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【注目Radeonピックアップ!第22回】

ベースクロック205MHzもOCされたRX 5700 XTのハイエンド、「Radeon RX 5700 XT Taichi X 8G OC+」をレビュー

文● 宮崎真一 編集● AMD HEROES編集部

グラフィックスカードにおいて、どのメーカーともリファレンスクロックの通常モデルとは別に、動作クロックを引き上げたクロックアップモデルを用意していることは、もはや言うまでもないだろう。

ASRockのTaichiシリーズというと、グラフィックスカードを始めマザーボードにも展開されており、馴染みのある人は多いのではないだろうか。そのTaichiシリーズから、今回はAMDのハイエンド向けGPU「Radeon RX 5700 XT」(以下、RX 5700 XT)を採用した「Radeon RX 5700 XT Taichi X 8G OC+」(以下、RX 5700 XT Taichi)を取り上げたい。果たして、RX 5700 XT Taichiが持つポテンシャルはどの程度なのだろうか。

ベースクロックは205MHzも向上
さらにクロックが上昇するOC Modeを装備

RX 5700 XT Taichiは、ほかのTaichiシリーズ同様に、動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルである。具体的には、ベースクロックが1810MHzと、リファレンスの1605MHzから205MHzも上昇。同様にゲームクロックは1935MHz、ブーストクロックは2025MHzと、リファレンス比で前者は180MHz、後者は120MHzそれぞれ引き上げられている。

ベースクロックやゲームクロックがとくに大きく引き上げられている点が特長。ゲームをプレイしているとGPUの動作クロックは大きく変動するが、これらのクロックを高めることでゲームパフォーマンスの底上げが期待できるというわけだ。なお、メモリクロックは14Gbpsで、こちらはリファレンスから変わりない。

Radeon Softwareから動作クロックなどの仕様を確認したところ

さらに、RX 5700 XT Taichiでは、「ASRock Tweak」(Version 1.1.29)という付属アプリケーションにより、「OC Mode」と「Silent Mode」という動作モードに切り替えることが可能。OC Modeでは、その名のとおり、ベースクロックが1885MHz、ゲームクロックが2000MHz、ブーストクロックが2040MHzまでそれぞれ上昇する。

とくにゲームクロックが2GHzに達している点は、なかなかインパクトが大きい。なお、Silent Modeは動作クロック設定が公表されていないものの、動作クロックが多少低下し、消費電力の低減が期待できる動作モードだ。なお、どの動作モードでもメモリクロックに変わりはない。

付属アプリケーションのASRock Tweak。上部のOC ModeやSilent Modeをクリックすることで、動作モードの切り替えが可能

RX 5700 XT Taichiがユニークなのは、そのほかに「OC BIOS」と「SILENT BIOS」という2つのVBIOSを有している点だ。これらのVBIOSの切り替えは、カード端のブラケット寄りに設置されたディップスイッチで行なうのだが、デフォルトはブラケット側のOC BIOSになっている。このスイッチでSILENT BIOSに切り替えると、パフォーマンスは落ちるものの、ファンの動作音や消費電力の低減を図れる。

VBIOS切り替え用のディップスイッチ。ブラケット側がOC BIOS、逆側がSILENT BIOSになる。なお、切り替える際は再起動が必要だ

それでは、カードそのものを見て行こう。カード長は実測で310mm(※突起部除く)で、RX 5700 XTリファレンスカードが273mmほどだったので、それよりも30mmほど長い計算になる。GPUクーラーは、2.5スロット占有タイプのもので、左右に90mm角相当のファンを2基と、中央に80mm角相当のファンを1基搭載する。

ファンは左右の2基が90mm角相当で、中央の1基のみが80mm角相当になっている。また、中央の1基はLEDの光を映えるようにするため、透明の羽が用いられている

ファンの中央の1基のみが透明な羽を採用しており、これはファンの外郭に装着されたLEDが映えるようにするためだろう。なお、LEDはカード側面のロゴにも搭載されており、付属アプリケーションの「ASRock Polychrome SYNC」(Version 1.0.13)により、色や光り方を制御可能だ。また、補助電源コネクタのすぐそばに設置されたディップスイッチにより、LEDのON/OFFの切り替えも可能。これにより、OSが起動するまでの間もLEDが点灯しないように設定することもできる。

ASRock Polychrome SYNCを用いることで、LEDの色や光り方を設定可能だ

補助電源コネクタのすぐそばのディップスイッチでは、LEDのON/OFFを切り替えられる。なお、コネクタ側がOFF、逆側がONになる

ファンの隙間から覗き込んだ限りでは、GPUクーラーには8mm径のヒートパイプが4本用いられているようで、放熱フィンの直下には強化フレームが搭載され、背面のバックプレートと合わせてカードの強度はなかなかのもの。また、メモリチップや電源部にもしっかりとヒートシンクが接しており、冷却への配慮も申し分ない。

なお、ASRockによると電源部は10+1フェーズ構成とのことで、なかなか豪華な仕様だ。さらに、これらのファンは「0dB サイレントクーリング」という機能により、GPUに負荷が掛かっていない場合に、ファンの回転を停止する。

カード裏面には金属製のバックプレートが装着。表側の金属製フレームと合わせて、カードの強度はかなり高い

補助電源コネクタは8ピン×2という構成で、8ピン+6ピン構成のリファレンスカードから電源供給も引き上げられている。また、映像出力端子は、DisplayPort 1.4×4とHDMI 2.0b×2の、計6系統を備えている点も見逃せない。

補助電源コネクタは8ピン×2という構成

DisplayPortを4系統、HDMIを2系統備えている点は特長的。HDMIを2系統搭載したことで、VRヘッドマウントディスプレーの利用でもかなり扱いやすい

RTX 2070 SUPERといい勝負
高負荷・高解像度でこそ真価を発揮

テスト環境
CPU AMD「Ryzen 7 3700X」
(8コア/16スレッド、3.6~4.4GHz)
マザーボード ASRock「X570 Taichi」
(AMD X570)
メインメモリ DDR4-3200 8GB×2
ビデオカード ASRock「Radeon RX 5700 XT Taichi X 8G OC+」(Radeon RX 5700 XT)
GeForce RTX 2070 SUPER Founders Edition
SSD Plextor「PX-512M9PeG」
(M.2、NVMe、512GB)
電源ユニット SilverStone「SST-ST1200-G Evolution」
(1200W、80PLUS Gold)
OS Windows 10 Pro 64bit版

それでは、実際のゲームでRX 5700 XT Taichiのパフォーマンスをチェックしていこう。なお、RX 5700 XT Taichiは、工場出荷時状態のデフォルト設定でテストを行なっている。また今回、比較対象には競合製品となる「GeForce RTX 2070 SUPER」(以下、RTX 2070 SUPER)を用意。それ以外のテスト環境は表のとおりだ。

まずは「3DMark」(Version 2.12.6964)の総合スコアからだが、Fire StrikeでRX 5700 XT TaichiはRTX 2070 SUPERに7~11%の差を付けるパフォーマンスを発揮。その一方で、DirectX 12のテストであるTime Spyでは、NVIDIAのTuringアーキテクチャが高いスコアを出す傾向があり、その例に漏れずRTX 2070 SUPERが逆転を果たしている。

続いて「バイオハザード RE:3」の結果に移ろう。ここでは、テクスチャフィルタリング品質から高(0.5GB)を選択し、それ以外を描画負荷が最大になるように設定。そのうえで実際にプレイし、GPUOpenの「OCAT」(Version 1.6.0)でフレームレートを取得した。

ただし、OCATの仕様上、最小フレームレートの代わりにデータ並べたときに全体の1%の値となる99パーセンタイルフレームレートを用いている。その結果だが、RX 5700 XT Taichiは、平均フレームレートで1920×1080ドットこそ3%の溝を空けられているが、解像度が高くなるにつれてその差は埋まっている。3840×2160ドットにいたっては、ほぼ横並びと言ってよいだろう。

解像度が高くなると両者の差が埋まるという傾向は「Borderlands 3」でも同じ。なお、ここでは高プリセットを選択したうえで、ベンチマークモードを実行。そのログファイルから平均フレームレートと99パーセンタイルフレームレートを算出している。1920×1080ドットにおける両者の差は、平均フレームレートで3%ほど。それが3840×2160ドットで肩を並べるのは、先ほどのBIOHAZARD RE:3と全く同じだ。

「Far Cey New Dawn」でもその傾向は変わらない。ここでは最高プリセットに指定し、ベンチマークモードを実行。その結果だが、1920×1080ドットで平均フレームレートは9%ほどの差が見られるが、3840×2160ドットでは差がまったくない。高負荷や高解像度でこそRX 5700 XT Taichiは真価を発揮すると言ってよさそうだ。

最後に「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」のテスト結果も見ておこう。同ベンチマークは、GeForceシリーズへの最適化が進んでいるため、Radeonシリーズは不利な戦いを強いられてしまっているのだが、それでもRX 5700 XT Taichiは3840×2160ドットで、スクウェア・エニックスの指標で最高評価になるスコア7000を上回っている点は立派。2560×1440ドット以下の解像度であれば、RX 5700 XT Taichiは1万を超えるスコアを発揮しており、キャラクターが多い“重い”シーンであっても、かなり快適にプレイできることは間違いない。

価格は5万7000円~6万2000円ほど
RTX 2070 SUPERに比べるとお買い得感は高め

以上のテスト結果を見ても明らかなとおり、低負荷でフレームレートを稼ぐRTX 2070 SUPERに対して、RX 5700 XT Taichiは高負荷でしっかりパフォーマンスを発揮するといった印象だ。RX 5700 XT Taichiの価格は5万7000円~6万2000円と、5万円前後で販売されている製品もあるRX 5700 XT搭載カードとしては割高感があるのは確かだ。

しかし、RTX 2070 SUPERが6万円~6万6000円で販売されているのに比べるとコストパフォーマンスは良好で、何よりかなり大幅に動作クロックが引き上げられている点と、高い冷却性能を備えたGPUクーラーを備えている点を考慮すると、かなりお買い得な1枚と言えるだろう。


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