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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 ― 第458回

Ryzen GベースのRyzen Proを発表、第2世代ThreadRipperも! AMD CPUロードマップ

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

 今週はいまさら聞けないIT用語集をお休みし、突発的であるがAMDのCPUロードマップアップデートをお届けしよう。

 AMDは、Ryzen APU(Ryzen Gシリーズ)ベースのRyzen Pro製品を日本時間の5月14日22時に発表した。この発表に先立ち、事前説明会がサンタクララのAMD本社で開催されたので、その内容をお届けしよう。当連載記事の公開時間がいつもと異なるのは、この発表の解禁時間に合わせたためである。

Ryzenの発売で業績が急速に改善

 まずはビジネス全般の話だ。ご存知の通りRyzen製品は急速にシェアを拡大しており、AMDの業績も急速に改善している。

 売上でみると、2015年が40億ドル、2016年が43億ドルだったのに、2017年は53億ドルまで伸びており、Ryzenシリーズだけで10億ドルほど売上が伸びた計算だ。その売り上げは現在も伸びており、今年第1四半期の出荷数量は昨年第4四半期から倍増したとする。

急速にシェアを拡大するRyzen。“Building Workstation Business”にThreadRipperが載っているのは意図的なものである

 今年はこれをさらに10億ドル以上増加させよう、というのが同社の目論見だ。ちなみにこのグラフ、棒そのものはTAM(Total Available Market:マーケット規模全体)であり、棒の脇の数字が実際の売上である。

意外にも(というとアレだが)、Bristol Ridge世代の売上もそれなりにはある。ただし、だんだん減りつつあるが

 2017年はデスクトップ版Ryzenによって10億ドルほど上乗せしたわけだが、2018年はこれにもう10億ドル上乗せし、30億ドル近い売上を実現しようというわけだ。

 ちなみにその2018年の比率がこちら。従来はコンシューマー向けのRyzenがメインだったが、2018年にはコンシューマー向けのRyzenとビジネス向けのRyzen Proが、同程度の売上になることを見込んでいるという。つまりそれだけビジネス向けの売上を増やそうというわけだ。

2018年の売上比率。これまでRyzen Proはそれほど大きな売れ行きにはならなかった。これがRyzen APUベースで大きく増えることを同社は期待している

 実のところビジネス向けでは、コンシューマー向けよりもさらに価格に厳しい。これは単にプロセッサー単体価格ではなく、システム価格を下げることが期待されている。

 こうなると従来のRyzen Proの場合、別にビデオカードを必要とするため、「最初からビデオカードが必要」という用途以外には受け入れられにくかった。またビデオカードが必要ということは、ケースも当然大型化するし、ビデオカードの価格も上乗せされるわけで、こうなるとインテルのCPUに比べてどうしても競争力が劣ることは否めなかった。

 加えるなら、ノートPC向けはさらに状況が厳しい。ゲーミングノートなどかなり大型のノートでないとディスクリートGPUは搭載しにくく、そうした大型のノートがビジネス向けに利用されることはめったにない。

 したがって、Ryzen Proとして一応製品は出したものの、ビジネス向けの市場の全部を狙うのは無理であり、残りの部分は競争力の劣るBristol Ridgeベースで戦わなければいけなかったのがこれまでのAMDの状況だった。逆に言えば、ここはまだ売上を大きく伸ばせる余地があるという意味である。

 このビジネス向けの売上急増のための武器が、今回発表になったRyzen APUベースのRyzen Proである。モバイル、つまりノート向けが3製品と、小型PCなどに向けたデスクトップ向けが4製品となっている。

Ryzen Proのラインナップ。Ryzen 3 2200Uに関しては、ニーズがほとんどない(こうしたニーズはもっと安いBristol Ridgeベースの製品でカバーできる)ということらしい

 スペックを見比べていただくとわかるが、ノート向け3製品は既存のRyzen 7 2700U/Ryzen 5 2500U/Ryzen 3 2300UをそのままPro版に転用したような形になっている。

 消費電力に関しては、デフォルトTDPは15WながらcTDP(Configurable TDP)は12〜25Wになっており、これをそのまま踏襲した形である。

 CPU/GPUのコア数もまったく同じである。強いて言えば、コンシューマー向けに提供されるRyzen 3 2200UのPro版は用意されていないのが違いらしい違いだろうか。

 これはデスクトップ向けも同じで、コンシューマー向けのRyzen 5 2400GとRyzen 4 2400GE、Ryzen 3 2200GとRyzen 3 2200GEがそのままPro版に横滑りしてきた形となる。デスクトップの場合、スモールフォームファクターや超小型マシンも視野に入るので、65W製品だけでなく35W製品も必要という判断であろう。

 ちなみにRyzenからRyzen Proに変更されるにあたり、いくつかの機能が有効化されている。具体的にはGuardMI、AES128エンジン、fTPM/TPM2.0のサポート、それをWindows 10 Enterprise Securityへの対応である。

これらの機能は初代の(Summit Ridgeベース)Ryzen Proに搭載されていたものであり、これが引き続きサポートされる

 まずGuardMIは、TSME(Transparent Secure Memory Encryption)とセキュア・ブート、TPM(Trusted Platform Module)を利用したセキュアな実行環境、それとアプリケーションのセキュアな開発環境といった項目で、これは従来のRyzen Proと同一である。

GuardMIの概要。ちなみにTSMEに関してはメモリーコントローラ側で実装されているので、CPUだけでなくGPUの書き込みも暗号化の対象とのこと

 また信頼性の提供については、これも従来のRyzen Proと同様に長期の供給保障やサポートが提供される。特に製品クオリティに関しては、ビジネス向けに安定動作する製品を選んで出荷している、という話であった。

18ヵ月のソフトウェア供給、24ヵ月の製品供給、最大36ヵ月のサポートなどが主なポイント。「コンシューマー向けに比べると長期的に製品が出るので、これに対応した」との話だった

 また製品を実際に利用する際の手間や時間に関しては、インテルの同等製品とほぼ同じとしている。

これは導入したマシンをユーザーに使わせられるように設定するための時間と手数を比較したもの。これはアーキテクチャー云々よりも、OEM各社の提供する環境の問題という気もする

デスクトップ向けRyzen Proはインテル製品と競合しない

 新しいRyzen Proの位置付けは以下のとおり。まずモバイル向け3製品は、ほぼ同価格のインテルのモバイル向け5製品を競合としている。

インテルはvPro対応が2製品しかないのに、AMDは全製品GuardMIとDASHに対応していることをアピール

 性能としては、CPUパワーを使う作業については若干劣るものの、GPUを利用する作業では桁違いに高速、というのがAMDの主張である。

CPU性能は競合製品に若干劣る。テストはAMDのOffice 2016 Profuctivity Suite(AMDが自社で開発したもの)の結果だそうである
GPUは桁違いに高速。逆に言えばどれだけGPUを利用するアプリケーションがあるか、という話でもあるのだが

 一方デスクトップの位置付けは以下のスライドの通り。こうした低価格向けではもはやコンシューマー向けプロセッサーと変わらない(インテルはこの価格帯のvPro搭載製品を用意していない)ためだろうか、性能比較は特に示されていない。かつてのRyzen APUの発表の時に出ているため、今回は省いたのだろう。

第8世代Core iの場合、デスクトップ向けにvProをサポートしてるのは5製品(Core i5-8600K/8600/8600T/8500/8500T)だけで、今回のAPUベースRyzen Proとは価格的に競合せず、従来のRyzen Proが競合と思われる

第2世代ThreadRipperのサンプルをOEMパートナーに出荷開始

 ちなみにRyzen Proとは無関係の話であるが、進行中のビジネスとして紹介されたのが、Ryzen ThreadRipperを利用したワークステーションである。

Ryzen ThreadRipperを利用したワークステーションの開発が進行中。昔は1Pないし2Pというのが定義だったが、昨今では1Pのままコア数を増やすほうが一般的に

 従来ならRyzen Proをベースとしたワークステーションを提供してきたわけだが、それよりもより高性能な処理能力が必要な市場向けに、Ryzen ThreadRipperが利用できるわけだ。

 競合と比較して平均的に性能が高いとされており、すでに15のシステムインテグレーターから、25以上のシステムが発表されているとのことだった。

Ryzen ThreadRipper 1950Xの競合がCore i9-7900Xというのは、プロセッサー価格が同等なもの、という選択ではないかと思われる
15のシステムインテグレーターからシステムが発表されている。日本ではなじみのあるメーカーがないのが残念。強いて言えばNEXT Computingあたりか

 ただ気になるのは、Ryzen ThreadRipper自身はコンシューマー向けということで、EPYCでサポートしているメモリーのECC対応や、さまざまなセキュリティー機能が無効化されている。ただこうした信頼性/安全性が必要な用途向けにはThreadRipperではなく1PのEPYCを提供できるという話であった。

 そのThreadRipperであるが、すでにOEMパートナーに対しては第2世代製品のサンプル出荷が開始されていることが明らかにされた。

第2世代ThreadRipperを出荷。現時点ではあくまでサンプル出荷を開始したというだけで、実際にいつ出荷されるか、動作周波数や価格などは一切未公開。このあたりはCOMPUTEXあたりに明らかにされるかと思われる

DELL、HP、Lenovoの3社が新しいRyzen Pro搭載製品を発表

 さて、AMD自身でのRyzen Proに関する発表はだいたいこの程度だが、DELL、HP、Lenovoの3社からこの新しいRyzen Proを搭載した製品に関する発表が同時に行なわれたので、こちらもまとめてレポートしておきたい。

会議などで社内を移動しながら仕事する人をターゲットにしたDELL

 まずDELL。同社はRyzen 3 Pro 2200Gを搭載したOptiplex 5055SSFと5055 Tower、それとRyzen 5 Pro 2500Uを搭載したLatitude 5495の3製品を発表したが、力点はLatitude 5495に置かれていた。

ひさびさにトラックポイントが復活したLatitude 5495。メモリー16GB/ストレージ500GBという構成だが、こちらは選択できるようだ

 DELLによれば、Latitudeのターゲットとする用途は下の画像の通りである。この中でも特にCorridor Warrior(会議などでノートを持って社内を延々と移動しながら仕事する人)に向けて、キーボードの打ちやすさやレガシーデバイスへの接続性(たとえば、まだRGB接続のプロジェクターは広く使われている)などを重視したのがLatitude 5495であるという話であった。

DELLの説明の中で、特にLatitudeはCorridor Warriorに向けた製品であると説明があった

 キーボードの打ちやすさを追求すると、どうしても薄型では難しくなるということと、強度を保つためにはある程度の厚みがあったほうが良い、ということで旅行などの持ち運びにはやや大振りだが、社内を持ち歩くには十分なサイズと考えているという話であった。

Latitude 5495のコンセプト。厚みは、昨今の薄型ノートからするとそこそこ厚い部類に入る

最大7画面出力が可能 セキュリティーも強化したHP

 HPは今回、ノート5製品+デスクトップ3製品の合計8製品を一挙に発表した。EliteBook 700シリーズ G5はスクリーンサイズが13.3/14.0/15.6インチの3種類が用意されるが、その他のスペックは基本的に同じ(バッテリーサイズは筐体の大きさに合わせて若干違いがあるらしい)。

もっともmt44 Thin Clientはノートと分類して良いのか悩むが、構成的には完全にノートである
そしてこのEliteBook 700シリーズG5にもトラックポイントが装備されている

 EliteDesk 705シリーズ G4は同G3シリーズの後継となる製品だが、デザインが一新されている。デスクトップで一番小さいのがEliteDesk 700 Miniで、このサイズで最大7つのディスプレー出力が可能なのが売りである。

EliteDesk 705シリーズ G4。スモールフォームファクターはTDP 35W構成だが、なぜかミニタワーはTDP 15WのRyzen 5 Pro 2500Uを搭載とあった。説明が間違っている可能性もある
EliteDesk 700 Mini。おそらくオプションのディスクリートGPUカードを装着すると7画面出力可能という話で、本体そのものは3画面出力と思われる

 ちなみにHPは今回の発表にあわせ、新しいHP Sureシリーズのセキュリティー機能を導入することを明らかにしている。

セキュリティー機能一覧。ちなみにインテルのCPUでは(下の2つを除き)実装されないようだ

 このうちHP Sure ViewとHP Privacy Cameraはそれぞれ単独の機能であるが、HP Sure Start〜HP Sure Clockまでの機能はAMDのRyzen Proを利用することで可能になる、という話であった。

HP Sure Viewは、液晶面に貼るプライバシーフィルターと同等の効果を画面側で実装する
HP Privacy Camera。カメラに機械的なシャッターを設けるというだけ

※お詫びと訂正:記事初出時、Latitude 5495のHDDの容量に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2018年5月15日)

筐体を新たに作り直しRyzen Proに最適化したLenovo

 最後がLenovoである。同社はThinkPad 2製品のほか、スモールフォームファクターのThinkCentre M725s、それと超小型のThinkCentre M715qを発表した。

Lenovoが発表した製品群。ただしこのうちThinkCentre M725は会場で展示がなかった

 ThkinCentre M715Qは1リットルサイズという、EliteDesk 700 Miniと同等サイズであり、基調講演では無理やりスーツのポケットに入れるといったデモも行われた。

ディスプレー出力、会場に持ち込まれたのはRGB+DisplayPort×2という妙な構成だったが、これはいろいろカスタマイズができるという話であった
ThkinCentre M715Qを振り回すLenovoのDavid Rabin氏(VP, Commercial Marketing, Lenovo PC and Smart Devices)。この直前にはスーツのポケットに無理やり詰め込んでいた(ただし半分はみだしていたが)

 一方ThinkCentre M725は標準では今回発表のGPU統合Ryzen Proが用意されるが、GPU非統合の8コア16スレッドのRyzen Proを搭載することも可能という話であった。

ThinkCentre M725の概要。構成オプションをかなりいろいろ用意するとのこと

 さてThinkPadであるが、今回のRyzen Proの登場により、これまで同社に寄せられていたAMDベースシステムの問題点がすべて払底されたとまず説明した上で、ThinkPad A485とThinkPad A285を紹介した。

ThinkPadに寄せられていた問題点。最後の質問は、ThinkPad A275はかなり熱くなることで有名でもあったので、これに対する回答と思われ

 このうちThinkPad A485に関しては従来のThinkPad A475と共通の筐体のようだが、ThinkPad A285は新規に作り直したという話であった。

 実はThinkPad A275はインテル向けの筐体を流用した結果、熱設計に無理があったらしく、「熱い」という話もこれが理由だったらしく、今回はRyzen Proに最適化したことでこのあたりの問題を解消したようだ。

ThinkPad A485。会場での構成は、Ryzen 5 Pro 2500U+8GB DDR4、128GB M.2 SSD+1TB HDDとなっていたが、これはあくまで一例と思われる。メモリーは2DIMMスロットで最大32GBまで可能という
ThinkPad A285。会場での構成は、Ryzen 3 Pro 2300U+8GB DDR4、256GB M.2 SSD。メモリーは1DIMMスロットで最大16GBまでとなっている。2.5インチHDD/SSDの搭載は不可能とのこと
ThinkPad A285とThinkPad A485。サイズはA285がXシリーズ相当、A485がTシリーズ相当と考えればわかりやすい

 以上3社の製品、正式な出荷時期や最終的な構成はまだはっきりしないが、早い製品は数週間以内、遅い製品も今年第3四半期中には投入予定だそうである。 

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