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「ルパン三世」シリーズのスタジオであるテレコムと、AMDが選定したアニメ制作用PCとは(4/5)

高橋佑司/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

CGレンダラー「Radeon ProRender」の新機能も共同開発

Radeon ProRenderの紹介動画

今回の施策では、AMDからテレコムへの機材提供というのがメインになるが、それに伴い、実はAMDのレンダラープラグイン「AMD Radeon ProRender」の新機能を共同開発するという取り組みも行なっている。

レンダラーとは、3DCGで設定したオブジェクトの配置や材質、照明、カメラの設定などを反映したうえで、それを画像として書き出す「レンダリング」という作業を行なうものだ。AMDの提供しているRadeon ProRenderは、3ds MaxやMaya、Blender、SideFX Houdini、PTC Creoなど、主要な3DCGソフトをサポートしており、ゲームエンジンのUnreal Engineにも対応。MAXON Cinema 4Dや、Foundry Modoなど、標準でRadeon ProRenderが統合されているソフトもある。

Radeon ProRenderでは、現実の物理現象に近い光の当たり方をシミュレーションすることで、より写実的な表現を可能にするレイトレーシングというレンダリング手法を用いる。通常、このレイトレーシングでのレンダリングは、光のシミュレーションが複雑になり、計算に時間がかかるため、画像を書き出すのに必要な時間が長くなりやすい。しかし、Radeon ProRenderではGPUとCPUのパフォーマンスを同時に活用して高速なレンダリングを実現しているという。

そして驚くべきは、このRadeon ProRenderというプラグインは、なんと無料でダウンロードが可能ということだ。AMDの公式ウェブサイトにて配布しているので、誰でもコストをかけずに導入できるのも利点だ。

そんなRadeon ProRenderにおいて、アニメ制作スタジオのトムスと共同開発した機能とはどういったものなのかについても、お話を伺った。

――Radeon ProRenderにおいて、AMDとテレコムで共同開発した機能があるとのことですが、どういったものなのでしょうか。

森本氏:共同開発した機能は、「Toon Trace」という機能になります。これは、3DCGのオブジェクトのアウトラインから、アニメの線画を書き出す機能です。ちなみに、この機能の「Toon Trace」という名前は、伊東さんに付けて頂きました。

共同開発については、テレコムで3Dも扱っていると伺い、レンダラーとしてRadeon ProRenderというものも提供していると紹介させて頂いた際に、紹介するだけでは面白くないので、何か共同開発しませんかというお話をさせて頂いたのが始まりです。

テレコムでは、以前は3DCGから線画を書き出す作業は、PSOFTのPencilというレンダラーを使っていらっしゃったのですが、PencilではCPUを使って処理するため、1つの画像を書き出すのに大体20分ぐらいかかる状況でした。Radeon ProRenderではGPUも使って処理するため、秒単位で画像の書き出しが可能になります。

Toon Traceでのアウトライン出力前

Toon Traceでのアウトライン出力後

開発当初、クリエイターの方たちから線がきれい/汚い、柔らかい/固いといったような抽象的な表現で伝えられ、それが弊社の技術者に伝わりづらかった。そこで、実際に意見をかわしながら、どういった線がきれいなのか、柔らかいのかといったものをすり合わせていったところが印象的でしたね。

実際に新しいRadeon ProRenderのバージョンには、Toon Traceの機能が組み込まれています。Radeon ProRenderに対応しているソフトなら使えますので、3ds MaxやMaya、Blender、最近ではUnreal Engineなどにも対応し、幅広く使って頂ける機能になっています。

また、Pencilが5万円~6万円なのに対して、Radeon ProRenderは無料で導入できるというのも利点の1つです。

伊東氏:もともと、トムスのデジタル推進部では3Dの検証もいろいろやっていたので、その流れでRadeon ProRenderの話を頂きました。アニメ制作では、舞台を3DCGで組んでからカメラを動かして、構図を考える3Dレイアウトという手法があるのですが、アニメーターにはそれを清書するためのアタリとして渡すので、線で出された情報というのも必要になってきます。また、美術作業ではアウトラインとして流用できるという利点もあります。

今まで3DレイアウトをPencilで書き出していたんですが、それはきれいに線が出るからとか、出したいところにきちんと線が出るからという理由もありました。ただ、画像の書き出しに時間がかかり大変なので、Radeon ProRenderに3DCGから線が出せる機能を入れられたら、作業を効率化できるのではないかと思いました。

さらに、デジタル推進部ではアニメのCGI作業も行なっていますので、Radeon ProRenderで線表現など、国内で必要なレンダースタイルに対応できるようになるとテレビシリーズのようなスピードが求められるCGI作業を小規模なチームでも回せるのではないかと考えていました。

また、Radeon ProRenderを使ったクラウドレンダリングのサービスで「Render Pool」というものがあるのですが、トムスとAMDさんとモルゲンロットさんという会社の3社で、そのRender Poolに関してもさらに使いやすいようにしようという取り組みを今しているところで、引き続き機能強化を計画しています。

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