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先日、Ryzen 5000シリーズのレビュアー向けにAMDから新しい情報が寄せられた。これによると、AMDはRyzen 5000シリーズのパフォーマンスを引き上げる「Precision Boost Overdrive 2(PBO2)」を提供する準備をしているという。
PBO2の前身である「Precision Boost Overdrive(PBO)」とは、Ryzen 2000シリーズと最新の5000シリーズで使える(Ryzen 3 3200Gは除く)“自動オーバークロック(OC)機能”のことだ(参考記事:https://amd-heroes.jp/article/2018/08/41/)。
PBO2の前提にある技術がCPUのクロックをCPUの保証範囲内でブーストする「Precision Boost 2(PB2)」であり、PBOはこの保証範囲を超えてブーストする機能として、X470マザーボードの目玉として実装された。PBOは後にB450やX570、B550にも拡大したが、Ryzen 5000シリーズではPB2はそのままだが、PBOがPB2にグレードアップした、という話になる。
PBO2を利用する条件は「Ryzen 5000シリーズ」「AMD 400/500シリーズチップセット」そして「AGESA 1.1.8.0以降のBIOS」の3つだ。AMDによれば、AGESA 1.1.8.0を採り入れたBIOSは12月リリースに見込み(現在βテスト中)ということだが、原稿執筆時点で筆者の元に肝心のBIOSがないので試すことはできない。そこで今回はPBO2は何が変わったのか、資料から分かる範囲で解説しておきたい。
PBO2はPBOの延長線上に存在する技術だが、新しい機能が追加された。一番重要なのは「Undervolt」、つまりコア電圧を下げる機能を付けたという点だ。CPUのOCでは、ある程度クロックを上げたい場合、コア電圧も上げないと失敗する。基本的にOCとコア電圧下げとは相反する要素だ。
さらに、コア電圧下げは単純なようで実装は難しい。OCと同じようにCPUの個体差に依存するし、CPU負荷の高低により下げ幅の限界も変わってくる。ゆえにBIOS等でコア電圧を“50mV下げ”のように一律幅で下げる手法には限界がある。
コア電圧を下げて負荷をかけて通らなかったら下げ幅を少し減らしてテスト……というサイクルを経て最適値を割り出すことになるが、そこで得られた“安定動作が得られるコア電圧下げ設定”は、検証に使った負荷テストだけに通じる値でしかない。そこでAMDはPBO2に「Curve Optimizer」という機能を追加した。
Curve Optimizerは、ある負荷の状況下において、どれだけコア電圧下げの余力が存在するかシステム(CPUの制御機能)にリアルタイムで知らせることができる。その結果を元に負荷の軽いコアは電圧をガッツリと下げ、その結果生まれる電力や熱の余力を高負荷のコアに回すことで、負荷の重い軽いに関係なく最適な形でCPUのパワーを絞り出せる。ここがPBO2の賢いところだ。