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ゲームで役割が分かりにくい「FidelityFX」と、その効果のまとめ(4/4)

加藤勝明(KTU)  編集●ジサトラハッチ

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

「FidelityFX Ambient Occlusion」は立体感を増すために使う

ゲームのグラフィック表現において影の表現は目立つものではないが、雰囲気や立体感を向上させる上で欠か せない。FidelityFXでは、光線が届きにくい部分を自然に暗くするアンビエント・オクルージョン(AO)を実装するための「FidelityFX Ambient Occlusion」が用意されている。GPUOpenではもっと正確に「FidelityFX CACAO(Combined Adaptive Compute Ambient Occlusion)」と呼ばれているが、両者は同じものだ(用語を統一しきれていないのも、FidelityFXの欠点の一つでもある)。

NVIDIAはDXR(DirectX Raytracing)でアンビエント・オクルージョンを表現する方向に行なったが、AMDは計算コストが低くていい塩梅の表現ができることを選択したのだ。RTコアやRay Acceleratorのような専用ハードは必要とせずゲームに組み込める。

ただアンビエント・オクルージョンはどんな実装であっても“間違い探し”レベルの差になりやすい。ただFidelityFX CASに比べるとFidelityFX CACAOは採用しているゲームが圧倒的に少ない。ここでは「DiRT 5」で違いを検証してみよう。

「DiRT 5」におけるFidelityFX CACAOは、オフ/Low/Medium/High/Ultra Highの5段階設定となっている

「DiRT 5」でFidelityFX CACAOをオフにした状態

FidelityFX CACAOをUltra Highにすると、遠景の観客席や左手にあるゲートの屋根がやや暗くなる。ボディー下部の影も濃くなり、立体感が増す

左がFidelityFX CACAOオフ、右がUltra High設定。並べると違いは一目瞭然だ

別のシーンでも比較してみよう。こちらはFidelityFX CACAOオフ

FidelityFX CACAOのUltra High設定。左手のブロックにはタテにスリットが入っているが、アンビエント・オクルージョンを追加することで陰影が付き、立体感が増している

左がFidelityFX CACAOオフ、右がUltra High設定。明るい場所ではアンビエント・オクルージョンの効果が出にくいが、光線が入り込みにくいタイヤハウジングの中がより暗く表現されている

FidelityFX CACAOに関してもフレームレートへの影響を見てみよう。以下のグラフはDIRT 5を画質“Ultra High”、解像度フルHDに固定し、FidelityFX CACAOの設定を変えた場合(オフ/Medium/Ultra High)どの程度フレームレートが変わるのか調べてみた。DiRT 5のレイトレーシングはオフ(レイトレーシングの処理がボトルネックになるため)としている。ゲーム内ベンチマーク機能を利用して測定した。

「DiRT 5」1920×1080ドット時のフレームレート

FidelityFX CACAOはフレームレートにかなりのインパクトを与える。オフ→Mediumにするだけでも平均フレームレートが22%低下した。これはFidelityFX CACAOが重いというよりは、アンビエント・オクルージョンの処理自体が重いせいでもある。パッと見の立体感が不要なら、アンビエント・オクルージョンはオフにしても問題ないだろう。

HDRコンテンツの見栄えを補正する「FidelityFX LPM」

採用例は極めて少ないが「FidelityFX LPM」もゲームの設定内に登場するので紹介しておきたい。LPM(Luma Preserving Mapper)は、レンダリングの後処理(ポストプロセス)で組み込まれる映像のトーン調整に関する機能だ。特にHDRや広色域コンテンツをレンダリングする際に発生するトーンや色域の調整に関係する機能だ。

手っ取り早くGithubからダウンロードできるFidelityFX LPMのサンプルで効果を見てみよう。以下の画像はHDRではなく普通のSDRで出力されているのでやや効果が割り引かれているが、LPMの目指す表現は分かるようになっている。

アームライトの強い光が右手にあるカラーチャートと机の表面を強く照らしているため、明るい所が白飛びしてしまっている映像。これはトーンマッピングをまったくかけていない状態だが、カラーチャートの色が完全に飛んでいる

DirectX 11の機能を利用してトーンマッピングを付与すると、白飛びが抑えられカラーチャートの色味が見えるようになったが、アームライトより左側の輝度が失われてしまった

FidelityFX LPMでトーンマッピングを行なうと、右手のカラーチャートの色味がより分かるようになっただけでなく、左側の明るさもキープできるようになる。机にカラーチャートの色味が反映されるなど、表現力もアップしている

「Godfall」はFidelityFX LPMを実装した数少ないゲームのひとつ。設定はオンかオフの2択だ。HDR向けの機能だが、HDRディスプレーを持っていなくても利用できる

「Godfall」でFidelityFX LPMを使わない状態。中央上にある青白い光源から放たれた光が、周辺を照らしているというシーン

FidelityFX LPMをオンにした状態。石畳や周辺の草木により強く光源の色が反映されているが、暗部と明部のディテールは失われていない。画面上方(見えない)にある陽の光のハレーションも抑えられている

ではGodfallでFidelityFX LPMを使った場合のパフォーマンスへの影響も検証してみよう。画質は最高設定だが、レイトレーシングやFidelityFX CASは無効化している。ゲーム内ベンチマーク機能があるが実際のゲームよりも軽めの負荷なので、マップ“真紅の木立”を実際に移動した時のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

「Godfall」1920×1080ドット時のフレームレート

手動計測ゆえに若干の誤差もあるが、FidelityFX LPMを有効化しても平均フレームレートにほとんど影響はない。ただしフレームレートの落ち込みが若干大きくなるほで、ある程度パワーのあるGPUで使うべきだろう。

大本命の「FidelityFX Super Resolution」は……?

その他解説しきれていないFidelityFXも沢山あるが、ユーザーが実際に効果を確認しながら使う・使わないを決められる項目はない。まずはFidelityFX CAS(Image Sharpening含む)の効用をしっかり把握しておこう。効果はゲームの実装次第な面もあるが、Horizon Zero DawnやThe Mediumのようによりシャープで見やすい画面が得られる。

だがFidelityFXの大本命はFSRこと「FidelityFX Super Resolution」であることは間違いない。既に大原氏が詳細な解説(https://ascii.jp/elem/000/004/060/4060502/)をされているのでそちらを参照して頂きたいが、FidelityFX CASの発展型であり、NVIDIAのDLSSに似たようなことを専用ハードの介助無しに行なう(しかも、性能が良いとアピール)ため、PolarisやPascalといった旧世代GPUでも利用できるという夢のような技術である。既に大原氏が検証されているが、次回は筆者なりにFSRの実力を検証してみることにしたい。

旧世代RadeonやGeForceでも動作するというアップスケール技術「FidelityFX Super Resolution」に関しては、次回検証予定だ

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