ASRockのハイエンド向けモデルとしてはTaichiシリーズが著名だが、さらにその上にOC Formulaシリーズが存在する。このOC Formulaは、世界的に有名なオーバークロッカーであるNick Shih氏の監修を受けたシリーズで、オーバークロッカーが切望する仕様をふんだんに搭載した製品となっている。
OC Formulaシリーズは、かつてはIntel Z170チップセット搭載マザーボードで用意され、最新世代のマザーボードで復活。そして、今度は「Radeon RX 6900 XT」(以下、RX 6900 XT)を採用したグラフィックスカードの「AMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GB」(RX 6900 XT OC Formula)へと展開を果たしたというわけだ。
では、RX 6900 XT OC Formulaは一体どのようなカードなのか。その仕様を紹介するとともに、テストによりゲームパフォーマンスを検証してみたい。
ブーストクロックは2475MHzと高め
P BIOSとQ BIOSの2つのvBIOSを搭載
まずは、RX 6900 XT OC Formulaの動作クロック設定から説明していこう。RX 6900 XT OC Formulaのベースクロックは2125MHz、ゲームクロックは2295MHz、ブーストクロックは2475MHz。
RX 6900 XTのリファレンススペックではベースクロックは公開されていないものの、ゲームクロックはリファレンス比で280MHz、ブーストクロックは225MHz、それぞれ引き上げられた格好だ。なお、メモリークロックは16Gbpsで、こちらはリファレンスから変わりはない。
さらに、RX 6900 XT OC FormulaではP BIOSとQ BIOSの2つのvBIOSが搭載されており、それぞれ動作クロック設定が異なっている。工場出荷時設定はP BIOSで、その動作クロック設定は前述のとおり。
一方のQ BIOSでは、ベースクロックこそ2125MHzとP BIOSから変わりはないものの、ゲームクロックは2165MHzと130MHz低く、ブーストクロックも2365MHzと110MHz下げられている。つまり、Q BIOSは動作クロックを抑えた低消費電力モードと言ってよさそうだ。なお、メモリークロックは16Gbpsで、P BIOSと同じだ。
また、付属アプリケーションの「ASRock Tweak」(Version 2.0.35)を用いると、OC ModeとSilent Modeの2つの動作モードが利用可能だ。
実際にそれぞれの動作モードを試してみたところ、動作クロックに変化はないものの、OC ModeではPower Limitが10%上昇し、Silent Modeでは逆に5%減少した。そのほか、User Modeを選択するとブーストクロックを1MHz刻みで500~4000MHzに設定できるほか、メモリークロックを8Mbps刻みで16~21.992Gbpsに変更可能だ。
カードサイズは約332mmとかなり大きめ
21フェーズ構成など電源部はかなり豪華
続いてカードそのものについて見ていこう。カードサイズは実測で約332mm(※突起部除く)で、RX 6900 XTリファレンスカードが同266mmだったのに比べると約66mmも長い計算になる。なお、カードを横から覗き込むと、基板自体は264mmほどしかなく、GPUクーラーが70mm弱、カード後方にはみ出た格好だ。
なお、重量は1784gもあり、かなり重いカードである。そのため、製品パッケージには「ASRock Graphics Card Holder」というカードステイが同梱されている点は、なかなか好印象だ。
そのGPUクーラーは、3スロット占有タイプとかなり厚めで、端が丸みを帯びたデザインとなっている点はユニーク。また、側面の一部がメッシュ加工されているほか、裏面のバックプレートは、カード後方がハニカム構造でエアフローが表から裏へ抜ける仕組みになっているなど、かなり吸気と排気に配慮した構造であることが伺える。
GPUクーラーは「OC FORMULA 3X Cooling Sytem」と呼ばれ、100mm角相当のファンが3基搭載。これらのファンは「Striped Axial Fan」というブレードに3本の線状の突起物が施された独自仕様で、ブレード裏面の摩擦係数を抑えることで、エアフローの風圧や整流性を高めている。
また、ASRock Tweakを用いると、Fan Tuningから「SMART MODE」「FIXED MODE」「CUSTOMIZE」と3つの制御方式を選択可能だ。工場出荷時設定はSMART MODEで、これはファン制御が自動で行なわれるもの。FIXED MODEでは回転数を1%刻みで一定にすることができる。
さらに、CUSTOMIZEでは温度と回転数を示すグラフから、ユーザーが各温度における回転数を任意に指定可能だ。さらに、GPUへの負荷が低いアイドル時には、ファンの回転を停止する「0dB サイレントクーリング」という機能も用意されている。
なお、GPUクーラーの後方には、縁に沿う形でLEDが実装されており、「ASRock Polychrome SYNC」(Version 1.0.18)で、光り方や色などを制御可能だ。そのほか、カード側面の補助電源コネクターに近い位置にディップスイッチが用意され、LEDを常時オフにすることが可能。システム起動時も光らせたくない場合は、このスイッチを利用するとよいだろう。
基板に目を移すと、電源部にはMOSFETとドライバーICを1パッケージに収めたDr.MOSを採用しているほか、チョークコイルは90Aという大容量に対応。電解コンデンサーには、1万2000時間という長寿命を誇るニチコン製ブラックコンデンサーを使用し、21フェーズ構成とかなり豪華な仕様となっている。
補助電源コネクターは8ピン×3仕様で、RX 6900 XTリファレンスカードが8ピン×2だったのに比べると、8ピン1本分の電力供給量の増強が図られている。また、映像出力インターフェースは、DisplayPort 1.4×3とHDMI 2.1×1という構成で、RX 6900 XTリファレンスカードにあったUSB Type-Cは省略され、代わりにDisplayPortが1つ増やされている。