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さまざまな用途に応える高いCPU性能を確認
ここから各種ベンチマークの結果を交えて、MINISFORUM HX90の性能面を見ていこう。本機に搭載されるRyzen 9 5900HXは、AMDの最新Zen 3アーキテクチャを採用するノートPC向けAPU(AMDではGPU内蔵CPUをAPUと呼ぶ)だ。ノートPC向けのAPUだからこれだけの小型筐体に収まっているとも言える。
ただノートPC向けと言っても侮るなかれ、Ryzenシリーズ最上位を意味する「9」のナンバーを冠するそのスペックは、8コア/16スレッドでベースクロック3.3GHz、最大ブーストクロック4.6GHzに達する。デスクトップ向けCPUと比較しても引けを取らないハイエンドモデルと言えるだろう。今回試用したモデルは、このAPUに加えて16GBのメインメモリーと512GBのM.2 NVMe SSDを搭載しているので、たいていのアプリケーションを快適に実行できると予想される。
また、APUであるRyzen 9 5900HXはグラフィックス描画用のGPUとして8コアの「AMD Radeon Graphics」を内蔵している。軽い3Dゲームであればプレイできるほか、動画デコード/エンコード支援機能も備えている。この性能についても迫っていくことにしよう。
では最初のベンチマークとして、CPUのマルチスレッド性能とシングルスレッド性能を3DCGのレンダリング速度で測るベンチマーク「CINEBENCH R20」と「CINEBENCH R23」を用いてMINISFORUM HX90の演算性能をチェックした。
結果はCINEBENCH R20がマルチスコアー5245pts、シングルスコアー586pts。CINEBENCH R23がマルチスコアー13139pts、シングルスコアー1506ptsというものだった。参考までにデスクトップPC向けの8コア/16スレッドAPU「Ryzen 7 5700G」のCINEBENCH R23のスコアーが、マルチで約13600pts、シングルで約1500ptsというものだったので、Ryzen 9 5900HXはデスクトップ向けハイエンドAPUと遜色ない性能と言えるだろう。
続いてPC全体の性能を測る「PCMark 10」(Ver.2.1.2532)の結果から。総合スコアーは6522で、その内訳は、アプリ起動速度、ビデオ会議、Webブラウジングの性能を測る「Essentials」が10495。表計算や文書作成のオフィスソフト性能を測る「Productivity」が10125。写真編集や動画編集などのクリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation(DCC)」が7086という結果になった。
EssentialsとProductivityがスコアー10000を超えているのはさすがと言ったところ。テレワーク作業などのビジネス用途でも十分なポテンシャルを発揮してくれることを示している。DCCはCPU性能よりもGPU性能によってスコアーが大きく変化するテストだが、7000以上のスコアーは内蔵GPUのパソコンとしては高い数値と言える。
参考までに同じ8コア16スレッドの「Core i7-10700K」を内蔵GPU(UHD 630)で使用した際のDCCスコアーは約4200ほどだった。ここからもRyzen APU内蔵GPUの性能の高さが伺える。
3Dグラフィックス性能を測る定番のベンチマーク、「3DMark」(Ver.2.21.7312)でのパフォーマンス計測も行った。
DirectX 11のテスト「Fire Strike」では、フルHD解像度(1920×1080ドット)のFire Strikeが3532、4K解像度(3840×2160ドット)のFire Strike Ultraが835というスコアーに。DirectX 12のテストを行う「Time Spy」では、WQHD解像度(2560×1440ドット)のTime Spyが1457、4K解像度のTime Spy Extremeが687という結果が出た。
参考までにCore i7-10700Kの内蔵GPUを用いた3DMarkスコアーはFire Strikeが約1320、Time Spyが約520というものだったので、やはりRyzen APUの内蔵GPUとしての優秀さが光る。ただ、CINEBENCHではほぼ互角だったRyzen 7 5700Gのスコアーが、Fire Strikeは約3900、Time Spyは約1600というものだったので、比較してMINISFORUM HX90はおよそ1割ほど低い数値となっている、このあたりがデスクトップPC向けとノートPC向けの差なのだろうか。
クリエイティブ系の実アプリケーション性能を見るために、「Adobe Lightroom Classic 2022」でのDNG→JPEGファイル変換(RAW現像)と、「Adobe Media Encoder 2022」での動画エンコード(H.264/H.265)にかかる時間を計測した。
Lightroom Classicのテストでは、24メガピクセルのDNGファイルを100枚用意し、JPEGファイル(最高品質)への連続変換にかかった時間を計測する。結果は1分03秒で1枚当たり1秒未満で変換が行われた。参考までに6コア/6スレッドのノートPC向けエントリーAPU「Ryzen 5 4500u」でも同様のテストを行った結果、タイムは2分09秒だった。
安価ながら普段使いが快適なノートPCとして人気だったRyzen 5 4500u搭載ノートPCだが、クリエイティブ系処理ではやはり8コア/16スレッドのパワーが際立つ結果になったと言えるだろう。
Media Encoderのテストでは、ゲーム画面をキャプチャした5分間の4K60p動画をVBR 1Pass 40MbpsのH.265およびH.264の4K60p動画へエンコードするのにかかる時間を計測した。CPUエンコードとGPUエンコードの両方で計測を行っている。
結果は表にある通りで、8コア/16スレッドのパワーでもまだGPUエンコードの方が速度は上で、GPUエンコードで処理時間は約半減している。またGPUエンコードではH.264よりH.265の方が速いという点も興味深い。これがRyzen APUの特徴となるだろうか。
次に「Crystal Disk Mark 8.0.4」を用いてMINISFORUM HX90の内蔵ストレージの速度を計測した。なお「Crystal Disk Info 8.12.7」でストレージ情報を確認したところ、試用機にはKINGSTON製の512GB M.2 NVMe SSDが搭載されていた。PCI Express Gen3接続のSSDだ。
テストの結果はシーケンシャルリードが2534MB/s、シーケンシャルライトが1220MB/sとなった。PCI Express Gen3接続のM.2 NVMe SSDとしてはミドルクラスの性能で、普段使いで不満を覚えることはそうそうないと思われる。容量は512GBあれば当面困ることはないが、MINISFORUM HX90は7mm厚以下の2.5インチ SATA SSD/HDDを2台まで増設できる上、M.2 NVMe SSDの換装も比較的容易なので容量不足になっても適宜増設で対応できるだろう。