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メインミッションは、指定された荷物を配達しつつ、大陸各地にある中継地点を「カイラル通信」でつなぐこと。あらゆる事情を抱えたキャラクターたちからミッションを受注し、指定された場所まで配達する。イメージとしては配達シミュレーター+アクションといったところだろうか。徒歩による移動がメインだが、変化に富んだ地形を練り歩くことに魅了され、隅から隅まで自らの足で散策してみたいという欲が湧いてくる。
歩くという行為は、現実でもゲームでもただの移動手段にすぎないと思っていた。だが、本作をプレイしていると、歩くことの意味を改めて実感することになった。人と出会う、高山の頂を目指す、絶景を見つけるなどといったことは、いずれも現実でも起こる体験だ。そういった体験で得た感情を、ゲーム内でも疑似体験できるのがとにかくすごい。ここまで面白いものだったとは思いもよらなかった。
道中、主人公の配達を妨害する「ミュール」というコミュニティーやBTと対峙する場面もあるが、戦ってもよし、避けてもよしと、どう行動するかはプレイヤー次第だ。ちなみに、私は「武力行使を嫌い、ラブ&ピースを届ける配達人」という設定でプレイしていた。ミュールとの戦いは極力避け、もし見つかったら全力で逃げる。最初から最後まで、平和主義を貫いたものだ。このように、自分が望むサムを演じるというRPGの醍醐味もあるため、深すぎる没入感が味わえる。
ミュールとBTの存在もそうだが、配達の仕事も決して楽ではない。大小さまざまな荷物を配達する際、重量と個数、持ち方に配慮しないと転倒する恐れがあるからだ。最悪転んだ拍子で荷物を紛失する場合も充分に考えられる。そのうえ荷物を落せば品質が下がると同時に、依頼人の評判も下がってしまうので慎重に運ぶ必要があるわけだ。快適な配達を実現するための策を練る面白さも、本作の魅力を高めるポイントである。
配達中に荷物を紛失したときのショックは、思い出すだけで胸が詰まってしまう。とくに転倒したあげくにすべての荷物が川に流されてしまったときのつらさときたら…。このような不安要素はなるべく避けたいところ。そういうわけで、地形の環境(傾斜や川など)や持ち方、個数などを熟考し、適切な配達ルートを模索することが攻略のポイントとなっている。配達も面白いが、ルートをシミュレートするのもまたかなり奥が深く、プレイヤーを夢中にさせる魅力といえる。
「つながり(ストランド)」のテーマに沿ったゲーム性
本作のジャンルはわかりやすくいうとオープンワールド型アクションゲームだ。たしかにアクションゲームという見方もできなくはないが、そういったジャンルにありがちな勧善懲悪モノから大きくかけ離れているように思われる。アクションゲームの枠に囚われない新たなゲームジャンルと、「つながり(ストランド)」というテーマに沿ったゲーム性が、本作における画期的かつ魅力的なポイントなのだ。
本作はソロプレイだが、他のプレイヤーが間接的に自分の世界に介入し、人とのつながりを疑似体験できる独自のゲームシステムを採用している。それが「ソーシャル・ストランド・システム」である。自身の代わりに荷物を配達してくれるだけでなく、落とした荷物と装備の共有や、配達に役立つ建造物を配置するなど、間接的ながらプレイヤーの仕事をサポートする機能なのだ。
本作は、他のプレイヤーとのつながりを間接的に感じ取り、皆で世界を構築していく「ソーシャル・ストランド・ゲーム」といってもいいだろう。他のプレイヤーが行なった献身に対して”いいね”を送れると同時に、自身も献身的な行動を取れば、他のプレイヤーから”いいね”がもらえることも。私が本作を愛する1番の理由はそこにあった。人と人との絆をつなぐ、道徳心あふれるゲームとして歴史に名を刻むことはもはや必至と言えよう。
豪華俳優陣がみせる人間ドラマに引きこまれる
映画ファンにはたまらない魅力として、本作に出演するキャスト勢も紹介したい。主役を飾るノーマン・リーダスをはじめ、マッツ・ミケルセン、レア・セドゥ、リンゼイ・ワグナーなどといった俳優陣はもちろん、小島監督の盟友であるギレルモ・デル・トロ監督、ニコラス・ウィンディング・レフン監督もゲームキャラクターとして出演。
プレイ中出会う人に驚く度、これだけのキャストがそろえば映画が撮れるぐらいの豪華さに、ただただ圧倒された。過去に映画を題材にしたゲームをプレイしたことがあるが、PC版で初めて本作を体験する人も、ゲームを普段やらない人も、本作に登場するキャスト陣の再現度に驚くことだろう。
その他小島監督と深い絆で結ばれているクリエイターやタレントもカメオ出演している。フィールド内の拠点を探索してカメオ出演している有名人を見つける楽しみ方もできるかもしれない。小島監督との絆により実現したキャスティングにも注目して欲しい。