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Threadripperは水冷が主流だけどちょっと予算が……という方へ

安くて冷えるThreadripper用簡易水冷クーラーを徹底テストで 検証(3/4)

文● 石川ひさよし

最大温度はほとんど同じだが高性能なものほど上昇がゆるやか、下降はすばやい

今回は、Ryzen Threadripper 2990WXをベースにシステムを組み、CINEBENCH R15のCPUテストと、OCCTのCPU LINPACKテストで実行中のCPU温度を計測してみた。

検証環境

CPU温度計測にはHWiNFO64を用い、1秒間隔のログを取得しグラフ化した。AMDのCPU温度には、CPU(Tctrl)とCPU(Tdie)があるが、後者がダイ上のセンサー温度、前者はTdieを元に27度オフセットしたもので、Threadripper内部での制御(オーバークロックや冷却など)に用いる値だ。念のためともに掲載するが、基本的にレンジが異なるだけでグラフの形は同じになる。グラフとしては低い温度のTdieのほうが挙動を把握しやすい。一方、制御に関してはTctrlが用いられるので、冷却不足などを見るならこちらの値に注意したほうがよい。

さて、まずはOCCTのCPU LINPACK。CPUに高負荷をかけ、安定性などを検証するためのストレスベンチマークだ。ONから10分間計測し、最初の3分間をグラフ化してみた。

OCCTでは、ある程度実行するとどれも最大温度が95度あたりで安定する。この点で冷却性能差は見られない。ただし、開始直後の温度上昇は違いが見られた。スタート時の温度上昇は、途中まではあまり大きな差がない。しかし22秒経過後に温度上昇がやや緩やかなEnermax LIQTECH TR4 II、それよりも高めで推移し上下に暴れた感のあるNZXT KRAKEN X52、温度上昇はもっとも急だったAntec Mercury240 RGBとなる。ただ、最初に触れたように最終的には同じような温度に落ち着く。OCのクロック制御などでも温度が管理されるためこのような温度に落ち着くと考えることもできるが、3製品、冷却性能に不足はないようだ。

続いてCINEBENCH R15。全スレッドを使い切り計算するCPUテストは、32コア64スレッドのThreadripper 2990WXにとっては一瞬。そのためOCCTのようにCPU温度が上がりきることはないが、温度の上がり方、下がり方の推移が分かりやすく現れた。最大温度が低く、上昇もゆるやかで下降も素早かったのがEnermax LIQTECH TR4 II。先と同様だ。冷却性能の高さが現れている。NZXT KRAKEN X52はもっとも温度が高くなったが、上昇も下降もゆるやかだ。ゆるやかなのは動作音を聞いている印象では、ファンの回転数の変化が小さいからのように感じた。一方、高負荷時は中間的な温度だったが、上昇後の下降が速やかで、アイドル時がもっとも冷えていたのがAntec Mercury240 RGB。ラジエータが小さいものの、ポンプの容量が大きいことが功を奏したのだろうか。

この2つのテストでの最小/最大温度をあらためてグラフ化した。先のグラフはテスト実行に合わせてトリミングしているが、ここでの値はテスト前のアイドル時も加えている。ただし、アイドル時と言っても小さなスレッドが実行されていることが多く、そうしたタイミングにはまってしまうとやや高めに出てしまうのでアイドル時の値は参考程度。高負荷時の最大側で見ると、NZXT KRAKEN X52がわずかに高めの印象があるが、先に指摘したとおり動作音の変化が小さく、耳で聞こえる印象としてはより静かに感じる。問題ないレベルに冷却できているため、一概に悪いとは言えない。小さいなりに健闘しているのがAntec Mercury240 RGB。先のとおり温度変化は急になるが、最大を抑えられているのはラジエータサイズだけでは性能を見積もりきれないことの現れと言える。Enermax LIQTECH TR4 IIは、やはり専用設計と大きなラジエータでよく冷える。そして実は数値上もっとも静かだった。

その動作音。3製品とも、ファン回転数制御がONになった後はアイドル時と高負荷時でほとんど差がなかった。そこで高負荷時の動作音で比較してみた。結果はEnermax LIQTECH TR4 IIが36.2dB、NZXT KRAKEN X52が37.7dB、Antec Mercury240 RGBが36.5dB。数値上では多少の差があるが、実際に耳で聞くと判別できるほどではなくどれもかなり静かだ。一応、そうした静かな動作音のなかでも、NZXT KRAKEN X52は数値上もっとも大きかったが耳で聞く印象では静かに感じた。意外と、静かであっても回転数の変化時は「あ、音が変わった」と気づきやすい。ほとんど回転数が変わらないモデルではこれがない分、印象として静かに感じられるようだ。ただ、NZXT KRAKEN X52の場合は必ずUSBケーブルをつなぐこと。ファン制御が効いてない状態での動作音はとても大きい。

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