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「Precision Boost OverDrive 2」でのOC方法を解説!Ryzen 5 5600Xの性能を引き出す設定は?(4/4)

加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

消費電力やパワー周りを詳しくチェック

PBO2はOCなので、消費電力が増えることは想定内だ。そこでシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」でチェックしてみよう。“アイドル時”とはシステム起動10分後の安定値、“高負荷時”とはCINEBENCH R23のマルチスレッドテストを10分実行した際のピーク値となる。

システム全体の消費電力

定格設定が最も消費電力が小さく、PBO2時は+50〜70W程度増えている。PBO2利用時に激増しているのはOCだからでもあるが、PBO Limitを“Motherboard”、つまりCPUのパワーリミットをマザー側の上限に委ねる設定にしていることも関係している。

高負荷時の消費電力をもう少し詳しく見ると、Curve Optimizerの設定値をPositiveの方向に増やすと消費電力が増え、Negativeの方向に増やすと減っている。これはPositiveならコア電圧増、Negativeならコア電圧減であるため、ごく自然な結果といえるだろう。

この消費電力テストを実行する裏で、Ryzen 5 5600XのクロックやCPU温度(tCtl/tDie)、さらにはCPUのEDC/TDC/PPTがどう変動するかも追跡しておいた。各種データの追跡には「HWiNFO」を利用している。

「CINEBENCH R23」実行中の平均実効クロック(Average Effective Clock)

平均実効クロックとはコアの負荷も考慮にいれたクロックだが、CINEBENCH R23のマルチスレッドテストの場合ほぼ100%負荷になるため、平均実効クロックはタスクマネージャ読みのクロックにかなり近づく。

最もクロックが高くなったのは-5および-0〜-6設定の2つ(ともに4.55GHz前後)であり、-0と+0(ともに4.49GHz前後)が続いた。Positiveの+5と+10はむしろクロックが低くなったことがグラフに示されている。+5は4.41GHz前後、+10は4.32GHz前後、定格時は4.28GHzとなった。Positive方向にカウントを増やすとCINEBENCH R23のスコアーが悪化したが、この平均実効クロックを見れば理由は一目瞭然だ。

「CINEBENCH R23」実行中のCPU温度(tCtl/tDie)

一方CPU温度だが、定格時は62℃あたりで前後するのに対し、PBO2+Curve Optimizerを有効にしただけで70℃を超え(+0と-0)、Negative方向にカウントを増やすとさらに温度が上がることに注目したい。

逆にPositive側にカウントを増やした(+5と+10)場合は、+0や-0よりも温度が上がらないのが面白い。単純にカウントをPositive方向に増やすと温度が上がりすぎて性能が出ないのかと考えていたが、どうやら温度以外のパラメーターでリミッターがかかるような感じだ。Negative方向にカウントを増やすと一気に温度が上がるのも面白い。

「CINEBENCH R23」実行中のEDC(Electrical Design Current)

「CINEBENCH R23」実行中のTDC(Thermal Design Current)

「CINEBENCH R23」実行中のPPT(Package Power Tracking)

PositiveでCPU温度が上がりきらない理由をEDC/TDC/PPTの推移から求めてみたが、予想に反してここでもPositive方向にカウントを増やすとEDC/TDC/PPTが同時に下がることが確認できた。つまり、カウントをPositive側に盛ることで電力的なリミットに先に到達してしまったため、クロックやCPU温度が上がりきらないという推測をしていたが、実際はEDC/TDC/PPTも抑制されてしまうため性能が出ないようだ。

ただこうなると消費電力が増える説明がつけられない。精査しきれていないデータがあるのか、何か見落としているのかまでは突き止められなかったが、Curve OptimizerのカウントをPositive側に盛るのは良くない、ということだけは見えてきた。

また、Negative側に振った-5設定ではEDC/TDC/PPTともに大きく動くが、-0〜-6設定では開始1分あたりからほぼ安定している。これはCPU温度が上がりきったあたりで温度的・電気的な余裕を使い切っていることを示している。

まとめ:PBO2はRyzen 5000シリーズの
パワーを引き出せるが、同時に沼の入り口だ

以上でRyzen 5 5600Xを利用したPBO2の検証は終わりだ。Curve OptimizerのカウントはPositive側に盛るメリットは全くと言ってよいほど存在せず、いかにNegative側に寄せるのかがポイントであることが分かったはずだ。しかしAll CoreでNegativeに盛っても早めに限界が来るので、優秀なコアだけカウントを減らすといったチューニングも必要になる。

コア数の多い上位Ryzenではこの調整が果てしなく長くなるので最適解の導出がとんでもない作業量になってしまうが、Ryzen 5000シリーズの性能をフルに出したい人は挑戦してみるのもよいだろう。今回調べ切れていない部分は後日の課題としたい。


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