレンダリング時間を比較する。

↑「V-Ray Benchmark」のレンダリング時間

 当然だが、CINEBENCHのマルチスレッドスコアーが高いCPUほど短時間で処理が終わる。唯一70秒台で処理を終えられたRyzen 7 2700Xは、CG作成者にとっては最強のコスパを発揮するCPUと言って間違いない。この差ならRyzen 7 1800Xからの乗り換えも検討すべきだろう。とはいえCINEBENCHでも判明した通り、同じ6コア12スレッドで比較した場合はCore i7−8700Kの方が断然速い。この点はCoffee Lake-Sのクロックの高さが勝利をもたらしたと言うべきだろう。

 動画のエンコード作業もマルチスレッド処理がカギになる。そこで「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を利用し、再生時間3分のAVCHD動画をそのままMP4形式に変換する時間を計測した。エンコーダーはx264(H.264)およびx265(H.265)を利用し、それぞれ2パスでエンコードした。ビットレート等のパラメーターはソフト側の標準設定のままにしている。

↑「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を利用した動画エンコード時間

 このベンチの場合は、H.264とH.265で大きく傾向が異なる。まずH.264の場合はV-Rayとほぼ同じ結果が出ており、コア数が多くクロックの高いCPUから順次処理を終えていく。この点だけ見れば第2世代Ryzen、特に最上位の2700Xのパフォーマンスは抜群だ。

 だがH.265を利用すると、一転Core i7-8700Kが最速、6コア6スレッドのCore i5-2600KがRyzen 7 2700より速いという結果が得られた。この傾向は先代Ryzen 1000シリーズと同様で、H.265の処理(AVX2周り)がRyzen全般にとって不利なものになっているからと考えられる。実行するコードによってはこういう差も付く、という程度に考えておきたい。

 今度は軽めの処理も交えた総合的なパフォーマンスを「PCMark10」でチェックしてみよう。テストは全てのワークロードを実行する“Extended Test”を実行する。総合スコアーだけでは得手不得手が分かりにくくなるので、ワークロード別のスコアーも比較した。

↑「PCMark10」Extended Testの総合スコアー
↑「PCMark10」Extended Testのワークロード別スコアー

 このテストではコア数が多くシングルもマルチも満遍なく速いCore i7−8700Kが総合スコアーでトップに立ち、続いてRyzen 7 2700X、Ryzen 5 2600Xとクロックの高いモデルが続く。8コア16スレッドのRyzen 7 2700のスコアーが奮わないのは、TDPを65Wに抑えるためにクロックを相当抑えているためだろう。

 ワークロード別スコアーを見ると、CPUの特性がもう少し詳しく分かってくる。総合スコアートップのCore i7−8700Kがダントツに強いのはゲーム性能(Gaming)とオフィス系(Procuctivity)および軽作業(Essentials)の3つ。いわば、小回りの効くクロックが高いCPUが高く評価されているわけだ。では第2世代Ryzenはというと、CGレンダリングやビデオ編集等のマルチスレッド処理の多いDigital Contents Creationが良いスコアーを出している。ただし、Core i5/i7に対し僅差で買っているという点を考えると、シングルスレッド性能の弱さが伸び悩みの理由と考えてよさそうだ。

 ここでもう少しクリエイティブ系の処理性能を確認しておこう。今回は200枚のRAW画像(6000×4000ドット、NEF形式)を「Lightroom Classic CC」に読み込み、DNG形式に変換する時間と最高画質のJPEG画像に書き出す時間をそれぞれ計測した。JPEG書き出しの際は“スクリーン用、標準”のシャープネスを適用している。シャープネス処理が以外とCPUに負担をかけるため、コア数の多いCPUが有利になる。

↑「Lightroom Classic CC」で200枚のRAW画像を処理した際の時間

 ここでも処理の内容により結果の傾向が若干異なる。CPU負荷の低いDNG変換では、シングルスレッド性能が高いCore i5/i7がRyzenを抑えてしまう。しかしマルチスレッド処理がかかるシャープネスが加わったJPEG書き出しでは、第2世代RyzenがCore i7-8700Kを上回った。CINEBENCHではCore i7−8700Kに歯が立たなかったRyzen 5 2600X等の6コア12スレッドモデルは、このテストでは比較的Core i7−8700Kに食らいつけている点も見逃せない。

気になるゲーミング性能は?

 では、そろそろゲーミング性能に踏み込んでいきたい。まずは「3DMark」のスコアーをチェックしよう。CPUをフル回転させて物理演算を実行するテストもあるため、CPUコア数の多さも重要になるが、果たして結果はどうだろうか。

↑「3DMark」のスコアー

 DirectX11ベースのFire StrikeではCore i7-8700Kが完全独走状態だが、DirectX12ベースのTime SpyおよびTime Spy ExtremeではRyzen 7 2700XがCore i7−8700Kに対し勝利をおさめた。だが、同じ8コア16スレッドでもTDP65Wである2700のスコアーが全般的に低い点は見逃せない。ゲーミング目的なら2700無印よりも2700Xを優先的にチョイスすべきだろう。

 ここからはゲームの有名タイトルを中心に検証を進めていく。まずはPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」だ。画質は“ウルトラ”に設定し、島マップ(ERANGEL)の南端の島に上陸してから中盤の軍事基地へ移動(約5分間)した際のフレームレートを「OCAT」で測定した。解像度フルHD/WQHD/4Kの3通りでテストを実施している(以降同様)。

↑「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」1920×1080ドット時のフレームレート
↑「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」2560×1440ドット時のフレームレート
↑「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」3840×2160ドット時のフレームレート

 今回はPUGBを筆頭に3本の実ゲームでベンチマークを実施したが、PUBGはその中でも最もCPU負荷の軽いゲーム(6コア12スレッドCPUだとCPU全体で33%程度占有)だ。こうなるとシングルスレッド性能の高いCore i5/i7が断然強いが、唯一Ryzen 7 2700Xはかなり高いフレームレートを示した。だが解像度を上げてGPUの負荷を上げていくと、その差は徐々に小さくなり、4Kだとほぼ誤差レベルになる。ゲームにおいてGPUがボトルネックになった状況では、ライバルと第2世代Ryzenとの差は小さくなるといえる。

 続いては「FINAL FANTASY XV」で比較する。公式ベンチマークは性能を比較するにはあまり適さない設計なので実ゲームを利用した。画質はプリセットの“最高”を選択するが、“HairWorks”や“Turf Effects”等の「NVIDIA」を冠した設定は全てオフにしている。

 計測はゲームで最初に車を利用して移動するシーンを利用。ここでも計測は「OCAT」を使用している。

↑「FINAL FANTASY XV」1920×1080ドット時のフレームレート
↑「FINAL FANTASY XV」2560×1440ドット時のフレームレート
↑「FINAL FANTASY XV」3840×2160ドット時のフレームレート

 ここでも全体の傾向はPUBGの検証に似ているが、GPU負荷の低いフルHD時の平均fpsは、シングルスレッド性能の高いCore i5/i7がワンツーフィニッシュを決めている。次いでRyzen 7 2700X、Ryzen 5 2600Xと、ブースト時の最大クロックの高いX付きモデルが高い値を示した。Ryzen 1000シリーズと比較しても、着実にゲーミング性能は向上したといえるだろう。

 最後はCPU占有率が極めて高い(6コア12スレッドのCPU全体で80%前後占有)ゲームの代表として「Assassin's Creed: Origins」でもテストしよう。画質はプリセットの“最高”とし、ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測した。最高と最低fpsも掲示しているが、ベンチの特性からかブレも大きい。平均fps中心で見ることをお勧めする。

↑「Assassin's Creed: Origins」1920×1080ドット時のフレームレート
↑「Assassin's Creed: Origins」2560×1440ドット時のフレームレートト
↑「Assassin's Creed: Origins」3840×2160ドット時のフレームレート

 6コア12スレッドのCPUでも全コアに負荷のかかる強烈なベンチマークだが、ここでもGPUに余裕のあるフルHDやWQHDではCore i7−8700Kが強い。マルチスレッド処理中心のゲームタイトルも増えてきているが、ゲーミング用途ではまだインテル製CPUが強いといえるだろう。

消費電力はそれなりに大きい

 CPUの処理性能と消費電力はほぼ連動する。14nmから12nmLPプロセスに移行したことで消費電力の低減が期待できるが、第2世代Ryzenはそのぶん生まれたマージンをクロック上昇に割り当てているため、トータルではどうなるかが気になるところだ。そこで消費電力を比較してみよう。

 ここではシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、「OCCT Perestroika v4.5.1」の“CPU Limpack(64bit、AVXあり、全論理コア使用)”を10分動かした際の安定値を“高負荷時”として測定した。

↑システム全体の消費電力

 アイドルが全般的に高めなのはRyzen系共通の特性だが、高負荷時になるとRyzen 7 2700XおよびRyzen 5 2600XのX付きモデルの消費電力が突出している。特にRyzen 7 2700Xと同じ8コア16スレッドでも2700無印から100W近く増えてしまった。Precision Boost 2に加えXFR2でクロックを限界近くまで引き上げているのだから当然なのかもしれないが、高負荷時250W台は、筆者の経験ではインテルのエンスージアスト向けCPU「Core i9-7900X」にほぼ匹敵するものだ。コストパフォーマンスは非常に良い第2世代Ryzenだが、ワットパフォーマンスという点ではまだインテル製CPUに及ばない。ワットパフォーマンスを重視するのであれば、Ryzen 7 2700のようなXなしモデルを選ぶべきだろう。

 さて、これだけ突出した消費電力を叩き出したRyzen 7 2700Xは、果たして同梱されるWraith Prismクーラーで運用できるのだろうか? その疑問を検証するため、ストレステストでおなじみのベンチマークソフト「OCCT」のCPU Linpackを約20分実行、その後アイドル状態で約10分放置した時のCPU温度等のデータを「HWiNFO64」で追跡してみた。Ryzen系CPUの一部のモデルには、BIOSで読み取れる温度(tCTL)はオフセット値が加算されるため、実際のダイ温度(tDIE)よりも高く計測される。Ryzen 7 1800Xでは20℃のオフセット値だが、Ryzen 7 2700Xは10℃のオフセット値になっている。ちなみに、第2世代RyzenではRyzen 7 2700Xのみがオフセット値を利用する。

↑OCCTのCPU Limpackを実行した時の温度の推移

 このグラフからも分かる通り、tCTLの値は常にtDIEより10℃、オフセット値の分だけ高く出ている。ゆえにBIOSの温度情報だけを見ると高負荷時は90℃台中盤まで到達するが、ダイの温度は80℃台にとどまっている。決して低い値とはいえないが、付属のクーラーでここまで運用できれば十分といえるのではなかろうか。

X370とX470で性能の差はある?

 第2世代RyzenはBIOSを更新しさえすれば、既存のX370やB350等のAM4用マザーでも運用できることは既に示した。では今X370マザーを使っているユーザーがX470マザーに乗り換えるメリットはあるのだろうか? そこで、今回は同じASUSTeKの「ROG STRIX X370−F GAMING」も準備し、同じCPUで同じ処理をさせた時の性能差をチェックしてみた。

 テストは「CINEBENCH」「TMPGEnc Video Mastering Works 6」「Lightroom Classic CC」「Assassin's Creed: Origins」でそれぞれ実施した。テスト条件等は基本的に前掲のテストと同じだが、残り時間の関係で省略したものもある。ゲームはCPUパワーの影響の強いフルHD設定のみ計測した。

↑「CINEBENCH R15」のスコアー
↑「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を利用した動画エンコード時間
↑「Lightroom Classic CC」で200枚のRAW画像を処理した際の時間

 一部例外はあるものの、第2世代Ryzenはほんの僅かだがX470マザーで良い結果が出ているが、誤差といっても良い範囲で、今後X370マザー側のBIOS更新で追いつける可能性も十分にある。だが現在開発中のPrecision Boost Overdriveや、まだ詳細が不明な「StoreMI」など、X470マザーの方が将来的な伸びしろは大きい。今すぐ買い換えずとも、良い製品が出たら乗り換える心づもりをしておいた方がよいだろう。

 さらに、以下の表はOCCTのCPU Linpackを実行するコア数を1基ずつ増やしていき、その際のCPU倍率(CPU-Z読み)を追跡していったものだ。負荷をかけて2分過ぎから3分までの間に表示された倍率を読み取るが、この数値は状況により目まぐるしく変動する。そこでその時の一番低い値をカッコの外に、比較的頻出した値のうちで最も高いものをカッコの中に記した。ただ目測であることと、XFR2やPrecision Boost 2の仕様上温度等の条件も影響するので、絶対この値が出るとは断言できないし、今後のBIOSで改善される可能性も十分ある。あくまでレビュー時はこういう傾向にあった、という点だけ見て頂きたい。

↑X470マザーに各CPUを装着してOCCTで負荷をかけた時のCPU倍率
↑X370マザーに各CPUを装着してOCCTで負荷をかけた時のCPU倍率

 今回テストした環境では、X370の方が低い倍率で動作することが多いように見受けられる。クロックが変動する分のロスが、X370マザーがX470マザーにわずかに負ける原因になっているのだろう。

まとめ:弱点を確実に潰し、コスパを強烈に向上させたCPUだ

 筆者は初代Ryzenも実際に運用しているが、シングルスレッド性能の低さから、Core i7のマシンに比べるとややキレが悪い印象があった。最初期から触っているせいでメモリーにも苦しめられたため、正直Ryzen 1000シリーズに関しては高い評価をしていない(むしろThreadripperの方がキャラが立っていて素晴らしい)。

 ところが今回の第2世代Ryzen、特に最上位のRyzen 7 2700Xは、これまでRyzen 1000シリーズにあった“物足らない感”を一気に解消してくれた。Core i7−8700Kとほぼ同じ値段で8コア16スレッド、マルチスレッド処理の重要な処理では実に良く回る。ゲーム系が弱いのが残念だが、シングルスレッド性能をHaswell程度まで引き上げた点は大いに評価したい。去年この性能で出せていればと悔しくなるほどの出来だ。

 ゲームの快適さが全てという筆者のような人はともかく、普通の自作erにとっては、もうRyzenはCoreプロセッサーと同レベルで選んでよいCPUに進化したと言っていい。Precision Boost Overdriveのように工事中の機能があるのは残念だが、これが開放された時に、またどこまでインテル製CPUに迫れるのか、今から楽しみでならない。

●関連サイト

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