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つまり現在のRyzenにおいては、Ryzen 7 5800Xが最も熱的に厳しいモデルであり、むしろRyzen 9 5900Xや5950Xの方が“扱いやすい”CPUではないか、という仮説が浮かび上がる。消費電力においてもRyzen 7 5800Xが突出して高かった点も、この仮説を裏付ける。
そこで「Handbrake」を利用して、4K動画をフルHDのMKV動画にエンコードした時のCPU温度(Tctl/Tdie)をHWiNFOで追跡してみた。室温は約27℃である。
このグラフからも分かる通り、最も温度が高いのはRyzen 7 5800Xで、今回使用したCPUクーラー(280mmラジエーターの簡易水冷)ではTDP105W版Ryzenの温度リミット(90℃)にかなり近い88℃まで上昇。しかしコア数が増えるに従ってCPU温度も下がる。Ryzen 9 5900Xでは81℃前後、5950Xでは73~78℃という結果になった。
Ryzen 7 5800XはCCDを1つしか装備しないため熱密度も上がってしまっているのも温度上昇の原因だが、温度の許容量一杯までコアを回そうとする設計が強く影響していると思われる。
今回試したRyezn 5000シリーズの中では、TDPの低いRyzen 5 5600Xがゲームでの性能も良好な上に温度も低く、最も扱いやすい一方で、その1ランク上のRyzen 7 5800Xは8C16Tのダイ1基をカリカリになるまで回すため扱いが難しいCPUとなっている。むしろコア数の多いRyzen 9 5900Xの方が扱いやすくなっているのが面白いところだ。
まとめ:Ryzen 5 5600XはPCゲームにおける怪物
総合性能ではRyzen 9 5900Xもスゴい
今回は試せる時間が短かったためRyzen 5000シリーズファーストレビューの“完全版”商法のようになってしまったのは残念だが、Ryzen 5000シリーズ全体の性能の出方がよく分かったのではないだろうか。Ryzen 9 5950Xは確かにCGレンダリングや動画エンコードでは凄い性能を発揮したが、Ryzen 9 5900Xの方が良い結果を出すこともしばしば見られた。
Ryzen 5 5600Xはマルチスレッド性能は一番低かったものの、特にPCゲームにおいては上位CPUと肩を並べることもあるどころか、一部ゲームにおいてはフレームレートの安定性も高いなど、思わぬ効果も実感できた。TDP65Wゆえに消費電力も発熱量も小さく、想像以上にゲームで回る割には扱いやすい、怪物のようなCPUに仕上がっている。
このRyzen 5 5600Xの出来を見てしまうと、TDP105WのRyzen 7 5800Xは残念ながら扱い辛い。性能はRyzen 9と5のちょうど中間なので不満はないが、いかんせん高負荷時の発熱量が大きい。普通の感覚だとRyzen 9 5900Xの方がRyzen 7 5800Xよりも冷却が難しいと考えてしまうが、ことRyzenに限ってはそれは逆なのだ。Ryzen 7 3700Xに相当するRyzen 5000シリーズ(存在するとすればRyzen 7 5800?)の登場が待たれるところだ。
こうした欠点はあるものの、Ryzen 5000シリーズは自作PCにおけるCPU性能の常識を完全に覆してしまったことは間違いない。Zen4世代の製品が出るまで、自作PC向けCPUの最高峰として君臨することは間違いないだろう。