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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 ― 第470回

8月13日に第2世代Ryzen Threadripperが発売 AMD CPUロードマップ

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

 8月13日に第2世代のRyzen Threadripperの最初の製品が発表される。今回はプレビューということでその一部をお届けするが、その話をする前にAMDの次世代製品についてやや大きなアナウンスがあったので、これを解説したい。

第2世代Ryzen Threadripper

第2四半期の決算発表をみると財務が非常に健全な状態に

 米国時間の7月25日、AMDは2018年第2四半期の決算発表を行なった。簡単に数字をまとめると下表のようになる。

GAAPベースの2018年第2四半期決算発表
  2018年Q2 2017年Q2 昨年比 2018年Q1 前四半期期比
売上 17億6000万ドル 11億500万ドル +53% 16億5000万ドル +7%
粗利率 37% 34% +3% 36% +1%
営業経費 4億9900万ドル 4億1200万ドル +87% 4億7700万ドル +22%
営業利益 1億5300万ドル -100万ドル +154% 1億2000万ドル +33%
純利益 1億1600万ドル -4200万ドル +153% 8100万ドル +35%
非GAAPベースの2018年第2四半期決算発表
  2018年Q2 2017年Q2 昨年比 2018年Q1 前四半期期比
売上 17億6000万ドル 11億5000万ドル +53% 16億5000万ドル +7%
粗利率 37% 34% +3% 36% +1%
営業経費 4億6700万ドル 3億8900万ドル +78% 4億4600万ドル +21%
営業利益 1億8600万ドル 2300万ドル +163% 1億5200万ドル +34%
純利益 1億5600万ドル -700万ドル +163% 1億2100万ドル +35%

※お詫びと訂正:記事初出時、売上の桁に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2018年8月7日)

 GAAP(Generally Accepted Accounting Principles:米国会計基準)に沿ったものが上、これに沿ってないものが下である。

 一般にGAAPの方がいろいろ厳しい面があり、結果として利益が非GAAPの場合よりも若干減った形で示されるが、実際の企業運営の実態を見るには非GAAPの方が適切という見方もあり、これもあってAMDだけでなく多くの半導体関連企業がGAAPと非GAAPの両方の結果を示している。

 それはともかくとして、売上は順調に伸びており(昨年第2四半期比で53%増、今年第1四半期比で7%増)、粗利も37%とそこそこのレベルまで上がってきた。結果として純利益も確実に出るようになっており、財務的には非常に健全な状態になってきた。

 とは言え同社の負債は第2四半期の時点でまだ140億ドルほどあるので、インテルなどに比べるとまだ財務状態は脆弱ではあるし、第2四半期はクライアント向けデスクトップCPUのASP(Average Sales Price:平均小売価格)は昨年同期と比較して若干下がっている(これはインテルとの価格競争が主な理由である)などの問題はあるにせよ、総じて非常に良い決算内容となった。

7nm世代のEPYCはTSMCで製造

 それはともかくとして、この決算発表にあわせて実施されたアナリストとのカンファレンスコールがウェブでも公開されているのだが、この中の質疑応答でAMDのZen2、つまり7nm世代を利用したEPYCプロセッサーに関しては、GlobalfoundriesではなくTSMCで製造するということが明らかにされた。

 まず24分30秒あたりから、CEOのLisa Su博士が「7nmに関してはTSMCおよびGlobalfoundriesと長期契約を結んでいる」としたうえで、36分23秒あたりで「現在サンプリング中の7nmのEPYCはTSMCによって製造されている」と明確に述べている。

 これに関して、6月21日付けのChinaTimesが、AMDの7nm世代のCPUおよびGPUをTSMCのFab 15で生産を開始したとレポートしたのだが、この事実がAMDからも確認された形になる。

 実のところAMDはGlobalfoundriesとの間で長期供給契約を結んでおり、Globalfoundriesからの供給が間に合わない場合には他のファウンドリーからの供給を受けられる、とされていた。このため筆者などは7nmもまたGlobalfoundriesから供給を受けるものと信じていたのだが、これが覆された形になる。

 ちなみにこのカンファレンスコールの後でAMDの関係者に「ではEPYCやVega 7nmなどのエンタープライズ向けはTSMCだとして、クライアント向けはGlobalfoundriesという可能性はあるのか?」と確認したところ、次の返事が返ってきた。

 「われわれが初代のRyzenやVegaで得た原則(Principal)は、サーバー向けとクライアント向けで同じダイを利用することで、最小限のコストで最大限の売上を獲得するというものだ。現実問題としてTSMCとGlobalfoundriesでは、同じ7nmといっても(物理)設計はまったく異なるものになる。なので(両社を使うということは)メンテナンスの手間やコストが大幅に跳ね上がることになる。それは原則に合わないやり方だ」という。

 少なくとも現在進んでいるデザイン(Zen2コア、およびVega 7nm)に関していえばすべてTSMCを利用して製造されることがこれで事実上確定したことになる。

 ではもうGlobalfoundriesはないのかというと、これはまだわからない。同じ7nm世代でいえば、GPUはNavi 7nmが控えているが、これはTSMCのままかもしれない。ただその次の7nm+、つまりEUV(極端紫外線)を利用するZen3コアや次世代GPUに関しては、現実問題として現在のArF(フッ化アルゴン)+液浸のトリプルパターニングのものからそのまま移行は不可能であり、物理設計のみならず論理設計からの見直しになる。

 要するにここで仕切り直しになるのは間違いなく、このタイミングでもう一度ファウンドリーの変更があっても不思議ではない。

 話を戻すと、これまでのGlobalfoundriesの発表などを見る限り7nmも順調に立ち上がっているという話だったので、なぜ今回の変更があったのかは現時点では定かではない。

 ただしすでにVega 7nmのカスタマーサンプリングが始まっているということは、少なくとも18ヵ月以上前に今回の決断は下されたことになる。物理設計に1年、製造に半年かかるからだ。

 もともとこの頃から、Globalfoundries単体ではAMDの求める7nmの量産キャパシティーを満たせないという話はあり、そのあたりが今回の変更につながった可能性はある。

 ただ連載417回でも書いたが、今のところGlobalfoundriesで7nmやEUVを手がけるのはニューヨークのFab 8のみで、現在同社が中国に製造中のFab 11も最初はFD-SOIということになっている。

ニューヨーク州サラトガにあるGlobalfoundriesのFab 8

 そもそも300mmウェハーを扱えるのはFab 1(旧AMDのFab 30:12FDXを量産予定)、Fab 7(旧Chartered。40nmまでのプロセスを量産)、Fab 10(旧IBM、IBM向けのFD-SOIを量産中)という感じで、EUVになったからといってFab 8でAMDの求めるキャパシティーが満たせるか、現状では怪しいところだ。したがって、現状EUV世代がTSMCのままなのか、Globalfoundriesに戻るのかははっきりしていない。

第2世代Ryzen Threadripperはゲーミング向けとクリエーション向けの2種類がある

 さて、7nmの話はこのあたりまでにして、本題の第2世代Ryzen Threadripperについてである。まだ細かい性能評価などは未公開(このあたりはきっとKTUこと加藤勝明氏がレビューをがんばってくださると信じています)であるが、発表に先立ち行なわれた説明会の内容を紹介しよう。

説明するJim Anderson氏(SVP&GM, Client&Graphics Business Group)。ちなみに撮影が制限されていた関係で、これはAMD提供のもの

 第2世代Ryzen Threadripperであるが、この世代からゲーミング向けとコンテンツクリエーション向けの2種類のSKUが投入されることになった。まずゲーミング向けにはXシリーズ2製品が用意される。

Ryzen Threadripperをワークステーション向けに使いたいというニーズが多いことを受けて、ラインナップを分けた格好になる
既存のRyzen Threadripper 1920X/1950Xのそのまま延長となる構成

 基本的にはZen+ダイをそのまま利用したものになる関係で、動作周波数が少し引き上げられており、競合はCore i9-7900Xと位置づけられている。

ゲーミングの場合は16コア/32スレッドでも十分多いわけで、32コア製品を用意するよりも、むしろ動作周波数を高める方向に振った形になる

 一方のコンテンツクリエーション向けであるが、こちらはWXシリーズとなる。製品は2970WXと2990WXの2製品で、ハイエンドの2990WXはCore i9-7980XE対応にふさわしいスペックと価格になっている。

相対的にコア数の多さがそのまま性能に直結しやすいレンダリングやエンコードなどの処理に向けたラインナップである
動作周波数は控えめだが、コアの数がXシリーズから倍増しており、価格もきっちり2倍という、ある意味わかりやすい構成である

 性能は下の画像のとおりで、レンダリング性能ではCore i9-7980XEを圧倒している、というのがAnderson氏の説明である。

今回示されたのはレンダリング系のみである。その他のテストは実際にベンチマークをとって確認してね、ということであろう

 さてその出荷時期であるが、13日に投入されるのは2990WXのみ。8月末にゲーミング向けの2950Xが追加され、残り2製品は10月に出荷開始となる。とりあえずハイエンドから、というのは昨年の初代Ryzenの発表と同じやり方である。

 なお、第2世代Ryzen Threadripperではパッケージも変更になった。初代Ryzen Threadripperよりは若干小さめ(というか、持ちやすい形状)だ。

とりあえずはハイエンドから、というのはもうAMDのセオリーの模様
この状態で販売されることになる
ふたを開けるとプロセッサーが。その下の四角い仕切りにはCPUクーラー用のマウントが収められている模様

オーバークロックチャレンジでCore i7-8086Kを上回るスコアを記録

 ところで説明会ではオーバークロックチャレンジも行なわれた。もちろんインテルがCOMPUTEXの基調講演で披露した謎の28コアプロセッサーへの対抗である。といってもさすがに水冷チラー(冷却水循環装置)を持ち込むのは論外であり、液体窒素を使っての穏当な(?)オーバークロックとなった。

たしかこちらはASUSのマザーボード(型番は不明)を利用したもの
液体窒素の雲を吐きながらベンチマークを実行
こちらはMSIのマザーボード(型番はやはり不明)を利用したと記憶している
ちょくちょく凍り付いてしまい、ドライヤーで霜を剥がしながらのチャレンジとなった

 利用されたのはRyzen Threadripper 2990WXのみで、第2世代Ryzen Threadripperに対応した新しいRyzen Masterを使いながらのチャレンジである。

64スレッドともなるとタスクマネージャーの表示が恐ろしいことに。ちなみにこれはオーバークロックチャレンジとは別のマシンでの撮影である
PPT/TDC/BDC/といったパラメーターがあるが、これらの詳細はまた後ほど

 ちなみに定格、つまり液体窒素を使って冷やしてはいるが、オーバークロックは一切行なわない状態でのCineBenchの結果は5212程度。これが最終的には7618まで引き上げることに成功している。インテルの7334cbを無事に打ち破れたというわけだ。

CineBenchは実行ごとにけっこう数値がばらつく。だいたい5200〜5300程度のスコアであり、これは低いほうに属する結果である。といっても十分高速なのだが
けっこう失敗も多く、これは最後の最後で取れたデータ。それでも7300くらいまでは普通に行ったので、インテルの水冷チラーの結果といい勝負である

 これはお遊びであって実用性には乏しいが、オーバークロックなしでも5000台というのはなかなか強烈なスコアであり、アプリケーション性能がどの程度確保できているか、楽しみな部分である。

 大事なことなので2度いうが、このあたりはきっとKTU氏ががんばってレビューしてくださると信じている。ということで第2世代Ryzen Threadripperのレビューは来週までお待ちいただきたい。

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