AMD大復活のきっかけとなった「Ryzen」プロセッサーと同じ、第2世代ZenマイクロアーキテクチャのCPUコアに、ライトゲームが十分プレイできるパフォーマンスを備える「RADEON RX VEGA」ベースのGPUを内蔵した「Ryzen G」シリーズ。価格が4コア/8スレッドの「Ryzen 5 2400G」で1万7000円前後、4コア/4スレッドの「Ryzen 3 2200G」なら1万2000円前後とお買い得なのも◎。
ウェブ動画視聴や音楽鑑賞といった日常作業から、オフィスアプリ、軽い写真編集、ライトゲーミングまで、サクサク動作で行なえるマシンを、10万円を余裕で切る予算で組むことが可能という、抜群のコストパフォーマンスが魅力となっている。
Ryzen Gの主なスペック
製品名 | Ryzen 5 2400G | Ryzen 3 2200G |
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開発コードネーム | Raven Ridge | |
製造プロセス技術 | 14nm FinFET | |
CPU コア数/スレッド数 | 4/8 | 4/4 |
CPU 定格クロック | 3.6GHz | 3.5GHz |
CPU 最大クロック | 3.9GHz | 3.7GHz |
共有L3キャッシュ容量 | 4MB | |
メモリーコントローラー | DDR4-2933 | |
メモリーアクセスチャンネル | 2ch | |
搭載GPU | RADEON VEGA 11 | RADEON VEGA 8 |
GPU最大クロック | 1250MHz | 1100MHz |
DirectXサポート | 12.0(Feature Level 12_1) | |
GPUシェーダプロセッサー数 | 704基 | 512基 |
GPU演算ユニット数 | 11基 | 8基 |
GPUテクスチャーユニット数 | 44基 | 32基 |
GPU ROP数 | 16基 | |
TDP | 65W |
Ryzen Gは抜群のコスパも魅力だが、もうひとつの魅力が隠されている。それが、2014年に投入されたAMDの「Kaveri」世代のAPUや「Radeon RX 200シリーズ」で採用され、その効果がスゴイと話題になったAMD独自の映像補完技術「Fluid Motion Video」(以下:Fluid Motion)になる。
Fluid Motionは秒間24フレームや30フレームの映像を60フレームに補完、再生してくる技術で、映画と同じく毎秒24コマでの再生を前提として作られるアニメでは、キャラなどが驚くほど、ぬるぬると動くようになる。同様な技術はほかにもあるが、Fluid MotionではCyberLink社の「PowerDVD」と組み合わせることで市販のアニメや映画のBlu-ray Disc再生時にFluid Motionによる映像補間を適用できるようになっている。
その効果は特にアニメ作品において絶大で、Blu-rayの1080pによる美しさに加え、滑らかな動きによる映像を満喫できる。また、開発は終了しているが無料再生ソフトとして人気のある「Media Player Classic Home Cinema」(以下:MPC-HC)やMPC-HCをベースにした「Media Player Classic Black Edition」(MPC-BE)と組み合わせることで、手持ちの動画ファイルやYouTubeの動画を60フレームで再生することもできる。
日常用途やオフィス、軽いPCゲームのプレイに加え、ぬるぬる動く動画を楽しめるRyzen Gは低コストPC自作を考えている人はもちろん、アニメ好きにも超オススメと言える。
その効果の程は、以下Sapphire製品の国内正規代理店であるアスクがYouTubeに公開しているFluid Motionのデモ動画を見ると、非常にわかりやすい。
このように魅力的なFluid Motionだが、細かい条件は明らかにされていないが、最新のWindows 10だとAPU搭載機では「RADEONソフトウェア」の設定に表示されておらず、使用することができない。
しかし、Bluesky氏が公開しているGPUを利用したフレームレート変換用DirectShowフィルタ「Bluesky Frame Rate Converter」を導入し、「BlueskyFRCUtil」を使ってFluid Motionの設定を有効化すると、利用できるようになる。
導入方法はとても簡単。「Bluesky Frame Rate Converter」をインストールして起動し、「Radeon 設定上のAFM設定を有効化」にチェックすれば、「RADEONソフトウェア」で「AMD Fluid Motion Video」が表示され、オンにすることができる。
今回、Fluid Motionが実際にRyzen G搭載機で動作するか、そしてどう変わるのかを検証するため2014年4月から6月にかけて放映され話題となった榎宮祐氏の小説が原作のTVアニメ「ノーゲーム・ノーライフ」のBlu-rayを使わせてもらった。プレイヤーにはBlu-ray再生の定番であるCyberLink社の「PowerDVD 18 Ultra」を使用した。
©2014 榎宮祐・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/ノーゲーム・ノーライフ全権代理委員会
映像が24fpsから60fpsに向上しているかは、ゲームのフレームレートを表示する定番ソフト「Flaps」で確認。Fluid Motionは特に動きの多いシーンで効果を発揮。たとえば、「初瀬いづな」との戦闘シーンでは、ビルからの落下シーンなど、随所の動きがかなり滑らかになっていた。一方で、ステフ(ステファニー・ドーラ)が自身を愛でるシーンなど、動きの激しくないシーンでもぬるぬる感がアップしていた。
© 榎宮祐・メディアファクトリー/ノーゲーム・ノーライフ製作委員会 Copyright 2012 MEDIA FACTORY INC. All Rights Reserved.
「MPC-HC」や「MPC-BE」といった再生ソフトは、外部フィルターに「Bluesky Frame Rate Converter」を追加することで、Fluid Motionを使った24フレーム・30フレームの動画の60フレーム再生が可能になる。また、「MPC-BE」はYouTube動画の再生をサポートしているため、手持ちの動画ファイルと同じように、YouTube動画も60フレームに補完し、再生することができる。手順は以下のとおり。
©CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
大好きなアニメ作品のBlu-ray Discも、手持ちの動画も、YouTubeも、滑らかな動きで、より楽しむことができるAMD映像補完技術のFluid Motionは、活用しない手はない機能だ。ここからは、そんなFluid Motionを最大限に活用できるのはもちろん、日常用途や軽い写真編集作業をサクサクとできるオススメな自作PC構成を紹介していきたい。
システムだけでなく、アプリやデータをインストールする余裕があり、リード・ライトパフォーマンスも十分な360GB 2.5インチSSDに、複数アプリやウェブページを開いた状態での“ながら”作業や、写真の編集作業などを快適にできる16GB(DDR4-2666 8GB×2)のメインメモリーをチョイス。
また、マザーボードには4K@60p出力が可能なDisplayPort出力端子を備えつつ、安価なASRock「B450 Pro4」を選択。4K液晶ディスプレーの大画面で、ぬるぬる動くアニメの鑑賞も可能だ。
オススメな自作PCプラン
製品名 | 実売価格 | |
CPU | AMD「Ryzen 3 2200G」(4コア/4スレッド、3.5〜3.7GHz) | 1万2000円前後 |
マザーボード | ASRock 「B450 Pro4」(B450、ATX) | 1万2000円前後 |
メモリー | CFD Crucial「W4U2666CM-8G」(DDR4-2666 8GB×2) | 1万8500円前後 |
ストレージ | KingFast「F6 PRO 360GB(2710DCS23-360)」(360GB、2.5インチ SATA3) | 7600円前後 |
光学ドライブ | アイ・オー・データ機器「BRP-UT6LE」(USB BDドライブ) | 8000円前後 |
電源ユニット | 玄人志向「KRPW-BK550W/85+」(80PLUS BRONZE、550W) | 5500円前後 |
PCケース | JONSBO「U4」(ATX) | 7000円前後 |
OS | マイクロソフト「Windows 10 Home 64bit DSP版」 | 1万4500円前後 |
再生ソフト | CyberLink「PowerDVD18 ULTRA」 | 1万1800円前後 |
総額 | 9万6900円前後 |
設定次第ではFF14すら快適にプレイできる!
では、実際に今回オススメするPC構成だと、どの程度のパフォーマンスを発揮するのか、ベンチマークを計測してみた。ここからは総合ベンチマーク「PCMark 10」と、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」でそのパフォーマンスを見ていこう。
「PCMark 10」は基本性能を計測する「Essensials」、ビジネス系作業の性能を見る「Productivity」、写真や動画の編集などコンテンツ制作性能を測る「Digital Content Creation」いずれも、標準的なスコアーで、不満なく各種作業が行えるだろう。
ある程度のGPUパワーが必要になるミドルクラスゲームの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」だが、RADEON VEGAベースのGPUを内蔵するRyzen Gだけあって、解像度1280×720ドット、描画設定「標準品質(デスクトップPC)」では7000スコアー台の「非常に快適」指標を記録だ。よりGPUの負荷が低いライトゲームなら高画質、高描画でプレイできるパフォーマンスと言える。
話題のメニイコアCPUや次世代のゲーム表現となるリアルタイムレイトレーシングなど、気になるキーワードも多いが、日常用途や写真などの軽い編集、ライトゲーミングに、AMD独自の映像補完技術Fluid Motion Videoによるぬるぬる動く動画と、さまざまなことを低コストで楽しめるPCを考えていた人に最適と言える。
今回はOS込みで9万6900円前後と、10万円切りを目指したため、CPUはRyzen 5 2400Gではなく、Ryzen 3 2200Gを採用。ゲームをプレイする際のパワーはやや劣るものの、Fluid Motionはフリーソフトを使うことで利用でき、動画視聴には十分。
さらに、液晶ディスプレーも同時に新調するなら、Fluid Motionによるぬるぬる動画を満喫できる27インチの大型パネルに、ティアリングやスタッタリングを抑えるAMD FreeSyncなどをサポートし、実売価格2万5000円前後となっているLGエレクトロニクス「27MK600M-B」が狙い目。
たとえば、メインPCはハイエンドなゲーミングPCだが、動画視聴用のセカンドPCが欲しい。後々、GPUパワーが足りなくなったら、ミドルクラスのグラボを足せばよいが、今は軽めのゲームと動画が楽しめればよい、なんて人にはRyzen G搭載自作をぜひオススメしたい。