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メモリーのデュアルチャンネルにより
GPU性能に大きな差が生まれた
最後に各性能を比較していきたい。「Mini PC PN50」は、取り付けるメモリーやストレージによって多少数値が前後するので参考値として欲しい。まずはCPUの定番であるCINEBENCHでスコアーを計測。
スコアーは、いずれもシングルスレッド性能で1000ptsを超えている。マルチスレッドのスコアーは、デスクトップ向けで唯一8スレッドの「Ryzen 3 PRO 4350G」を搭載する「MINISFORUM X400」が最も高いが、本来6000pts前後のスコアー出す性能を有していることを考えれば低め。メモリーがシングルチャンネルだったりする影響があると思われる。
しかしながら、筆者が使用している3年前に発売されたインテル第8世代Core i7-8650U(4コア/8スレッド、1.9~4.2GHz)を搭載した15インチのSurface Book 2では、シングル850台、マルチで3800台だったため、3年前のハイエンドなビジネスノートPCよりも上の性能を有していると考えれば、非常に優秀と言える。
次にGPU性能を計測する定番のベンチマークソフト3DMarkにて性能を計測。Radeon Softwareは3月29日リリースの最新バージョン21.3.2を使用している。
今回ASUSの「Mini PC PN50」にAPUが対応する最も高クロックなDDR4-3200のメモリーを2枚使っている。そのためか、同じAPUを搭載するもののメモリーがDDR4-2666を1枚のみの「mouse CT6」よりも、約1.5倍高い性能を見せた。
一方、「MINISFORUM X400」は、デスクトップ向けのRyzen 3 PRO 4350Gでありながら1700台と非常に低い数値となった。昨年ライターの加藤勝明氏がAPU発売時期に検証した速報記事(ドライバーが異なるので、あくまで参考値)では、スコアーは3000を超えていたが、それを大きく下回る。
しかしながら、販売代理店のリンクスインターナショナルが公開する参考スコアーも近いものだったので、メモリーがシングルチャンネルであること以外にも、GPU高負荷時の熱処理が追い付いていないように思える。機会があれば、より冷却性の高いCPUクーラーを使用した際と比較してみたい。
では、今度は実ゲームベンチとして定番の「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」のベンチマークで計測結果を見ていきたい。解像度はHD(1280×720ドット)、設定は「標準(デスクトップ)」にしてフルスクリーンで計測。
このベンチマーク結果では、3DMarkと同じく最も優秀なのは「Mini PC PN50」となったが、3DMarkではほぼ同スコアーだった「mouse CT6」と「MINISFORUM X400」では、「mouse CT6」の方が高いスコアーを示した。
3DMarkの時のように「MINISFORUM X400」では、熱処理が追い付いていない可能性があるのと、「mouse CT6」が採用しているRyzen 5 4500UはL2キャッシュが3MB、L3キャッシュが8MBのところ、Ryzen 3 PRO 4350GはL2キャッシュが2MB、L3キャッシュが4MBと少ないことが影響しているのかもしれない。
最後に2つほど、実ゲームのフレームレート計測結果を見ていきたい。1つは昨年米作りがリアル過ぎると国内で話題となった「天穂のサクナヒメ」、もう1つは4月3日執筆現在もApple Store、Google Playともにセールスランキング1位になっている「ウマ娘 プリティーダービー」のPC版。
「天穂のサクナヒメ」は、解像度フルHD(1920×1080ドット)、「低」設定、「ウマ娘 プリティーダービー」は解像度設定がなく、縦画面のためWQHD(2560×1440ドット)のディスプレーに縦に手動で最大まで拡大してCapFrameXを使って1分間計測した。平均フレームレートと、全体の1%である99パーセンタイルのスコアーの2種類を示す。
「天穂のサクナヒメ」は、今までと同じ傾向で「Mini PC PN50」が最もフレームレートが高く、「mouse CT6」と「MINISFORUM X400」ほぼ誤差範囲の差となった。いずれも最低フレームレートが30fpsを超えているので、これでも十分快適だがHD(1280×720ドット)まで落とせば、より快適に動作しそうだ。
一方、「ウマ娘 プリティーダービー」は、最大フレームレートが30fpsで、どのPCでも最低28fps、最大29.9とほぼ30fps張り付きのような形で快適にプレイできる。「ウマ娘 プリティーダービー」の推奨環境は、APUが6年前に発売されたAMD「A8-7650K」(4コア/4スレッド、3.3~3.8GHz)同等以上で、メモリー8GB以上必須、グラフィックスが7年前に発売されたAMD「Radeon R7 250X」以上、DirectX 11以上、解像度はフルHD(1920×1080ドット)となっている。
このスコアーだけ見ると、「ウマ娘 プリティーダービー」の動作が軽すぎて、どんなPCでも30fpsで動くんじゃないの?と思われる人もいると思うが、筆者が所有するインテル「Celeron N4100」(4コア/4スレッド、1.10~2.4GHz)を搭載するUMPC「GPD Micro」では、10fpsも満たない程重く、メニューの切り替えももっさりとしていて、頻繁にフリーズした。
インテル「Celeron N4100」というと、小学校のプログラミング教育必修化に伴って子供向けの5万円台などと安価な最新ノートPCなどに採用されていたりするが、メモリーも4GBで、ストレージがeMMCを搭載するケースもある。そうしたPCと比べると、Ryzen APU搭載の小型PCの8万円台はとてもコスパが高く魅力的だ。
いずれも8万円以下と高コスパ!
買い替えやセカンドPCにオススメ
AMDの最新APUを搭載した小型PCは、8万円を切る価格で3~4年前の高価なノートPCが採用していたCPUを超える処理性能と、軽めの3Dアクションや2Dレトロゲームなどが快適に動作するGPU性能を有する。自宅で使うメインPCとして、オフィス作業などは非常に快適。いずれも最新の無線LANであるWi-Fi 6に対応しながら、有線LANも備え、4K映像出力による高解像度でネット動画も楽しめる。
「mouse CT6」は、ディスプレーやテレビの横に置いても邪魔にならない薄型で、今回紹介する中では唯一フルサイズのSDカードスロットを搭載。ストレージを後で追加することはできないが、置く場所の汎用性は高い。今回紹介した中では、唯一マウスとキーボードも付属するため、ディスプレーまたはテレビさえあれば、別途マウスやキーボードを購入することなく使える。LINEサポートなど、マウスコンピューターならではの充実のサポートも受けられるので、PC初心者でも安心だ。
最小構成では、メモリーがシングルチャンネルだが、今回筆者が試した「Mini PC PN50」のようにデュアルチャンネルで、ストレージ容量が512GBの「mouse CT6-H」(直販価格8万7780円)もオススメだ。
「MINISFORUM X400」は、小型でややデスクトップのAPUの性能を引き出し切れていないところはあるが、筆者が以前レビューしたASRockの人気ベアボーン「DeskMini X300」よりも小型のボディーに収め、ギガビットLANを2基搭載し、データ通信用とネット接続に分けて使うようなマニアックな人も要注目。
「AMD PRO テクノロジー」と呼ばれるセキュリティ・コアプロセッサーを内蔵したAPUを備え、システムメモリーの暗号化も可能。OSもドライブ暗号化機能である「BitLocker」が利用できるWindows 10 Proを採用するため、法人利用にも向くのも特徴。省スペースで使えるビジネス用PCと割り切って使うのもアリな1台だ。
「Mini PC PN50」は、ベアボーンのため別途メモリーやストレージを用意する必要はあるが、四方がヘアライン加工された黒を基調とした高級家電のような見た目で、テレパソにも最適。最大4画面同時出力できる汎用性は、サイネージ利用でも活躍できそうだ。
ちなみに、今回筆者が使用したメモリーCrucial「CT8G4SFS832A」の価格は実売8000円前後、ストレージCrucial「P5(CT1000P5SSD8)」は1万7000円前後なので、本体と合計しても7万1800円前後と他2機種よりもやや安価。取り付けは簡単なので、ベアボーン入門機として自分で中身を選ぶ楽しさも味わえる。
このように、用途は違えど小型ながらメインPCとしても使えるRyzen APU搭載機は、小型で置き場所にも困らないので、長年PCを買い替えていなかった人や、そこそこ性能の良いセカンドPCで、自分のPC環境を拡張したい人にもイチオシの製品だ。