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今週はまたもやAMDのGPUの話題だ。ただしGPUそのものではなく、AMDが6月22日に発表した、FidelityFX Super Resolution(FSR)の話である。第一報はすでに掲載されているが、もう少し突っ込んだ解説をしよう。
FSRは、基本的にはアップスケーリングを利用した性能改善技術である。例えば4K(3840×2160ピクセル)の画像を4Kとしてレンダリングするのでなく、フルHD(1920×1080ピクセル)としてレンダリングして、そのまま縦横2倍にすれば出力そのものは4Kながら、GPUの負荷はフルHDと大して変わらないということになる。
もちろんそのままでは画質の細かさはフルHDのままなので、ディテールを補完することで「4Kらしく」見せる技術が必要である。
実はこれに関してはTV向けの方がむしろ先行していた。古いところでは2008年に東芝のREGZAに搭載された超解像技術がまさにこれである。もっとも高価な大画面TV(この2008年モデルの場合、フルHDで一番安い37V型で24万前後である)だからこそ、アップスケーリング専用チップを搭載して処理をさせることで対応したが、同じことをPCのGPUでやろうとすると負荷が大きすぎることもあって、なかなか普及してこなかった。
ここに2018年に投入されたのがNVIDIAのDLSSである。今回のAMDのFSRを含む従来のアップスケーリングにともなう画質改善処理は基本的にはアルゴリズムベースである。これに対してDLSSは、元画像とこれを縮小した画像のセットを大量に学習させ、これを基に縮小した画像からそれに相当する元画像を出力する、という機械学習の手法を使って画質改善を図ったものだ。
ただしこのためには膨大な推論処理が必要になる。DLSSがTensor Coreを搭載したNVIDIAのGPUでしか利用できないのは、Tensor Coreでこの推論処理を行なわせているためである。しかし、FSRでは従来型のアルゴリズムベースのアップスケーリングで、DLSSと比べても遜色ない品質を保てるとしている。
具体的にはどんな処理になるのか? 例えばQuality Modeの場合、以下の2パスで構成される。
元画像を1.5倍に拡大
独自のアルゴリズムで画質補完
描画パイプラインは下の画像の通りで、まず前段でアンチエイリアスとトーンマッピングだけ済ませてから、アップスケーリングとシャープニングを実施、後段で必要ならノイズ付加などをすることになる。