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RadeonとGeForceで差はあるのか?
FSR最大の武器はRadeonのみならずGeForceで使えるという点にある。そこで今回は以下のような検証環境を用意した。現行世代代表としてRadeon RX 6800 XT(以下、RX 6800 XT)とGeForce RTX 3080(以下、RTX 3080)を、さらに旧世代のRadeon RX 5700(以下、RX 5700)も用意した。GPUドライバーは検証時点で最新のAdrenalin 21.6.2とGeForce 471.11を使用、Resizable BARは有効とした。
【検証環境】 | |
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CPU | AMD「Ryzen 9 5950X」 (16コア/32スレッド、3.4~4.9GHz) |
CPUクーラー | Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」 (簡易水冷、280mmラジエーター) |
マザーボード | GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」 (AMD X570、BIOS F33) |
メモリー | G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」 (DDR4-3200、16GB×2)×2 |
ビデオカード | AMD「Radeon RX 6800 XTリファレンスカード」、AMD「Radeon RX 5700リファレンスカード」、NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」 |
ストレージ | GIGABYTE「AORUS GP-ASM2NE6200TTTD」 (NVMe M.2 SSD、2TB) |
電源ユニット | Super Flower「SF-1000F14HT」 (80PLUS TITANIUM、1000W) |
OS | Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」 (May 2021 Update) |
「The Riftbraker」4Kでは最大2.6倍近い性能向上を果たす
手始めにFSR対応ゲームでFSRがどの程度フレームレートの向上に貢献するのかを検証し、その後で画質がどう変化するかを検証していきたい。まずはAMD系グラフィック技術の採用にかなり積極的なリアルタイムストラテジーである「The Riftbraker」で試してみる。
今回は画質を最高設定とし、さらにDXR(DirectX Raytracing)によるシャドウは“ウルトラ”、アンビエント・オクルージョンも有効とした(RX 5700はDXR系設定がオフになる)。ゲーム起動時のオプションから「GPU Benchmark」を選択し、フレームレートを計測した。結果を見る前にFSRの内部解像度と出力解像度の関係も確認しておこう。
どのGPUでもFSRをオフにした時が最もフレームレートが低く、Ultra Quality〜Performanceの順番でフレームレートが段階的に上がってゆく。FSRオフ時を基準にFSR Performance時の平均フレームレートの伸びに注目すると、RX 5700はフルHD時で146%、4K時で185%止まりだが、RTX 3080ではそれぞれ162%/234%、RX 6800 XTでは179%/257%となる。
RX 5700→RX 6800 XTの伸びが良いのは当然としても、RTX 3080よりもRX 6800 XTの方が伸びている点は、FSR自体がRadeonに有利という可能性もある。だが、FSRオフ時のフレームレートから考えると単にThe RiftbrakerがRadeonに対し良く最適化されていると考えるべきだろう。RX 6800 XTで4K+FSR Performance設定を使えば、内部解像度がフルHD相当となりFSRオフ時の2.6倍近いフレームレートが得られるが、フルHD+FSRオフ時の平均フレームレートよりも約15%下がっている。
これはFSRの処理(アップスケール+シャープニング)等の影響で若干パフォーマンスが落ちることを示唆している。また、グラフ上でRTX 3080よりRX 5700の方が優越している部分も散見されるが、これはRX 5700ではDXRの処理が入っていないためだ。
ではThe RiftbrakerでFSRが画質にどういった影響を及ぼすか確認しよう。以下の図は全てRX 6800 XT環境、解像度フルHD設定で撮影したものだ。
内部解像度の低い設定であればあるほど全体のディテールがボケてくる。特にフルHDではQuality設定でも画面全体が眠い感じになる。ただ出力解像度を上げると相対的に内部解像度が上がるため、ディテールのボケも良い感じで解消される。次の5枚の図は同じシーンを4Kで表示させた時のものだ(リンク先のスクリーンショットは4Kで撮影したものを横800ピクセルにリサイズしたもの)。
4KになるとFSR Performance設定でもボケ感はほとんど感じられない。FSRオフ時とサイドバイサイドで比較すればテクスチャーのキレで違いは一目瞭然だが、FSR QualityやUltra Quality設定ではパッと見てもなかなか分からないかもしれない。
次の図は各解像度とFSR設定の違いが分かるようにクローズアップしたものをまとめたものだ。上下は解像度、左右はFSRの設定ごとに分割している。上から4K/WQHD/フルHD、左からFSRオフ/Ultra Quality/Quality/Balanced/Performanceと並ぶ。
左下のフルHD&FSRオフ時をスタート地点にすると、それと同等の見栄えを持った設定は中央段左から3番目あたり、もしくは最上段右上の設定が近い感じになっている。つまり解像度を1段上げたらFSRの設定を1〜2段Performance方向に下げてやることで、フレームレートへの影響を抑えつつ見栄えも維持できる。
これでは解像度を上げる必要がないではないか、と思うのはもっともだが、FSRの実装ではHUD類(The Riftbrakerで言えばミニマップや各種ボタン類)は出力解像度等倍で表示されるので解像度を上げるメリットは十分あるのだ。
The Riftbraker編のシメとしてFSR利用時にVRAMの消費量が変化するかどうか見てみよう。GPUはRX 6800 XT、画質は前述のフレームレート計測時と同じ設定とし、4K+FSRオフ時と4K+FSR Performance設定時のVRAM消費量をタスクマネージャーで確認した。
テストに使用したシーンではFSRオフで約8GB、FSR Performance設定時で約6.8GBとなり、内部解像度が下がったためVRAM消費量も若干減ったことが示された。ただFSR Performance設定でフレームレートが上がったことで、CPUの占有率も6%→8%と微妙に上がった。Ryzen 9 5950XなのでCPU占有率の増加は微々たるものだが、CPUが貧弱な場合はCPUがFSRのボトルネックになり得ることを示唆している。