2017年にAMD Ryzenが登場してから4年の月日が経った。進化の速度が早いPCパーツ業界は、4年という月日で状況が大きく変わる。Ryzen対応マザーボードでは、現在でもソケットAM4は受け継がれているが、チップセットは300シリーズ、400シリーズ、500シリーズと進化してきた。このあたりで一度、300~500シリーズでマザーボードがどのように変わってきたのか、ASRockの「Taichi」シリーズで振り返ってみよう。
トレンドに合わせて進化してきたTaichiの外観
Taichiシリーズは2010年代半ばに登場したもので、「太極」をイメージしたデザインコンセプトとコストパフォーマンス重視の方向性だった。
Ryzen用としては2017年の「X370 Taichi」が最初で、チップセットはAMD X370。初代Ryzenとともに発売された。この頃はまだ対極のテーマが色濃く、ブラック&ホワイトのカラーリングで、直線的な部品が並ぶマザーボード上に曲線のラインを描いたデザインだった。
次に登場したのが、AMD X470チップセットの「X470 Taichi」。第2世代Ryzenに合わせて発売した。ホワイトがまぶしかったX370 Taichiのデザインに対し、X470 Taichiはホワイト部分がグレーに変わり、コントラストが低くなったことで落ち着いた印象を受ける。
X470 Taichiが最初というわけではないが、チップセットヒートシンクが丸くなり、そして歯車がデザインに取り込まれた。太極と歯車に関係があるのかはいまだに分からない。ただし、一般的に四角いものというイメージだったチップセットヒートシンクが丸くなったことでデザイン面のインパクトは大きかった。
そして現行モデルが「X570 Taichi」。AMD X570チップセットを採用している。X570 Taichiはデザインがまた大きく変わった印象だ。チップセットヒートシンクは現在のトレンドであるM.2ヒートシンクと一体感のあるデザインになり、メインとなる対極のデザインが、より広い面積のM.2ヒートシンク側へ移っている。チップセット側には小さくても存在感のある銅色歯車を配置。金属地のヒートシンクカバーなどのデザインは、同じチップセットを搭載する同社ゲーミングマザーボードと統一感を持たせている。
また、バックパネルのデザインに注目すると、X370、X470 Taichiの頃はまだ一体型バックパネルではなかった。一体型バックパネルはASRock自体、ほかと比べて採用には消極的だった印象だ。一体型バックパネルの問題として、組み合わせるケース側の精度が悪い場合、固定されたバックパネルがはめづらかったり、無理やりはめると接合部分に負荷がかかったりといった問題がある。X570 Taichiの一体型バックパネルは完全固定ではなく、上下左右にわずかに動かせるだけの遊びを持たせることで、この問題に対処している。
また、X470 TaichiではVRMヒートシンクに被るシールドカバーが一体化するという変化があった。X370 TaichiのシールドカバーはVRMヒートシンク部分とはまだ分離している。この部分は主にデザイン上のアクセントだ。映像配信などで使っているPCが映る機会があるが、実際にパーツが組み込まれたPCではマザーボードが露出する部分というのは少ない。
とはいえ、マザーボードメーカーとしては、その配信者が使用している製品に視聴者が興味を持ってくれることが大切だ。VRMヒートシンクからバックパネルにかけては比較的露出度が高く、この部分を華やかに彩ることで製品をアピールできるわけだ。
この一体型シールドカバーのデザインも、X470 Taichiの頃は「ASRock」ロゴ+LEDだったが、X570 Taichiでは「X570 Taichi」という製品名+LEDに変わっている。このあたりは上記のような思惑があったのではないだろうか。
なお、LEDの制御ユーティリティは、X370 Taichiが「ASRock RGB LED」で、X470、X570 Taichiでは今やおなじみの「ASRock Polychrome SYNC」だ。