快適なPCゲーミング環境を作るには、1にGPU、2にCPU……と続くが、意外に疎かにできないのがディスプレイだ。いくらPC本体が高性能でも、それを表示する液晶がダメなら性能も台無し。
そこで最近は高リフレッシュレート液晶がゲーマーを中心に人気だが、リフレッシュレートと同じくらい大事なのが「VRR(Variable Refresh Rate:可変リフレッシュレート)」技術の有無だ。GPUの画面描画のタイミングに合わせて液晶が映像をリフレッシュするので、モタつき(スタッタリング)や画面の崩れ(ティアリング)等が発生しない。表示遅延も理論上最小限になるため、操作入力と画面の表示ラグもその分短くなる。
このVRRを実現する技術はVESAの“Adaptive Sync”として定義されているが、それをAMDが拡張し規格化したものが「FreeSync」およびその上位規格の「FreeSync 2 HDR」だ。FreeSyncの基本的な概念はすでに宮里氏がFreeSync 2に関して解説記事を書いているので、技術的にはそちらを参照していただきたい。
で、日本時間2019年2月27日(水)23時、AMDはFreeSyncおよびFreeSync 2 HDRのデモンストレーション用アプリ「AMD Radeon FreeSync 2 HDR Oasis Demo(以降Oasisデモと略)」を発表した。原稿執筆時点では一般ユーザーがダウンロードできるのかは明らかにされていないため、イベントでの展示や一部店舗でのデモ用のアプリではないかと筆者は考える。だが、この解説記事を読んでおけば、イベント等でOasisデモの画面を見た時にFreeSyncやFreeSync 2 HDR液晶の威力をより強く実感できるはずだ。
Oasisデモの見どころはここだ!
Oasisデモでは、異世界風遺跡の中をひたすらぐるぐる巡るという単純なシーンが描かれる。所々に鳥居が立っていたり、AMDのロゴ等が描かれていなければ、AMD謹製デモだとは気づかない。グラフィック技術は今風のテクニックがふんだんに使われており、大昔にAMDがリリースした「N-Bench」とは隔世の感(20年近く前なので当然だが)がある。
FreeSyncの威力を一番感じられるのは「Sweep」でフレームレートを大きく変動させた時の表示の安定感だ。FreeSyncのない環境では画面が水平方向に微妙にズレていたり(ティアリング)、動きがカクカクっとしたり(スタッタリング)が出るが、FreeSyncスイッチをオンにした途端にそれがハッキリと消える。HDR対応ディスプレイでデモされていたら、HDRへ切り替えるのも良いだろう。
FreeSyncとFreeSync 2 HDRは何が違う?
さて、FreeSyncとFreeSync 2 HDRは何がどう違うか? についても簡単に解説しておこう。ティアリングやスタッタリングの除去という点では、FreeSyncとFreeSync 2 HDRは全く同じ。
だが非常に低いフレームレート時までも滑らかに表示できるよう補正するLFC(Low Framerate Compensation)は、FreeSyncでは実装されていない製品もあるが、FreeSync 2 HDRでは必須となる。Radeon環境でより快適なゲーミング液晶を揃えたいなら、高リフレッシュレートかつFreeSync 2 HDRな液晶がベストというわけだ。
一般ユーザーにもDLさせて欲しい!
以上で簡単にOasisデモの解説は終わりだ。Radeonの良いところはFreeSync液晶が安く手に入るため、ライバルよりもお買い得感が高い、というのが長年の売りだった。だが最近になってライバルは「G-SYNC Compatible」と称しこれまで対応しなかったAdaptive Sync(あえてFreeSyncとは言わない)対応液晶でもVRRが使えるとアピールしてきた。
確かにこれはゲーマーにとって朗報ではあったが、同時にFreeSyncユーザーにとっては、FreeSyncやFreeSync 2 HDRの何が良いのかさっぱり分からなかったに違いない。ASCII.jpでもいくつか記事を挙げているが、目の前で動かせるデモがないと伝わらない。特にVRRはデモありきの技術だと感じている。
こういう切羽詰まった状況の中FreeSync 2にHDRを追加したFreeSync 2 HDRがしっかりと立ち上がり、それを受ける形で新世代のデモがリリースされたことは多いに喜びたい。ただ惜しむらくは前述の通り一般ユーザーにダウンロード可能であるかさっぱり分からないこと。だがAMDや自作PC系イベント、店頭等でデモされる機会があれば、ぜひFreeSyncやFreeSync 2 HDRの凄さを自分の目で確認していただきたい。