デスクトップPC向けで好評を博している、AMDのZen 3アーキテクチャーを採用したCPUの「Ryzen 5000シリーズ」。そのノートPC向けバージョンが登場したとあれば、ユーザーの注目が集まるのは当然と言っていいだろう。
ASUSの17.3インチノートPC「ROG Strix SCAR 17 G733QS」(以下、ROG Strix SCAR 17)は、そんなノートPC向けCPUの「Ryzen 9 5900HX」を採用したモデルで、GPUには発表されたばかりの「ノートPC向けGeForce RTX 3080」(以下、ノートPC向けRTX 3080)が組み合わされており、ゲーマーにとって垂涎の製品であることは間違いない。
では、このROG Strix SCAR 17はどの程度のパフォーマンスを備えているのか、テストにより明らかにしてみたい。
「ROG Strix SCAR 17 G733QS」の主なスペック | |
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CPU | AMD「Ryzen 9 5900HX」 (8コア/16スレッド、3.3~4.6GHz) |
メモリー | 32GB(DDR4-3200、16GB×2) |
ディスプレー | 17.3インチ フルHD(1920×1080ドット) ノングレア、IPS方式、300Hz駆動 |
グラフィックス | ノートPC向けGeForce RTX 3080(VRAM 16GB) |
ストレージ | M.2 SSD(NVMe、1TB)×2 |
有線LAN | 1000BASE-T |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11 a/b/g/n/ac/ax) |
インターフェース | USB 3.2 Gen.2 Type-C×1、USB 3.2 Gen.1 Type-A×3、HDMI出力端子、マルチカードリーダー、ヘッドセット入出力端子 |
サイズ | 幅395×奥行き282.1×高さ23.4~27.5mm |
重量 | 約2.75kg |
OS | Microsof「Windows 10 Home 64bit」 |
値段 | 32万9799円 |
CPUに8コア/16スレッドのRyzen 9 5900HXを採用
メカニカルキーボードの打鍵感は優秀
まずは、ROG Strix SCAR 17のスペックから紹介していこう。CPUは冒頭で述べた通り、8コア/16スレッドのRyzen 9 5900HXを採用し、そのベースクロックは3.3GHzと抑え気味ながらも、ブーストクロックは最大4.6GHzを誇る。Radeon Graphicsと呼ばれるGPUコアが統合されており、グラフィックスコアの数は8基で、その動作周波数は2100MHzとなっている。
ただ、デスクトップPC向けRyzen 5000シリーズがPCI Express 4.0をサポートしているのに対して、このRyzen 9 5900HXを含めたノートPC向けモデルは3.0までの対応になっている点は注意したい。なお、ROG Strix SCAR 17では、システムメモリーとしてDDR4-3200 16GBが2枚で計32GBが搭載されている。
一方のGPUは、ノートPC向けRTX 3080が採用され、グラフィックスメモリーにGDDR6を16GBも搭載している点は特筆に値する。なお、アイドル時や描画負荷が低い場合はCPUに統合されたRadeon Graphicsが利用されるため、消費電力の低減に一役買っている。付属アプリケーションの「Armoury Crate」では、「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」と3つの動作モードが用意されており、CPUとGPUの性能、それに消費電力と動作音のバランスを自動で調整できる。
また、Armoury Crateの「Gamevisual」という機能では、FPSやRPGなどプレイするゲームのジャンルに合わせて液晶パネルの色温度などを自動で設定してくれるなど、非常に使い勝手がいい。
ROG Strix SCAR 17では、17.3インチでノングレアタイプの液晶パネルを搭載。リフレッシュレートは300MHzをサポートしており、ノートPC向けRTX 3080のパフォーマンスを存分に発揮することが可能。
また、応答速度も3msと高速で、ノートPCながらもFPSやTPSなどで活用できるだけの高いスペックを誇る。なお、Radeon Graphicsが使用されている際は、AMDのディスプレー同期技術であるFreeSyncが利用可能なのだが、ノートPC向けRTX 3080で描画を行なっている場合はG-SYNCに対応しない。少なくとも、G-SYNC Compatibleをサポートして欲しかったところだ。
ストレージは容量が1TBのM.2 SSDを2枚搭載。試用機はRAIDが構築されているが、一般発売モデルはRAIDは構成されていない。とはいえ2TBという容量は変わらず、ゲーム用途で足りなくなることはまずないだろう。ネットワーク機能は、1000BASE-T対応LANのほか、Wi-Fi 6に対応した無線LANを搭載。対応ルーターを用意すれば、Wi-Fi 6により無線LAN接続でも高速通信が可能な点はかなり魅力的だ。
サウンド機能としては、2Wが2基、1Wが2基という計4基のスピーカーをヒンジ部と底面の手前に配置。サウンドユーティリティーには「Dolby Atmos」を搭載し、ゲームや映画などの用途に合わせたサウンド設定が利用できるほか、Armoury CrateにはAIを用いたノイズキャンセリング機能が用意されている点も見逃せない。
キーボードは、英語配列でテンキーも用意された100キータイプを搭載。光学メカニカル方式を採用しており、キーを押した際にカチッカチッと音がして非常に小気味好い。タッチパッドの面積は広めだが、どこでも押し込むとクリックできる仕様は少々使い難さを感じた。
ただし、ゲーム用途であればマウスを使用するユーザーが多く、問題となることは少ないだろう。ちなみに、Windowsキーとタッチパッドの無効化は、Armoury Crateのホーム画面で設定可能だ。
ノートPCとして十分高いパフォーマンス
コアなゲーマーでも満足のいくテスト結果
それでは、ROG Strix SCAR 17のパフォーマンスをチェックしていこう。今回、動作モードは、工場出荷時設定であるパフォーマンスを選択している。まずは、全体のシステム性能を知ることができる「PCMark 10」(Version 2.1.2506)からだが、ここでは無償版でも実行できるPCMark 10“無印”のテストを実行した。
その結果はスクリーンショットの通りだが、ここではスコアの詳細に注目してほしい。基本性能を示すEssentialsやオフィスアプリケーションの性能を知るProductivity、それにコンテンツ制作のパフォーマンスであるDigital Content Creationのすべてで9000以上のスコアを発揮。ROG Strix SCAR 17は、まさにすべてにおいて隙がないという表現がピッタリではないだろうか。
続いて、CPUを使ったレンダリング性能を見る「CINEBENCH R23」の結果に移ろう。ROG Strix SCAR 17のシングルコアは1500弱と、デスクトップPC向けCPUと比べても引けを取らないスコアを発揮している。一方で、マルチコアでは10000強と、動作クロックの低さによりデスクトップPC向けほどは伸びきっていない印象だ。ただ、それでもデスクトップPC向け6コアCPUなどよりは高い傾向にあり、8コアCPUの意地を見せている。
さらに、「FFmpeg」を用いたトランスコードに要する時間を測定してみたい。今回用意した動画ファイルは、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」をプレイした7分弱のもので、解像度は1920×1080ドット、フォーマットはMotion JPEGとなっている。
このファイルを、H.264/AVCとH.265/HEVCへとトランスコードしたが、前者は12分ほど、後者は29分ほどで終了した。さすがに同じコア数のデスクトップPC向けCPUに比べると若干時間はかかっているものの、十分実用的な結果が得られていると言っていい。
では、ROG Strix SCAR 17の描画性能も確認していこう。まずは、「3DMark」(Version 2.16.7117)からだが、Fire Strike“無印”で22000台、Time Spy“無印”で9000台と高いスコアを発揮。レイトレーシング性能を示すPort Royalも6000弱と、ノートPC向けRTX 3080がその性能を見せ付けている。
続いて、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では、解像度を1920×1080ドットに固定し、「最高品質」「高品質(ノートPC)」「標準品質(ノートPC)」の3つのグラフィック品質でベンチマークを実行した。スクウェア・エニックスの指標では、スコア7000以上が最高評価とされており、ROG Strix SCAR 17は最高品質でもその倍以上のスコアを叩き出している。ROG Strix SCAR 17でファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズが快適にプレイできるのは誰の目にも明らかだろう。
さらに「Apex Legends」では、オプションから描画負荷が最大となるように設定してゲームをプレイ。1分間のフレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で取得した。その結果だが、ROG Strix SCAR 17は1920×1080ドットでも最小フレームレートは150fpsを超えており、かなり快適なプレイが可能。1600×900ドットに解像度を下げると、最小フレームレートは180fps程度にまで向上し、300Hz駆動の液晶パネルを十分活用することが可能だ。コアなゲーマーでも満足がいく結果であることは間違いない。
最後に「Cyberpunk 2077」のパフォーマンスを見ておこう。ここでは、解像度を1920×1080ドットに設定し、「ウルトラ」と「レイトレーシング:ウルトラ」の2つの画質プリセットを適用。それぞれの設定でゲームをプレイし、1分間のフレームレートを「CapFrameX」(Version 1.5.8)で取得した。
その結果だが、ROG Strix SCAR 17はウルトラプリセットで99パーセンタイルフレームレートが60fpsに迫っている点は立派の一言。レイトレーシングを適用させても、常時50fps程度のパフォーマンスが維持されている点は注目すべきポイントだろう。
価格は約33万円だが、場所を選ばず満足なゲームプレイを実現
以上のテスト結果から明らかなように、ROG Strix SCAR 17は、ゲーム用途において、デスクトップPCにも引けを取らないほど高い性能を備えている。価格は約33万円と決して安価ではないものの、これだけ高いパフォーマンスを備えているのであれば、十分お買い得と言っていい。
スペースの都合でデスクトップPCが置けない人や、リビングや寝室などで場所を選ばずゲームをプレイした人にとって、このROG Strix SCAR 17はかなり魅力的な選択肢だ。