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「Blender」ではCore i9-10900Kに圧倒的な差を見せつける
続いてはCG作成ソフト「Blender」をベースにしたベンチマークツール「Blender Open Data」を使用する。想定するBlenderのバージョンは2.9.0とし、CPUのみでレンダリングする時間を計測した。
CINEBENCH R20ではCore i9-10900Kが僅差でRyzen 7 5800Xを上回っていたが、このテストではRyzen 7 5800XがCore i9-10900Kを優越している。ただ全部優越という訳ではなく、一番軽い“bmw27”では僅差で負けているし、“pavilion_barcelona”では両者の差は30秒も違わない。
しかし、その一方で“koro”や“victor”でははっきりと分かる差を付けるなど、シーンの設計やレンダリングの設計次第で速さが決まる、ということが分かる。ただ同じコア数のRyzenで比較すると、旧世代のRyzenと新しいRyzen 5000シリーズの力の差は処理の重いシーン(特にvictor)において顕著だ。プロセスルールは変えずにコア設計の見直しだけでここまで伸ばした点に関しては、驚きという他はない。
「Media Encoder 2020」でも安定して強い
次は「Media Encoder 2020」を利用した動画エンコード時間を比較しよう。「Premiere Pro 2020」を利用し、再生時間約3分半の4K動画を編集(カット編集とシーントランジション追加主体のシンプルな動画)、それをMedia Encoder 2020にキュー出ししてMP4動画に出力した時の時間を計測した。
コーデックはH.264およびH.265を使い、ビットレートはそれぞれ80Mbpsと50Mbpsを指定。どちらも1パスVBRで処理している。GPUの支援はデコード処理(Mercury Playback Engine)のみで、エンコードには使用していない。
初出10万円近かったRyzen 9 3950Xが7万円強のRyzen 9 5900Xに肉薄されている。Adobe製の動画エンコーダーはコア数が多すぎて遊んでしまう事が多いことが知られているが、Ryzen 9 3900XTと3950Xの間にはしっかり差が出ていることを見れば、エンコーダーの設計が原因でないことはすぐに分かる。
12コアのRyzen 9 5900Xが16コアの3950Xに肉薄しているのは、Zen3の設計が非常に優秀である以外の答えが存在しないのだ。今回残念ながらRyzen 9 5950Xをテストできなかったが、この結果から考えると、このテストではH.264で3分を切ることは十分に考えられる。動画編集がメインなら、例えコア数が同じモデルでもRyzen 5000シリーズに乗り換えるメリットがありそうだ。
「Lightroom Classic」ではやや微妙な結果も
続いては「Lightroom Classic」を使った検証だ。今回は60メガピクセルのRAW画像(DNG形式、調整付き)を100枚用意し、これを最高画質のJPEG形式に書き出す時間を計測した。書き出し時にはシャープネス(スクリーン用、適用量標準)を付与しているが、この処理が極めてCPU依存度が高く、CPUの力の差が出やすい。ここまでの検証で優秀な結果が出ていたRyzen 5000シリーズでどこまで伸びるか楽しみなテストである。
ちなみに写真素材は林 佑樹氏(@necamax)が撮影し、同氏がLightroom Classicで実際に調整したものを使わせて戴いている。
Lightroom Classicの処理はL3キャッシュの多いRyzenの相性が良く、インテル製CPUを大差で引き離すことが過去のさまざまなベンチマークで明らかになっている。だが今回のRyzen 5000シリーズはRyzen 3000シリーズより高速だが、その差は大きいとは言えない。
このテストではZen3の良い部分はほとんど使われておらず、ほぼキャッシュ周りの効率の良さだけでインテル製CPUを負かしてきたことが明らかとなった。
ついでに「Photoshop 2021」のパフォーマンスも見てみよう。まずはLightroom Classicで使った60メガピクセルのDNGをPhotoshop上のCamera Rawを用いて開いた時の時間を計測する。ブレが大きいため3回計測した時の平均値を採用している。
Lightroom Classicの処理時間の差はCPU負荷の極めて高いシャープネス処理にあるのでは、という予想を立てていたが、単純にRAW画像を開く処理だけでもRyzenは全体的に高速。数値上ではRyzen 9 5900Xが一番高速だが、Ryzen 9 3900Xなどの差は極めて小さいため、誤差の範囲でしかない。
ただRyzen 9 3950Xは今回試したRyzenの中でも明らかに半呼吸長い時間を必要としているため、ここの部分は誤差とは言にくいものがある。
そしてここでもインテル製CPUの遅さが際立つ結果となった。この結果は3回の計測でほぼ安定してこの結果に近い値が出ていた(平均のマジックで差が付いているのではない、ということ)ので、CPUアーキテクチャーの設計的に、Zen2/Zen3世代のRyzenはPhotoshopやLightroomと相性が良いようだ。
さらにここで開いたDNG画像を縦横2倍(240メガピクセル)に拡大し「虹彩絞りぼかし」を適用した時間も計測してみた。設定値はデフォルトだが、高品質モードにチェックを入れている。こちらも3回の平均値で比較する。
Photoshopの虹彩絞りぼかしはGPUの支援が得られるフィルターであるが、実のところCPUパワーもかなり使う。インテル製とAMD製のCPUが割と良い感じで競い合っているが、ここでもRyzen 5000シリーズが頭1つ以上抜けて高速である。
前世代のRyzenに比べると2秒程度高速、インテルの第10世代Coreプロセッサーに比べるとさらに+1秒前後の差がつく。Ryzen 5000シリーズはクロックやブースト設定に頼った性能向上ではなく、根本的な処理の見直しでここまで性能を改善した、という点が実感できる結果となった。