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8コアRyzenのパフォーマンスはこの4年間でどう変わったか?歴代Ryzenを横並びで比較(4/4)

加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

全体の消費電力に大きな差はついていないが……

最後にシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用して計測してみた。下のグラフはシステム起動10分後の安定値を“アイドル”とし、「OCCT Pro v.8.1.1」の“OCCT”テスト(Extreme)を10分動かした時のピーク値を“OCCT”としている。

システム全体の消費電力

前述の通り、今回はZen世代のRyzen 7 1800XのみB450Mマザーで実施しているため、このCPUのみ消費電力が微妙に下がっている可能性がある(マザーに搭載されている回路や機能などによる差)ものの、全体として高負荷時の消費電力は200W±15Wの範囲に収まっている。Ryzen 7 2700X〜5800XはどれもTDP 105W品であるため、この枠に入るようCPUのパワーが制御されているためだ。

ただ同じTDP 105WでもRyzen 7 2700Xが215Wまで消費しているのは、プロセスルールが12nmであるためと思われる。Ryzen 7 3800Xおよび5800Xの7nmプロセス世代Ryzenでは性能が激増した割に、2700Xよりも消費電力が減っている。とくにRyzen 7 3800Xの消費電力は今回試したRyzenの中では最も低かった。

OCCTの処理でCPUがフルロードになっている時のCPUクロックやCPU温度の推移もチェックしておこう。計測ツールは「HWiNFO Pro」を利用し、Average Effective ClockとTctl/Tdieの推移を追跡した。

OCCT実行中のAverage Effective Clockの推移

CPUの世代が上がるごとに全コア稼働時のクロックが上昇していることがわかる結果となった。Ryzen 7 1800Xは3.67GHz、2700Xは3.86GHz、3800Xは4.21GHz、そして5800Xは4.58GHz(それぞれ“前後”が付く)で安定している。

ここでRyzen 7 1800Xのクロック変動は極めて小さく、処理開始から最後までほぼフラットなグラフになっているのに対し、2700X以降のCPUは1800Xよりもクロックの変動幅が大きい。これはZen+以降でPBO2やXFR2といったブースト機能が追加されたことによる効果(余裕のある時は積極的にクロックを上げる、余裕が消えたら下げる)によるものと考えられる。同じ7nmプロセスのRyzen 7 3800Xと5800Xを比べた場合、5800Xの方が激しくクロックが変動しているのは、TDP 105Wの設計限界に迫るほどクロックを上げたため、と考えられる。

OCCT中のEDC(Electrical Design Current)の推移

このグラフはEDC(Electrical Design Current)、すなわちマザーのVRMからソケットに供給される電力の最大値のことだが、Ryzen 7 2700Xと5800XがEDCの限界(TDP 105WのRyzenならば140Aが規定値)まで引き上げているのに対し、3800Xは107W前後と、かなり抑えている。

12nm世代のRyzen 7 2700Xでは性能向上のカギはクロック上昇に強く依存していたため、EDCを限界まで使う必要があった。しかし、最初に7nmプロセスを採用したRyzen 7 3800XはCPUの内部構造が劇的に改良されたため、EDCを抑えても十分高クロックで回ったし、性能も稼ぐことができた。だが、Ryzen 7 5800Xはさらに性能を引き上げるためにEDC限界を攻める必要があった……と解釈できる。

OCCT中のPPT(Package Power Tracking)の推移

実際にOCCT実行中にCPUがどの程度電力を消費したかを示すPPT(Package Power Tracking)は、EDCの推移とは少し違った傾向を示している。一番高い数値を示したのがRyzen 7 2700Xで、これは前掲のシステム全体の消費電力が一番高かったこととリンクする。同時にRyzen 7 3800XはPPTも低く、システム全体の消費電力が一番低かったことがこのデータからも裏付けられた。Ryzen 7 5800Xは2700Xと3800Xの中間となっている。

ではこのOCCT実行中のCPU温度(Tctl/Tdie)の推移も見てみよう。CPUクーラーは前述の通り280mmラジエーターを備えた簡易水冷に統一している。

OCCT実行中のCPU温度の推移

ここで一番上になったのは14nmプロセス世代のRyzen 7 1800X、消費電力が最も大きかった2700Xは3番手に下がった。2位は7nmプロセスだが、Average Effective Clockが一番高かったのはRyzen 7 5800Xであり、一番温度が上がらなかったのは最初の7nmプロセス世代で消費電力も小さかった3800Xとなる。

Ryzen 7 5800Xは熱的にやや扱いにくいということはRyzen 5000シリーズのレビュー(https://ascii.jp/elem/000/004/034/4034108/)時でも指摘した通りだが、こうして歴代Ryzenと比較すると、1800Xよりは温度が低く扱いやすいが、2700Xや3800Xに比べると、少々冷却に気を遣う必要があることがわかる。

まとめ:ワットパフォーマンスの違いに驚かされる

今回テストした4種類のRyzen 7を使ったシステムの消費電力が、フルロード時に190~210W程度の狭い範囲に収まっていることを考えると、新しいRyzenの強みはワットパフォーマンスの高さにあるといえるだろう。とくにZen2~Zen3世代のRyzenは、アーキテクチャーの新しさやL3キャッシュの増加で、写真編集や動画エンコード、ゲームにおいてワットパフォーマンスが大きく改善されていることがわかった。

次回は本稿の延長戦として、歴代Ryzen 5比較をやってみたい。性能差が気になる方は楽しみにしてほしい。


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