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VermeerことRyzen 5000シリーズが発売
後継のZen 3コアの投入がやや遅れたこともあり、6月にはZen2 RefreshとでもいうべきRyzen 3000XTシリーズ3製品が追加されて間をつなぐが、10月にはZen 3コアを採用したのRyzen 5000シリーズが発表。11月に発売され、その性能の高さでインテルを完全に圧倒した。
翌2021年のCESでは、Zen 3コアを搭載したAPUであるモバイル向けRyzen 5000Gシリーズが発表。インテルのTiger Lakeを打ち破る性能を発揮し、ついにモバイル向けでも完全に互角の位置に躍り出た。
3月にはワークステーション向けのRyzen Threadripper PROも発売され、4月にはデスクトップ向けのRyzen 5000Gが発表、8月には一般販売が開始されている。こちらはビジネス向けのPRO版ではなく、リテール向けの製品である。
その間に挟まれた6月、AMDは3D V-Cacheを搭載したZen 3コアの存在を公開、これを搭載した製品(Ryzenとは言っていない)を年内に投入予定と説明している。
Zen 4ベースのRyzenは2022年
Zen 5は2023年登場予定
ということで、やっと現在にたどり着いた。おそらく年内にRyzenの新製品は出てこない公算が高い。先に触れた3D V-Cacheであるが、今年11月にこれを実装したEPYC(Milan-X)を来年から一般販売するとともに、すでに特定顧客(オークリッジ国立研究所のスパコンFrontierが最初の顧客と思われるが、他にマイクロソフトもすでにこのサンプル版を受け取っていることを明らかにしている:このあたりは次回説明する)に納入が始まっていることを明らかにした。
2022年には、5nmプロセスを利用したZen 4と、この派生型であるZen 4cの2種類のコアが用意されていることも同時に公開された。このあたりがデスクトップ側にどこまでくるのかはわからないが、とりあえずZen 4ベースのRyzenの存在はかなり確実であろう。
これに続き、Zen 5がやってくる。AMDが2018年4月に公開した“Ryzen Processors: One Year Later”という、発売後1年を振り返っての動画の中(12分7秒付近)で、「今は何をやっているの?」と問われたClark氏は「今はZen 5を開発中だ」と明確に述べている。
Zen 5がどの程度新規に開発されているかは不明だが、2018年から開発がスタートしたとしてもすでにほぼ4年、来年は5nmを使ったZen 4ベースと考えると、4nmあるいは3nmあたりを使うZen 5が2023年に投入されるのは自然な流れだろう。
一般的に新アーキテクチャーを開発するのに5年かかると冒頭で説明したが、そのアーキテクチャーが平均10年ほど使われるというのも一般的な話だ。例えばBulldozerベースのアーキテクチャーは2011年のAMD FXからスタートし、実はいまだにAMD Aシリーズとして販売されている(例えばA10-7870Kがそうだ)。もう最初から数えると11年目に突入するわけで、そう考えるとZenシリーズのアーキテクチャーはまだ5年以上は使われるのは確実である。
Zen 5がZen~Zen 4の延長にあるのか、まったく新しいアーキテクチャーなのかはまだ判断できないが、仮にZen 4までの延長にあるとしたら、そろそろClark氏(あるいは別のどなたか)は、2026~27年あたりを目指して新しいアーキテクチャーの設計にかかっているのかもしれない。
ただそれが出てくるまでの間は、まだまだZenベースのアーキテクチャーが広く利用されることになるだろう。今年11月に米Mercury Researchが発表した分析によれば、2021年第3四半期におけるAMDのシェアはデスクトップで17.0%、モバイルで22.0%、サーバーで10.2%(いずれも出荷数量ベース)となっており、売上高ベースで言えば24.6%までシェアを伸ばしているとされる。
もちろんインテルも黙って見ているわけはなく、つい先日Alder Lakeを投入して反撃に転じている。そんなわけで競争が激化している中で、今後AMDはどこまでシェアを伸ばし続けられるのか、楽しみである。