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クロック微増のRyzen 3000XTシリーズと現行モデルの難解な性能差を30回試行で徹底比較(3/5)

加藤勝明(KTU) 編集●ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

Ryzen 3000シリーズの3モデルと世代間比較

では、今回の検証環境を紹介しよう。今回入手したRyzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTとそれに対応するTなしモデル、合計6種類のCPUの性能を比較する。BIOSは当初Ryzen 3000XTシリーズ用として配布されていた「F20a」で検証していたが、Ryzen 9 3900X/3900XTのみ締め切り間際に見つけた「F20b」で検証している。ちなみに、F20aとF20bの差分は一切明らかにされていない。

今回はCPUパワーの差が極めて小さいことが予想されるため、ビデオカード側のボトルネックを最小限にできるよう、現時点で最速のGeForce RTX 2080 Tiを使用した。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 9 3900XT」(12C/24T、3.8~4.7GHz)
AMD「Ryzen 9 3900X」(12C/24T、3.8~4.6GHz)
AMD「Ryzen 7 3800XT」(8C/16T、3.9~4.7GHz)
AMD「Ryzen 7 3800X」(8C/16T、3.9~4.5GHz)
AMD「Ryzen 5 3600XT」(6C/12T、3.8~4.5GHz)
AMD「Ryzen 5 3600X」(6C/12T、3.8~4.4GHz)
CPUクーラー Corsir「H115i PRO RGB」
(簡易水冷、280mmラジエーター)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」
(AMD X570、BIOS F20a/F20b)
メモリー G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」
(DDR4-3200、16GB×2)×2
グラフィックス NVIDIA「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」
ストレージ GIGABYTE「GP-ASM2NE6200TTTD」
(NVMe M.2 SSD、2TB)
電源ユニット Super Flower「LEADEX Platinum 2000W」
(80PLUS PLATINUM、2000W)
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」
(May 2020 Update)

シングルスレッド性能は確かに向上した

まずは定番「CINEBENCH R20」のスコアーを比較して、Ryzen 3000XTシリーズの実力を明らかにしていこう。

「CINEBENCH R20」のスコアー

この結果からT付きモデルの効果はシングルスレッドスコアーの伸びに表われている。ベースクロックは据え置きでアクティブコア数の少ない時に到達できる最大ブーストクロックが引き上げられているのだから、マルチスレッドスコアーはほぼ変わらず、シングルスレッドスコアーの伸びが大きいのは当然の話だ。

しかし、シングルスレッドのスコアー増分は10ptsないし14ptsと非常に小さく、比率にしてせいぜい2.6%と、極めて小幅にとどまっている。2000~4000円強の価格差(しかもRyzen 9/7に関してはCPUクーラー別売)が3%未満のパフォーマンスゲインに見合うかどうかは、買い手次第といったところだろう。

続いては総合ベンチマーク「PCMark 10」のStandardテストを実施してみた。CPU負荷の軽いものから重いモノまで、様々なシチュエーションで試せるこのベンチマークは、Ryzen 3000XTシリーズの実力見るのにちょうど良さそうだ。

「PCMark 10」Standardテストのスコアー

まずは総合スコアー(青)に注目すると、T付きのほうがTなしよりも高いスコアーを獲得している。特にRyzen 5 3600X→3600XTの伸び幅が大きい。上位CPUになるほどその差は縮まり、Ryzen 9 3900XTと3900Xの差はわずか5ポイントにとどまる。これは両者に差があると言うことはできないレベルだ。テストグループによってはRyzen 3900Xのほうが高いスコアーを出しているなど、上位CPUの存在意義が危ぶまれる結果となった。

「PCMark 10」Standardテスト、Essentialsテストグループのスコアー

アプリの起動速度(App Start-up)やビデオ会議(Video Conferencing)、ウェブブラウジング速度(Web Browsing)などをチェックするEssentialsテストグループの結果に目を向けてみよう。App Start-upにおいてはRyzen 5 3600Xのほうが3600XTよりも高スコアーになっている点から見ても、ブーストクロックで100MHz程度の差は実感するのは難しいことがわかる。

「PCMark 10」Standardテスト、Productivityテストグループのスコアー

実際にLibreOfficeを動かすProductivityテストグループも、概ねT付きのほうが高スコアーを出しているが、Ryzen 9 3900XTと3900Xの総合スコアーのように、T付きが負けるシーンも見られた。

「PCMark 10」Standardテスト、DCC(Digital Content Creation)テストグループのスコアー

CPU負荷が全般的に高いのが最後のDCCテストグループだ。グラフの値からわかる通り、Ryzen 9/7/5でスコアー帯が分かれているものの、T付きがXに対して明確なアドバンテージを発揮していない。ブースト時のクロックが引き上げられても、それを現実のシーンで体感するのは極めて難しいことを示している。

続いては「3DMark」からFire Strikeテスト、Time Spyテストの2本を実行してみる。

「3DMark」Fire Strikeのスコアー

DX11ベースのFire Strikeではコア数が少ないほうがGraphicsスコアーが伸びる傾向にあるが、CPUパワーを見るPhysicsテストのスコアーも加点されるため、結局のところ総合スコアーはコア数がある程度多いほうが高くなることが多い。しかし、Combinedスコアーからもわかる通り、ダイ2つにコアが分かれてしまっているRyzen 9 3900X/3900XTよりも、1ダイで完結するRyzen 7 3800X/3800XTのほうが総合スコアーが伸びている。

ただし、このテストでもT付きが負けるシーンが多々見られた。既存のRyzen 3000シリーズを持っているなら、T付きに乗り換える必要はなさそうだ。

「3DMark」Time Spyのスコアー

DX12ベースのTime Spyでも傾向はFire Strikeと同じである。Ryzen 7/5では総合スコアーにおいてT付きのほうがTなしモデルを上回っているものの、いずれも誤差レベルの差しかない。

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