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未発表CPUのMeroとVan Goghは
カスタムAPUだった
ということでやっとAPUに話を戻す。実はだいぶ前からAMDが複数のAPUを開発しているという話は出ていた。実際Githubのpytorchに含まれるcpuinfoというツールの中のuarch.cというソースを見ると、下の方に以下の記述がある。
switch (model_info->model) {
case 0x01: // 14 nm Naples, Whitehaven, Summit Ridge, Snowy Owl
case 0x08: // 12 nm Pinnacle Ridge
case 0x11: // 14 nm Raven Ridge, Great Horned Owl
case 0x18: // 12 nm Picasso
return cpuinfo_uarch_zen;
case 0x31: // Rome, Castle Peak
case 0x60: // Renoir
case 0x68: // Lucienne
case 0x71: // Matisse
case 0x90: // Van Gogh
case 0x98: // Mero
return cpuinfo_uarch_zen2;
}
break;
case 0x19:
switch (model_info->model) {
case 0x01: // Genesis
case 0x21: // Vermeer
case 0x30: // Badami, Trento
case 0x40: // Rembrandt
case 0x50: // Cezanne
return cpuinfo_uarch_zen3;
}
break;
この記述を見ると、まだ未発表CPUとして以下が残っているらしい。
Zen 2を使うVan GoghとMero
Zen 3を使うRembrant, Badami
ちなみにTrentoはHPC向けのEPYCのスペシャル版(Frontierに実装される、という話があるが真偽は不明)とされる。またRembrandtはRyzen 6000Gシリーズ、つまり次世代のAPUで、Zen3(Zen3+という噂もある)+RDNA2、Badamiに至ってはZen3+RDNA3という話であるが、このあたり確度は相当低い気がする。
問題はVan GoghとMeroで、この世代はZen2+RDNA2という構成である。実は当初Van GoghはTDP 9W枠のAPUとされており、内部はZen2+Navi 2でLPDDR5という構成で、Premium Form Factor向けとされていた。
具体的にはMac Book AirやSurfaceなどに向けた製品という噂であったのだが、今年5月くらいになってこのVan Goghがキャンセルされたという話になった。ところがこれがもうほぼそのままSteam DeckのCustom APUとして出てきているわけで、要するにVan Goghは一般向け製品ではなくCustom APUだったと結論付けざるをえない。
ただ同じタイミングでMagic LeapもやはりCustom APUをAMDに発注していたことがわかったことで、どちらかがMero、どちらかがVan Goghということになる(どっちがどっちか、は現時点では判断できない)。Meroはさらに情報が少ないが、基本的にはVan Goghと同じ構成だとされている。
おそらく差があるとすれば、CPU/GPUの動作速度やキャッシュ容量、GPUのCU数(まだMagic Leap 2側の構成が不明なのでこのあたりは判断できない)というあたりになる。
加えて言えばどちらもRDNA2ベースなので、標準ではRay Tracing Engineが搭載される。おそらくSteam Deck向けはRay Tracing Engineが有効化されるだろうが、果たしてMagic Leap 2向けも同じように有効化されるかははっきりわからない。
またRDNA2ということはInfinityCacheが搭載可能だが、実際に搭載されるかどうかは不明である。あるいはCPUのCore Complex側の3次キャッシュとまとめてUnified Cacheの形になるかもしれない。Steam Deckの方はやはり相応にGPU性能が重視されると思うので、さすがにInfinityCacheなしにはならないように思う。
ちなみにSteam Deckに搭載される液晶は1280×800ピクセルで、プレイ中は上下40ピクセルずつブランクにしてHD解像度(1280×720ピクセル)で表示がデフォルトになっているようだ。
これだけ解像度が低ければおそらくInfinity Cacheがなくてもそれなりには動くだろうが、Steam Deckは外部モニターをつなぐことも可能である。最大解像度がどこまでいけるかはわからないが、フルHDくらいは常識的に出力できるだろう。
連載621回で説明したFSRを使えば、Quality SettingでHD解像度をフルHDに拡大できるから、おそらくそうした使い方がなされるだろう(今思いついたのだが、ひょっとしてFSRの発表を急いだのは、Steam Deckの投入も念頭に入れていたのかもしれない)。
企業向けのMagic Leap 2はともかく、Steam Deckは既存のUMPCと真っ向勝負といった格好の製品になっている。キーボードを搭載しないのも、これだけワイヤレスキーボードが普及している昨今では必ずしもネガティブポイントにならないし、ゲーミングに振り切ってるあたりはいっそ清々しい。
そうしたところにカスタムAPUを突っ込むというあたり、既存のUMPCのほとんどがTiger Lakeベースなことを考えると、これも見事なコントラストになっていておもしろいと思う。日本での発売は2022年以降なのがやや残念である。