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今回は実アプリ/実ゲームでのパフォーマンス比較を行なうのが目的だが、その前に「PCMark10」で大ざっぱな傾向を見ておきたい。このベンチの中では実際のアプリ(LibreOffice)やよく使われる処理が組み込まれているからだ。
テストはゲーミング以外のテストグループを実行する“Essentials”テストを実施した。総合スコアーの他に、テストグループ別のスコアーも比較する。
まずは結果を概観してみよう。青いバーが総合スコアーだが、スコアーの序列はRyzen 3000シリーズが高く、続いてRyzen PRO 4000Gシリーズとなった。同シリーズ内ではコア数の多いモデルほどスコアーが高いという至極順当な結果になっている。Ryzen 7 PRO 4750Gの総合スコアーがRyzen 3 3300Xより低くなっていることから、総合スコアーにはGPUの性能もかなり影響していることがわかる。
Core i7-10700KはCPUパワーだけ見るとRyzen 7 PRO 4750Gに近いのに、PCMark10の総合スコアーではRyzen 3 PRO 4350Gと同等なのも、CPUの力不足というよりはインテル製内蔵GPUが足を引っ張っているといえるだろう。
Essentialsテストグループの結果を詳しく見てみると、ここでは意外にも(失礼)Core i7-10700Kがトップに立っている。唯一Core i7-10700Kが他のCPUに負けているのは「Video Conferencing」、つまりビデオ会議を想定しているテストだが、ここではOpenCLを使用した顔検知処理が入る。つまりインテルの内蔵GPUが足枷になっているのだ。
その一方でRyzen PRO 4000Gシリーズはこのテストで良いスコアを出せている。RX 560を組み込んだRyzen 3000シリーズよりは下回るが、内蔵GPUとしてはより実用的な性能に仕上がったといえるだろう。
ただApp Start-up、つまりアプリの起動時間テストでは、Ryzen 3000シリーズよりもかなり下がった位置にRyzen PRO 4000Gシリーズがいる点に注目。Ryzen PRO 4000Gシリーズと3000シリーズは同じZen 2ベースではあるが、L3キャッシュの搭載量ではRyzen PRO 4000Gシリーズは大幅に少ない。L3キャッシュ削減の効果が如実に出ているといえる。
ProductivityテストグループはLibreOfficeを使った表計算/文書編集パフォーマンスをみる事ができる。ここではGPUはほとんど関係しないため、スコアーの差はCPUの力の差と考えてよい。ここでのトップ3はL3キャッシュの多いRyzen 3000シリーズであり、Zen 2でもL3キャッシュの少ないRyzen PRO 4000Gシリーズはどれも一歩引いたポジションに付けている。
Ryzen PRO 4000Gシリーズは表計算(Spreadsheet)ではコア数順通りのスコアーだが、ワープロ(Writing)はどれも6000ポイント台前半で団子になっている。旧世代のRyzen 3000Gシリーズに比べると全体にWritingで大きく性能が伸び、6コア以上のモデルではさらにSpreadsheetが大きく伸びている。
写真編集や動画エンコードといったクリエイティブ系処理のパフォーマンスを見るDCCテストグループの結果は、前回の速報記事で紹介したCINEBENCH R20の結果を裏付けるものとなった。つまりCPUパワーではRyzen 3000シリーズの方がRyzen PRO 4000Gシリーズを上回る。ただCINEBENCH R20と異なるのは、Core i7-10700Kのパフォーマンスがかなり低く評価されている点だ。
こういう場合CPUの冷却不足が思いつくが、テスト中のCPU温度は35〜50度前後で推移し、テストの終了間際のレンダリングテストで80度に到達する程度。つまりサーマルスロットリングに入るほどではない。単純に内蔵GPUのパフォーマンスが足を引っ張っていると考えられる。