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価格性能比でライバル製品を圧倒するRadeon PRO W6000シリーズの凄さ AMD GPUロードマップ(1/3)

大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

米国時間の6月8日、AMDはRadeon PRO W6000シリーズ3製品を発表した速報はすでに掲載済みだが、今回はこれをもう少し説明しよう。

NAVI 21ベースのRadeon RX W6800と
NAVI 23ベースのRadeon RX W6600

まずハードウェア構成について。先の記事にもスペックはまとまっているが、Radeon RX W6800はNAVI 21を搭載する。60CU構成(3840Stream Processor)の構成で、FP32の性能が最大17.83TFlopsとされる。

NAVI 21のRadeon RX W6800は60CU構成。NAVI 23のRadeon PRO W6600は28CU構成。NAVI 23そのものは32CUなので、4CUを無効化してる格好だ

ここからコアの動作周波数はピークで2321MHzほどと推察される。基本的な構成はRadeon RX 6800に近いが、こちらは動作周波数がブースト時で2105MHz、演算性能は16.17TFlopsとされており、やや動作周波数を引き上げた格好だ。加えて言えばメモリーも32GBに増量されており、Radeon RX 6800に近いだけで別のカードである(VRAMのECCサポートも追加されている)。

もっともTGPは250Wとされており、ブースト時に1割ほど動作周波数を引き上げたわりにはRadeon RX 6800と変わらないことになっているが、その分ブーストを維持する時間が短くなっているのかもしれない。

一方のRadeon PRO W6600だが、こちらはNAVI 23ベースである。そもそもNAVI 23そのものが先日COMPUTEXの基調講演でRadeon RX 6600Mとして発表されたばかりであり、まだコンシューマー向けビデオカードとしては投入されていない。

このRadeon PRO W6600、カードイメージも公開されているが、個人的にはこの構成のままでいいのでRadeon RXグレードを出してほしいところである。仮にRadeon RX 6600が出たら、長さを切り詰めてその分2スロット厚になってしまうのだろう。

Radeon PRO W6600。1スロット厚は昨今では貴重な存在となる

HDMIがなく、すべてDisplayPortというややストイックな構成。MiniDP×6でないあたりは、NAVI 23は4出力までしかサポートしていないのかもしれない

カードそのものはかなり短く、1スロット厚で冷却ファンを追加するために長さを伸ばしているようだ

Radeon PRO W6600は1792SPで10.40TFlopsなので、ブーストクロックは2900MHzとかなりの高速動作になっているようだ。ベースクロックは10%落ちの2610MHzあたりではないかと推察する。

価格は高め
その代わりアプリの動作認証を取得

価格はRadeon PRO W6800が2249ドル、Radeon PRO W6600が649ドルとややお高めである。なぜこれほど高いのかというと、これは主にソフトウェア代というか、検証代というのが正確なのだろうが、これが加味されているからだ。

現在はビデオカードの高騰が続いていることもあって、あまり高くないと感じてしまう自分が怖い

表示機能を省いてGPGPUとしての性能に特化したRadeon Instinctは別として、Radeon RXシリーズとRadeon PROシリーズの最大の違いは業務用か否かに絞られる。業務用とはなにか? もちろん長期間の安定性(例えば1週間くらいかかる長いジョブを実行中にドライバーを起因としたブルースクリーンが発生したら目も当てられない)などはあるのだが、一番重要視されているのは「正確に描画できるか」という点である。

例えばCADで、本来接しているはずの部品が離れて描画されたり、あるいはその逆が起きたりすると、そもそもCADとして使い物にならない。あるいはCGのレンダリングで、最終的にデータとして出力される画像と画面上の表示が食い違っていたりする(これには色調や輝度なども当然含まれる)と、これまた大変なことになる。

このため、Radeon PRO向けのドライバーは、単にOpenGLなどの最適化が進んでいる(*1)のみならず、正しく描画できていることの検証をAMD社内で行なうだけではなく、アプリケーションを開発しているパートナー企業の認証を取得している。

2018年以降の認証数は1700におよぶ。実際には1700といっても、細かいバージョンの違いや対応するカードの違いも全部数え合わせているので、アプリケーションの数としてはそこまで多くはない

認証されたアプリケーションの一覧はAMDのウェブサイトにあるが、こうした認証は当たり前だが無償ではない。パートナー企業も少なくない手間(とそれに張り付くエンジニア)をかけて認証作業をしているわけで、その費用は当然AMDが支払う必要がある。これはWHQLの認証に結構なコストがかかるのと同じ図式である。

コンシューマー向けのRadeon Softwareで済むRadeon RXシリーズは、WHQLだけを取得すればよく、多くのユーザーがそのドライバーを利用するため1ユーザーが負担するコストが非常に少ない。対してRadeon PROシリーズのRadeon PRO Softwareは、限られたユーザーしか使わないからユーザー1人当たりの負担額が増えるので、必要な価格が全然違うのも仕方ないところではある。

もっともこうした対応は当然NVIDIAも行なっている。旧Quadroシリーズ、昨今はQuadro RTXシリーズにブランドが変更されたが、こうしたものも当然同じようにアプリケーションの認証などは取得した上で製品を展開ているわけで、結局のところソフトウェアの品質で差が付くということはなく、性能や消費電力、価格での争いになるコンシューマー向けと同じ状況になっている。

(*1) 最近はDirectX系やVulkanに移行する例も少しづつ増えてきたが、それでもまだ圧倒的にOpenGLを使うケースが多い。このため、AMDもNVIDIAも、コンシューマー向けのドライバーでのOpenGLのAPIサポートは最小限なのに対し、業務用では可能な限りのOpenGLのAPIをハードウェアでサポートしている。

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