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最新パーツ性能チェック ― 第227回

タダでHDDがSSD並みに高速化!Ryzen&X470の「StoreMI」検証結果

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ

 第2世代Ryzenと同時にリリースされたSocket AM4用のチップセットといえば「X470」だ。PCI-ExpressやUSB周りの仕様はX370と同じだが、第2世代Ryzen(X型番のもの)に搭載されている新機能「Precision Boost Overdrive」と、ストレージ高速化技術「StoreMI」への対応が追加されている。

 5月下旬時点において、前者はRyzen Masterの対応待ちなのか正式リリースされておらず、後者は発売日にAMDの公式サポートページでドライバーがリリースされたものの、詳しい資料などは未公開。多機能なX470を購入するかどうかを迷っていた人にとっては、いささかフラストレーションのたまる状況であった。

 Precision Boost Overdriveは対応BIOSの実装も必須らしいため、まだ試すことはできない。そこで今回はAMD公式サイトで提供済みのStoreMIの効果について検証してみた。

5月下旬時点では、主要マザーメーカーのサイトにStoreMIのDLリンクは存在しない(左図はASRockのもの)が、AMDのサポートサイト(右)で最新チップセットドライバーを検索すると、StoreMIがDLできるリンクが見つかる

中身は「FuseDrive」と同じ

 いきなり結論から述べてしまうが、StoreMIとはEnmotus社が開発した「FuseDrive for AMD」そのものである。ASCII.jpに掲載されている大原氏の記事で紹介された通り、FuseDriveは無償で提供されるはずだったのだが、リンク先では19.99ドルで購入することになっている謎な技術であった。しかし、これがX470マザーボードとライセンス(X470のハードウェア的なアシストもあると思われる)と紐づける形で無償利用できるようにしたのがStoreMIなのだ。

StoreMIはHDDにSSDやDRAMキャッシュを加えて高速化するという機能

 ここで改めてStoreMIを紹介すると、SATAやNVMeのSSDをHDDのキャッシュとして運用することで、HDDの容量単価の安さを活かしつつ、SSDで高速化するというものだ。インテルがZ68以降のチップセットの一部に実装しているISRT、すなわち「Intel Smart Response Technology」のAMD版ともいえるが、StoreMIは後発製品だけにいくぶん使い勝手がよくなっている。主要なものを箇条書きにしてみた。

1:起動ドライブでもデータドライブでも高速化が可能

 ISRTはOSの起動ドライブしか高速化できないのに対し、StoreMIはデータドライブも高速化できる。StoreMIで高速化できるHDDとSSDの組み合わせはひとつだけであり、2つ以上高速化したければ有償版FuzeDrive Plus(65ドル)を購入する必要がある。

2:キャッシュとして使うSSDは256GBまで

 ISRTのキャッシュ用SSDは64GBまでという制限があったが、StoreMIは最大256GBのSSDが利用できる。ちなみに19.99ドルのFuseDriveは128GBまで、59.99ドルのFuseDrive Plusなら1TBのSSDまで対応できる。

3:SSDの容量増にも利用できる

 ISRTはHDDにOSを導入し、そこにSSDを追加する必要があるのに対し、StoreMIではHDDとSSDのどちらにOSが入っていてもよい。つまり「HDDの速度が不満だからSSDをキャッシュとして追加」という状況のほかに、「SSDの容量が心配なのでHDDをフュージョンさせたい」という状況でも使える。どちらも結果としてHDDの容量(+α)とSSDのスピードを兼ね備えたドライブが出来上がるわけだ。

 また、OSをインストールしてからStoreMIを導入することになるので、StoreMI前提の設定をする必要もない。導入の敷居は比較的低いと言えるだろう。

4:容量は増える

 StoreMIでは結合したドライブのことをTierドライブ、そしてその中で遅い方のドライブを“Slow Tier”、速い方を“Fast Tier”と呼ぶ。そしてSlowとFastを結合させてできたTierドライブの容量は、元のSlowドライブより大きくなる。ただFastの容量分だけ増えるという単純なものではないようだ。

5:StoreMIを解除して元に戻すことができる

 Tierドライブは好きなタイミングで解除し、元の単体ドライブに戻すことができる。ただ完璧な現状復帰というわけではなく、ある程度着地点が制限された復帰になる。これは後ほど事例を交えて解説しよう。

6:メインメモリーをキャッシュとして追加できる

 Tierドライブの基本は、Slow Tierなドライブの性能をFast Tierなドライブで高速化する、というものなのでSATA SSDにNVMe SSDを組み合わわせるという運用も可能だ。だがこれにも限界があるので、最大2GBのメインメモリー(StoreMIでは“DRAM”と呼ぶ)をキャッシュに加えることができる。

 メインメモリーをSSDのキャッシュにするというのは主要なSSDメーカーが提供している機能のひとつ(例:CrucialのMomentum Cacheなど)でもあるため、特に珍しいものではないが、上を狙いたい人にとっては魅力ともいえる。

CドライブをTierドライブに結合した場合、ひとつの大きなCドライブとして扱うことができるようになる。どこにデータが入っているか気にする必要はない

 前置きはこの程度にして、早速StoreMIを利用してTierドライブを構築していこう。今回はHDDにOSをインストール済のシステムを準備し、そこにSATAのSSDを追加して、Tierドライブとしてまとめる作業を解説する。検証機材は以下の通りだ。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 2700」(8コア/16スレッド、3.2〜4.1GHz)
マザーボード GIGABYTE「X470 AORUS GAMING 7 WIFI」(AMD X470)
メモリー G.Skill「F4-3200C14D-16GFX」(DDR4-3200 8GB×2、DDR4-2933で運用)
グラフィックス GeForce GTX 1080 Founders Edition
ストレージ ウエスタンデジタル「WD20EZRZ-RT」(HDD 2TB、5400rpm)、サムスン「MZ-N6E250B/EC」(M.2 SATA SSD、250GB)
電源 Silverstone「SST-ST85F-PT」(850W、80PLUS Platinum)
OS Windows 10 Pro 64bit版(April 2018 Uptade)

 前述の通りStoreMIのFast Tierに組み込むSSDは256GBまでとなるため、今回は少々古いモデルだがサムスン製「860 EVO」の250GB版を準備した。ウエスタンデジタルの「WD Blue」の2TB版にOSその他諸々をインストールし、その上でStoreMIも導入する。

 Tierドライブ構築の作業自体は難しくないが、事前にディスクのエラースキャン(chkdsk)や重要データのバックアップといった、万が一に対する備えはやっておこう。また、Windows Updateも済ませておきたいところだ。

 言うまでもないが、キャッシュに組み込まれるSSDの内容は完全に消去されてしまう。この点にも注意しておきたい。

StoreMIをインストールする際はJavaも必要になる。組み込まれてないシステムの場合は、自動的にJavaランタイム環境もセットアップされる
StoreMIのメインUI。OS起動ドライブを高速化するなら「Create Bootable StoreMI」、データドライブなら「New Non-Bootable StoreMI」を選択。今回は前者を選択した
Tierドライブに組み込まれるドライブのリストが掲示される。2GBのDRAMキャッシュはこの段階ではまだ有効にすることはできない。ここで「Customize」をクリックすると右のウインドウになり、手動でFast Tierとするドライブを選択することができる。複数のSSD候補がある場合に使うとよい
左の警告は“万が一の事態”への備えをしかりしておけ、というもの。バックアップすらとらずに先に進んではいけないということだ。あとは作業が終わるのを待っていれば、勝手に再起動がかかる
タスクトレイにStoreMiのアイコンが常駐する。マウスポインターを当てれば高速化の恩恵を受けているデータ量などが確認できる仕組み

 Tierドライブ構築にかかる時間は、HDDとSSDのどちらにOSが入っていたかによる。OSをHDDに、SSDを後付した場合はほぼ待ち時間なしで作業を再開できる。だがOSをSSDに入れた状態でHDDを追加する状況だと、再起動後にバックグラウンドでシステムファイルの配置を最適化する作業が入る。

 今回の検証環境では最適化作業は2時間ほどで終了したが、この作業が終わるまでの間PCは利用できるがシステムを再起動することはできない。この間HDD側にシステムファイルを移動させる作業が行われていると推察される。

システムの構成によっては、Tierドライブ構築後に最適化作業が入る場合がある。今回の検証ではOSを入れたSSDにHDDをSlow Tierとして結合させた場合に発生した。作業が終わるまでPCは使えるが、終わるまで再起動はしてはならない

 Tierドライブを構築すると、エクスプローラ上からは1基のドライブとして認識される。この時の容量は2基のドライブの容量合計とほぼ等しい値となるが、若干未割り当ての領域が残る。その容量をフルに使うには「ディスクの管理」を使って手動で拡げる必要がある。

 例えば今回の検証環境では、2000GB+250GBの構成で2090GBとなったが、Windows側ではそれぞれ1863GBと233GBとして認識されているので対して目減りした値とは言えない。しかも未割り当ての領域は約0.9GBと小さいので目くじらをたてるほどの差ではない。

Tierドライブの構築が終わったあとのパーティションマップ。ディスク0とディスク1が実際の物理ドライブを表しており、それを結合したTierドライブがディスク2として表示されている(C:がディスク2上にある点に注目)。そして未割り当ての領域はわずか887MBと小さい。気になるならC:を拡張すればよいだろう

 ではHDDベースのシステムにStoreMIを利用してSSDを結合したTierドライブで、どのようなパフォーマンスが出るのかを検証していこう。StoreMIも既存のSSDキャッシュ技術と同様によく使われるデータをSSD側に移してパフォーマンスを向上させる。つまりアプリを1回起動させただけでは効果は得られないので、数回起動して“覚えさせる”必要がある。

 そこでいくつかのベンチマークを利用して学習効果による性能向上の推移を追跡してみた。最初は定番の「CrystalDiskMark」を使用する。以下は各ドライブ単体にOSを導入した時の性能。これが評価のベースラインとなる。

WD20EZRZ-RT単体での「CrystalDiskMark」実行結果
MZ-N6E250B/EC単体での「CrystalDiskMark」実行結果

 前者は5400rpmのHDD、後者はSATAのSSDらしい、ごく一般的なパフォーマンスを示している。ではこれらをTierドライブとして結合した時のパフォーマンスを見てみよう。時系列順に並べている。

Tierドライブ構築後最初の「CrystalDiskMark」実行結果
Tierドライブ構築から2回目の「CrystalDiskMark」実行結果
Tierドライブ構築から3回目の「CrystalDiskMark」実行結果
Tierドライブ構築から4回目の「CrystalDiskMark」実行結果
Tierドライブ構築から5回目の「CrystalDiskMark」実行結果

 初回のリードはほぼHDD並しか出ないが、ライトはSSDに近い数値が出ている点に注目。リードは回数を重ねると徐々に数値を増やしていき、4回目でほぼSSDと等しい値となった。

 5回目は性能が下がったが、後述する6回目以降のテストでは4回目相当の数値に戻る。ファイル配置に関係する何らかの処理との競合で、若干性能がフラつくことがある。次の図は後述するアプリやゲームの起動テスト(3種類×5回)を終えたあとにCrystalDiskMarkをもう一度回した結果である。

「CrystalDiskMark」各種テスト実施後の実行結果

 予想どおりキャッシュの効果が消え、リードの数値が大幅に減っている。StoreMIがファイルの配置を最適化する作業とぶつかると、この程度まで落ちることもあるということだ。

 続いてはAdobe「Premiere Pro CC 2018(PPCC)」の起動時間を比較する。アプリを起動し「ファイルを開く」ダイアログが出るまでの時間を計測する。これもCrystalDiskMarkと同様に起動して計測したらすぐ起動し計測……というサイクルを5回実施している。

 この計測方法だとシステム側のキャッシュに蓄積されてしまうが、どのタイミングで時間短縮が止まるかを見ていただきたい。HDDおよびSSD単体時の時間は、計測後再起動し、キャッシュによる高速化効果が期待できない状況での時間を5回計測し、その平均値を採用している。

「Premiere Pro CC 2018」の起動時間

 予想どおり初回の起動時間はHDD単体並に長く、2回目からシステム側のキャッシュに入るためすぐ起動が終わる。SSD単体でも連続して起動させれば10秒台の数値になるため、特にSSDが低速という訳ではない。

 次はPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の起動時間と、「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチで計測できる“ローディングタイム”も比較しよう。PUBGは起動してから服を着たプレイヤーの姿がロビー画面に表示されるまでの時間、FF14ベンチはベンチ終了時に提示される数値をそのまま採用している。これも起動→終了のサイクルを5回連続で行なった時の推移を追跡している。

「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」の起動時間
「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチのローディングタイム

 ゲームにおいても初回起動時はHDD単体並に長い。2回目はかなり時間が短縮するが、3回目以降の値に比べるとわずかに長い。

 ここまでのデータからわかるのは、おおよそ2〜3回程度起動すれば、StoreMIによる高速化の恩恵が発揮されるということだ。もちろんFast Tier側ドライブの利用状況などで変わる可能性もあるが、StoreMIはかなりアグレッシブにファイルの再配置を行なっていると考えられる。

 ここまでのテストでいい感じにデータがキャッシュされたようなので、改めてStoreMIで構築したTierドライブの性能がHDDやSSD単体時と比べどの程度速いか遅いかをチェックしてみよう。

 以降の数値は各テストを1回ずつ実施し、再起動というサイクルを5回繰り返し、各数値の平均を求めた。システムのキャッシュにも入らず、StoreMIのキャッシュ効果だけでどの程度高速化したかをチェックしたい。OSの起動時間とは、OS上で再起動を選択してから、デスクトップに復帰するまでの時間としている。

OSやアプリの起動時間の比較

 SSDがあらゆるテストで最速なのは当然として、StoreMIで組んだTierドライブの効果は思いの他高い。特にアプリやゲームの起動時間はSSD並に短縮されたといってよいだろう。Premiere Pro CCの起動時間短縮効果がずば抜けて高い(むしろHDDだけが異様に長い)のは、PPCCが起動時に細かいファイルを多量に読み込むスタイルであるからと推測できる。

 ただOSの起動時間はHDD単体時に比べ20秒強しか高速化していない。これは起動時にStoreMI独自の起動処理をしているためだ。

 CrystalDiskMarkは結果をすべて載せると冗長になるので、シーケンシャル(QD32T1)とランダム4K(Q1T1)の結果だけ抜粋してグラフ化した。これも5回の平均値である。

「CrystalDiskMark」の読み書き性能

 CrystalDiskMarkでもTierドライブはほぼSSDに近いパフォーマンスを出している。ただライト性能(特にSeq Q32T1)は時々落ち込むことがあるため、SSD単体時に比べやや平均では劣る値となった。とはいえ、HDDプラスαの容量を保持したままSSD並の性能を確保できるというのは非常に魅力的な話だ。

 前述の通り、StoreMIでは最大2GBまでのメインメモリーをDRAMキャッシュとしてTierドライブに組み込める。その際のパフォーマンスはどうなのかもチェックしてみたい。

 DRAMキャッシュは一度Tierドライブを組み、手動で有効化する必要がある。まずはこの手順を軽く解説しよう。DRAMキャッシュは好きなタイミングで追加することができ、解除時にも再起動を必要としない。

Tierドライブを構成した状態でStoreMIのメインメニューを開くと、一番下の「Change Settings」がクリックできるようになる
変更するTierドライブにチェックを入れてから「Modify」をクリック
ここでTierドライブの設定を変更できるようだが、無償で使えるFuzeDrive的位置づけなのか、上半分はアクセスできない。DRAMキャッシュを追加するには“DRAM Cache”欄を「2G Cache」にすれば良い。このウインドウから読み取れることは、データは最初Slow Tierに入れられ、読み込みのIOリクエストが高いものをFast Tier側に入れていく(promoteと呼んでいる)ということだ

 ではDRAMキャッシュ付きTierドライブの性能を「CrystalDiskMark」で検証してみよう。ここでは1回計測する毎に再起動をかけている。

DRAMキャッシュ追加直後の「CrystalDiskMark」実行結果
DRAMキャッシュ追加後2回目の「CrystalDiskMark」実行結果
DRAMキャッシュ追加後3回目の「CrystalDiskMark」実行結果
DRAMキャッシュ追加後「CrystalDiskMark」4回目の実行結果
DRAMキャッシュ追加後「CrystalDiskMark」5回目の実行結果

 まずDRAMキャッシュの効果はリードに効くことがわかる。シーケンシャルリードで毎秒4GBオーバーは凄まじく速い。だが何回か再起動を繰りかえすうちに、突然DRAMキャッシュが効果を失ってしまった。今回の検証では4回目以降はDRAMキャッシュなしと同じ程度まで低下している。

 別の検証では3回目でDRAMキャッシュ機能が喪失するなど、まだ安定していないようだ。もう少し安定して動いていたら突然の電源断に対する耐性も調べたかったが、ここまで挙動が読めないとやるだけ無駄ということで見送った。

 ここまではOS起動ドライブをHDDとし、そこに250GBのSSDを結合させたときのパフォーマンスをチェックしてきたが、StoreMIでは逆のシナリオも想定されている。つまりSSDをOS起動ドライブとし、そこにHDDを追加するというものだ。SSDを使っていたが容量が足りない! といったシナリオでの利用が想定できる。

 結論から先にいうと、SSDにHDDを結合させる場合は、Tierドライブ構築時にしばらく最適化で待たされることは前述の通りだが、さらに読み書き性能が最初から高速化された状態となる。以下はPremiere Pro、PUBG、FF14ベンチの起動時間やローディングタイムを各々連続5回(再起動を挟まない)計測した時のグラフである。

SSDにHDDを結合した時のアプリの起動時間やローディングタイム

 HDDにSSDを結合した時に比べ、1回目の待ち時間が大幅に短くなっていることがわかる。最適化の仮定でシステム関係のファイルはHDD側に移されるが、アプリなどのファイルはSSD側に残された状態でスタートできるということだ。

Tierドライブをバラす際は注意が必要

 Tierドライブの解除も自分の好きなタイミングで実行できる。しかし、無条件で現状復帰できるという訳ではなく、いくつかの制約がかかる。今回StoreMIをしばらく使っていてわかったことをまとめるが、組んでバラしてを何回かやったドライブで検証したので、もしかしたら微妙に間違っている可能性もあるし、制約の少ないFuseDriveでは、また違った挙動になることもある。あくまで今回の検証では……というくくりで見ていただきたい。

【1】データはSlowドライブ側に移る

 Tierドライブを解除した場合、元のデータはSlow Tier側、すなわち容量の大きなHDD側に残り、SSDが未フォーマット状態のドライブとして切り離される。これはSSDを起動ドライブにしていた場合でも、OSはSlow Tier側に移される。必ずしも現状復帰とはいかないのだ。

 そしてTierドライブの解除時にもデータを安全にSlow Tier側に移すために作業時間が必要になる。今回のテスト環境では、解除時に37GB弱のデータがSlow Tier側に移されることとなったが、少なくとも2時間以上待つ必要があった。ただし解除作業中でもPCは普通に使えるのであまり不便感はない。

Tierドライブを削除する時に出るメッセージ。37GBのデータをSlow Tier側に移すまでしばらく時間がかかると言っている
解除作業中でもPCは普通に使用できる。進捗状況はタスクトレイのStoreMIアイコンで確認可能だ
Windows 10を入れたSSDにHDDを追加したTierドライブを解除したところ、SSDが未フォーマット状態で切り離され、CドライブはHDD側に残った状態となった

【2】ブートマネージャーはStoreMI独自のまま

 UEFIでWindows 10をセットアップすると、マザーボードのBIOS上ででは“Windows Boot Manager(ドライブの型番)”という形でブートドライブが認識される。StoreMIで起動ドライブをTierドライブ化すると、このWindows Boot Managerが独自のものに入れ替わる。

 Windowsそのものの起動プロセスには影響はないが、万が一OSの起動でトラブルがあった時は、Windows Boot Managerではないので復旧方法が異なる可能性がある。

 これが嫌ならデータをバックアップしておき、改めてクリーンインストールの後データを戻すという手段をとるしかない。純正環境好きにはちょっと困る仕様といえる。

Tierドライブを解除した直後のBIOSの起動デバイスの認識。SSD(860EVO)が単体で認識され、Windows Boot Managerにかわり独自のブートマネージャーがWD20EZRZにインストールされている

まとめ:無償で使えるツールとしては優秀だが少々癖が強い

 以上でStoreMIの検証は終了だ。SSDの容量不足またはHDDの速度向上を後付で改善できるという点はさすが後発といったところ。ブートドライブの高速化も可能な点も嬉しい。

 ただし、効果を最大限に引き出すためのDRAMキャッシュの挙動が不安定なことや、Tierドライブ解除時の作業が分かりづらい。OSはSSDに入れていたはずなのに、Tierドライブを解除したらHDDに強制的に移されるとは、筆者は思ってもみなかった。さらにUIがシンプルすぎて難解なのもマイナスといえるだろう。

 とはいえ、これだけの機能がX470マザーボードを買えば無償で使えるというのは評価に値すべきことだろう。第2世代Ryzenでそろそろ組もうと感じており、ストレージの構成をあれこれ弄って楽しみたい人なら、X470マザーボードとStoreMIは有用といえるだろう。ただしPCスキルはある程度高い人限定だ。

●関連サイト

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