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【AMDチップセットマザーボードレビュー第2回】

MSI「MEG X570 GODLIKE」に見るX570マザーが9万円する理由(ワケ) (2/2)

文●石川ひさよし 編集●AMD HEROES編集部

連結して全体で冷却する「拡張ヒートパイプデザイン」はめちゃくちゃ冷える

 AMD X570チップセットでは、ほぼすべてのマザーボードがチップセットファンを搭載している。PCI Express Gen4などの豊富なインターフェースによってチップセットの負担が増え、熱量が増加している。マザーボードメーカー各社ここをどう冷却するのか、冷却性能とデザインを競っているわけだ。

CPUソケットを取り囲むように搭載されたVRMヒートシンク。その中間にシルバーのヒートパイプが見え隠れする。
VRMの冷却も重要だがAMD X570ではチップセットの冷却にも注目。

 MEG X570 GODLIKEでは、「拡張ヒートパイプデザイン」が採用されている。カンタンに言えばCPUソケットの左と上にあるVRMヒートシンクとチップセットヒートシンクを、ヒートパイプによって一体化し、全体で冷却する仕組みだ。これは2000年代初頭から自作PCを楽しんでいる方には少し懐かしい設計。一体化、大型化すればそれだけで冷却性能は向上するが、さらに安心感を加えているのがチップセットファンだ。

VRM部分の2つのヒートシンク、ATX24ピン付近まで伸びる大型のチップセットヒートシンクをヒートパイプでつなぎ、ひとつの超大型ヒートシンクとして冷却する。

 チップセットファンは、ビデオカードも手掛ける同社だけに、その設計技術をマザーボード用にフィードバックし開発されている。よく見るとファンの先端の角度を軸寄りとは少し変えているが、これは同社のGPUクーラー用ファンでも見られる同社の特許デザイン。そして軸にはダブルボールベアリングを採用し、動作ノイズを抑えている。こうした設計により、チップセットファンで問題になりがちなノイズは、稼働中も極めて低いレベルに抑えられているのに加え、やはりGPUクーラーでお馴染みの準ファンレス機能「Zero Frozrテクノロジ」も搭載している。

同社が特許を持つブレードと静音にすぐれたダブルボールベアリング、さらに準ファンレス機能Zero Frozrを組み合わせたチップセットファン。口径もやや大きめ。

 チップセットファンに搭載されたZero Frozrだが、まず電源ON時は一時的に最大回転になるようだが、POST処理のチェックが通るとファンの回転数制御が機能し、検証時は回転を停めた状態が続いた。むしろ、拡張ヒートパイプデザインの冷却性能により、ベンチマークをかけてもなかなかファンが回転し始めない。そのため、筆者がテストしたAMD X570チップセット搭載マザーボードのなかではトップクラスの静かさだった。

 ちなみに、一見すると拡張ヒートパイプデザインに含まれてしまいそうなM.2用ヒートシンク「M.2 Shield Froze」は、実際には分割されている。M.2 Shield Frozeは、M.2 SSDの表裏を挟んで熱を逃がす構造。安価なモデルで採用される表面だけにヒートシンクを接触させるものとは異なる。厚みの調整用か予備のためか、M.2 SSD裏面用の熱伝導シートは2枚重ねだった。

4本のPCI Express x16スロットの間に3つ搭載されたM.2スロットとそこに搭載された「M.2 Shield Froze」。
M.2 SSDを表裏両面から冷却する設計。
熱伝導シートも不足ないよう十分な枚数が付属する。

 ここでVRM設計にも触れておこう。ハイエンドマザーボードはハイエンドユーザーがより好むハイエンドCPUを、さらにOCで楽しむ用途までカバーするVRM設計が施される。まず電力の入り口であるEPS12V端子は2つ。これは当然だろう。メインストリームはもちろんアッパーミドルのAMD X570マザーボードでも8+4ピンであることが多いが、MEG X570 GODLIKEではさらに余裕をもった8+8ピンで大電力を供給できる。その次段に搭載されているのがIRのPWMコントローラ「IR35201」で、デジタルPWMによって素早く、正確な電力制御を行う。

ずらりと並ぶチョークは19個。圧巻の電源回路設計だ。
デジタルPWMコントローラ「IR35201」による正確で素早い電力供給でCPUを安定動作。

 PWMコントローラの次段で7フェーズに分割される。そしてそこに用いられているのがフェーズダブラーの「IR3599」だ。このダブラーによって次段は14フェーズ回路となる。そして最大70A対応のDr.MOS「TDA21572」とチタニウムチョークによってCPU電源回路が構成されている。ただ、これはあくまでCPU用。実際にはメモリ用などを含め14+4+1という大規模な回路が構成されている。負荷が分散され、1フェーズあたりの余裕が生まれ、多コア・高クロックのCPUが安定動作することはもちろん、発熱の抑制、OCへの耐性なども向上するわけだ。

フェーズダブラー「IR3599」を用いて、1フェーズあたりの負荷を下げる。

 では、こうした設計によって発熱はどのように抑えられているのだろうか。PCMark 10実行し、その中で最大と思われる温度を計測してみたが、1番目のM.2スロット部分で50.1℃、VRM部分はおおむね45℃前後、チップセット部分はファン付近で35℃前後といったあたりだ。バラック状態でケースファンなしというエアフローの乏しい条件で、ここまで冷却できるのはさすがだろう。

PCMark 10実行中の温度。青が低く、緑→黄色→赤→白と高い。もっとも青い部分(床)は30.8℃、もっとも白い部分は50.1℃。オレンジあたりで40℃が目安。ヒートシンク部分は一部50℃近いがおおむね40℃台前半〜半ば。チップセットもよく冷却できている。
チップセットファンのデフォルト設定を確認したところ、50℃を超えてようやく回転する様子。どうりで負荷をかけてもなかなか回らないわけだ。

手を入れられる箇所にはすべて作り込まれたMSIマザーボード部隊至極の1枚

 MEG X570 GODLIKEはハイエンドユーザーのためのマザーボードとして、そのクラスのユーザーが求める最新インターフェースを搭載し、安定性や高いOC耐性を実現する同社のなかでも最上級の電源設計、冷却設計が盛り込まれている。上記で紹介した以外にも、サーバーグレードのPCBが用いられていたり、いわゆるメインストリーム向けモデルとは根本から異なるモノだ。

 MEG X570 GODLIKEの価格は、こうした機能や設計のためである。フラグシップとして、同社の技術の粋を尽くした「見せ玉」ともとらえられがちな製品ではあるが、これを手にすれば12コア24スレッドのRyzen 9 3900Xはもちろん、今後登場する予定で16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xなど、高性能CPUを用いた「不安要素のない」PCを組めるだろう。

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