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熱やクロックはどう変化する?
コア数が多く消費電力も大きいRyzen 9 3950Xでは性能も消費電力も大きな差がついたのに対し、コア数の少ないRyzenはEcoモードにしても性能はほぼ変わらない、ということが分かった。そこで実際にblenderのレンダリング処理で負荷をかけた時に、CPUの熱やクロックはどう変動するか追跡してみた。温度などの監視には「HWiNFO」を利用した。室温は26℃前後で計測している。
今回テストした3種類のCPUの違いが最も大きく現れたのが、上の平均実効クロックだ。CINEBENCH R20でもほとんど差のでないRyzen 5 3600Xでは、Ecoモードに切り替えても平均実効クロックはほぼ同じなのに対し、わずかにEcoモードではスコアーの下がった3800Xでは100MHz前後、大きく下がった3950Xでは500MHz前後の開きが出た。
コア数が多く消費電力が大きいCPUほど、Ecoモードにした時の性能ロスが大きくなることが読み取れる。ただしレンダリング作業前の短時間で終わる作業(クロックが張り付く前、開始直後〜30秒くらいまで)は4GHzを越えているため、軽い作業では重さを感じることはない。CPUに負荷をかけない限りは、Ecoモードの存在を忘れてしまうことだろう。
続いてはCPUの温度(Tctl/Tdie)を追跡する。
Ecoモードでクロックが下がるということは、その分CPU温度も下がる。Ryzen 9 3950Xでは定格時に比べEcoモードでは20℃程度下がった。今回CPUクーラーは簡易水冷を使っていることもあり、Ecoモードで運用した場合Tctl/Tdieは50℃でほぼ安定。むしろレンダリング作業前の前処理でクロックが上がった時の方が温度は高くなることも面白い。
温度差が強烈についた3950Xとは対象的に、クロックに差のつかなかった3600Xは温度にも差が付いていない。3800Xは両者の中間、10℃差前後の差がついている。
ではRyzen Masterで見られるパラメーターの中からPPT(Package Power Tracking)、即ちCPUが引き出せる電力の上限がどう変化するのかを追跡してみよう。
ここでも上位CPUほどEcoモード時はがっつりと差がつくが、Ecoモード時はどのCPUも81〜87Wで安定している。Ecoモードでも性能も平均実効クロックもほとんど変化しなかった3600Xの場合、なぜかEcoモード時のPPTの方が微妙に高く検出されたが、この原因は分かっていない。
CPU搭載の幅を拡げるEcoモード
以上で簡単ではあるが、第3世代Ryzenに実装されたEcoモードの検証は終了とする。今回TDP65WのCPUが手元になかったが、95W以上のCPUに関していえばCPUの持ち味(コア数)を大きく損なうことなく、消費電力や温度を抑制することができる機能だ。ただしEcoモードの効果はコア数がある程度多くないとあまり実感できない、という点には十分注意したい。
つまり小さめのCPUクーラーしか入らないような状況において輝く機能だ。もしくは低出力の電源ユニットとパワーのあるビデオカードを組み合わせた場合に、電力をビデオカードに回したい時に使えそうだ。Ecoモードを活用して自作PCにおけるパーツ選びの幅を拡げてみてはどうだろうか。