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「Ryzen 9 5950X」「Ryzen 5 5600X」を加えすべてのRyzen 5000シリーズの実力を俯瞰する(3/8)

加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

「Blender」のCPUレンダリングでは5950Xは強い

続いては3D CG作成ソフト「Blender」を利用したレンダリング時間の比較といこう。今回もBlenderをベースにしたベンチマーク専用ツール「Blender Open Data」を利用する。Blenderのバージョンは2.9.0とし、CPUのみを使ってレンダリングさせることにする。

「Blender Open Data」によるレンダリング時間

コア数が多い(横軸左)ほど処理時間が短くなる傾向が分かるが、所々不規則な山になっている部分に注目。“victor”や“koro”のラインで顕著だが、Core i9-10900KとCore i7-10700Kの部分に目立った山ができている。

つまり第10世代Coreプロセッサーはコア数の割に処理時間があまり短くなっていない、ということだ。特にCore i9-10900Kはコア数の少ないRyzen 7 5800Xには負けるし、コア数の多いRyzen 9 3900XTにも負けている。Ryzen 5000シリーズ登場でインテル製CPUの旗色は一気に悪くなってしまった。

6C/12TのRyzen 5 5600Xは、8C16TのCore i7-10700Kと処理時間が同等どころか、5600Xの方が短時間で終わっている。だが常にCore i7-10700Kに勝つわけではなく、シーンによってはRyzen 5 5600Xの方が順当にCore i7-10700Kより遅いこともある、という点が重要だ。

「Media Encoder 2020」では下位モデルの伸びに注目

動画エンコード比較は「Media Encoder 2020」で行なう。「Premiere Pro 2020」で約3分半の4K動画を編集し、それを「Media Encoder 2020」にキュー出ししてMP4動画にエンコードさせる時の時間を計測する。コーデックと画質はH.264が80Mbps、H.265が50Mbps、どちらも1パスVBRとする。エンコードは全てCPUを使うが、デコード作業はGPU(Mercury Playback Engine)を利用した。

「Media Encoder 2020」による4K動画エンコード時間

ここでの最速はもちろんRyzen 9 5950Xだが、3950Xとの差は30秒程度。下位モデルの新旧対決のような劇的な改善は観測できなかった。Ryzen 9 3900XT→5900Xは約70秒短縮、Ryzen 7 3800XT→5800Xで約90秒短縮、そしてRyzen 5 3600XT→5600Xで約110秒なので、下位打線になるほど新旧格差が広がっている。

AdobeのエンコーダーはThreadripperを使ってもコアの利用効率が低いため、あまり効果が上がらないことを考えると、Ryzen 9 5950Xは1秒でも処理を短縮したい人には良い選択かも知れないが、費用対効果で言えば最上位=最強とは言えない。Ryzen 5 5600Xの劇的な伸びは脅威的ですらある。

Ryzen 9 5950Xが不発に終わった「Lightroom Classic」

「Lightroom Classic」検証では、RAW画像からJPEGに書き出す時間を比較する。素材は60メガピクセルの調整付きDNGファイル100枚とし、これにシャープネス処理(スクリーン用、適用量標準)を付与しながら最高画質のJPEGに書き出す時間を測定した。

「Lightroom Classic」によるDNG→JPEG書き出し時間

書き出し時のシャープネス処理は極めてCPU負荷が高いため、コア数が多い方が有利だが、今回の検証環境では16C/32TのRyzen 9 5950Xおよび3950Xよりも、12C/24Tの5900Xや3900XTの方が速いという結果が得られた。さらに言えばCINEBENCH R20のようにZen3世代が圧倒的に高速とはならず、ほぼ誤差程度の差にとどまっている点に注目したい。

Ryzen 9 5950Xと3950Xで比較すると、ほぼ差はみられない。むしろRyzen 9 3950Xの方が勝つこともある。なぜここまで差が付かないのかまでは分析できていないが、Ryzen 5000シリーズを投入しても効果が劇的に感じられないこともある、と憶えておきたい。

ついでに「Photoshop 2021」でも検証してみよう。まずはLightroom Classicで使用した60メガピクセルのDNG画像1枚を“Camera Raw”で開き、「開く」ボタンを押してからウインドウが出るまでの時間(3回平均)を比較する。

「Photoshop 2021」でDNG画像を開いた時の時間

今回6C/12TのCore i5-10600Kも追加したが、Lightroom Classicと同様にインテル製CPUはRAW画像を開く処理では圧倒的にRyzenより遅いことが再確認できた。少し前までAdobeはインテル製CPU寄りと言われ続けてきたが、Zen2世代以降はAMD製CPUの方が快適な処理も多い。この処理もその1つに挙げられる。

ただLightroom Classicと同様に、ここでもRyzen 9 5950Xはそれほど速くない。RAW画像を開く際はかなり並列度の高い処理が入るが、コア数の多さが足手まといになっているようだ。

今度は開いた60メガピクセルの画像を縦横2倍(240メガピクセル相当)に拡大し、その上で“虹彩絞りぼかし”を高品質で適用した時の時間も計測した。Photoshopではなかなか見られないGPUで処理する系のフィルターだが、CPU負荷もかなり高い。

「Photoshop 2021」による虹彩絞りぼかしの処理時間

Ryzen 3000XT勢の方がインテルCPU勢より高速であるものの、差は1~2秒差と小さい。しかしRyzen 5000勢はさらに1~2秒縮めている。Ryzen 5 5600Xが他のRyzen 5000勢やや遅れているのは、TDP65Wモデルゆえの制約と考えられる。むしろTDP105WのRyzen 7 5800X以上のCPUは処理時間にほとんど差が付かなかった。コア数ではなくZen3世代の処理効率の高さがRyzen 5000勢の勝因といえるだろう。

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