メモリー設定は数クリックで完了だ
BIOS設定と言われるとどうしても構えてしまうが、OCメモリーは基本、XMP(Extreme Memory Profile)に対応しているので、設定は簡単。元々、XMPはIntel提唱のOCメモリー規格で、メモリーSPDに記録されたOC設定を読み出すだけで、メモリークロックや各種メモリータイミング、メモリー電圧といった設定を行なうというもの。
MSI製Socket AM4マザーボードではAMD環境でXMPを読み取る機能として「A-XMP」という名称になっているが、基本メーカーを問わず、AMDマザーボードでもXMPを読み込むことができるので安心だ。設定自体は、MSIのように「EZ Mode」を備えているマザーボードでは数クリック、階層メニューの場合でも、オーバークロック関連の設定項目になるメモリー設定項目から、XMPを読み込めばオッケーだ。
これから組む人はもちろん、すでにRyzen+DDR4-3200や、DDR4-3600などのメモリーで組んでいるが、設定を忘れていた人は、しっかり設定してRyzen搭載PCのパフォーマンスアップをしよう。
2666~3600まで4パターンでパフォーマンスを比較
では、実際にメモリーの設定を変えるとどれぐらいの差が現れるのか、DDR4-2666からDDR4-3600までの4パターンのメモリークロックとメモリータイミングで比較検証をしてみた。テストにはRyzen 9 5900Xや、X570チップセット採用のマザーボードMSI「MEG X570 UNIFY」、Radeon RX 6800 XT搭載のビデオカードASRock「Radeon RX 6800 XT Taichi X 16G OC」などを搭載するPCで実施した。
テスト環境 | |
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CPU | AMD Ryzen 9 5900X (12コア/24スレッド、3.7GHz〜4.8GHz) |
CPUクーラー | NZXT「KRAKEN Z63(RL-KRZ63-01)」 (280mmラジエーター) |
マザーボード | MSI「MEG X570 UNIFY」 (AMD X570、ATX) |
メモリー | G.Skill「DDR4-3600 16GB×2 F4-3600C16D-32GTZNC」(DDR4-3600 16GB×2) CORSAIR「DDR4-3200 16GB×2 CMW32GX4M2C3200C16W」(DDR4-3200 16GB×2) |
ビデオカード | ASRock「Radeon RX 6800 XT Taichi X 16G OC」 (Radeon RX 6800 XT、GDDR6 16GB) |
SSD | Western Digital「WD_Black SN850 NVMe 2TB(WDS200T1X0E-00AFY0)」 (PCIe4.0 NVMe 2TB) |
電源ユニット | Seasonic「SSR-850PX」 (80PLUS Platinum、850W) |
OS | Windows 10 HOME 64bit版 |
・DDR4-2666 CL20-19-19
Intelプラットフォームで長らくスタンダードとなっていたメモリークロック。JEDEC準拠のメモリータイミングはCL19-19-19だが、AMD環境はCASレイテンシーを偶数しか設定できないため、CL20になる。
・DDR4-3200 CL22-22-22
狙い目の3200MHz駆動。メモリータイミングは、ネイティブDDR4-3200のJEDEC値になる。
・DDR4-3200 CL16ー18ー18
3200MHz駆動対応オーバークロックメモリー。メモリータイミングは比較的多い設定にしている。
・DDR4-3600 CL16-19-19
3600MHz駆動品。ここではCASレイテンシーが比較的高速な”16″で実行しているが、”18″の製品も多い。
パフォーマンスチェックには、CPUベンチマーク「Cinebench R23」(Multi CPU)のほか、フリーの動画変換ソフトウェア「HandBrake」を使って約5分の4K60p mp4動画を、フルHD30p H.265 10bit mp4に変換した際の時間。「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」のフルHD、最高品質のスコアと最低、平均フレームレートをまとめている。
体感で感じられるほどではないが、メモリークロックがさまざまな用途のパフォーマンスに影響しているのがよく分かる結果になっている。
数値の差だけを見れば、圧倒的な差があるとまではいかないが、高性能なCPUを購入しておきながらメモリーは動作クロックの低い安価なモノを選んだり、動作クロックの高い高価なメモリーを購入しながらクロック設定を行なわなかったりすると、それは宝の持ち腐れとなる。
CPUやマザーボードは、第1世代と第4世代までの間に組み合わせによって、Gen 4のSSDが使えなかったり、「Smart Access Memory」に対応していなかったりと、買い替えを考えるサイクルも早いが、メモリーはその影響は少ない。1度動作クロックが高いメモリーを購入しておけば、数世代は流用できると考えれば、メモリーだけ予算をケチって安価なモノを選ぶのは悪手とも言えるかも。
もちろん、予算内に限っての話だが、最新のRyzen 5000シリーズで新しくPCを組みたい、搭載BTO PCの購入を検討しているという人は、そうした事情も考えメモリー選びと設定の見直しも考えてみてはどうだろうか。
注意:「AMD のプロセッサーとメモリーをオーバークロックおよび/またはアンダーボルトして AMD が公開した仕様の範囲外の操作をすると、AMD ハードウェアまたはソフトウェアによりオーバークロックおよび/またはアンダーボルトが有効な場合でも、適用されるべき AMD 製品の保証が無効となります。」(2023年12月14日追記)