1月頭にラスベガスで行なわれたCES 2019では、HTCが最新のVRヘッドセット「VIVE Cosmos」を発表したり、数多くの8Kテレビ、VRオーディオデバイスの展示が行なわれ、エンターテインメントの新しい波を感じました。VRは一般消費者に爆発的に広がっているわけではありませんが、VRChatやVTuberアプリといったゲーム以外のトレンドもあり、今後も新たなトレンドが生まれる期待感があります。
そこで、今からVRが楽しめるPCを作りたい!という人にオススメなのが、AMDが2018年11月15日に発表した「Radeon RX 590」を搭載したビデオカードです。本製品は2018年11~12月にかけてASRock、ASUS、HIS、PowerColor、SAPPHIREなどから5製品が発売されており、価格帯は3万2000円から4万1000円前後と比較的購入しやすいプライスが設定されています。
VR用途のビデオカードといえば、これまでNVIDIAのGeForce GTX 1060が主流でしたが、新しいRTX 20シリーズが登場したこともあり、GTX 10シリーズは市場から消えつつあります。VRが快適にプレイできる認定を得たVR Readyのビデオカードは、Radeonにも数多くあるので、今ならRadeonで選ぶのも吉。
Radeonで性能を求めるなら、2月に発売されると思われるRadeon VIIを待つべきですが、できる限り安価にVRを快適に使いたいというなら、RX 590がオススメです。
また、VR用途のPCをRadeon搭載機にするメリットはほかにも数多くあるので、今回はその利点を紹介していきたいと思います。
Radeon VR Ready Premiumなビデオカードはコスパがよい!
AMDはHTCの「VIVE」やOculus社の「Oculus Rift」といったVRヘッドセットが快適に使えるビデオカードを「Radeon VR Ready Premium」として訴求しています。その最新ビデオカードであるRadeon RX 590は、ライターの加藤勝明氏のレビュー記事によれば、GeForce GTX 1060を上回るベンチマークスコアーを記録しています。
GeForce GTX 1060搭載ビデオカードの価格は2万6000円から5万円前後。最安値ではラインアップが豊富なGeForce GTX 1060に軍配が上がりますが、パフォーマンスが上回っていることを考慮に入れれば、Radeon RX 590搭載ビデオカードのコスパは優れていると言えます。
今回ASRockより借用した「Phantom Gaming X Radeon RX590 8G OC」。オーバークロック版のRadeon RX 590を採用し、メモリーはGDDR5 8GB。VRでは液晶ディスプレー表示よりも高解像度表示が必要になりますが、8GBあれば4K表示でもなければ足らなくなることはないでしょう。
また、インターフェースはDVI-I×1、HDMI×2、DisplayPort×2が用意されています。HDMI端子をふたつ搭載されているので、ディスプレーとVRデバイスの両方をアダプターなしにHDMI経由で直結できるのが便利です。
Radeon Softwareで配信&録画がお手軽!
Radeon RX 590では、第5世代のAMD製ユーティリティーソフト「AMD Radeon Software Adrenalin 2019 Edition」が利用できます。このなかにはスマートフォンから操作するための「AMD Link」、ゲームプレイを撮影、録画、共有するための「AMD Radeon ReLive」が含まれています。
AMD Linkの設定を済ませておけば、あとはスマホからYouTube、Facebook、Weibo、Twitch、Mixerなどにゲーム配信が可能。もちろんVRコンテンツの配信にも対応しています。ヘッドマウントディスプレイをちょっとずらす必要はありますが、手元のスマホでVRプレイを自由自在に配信できるのは非常にお手軽です。
また、まだ動作は不安定なようですが、AMD LINKの最新機能として、PCにてSteamVR経由でプレイできるVR映像をスマホに転送して、スマホ用簡易ヘッドセットでVRゲームなどが楽しめる機能も備えています。PC用VRヘッドセットは、どんどんお買い得な価格になってきてはいますが、まずはVRでどう見えるのか試してみたい!という人にはオススメです。詳しくは、ライターの加藤勝明氏Adrenalin 2019 Editionの記事を参照してみてください。
第3者視聴が快適なFreeSync液晶が使える!
家族、知人と一緒にVRコンテンツを楽しむ際は、ディスプレー表示の滑らかさも重要です。画面のちらつきが多ければ、ヘッドセットをかぶっていなくても酔ってしまう可能性があります。
その点、Radeon RX 590は「FreeSync」テクノロジー搭載のディスプレーが利用できるので、ゲームやビデオ再生中のカクツキ、ティアリングなどを軽減してくれます。
NVIDIA製ビデオカードにも同様の技術「G-SYNC」が存在しますが、対応製品はFreeSyncのほうが圧倒的に多く、価格も安いので魅力的です。NVIDIAも最新版のグラフィックスドライバ「GeForce 417.71 Driver」により、FreeSync液晶が使える「G-SYNC Compatible Monitors」プログラムが利用できますが、対応液晶がまだまだ少ないので、RadeonとFreeSync対応液晶ディスプレーの組み合わせが、最も安心な組み合わせであることは変わりません。
人気VRゲームがほぼ60fpsと快適!
さて最後にパフォーマンスをチェックしてみましょう。今回はRadeon RX 590を搭載する「Phantom Gaming X Radeon RX590 8G OC」を中心に下記の構成のデスクトップPCを組み上げて、光の剣でリズミカルにターゲットを切り裂く音ゲー「Beat Saber」、ゾンビが蔓延する終末世界を舞台にしたガンシューティング「Arizona Sunshine」、本格的なボクササイズで運動不足を解消できる「BOXVR」をプレイしてみました。また合わせてVR用PCとしてのパフォーマンスを計測する「VRMark」も実行しています。
VTuber向け自作PCパーツ一覧 | ||
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CPU | AMD「Ryzen 5 2600」(6コア/12スレッド、3.4~3.9GHz) | 2万700円前後 |
CPUクーラー | AMD「Wraith Stealth」 | 0円(CPUに同梱) |
マザーボード | MSI「B450 GAMING PLUS」(AMD B450) | 1万600円前後 |
メモリー | CORSAIR「CMK8GX4M2A2400C14」(4GB×2、DDR4-2400) | 9900円前後 |
SSD | Cruicial「CT500MX500SSD1/JP」(SATA3) | 8100円前後 |
GPU | ASRock「Phantom Gaming X Radeon RX590 8G OC」(8GB) | 3万2000円前後 |
電源 | ANTEC「NeoECO Gold NE550G」(550W、80PLUS GOLD) | 7000円前後 |
PCケース | Thermaltake「Versa H26」 | 4300円前後 |
OS | Microsoft「Windows 10 Home 64bit 日本語 DSP版」 | 1万6400円(パーツと同時購入) |
合計 | 10万9000円前後 |
※1月22日調べ
今回はパフォーマンスの目安となるフレームレートを計測するために、前述のユーティリティー「AMD Link」を使用しました。結果はBeat Saberが平均89fps/最小81fps/最大90fps、Arizona Sunshineが平均56fps/最小40fps/最大60fps、BOXVRが平均60fps/最小43fps/最大60fpsというもの。なお、フレームレートの増減幅を抑えるように、コンテンツによっては最大フレームレートが60fpsに設定されています。
いずれにしても、どのVRコンテンツでも平均フレームレートは最大フレームレートとほぼ同じ値を示しています。実際にプレイした感想としても、フレームレートの低下はまったく体感できません。またVRMarkでは、HTC ViveやOculus Riftなどでの標準的なVRコンテンツに対するパフォーマンスを計測する「Orange Room」でVR Readyの1.57倍に相当する7859というスコアーを記録しています。
以上の結果から、Radeon RX 590を中心に組み上げた今回の自作PCは最新VRコンテンツを快適にプレイできるだけのパフォーマンスを備えていると言えそうです。
RadeonでVRコンテンツを楽しんでいる方は現在は少数派かもしれませんが、コストパフォーマンスがよくて、配信&録画が手軽、そしてFreeSync液晶で第3者視聴も快適と多くのアドバンテージがあります。11万円を切る価格で作れるRadeon RX 590搭載VR対応デスクトップPCを、ぜひ皆さんも制作してみてはいかがでしょうか?