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APUのCPU性能は最大で2.7倍以上向上!7年前からの歴代APU比較レビュー

文●ふっけん

 AMDがAPU(Accelerated Processing Unit)を発売して早7年経った。APU登場以前は内蔵グラフィックスと言えばチップセット側に搭載されているのが一般的だった。つまり、ユーザーから見ればマザーボードに搭載されていたのである。

 この為にチップセット内蔵グラフィックスは「オンボードグラフィックス」と呼ばれることが多かったのだ。

 このチップセット内蔵グラフィックスではグラフィックスカードのローエンドモデルに追いつくか追いつかないかというレベルの性能であり、正直ゲームをプレイするには力不足だった。

 しかしながら、APUの登場によりCPU側にグラフィックス機能を統合することにより性能が飛躍的にアップし、グラフィックスカードのミドルレンジに迫る性能を手に入れることができたのだ。

 そして、この春に登場したばかりの、Raven Ridgeのコードネームで知られるAPUは、高性能CPUであるRyzenとGPUのVEGAを組み合わせたサラブレッド仕様となっている。

 そんなAPUの歴史をひも解きながら、今回から数回に渡って、メインストリーム向けの歴代APUの紹介を交えつつ、最新世代のAPUを紹介していきたいと思う。

第1世代「Llano」

「A8-3850」は初めてのメインストリーム向けAPUの最上位モデル

 2011年7月に登場した初のメインストリーム向けAPU。プラットフォームは「Socket FM1」。CPU部は「K10 Stars」の血統であり、PhenomⅡ/AthlonⅡに近いスペックとなっている。

 GPU部はRADEON HD 6000世代であり、最初に登場したA8-3850(発売当時の価格1万4000円前後)ではRADEON HD 6550Dとミドルレンジのモデルナンバーが与えられている。

 これに使用される「AMD A75チップセット」はUSB3.0とSATA3をサポートしており、プラットフォームとしてはパフォーマンス向けのAM3+よりも魅力的であった。翌年には後継のプラットフォームが登場したため、Socket FM1は非常に短命となってしまった。

第2世代「Trinity」

Trinity世代ではパッケージがコンパクトになった。最上位モデルは「A10-5800K」

 2012年10月に登場した第2世代APU。CPU部はAMD FXシリーズと同じBulldozerアーキテクチャーの第2世代のコアである「Piledriver」に変更されており、動作クロックが大幅に向上した。グラフィックスにはRADEON HD 7000シリーズを採用していた。

 プラットフォームはSocket FM1と互換性のない「Sokcet FM2」へ変更されたが、チップセットはFM1と同じAMD A55/A75を使用することができた。

第3世代「Richland」

Richland世代の最上位モデル「A10-6800K」

 2013年6月に登場。第2世代のTrinityのマイナーモデルチェンジ版と捉えて問題ないであろう。CPU部に大きな変更は無いものの動作クロックは大幅に引き上げられており、最上位モデルのA10-6800K(発売当時の価格1万3000円前後)では定格4.1GHz/Turbo Core時4.4GHzと現在のCPUと比較しても高く設定されているのだ。

 GPU部はRADEON HD 8000世代となっているが、ディスクリート・グラフィックカードでHD7000世代→HD8000と言えばOEM向けのリネーム品であり、こちらもマイナーチェンジと言うことになる。

 この頃、東京ゲームショウのAMDブースにAMD製品を持っていくとA10-6800Kが貰えるというビッグなサプライズキャンペーンが行なわれたことでも話題となった。

第4世代「Kaveri」

Kaveri世代の最初に登場した「A10-7850K」

 2014年1月に登場。CPUとGPUを同じプログラムで扱えるようにするHSA(Heterogeneous System Architecture)とCPUとGPUがアクセスするメモリー空間を統一するhUMA(heterogeneous Uniform Memory Access)に対応し、CPUとGPUが対等に扱えるという意味で「真のAPU」と言われていた。「A10-7850K」の発売当時の価格は2万2000円前後。

 CPU部はBulldozerアーキテクチャーの第3世代コアである「Steamroller」が採用されている。GPU部はGCNアーキテクチャーの「Radeon Rシリーズ」が採用された。プラットフォームはFM2+へと変更されている。

 さらに、「Fluid Motion」という、アニメなどの動画を60fpsにアップコンバートしてヌルヌルに再生できる機能が搭載され、この機能を売りにしたショップブランドPCも発売された。

第5世代「Godavari」

Godavari世代の最上位モデル「A10-7890K」。大型クーラーが付属するのでパッケージがデカい

 2015年5月に登場した「Godavari」は、「Kaveri Refresh」とも呼ばれておりCPU、GPU共に動作クロックが上がっている以外に大きな違いはなかった。最上位の「A10-7890K」の発売当初の価格は2万円前後。敢えて違いを言うなら、一部モデルに付属するCPUクーラーが静音性を意識した大型のモデルに変更されたことであろう。

第6世代「Bristol Ridge」

ひっそりとリリースされたBristol Ridgeの省電力タイプの最上位モデル「A12-9800E」

 2017年9月(リテール品)にデスクトップ版として投入されたCPU。元々はノート向けに投入されたCarrizoをデスクトップ向けに仕立てたものである。最上位のA12-9800Eの発売当初の価格は1万4600円前後。

 CPU部はBulldozerアーキテクチャーの最終形態のコアである「Excavator」が採用されており、クロックあたりの性能は更に向上している。APUでは初めてのSocketAM4とDDR4メモリーをサポートしたのも特徴だ。

 国内向けのリテール品ではTDP 35Wの省電力モデルが2種類発売されている。(ショップブランドPCに使用されるOEM向けモデルには「A12-9800」等のパフォーマンス重視モデルも投入されている。)

 ただし、このBristol Ridgeは大々的に発表されたというよりは、Raven Ridgeまでのつなぎとしてひっそりと登場したという雰囲気がある。特にリテール品は、省電力APUプラットフォームであった「AM1(SocketFS1b)」の後継機という印象がある。

 しかしながら、消費電力が大きかったBulldozerアーキテクチャーをここまでの省電力モデルとして成熟させたことは凄いとしか言いようがない。

第7世代「Raven Ridge」

Ryzenの血統を引き継ぐRaven Ridgeの最強APU「Ryzen 5 2400G」

 今回の主役となる最新のRyzen世代のAPU。CPU部には第2世代Ryzen(Zen+)コアが採用されており、従来のBulldozerベースのコアと比較するとクロックあたりの性能が大幅に向上している。GPU部も一新されており、「RADEON VEGA Graphics」へと進化している。

 執筆時点では4コア8スレッドの上位モデル「Ryzen 5 2400G」(1万8900円前後)と4コア4スレッドの下位モデル「Ryzen 3 2200G」(1万2100円前後)の2種類が発売されている。

各世代のAPUの性能と消費電力を比較してみた

 Ryzen世代のAPUが登場したこともあり、どれくらい性能が向上したのか気になる方も多いと思う。ここでは先ほど紹介した歴代APUの用いてCPU性能と消費電力の比較をおこなった。歴代APUオーナーの方は是非参考にしていただきたい。

比較に使用した歴代APU8モデル
モデルナンバー Ryzen 5 2400G Ryzen 3 2200G A12-9800E A10-7890K
コードネーム Raven Ridge Raven Ridge Bristol Ridge Godavari
製造プロセス 14nm 14nm 28nm 28nm
コア/スレッド 4 / 8 4 / 4 4 / 4 4 / 4
クロック(定格) 3.6GHz 3.5GHz 3.1GHz 4.1GHz
クロック(TurboCore) 3.9GHz 3.7GHz 3.8GHz 4.3GHz
対応メモリー DDR4-2933 DDR4-2933 DDR4-2400 DDR3-2133
グラフィックス RADEON RX VEGA11 RADEON VEGA8 RADEON R7 RADEON R7
TDP 65W 65W 35W 95W
プラットフォーム Socket AM4 Socket AM4 Socket AM4 Socket FM2+
比較に使用した歴代APU8モデル
モデルナンバー A10-7850K A10-6800K A10-5800K A8-3850
コードネーム Kaveri Richland Trinity Llano
製造プロセス 28nm 32nm 32nm 32nm
コア/スレッド 4 / 4 4 / 4 4 / 4 4 / 4
クロック(定格) 3.7GHz 4.1GHz 3.8GHz 2.9GHz
クロック(TurboCore) 4.0GHz 4.4GHz 4.2GHz -
対応メモリー DDR3-2133 DDR3-2133 DDR3-1866 DDR3-1866
グラフィックス RADEON R7 RADEON HD8670D RADEON HD7660D RADEON HD6550D
TDP 95W 100W 100W 100W
プラットフォーム Socket FM2+ Socket FM2 Socket FM2 Socket FM1
比較機スペック
CPU Ryzen 5 2400G、Ryzen 3 2200G、A12-9800E、A10-7890K、A10-7850K、A10-6800K、A10-5800K、A8-3850
マザーボード MSI「B350 PC MATE」(AMD B350)、ASRock「FM2A88X Extreme4+」(AMD A88X)、GIGABYTE「GA-A75M-UD2H」(AMD A75)
メモリー Crucial「BLS2K4G4D240FSB」(DDR4-2400、4GB×2)、Team「TED38192M1600C11DC3」(DDR3-1600、4GB×2)
グラフィックス APU内蔵グラフィックス
ストレージ Samsung 「MZ-750120B/IT」 (SSD 750 EVO 120GB)
OS Windows 10 Pro(64bit バージョン1803)

※今回のベンチマークではAPUがサポートする最高クロックのメモリーではなく、普及価格帯のメモリーを使用している。

Ryzen世代は従来モデルよりも最大2.7倍以上性能を向上!

 CPU性能を手っ取り早く比較するには定番のベンチマークソフトである「CINEBENCH R15」が最適だろう。3DCGのレンダリングがCPUのコア数・スレッド数に応じてタイル状に描画されるために直感的にも「速さ」を体感できるのだ。マルチスレッドに加えシングルコアの性能を比較してみた。

 結果は見事に「Ryzen世代」と「Ryzen世代以前のモデル(以下、旧モデル)」グループに分かれる形となった。マルチスレッドではRyzen 5 2400Gのみ4コア8スレッドであるため、旧モデルで最も数値の高いA10-7890Kと比較しても約2.4倍、最も古いA8-3850とは2.7倍以上と驚異的なスコアーになっている。

 しかし、注目したいのはむしろRyzen 3 2200Gであろう。こちらは旧モデルと同じ4コア4スレッドながら、A10-7890Kよりも約1.7倍の性能向上を果たしており、とても同じ価格帯の後継モデルとは思えないような成長ぶりである。

 シングルスレッドでもRyzen 5 2400G/Ryzen 3 2200Gのスコアーが飛び抜けており、Ryzen 5 2400Gは旧世代で最も数値が高かったA10-6800Kの約1.6倍、A8-3850とは約2.1倍以上のスコアーとなった。クロックあたりの性能を多少犠牲にしても動作クロック向上を狙ったBulldozerアーキテクチャーとクロックあたりの性能を重視したZenアーキテクチャーによる「格の違い」を見せつけてくれた形となった。

 Ryzen世代との差を見た後では、旧モデルグループのCPU性能はどんぐりの背比べと言ったところであり、どのモデルも大差ないように見えてしまうのである。(厳密に言えばA12-9800Eは低消費電力向けでありクロックが低いわりには健闘していると言えなくもない)

Ryzenの描画性能はA8-3850の2倍!

 CINEBENCHでは3D CGやCADで多用されるAPIであるOpenGLの性能を測ることができる。ここでは歴代APUの内蔵グラフィックス機能の性能を比較してみた。

 GPUスコアーは省電力モデルのA12-9800Eを除けば順当に世代ごとに性能向上を果たしてと言える。その中でもRADEON VEGA Graphicsを内蔵しているRyzen 5 2400G/Ryzen 3 2200Gの性能は高く60fpsに迫るスコアーを叩きだしている。

 流石にワークステーションの代わりにガンガン使うのは厳しいと思われるが、ちょっとした3D CADくらいなら十分に耐えうると思われる。

Ryzen世代は驚異的にワットパフォーマンスが向上した!

 APUと言えば強力なグラフィックスが内蔵されていることもありグラフィックスカードの搭載が困難な小型・省スペースPCに搭載したいという方も多いだろう。小型PCで使用されるSFX規格やTFX規格の電源は一般的に250〜300ワット前後のものが多く、余裕をみるならこれらの半分以下の消費電力が望ましいだろう。

市販のワットメーターにて、以下の3条件で測定した。

  • アイドル時(起動後5分間放置)
  • CPU高負荷時(OCCT OCCT:CPU動作時)
  • GPU高負荷時(OCCT GPU:3D動作時)

 プラットフォームが異なるのでメモリーやマザーボードなどのAPU以外の消費電力差が含まれていることを考慮する必要があるが、アイドル時においてRyzen世代のAPUは他のモデルと比べると6〜17W低くなっている。

 CPU高負荷時のRyzen世代のAPUは、省電力モデルであるA12-9800E以外のCPUと比べ、30〜60W程度消費電力が低いという、結構大きな差がついた。元々Bulldozerアーキテクチャーはクロックを上げると消費電力がかなり大きくなる傾向があったがZenアーキテクチャーでは大きく改善され、ワットパフォーマンスの向上に寄与している。

 GPU高負荷時は消費電力が目まぐるしく上下に変化するため、1分間で最も高い値を採取した。デジタルワットメーターのサンプリング時間の関係で確度はあまり高くないと思うので参考程度に見て欲しい。

 CPU負荷時と比較すると消費電力は低めである。A12-9800を除けばどのモデルも100〜125W程度に収まっており、CPU負荷時に比べるとモデルによる差は少ない。

まとめ:Ryzen世代は性能が上がりながらも省電力!

 今回は各世代のAPUの「CPU性能」と「消費電力」を比較してみた。CPU性能に関していえばRyzen世代である「Ryzen 5 2400G」は、最も古いA8-3850と比較するとシングルスレッドなら2.1倍、マルチスレッドなら2.7倍差という飛び抜けた性能になっている。

 また、消費電力はこれだけのCPU性能が上がったにも関わらず、アイドル時、高負荷時ともにRyzen世代以前のものより低く、高負荷時でもPC全体で100W程度に収まっている。つまり、ITXサイズの小型PCケースやブック型スリムPCケースでも運用しやすいと言うことができるだろう。

 正直、ここまで大きな差がつくと以前のAPUをお使いの方はすぐにでもRyzen世代のAPUに乗り換える価値があると言っても良い。例えハイエンドCPUで新モデルが登場しても10%も性能が上がらないというパターンもある。そう考えるとこれだけ大きな差を見せつけてくれるのは驚異的なのである。

 もちろん、APUの最大の特徴である内蔵グラフィックスの進化も忘れてはいけない。次回のレビューでは各世代のAPUを使いゲーム関係の性能比較を行なう予定なのでお楽しみに。

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