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16スレッドのRyzen 7 4800U搭載の小型ゲーム機「ONE XPLAYER AMD」の実力をチェック

文● 宮崎真一 編集● AMD HEROES編集部

「ONE XPLAYER AMD」は黒一色の中、ボタン回りやボタンなどのオレンジが映えるデザイン

「外出先でゲームをプレイしたい」という需要は結構ある。実際、電車やコーヒーショップで、スマートフォンを片手にゲームに興じる様はよく見かける光景だ。だが、PC版のゲームをプレイしようと思うと、持ち運びに長けるノートPCを用意するしかなかった。

そんななか、最近注目を集めているのが、コントローラ付きのポータブルゲーム機型PCだ。これは、Nintendo Switchなどの持ち運び可能なポータブルゲーム機のようにアナログスティックや各種ボタンと液晶パネルが一体になったものだが、OSにはWindowsが採用され、中身はPCそのものだ。

そこで今回は、ポータブルゲーム機型PCの中から、One-Netbook社の「ONE XPLAYER AMD」を紹介したい。ONE XPLAYER AMDで、ゲームがどの程度快適にプレイできるのか、実際にプレイして確かめてみた。

CPUにはRyzen 7 4800Uを搭載
高性能なグラフィックス機能に注目

まずは、ONE XPLAYER AMDのスペックから紹介していく。CPUには、AMDの「Ryzen 7 4800U」を採用。Ryzen 7 4800Uは、第3世代RyzenにあたるCPUで、Zen 2アーキテクチャをベースにしたものだ。8コア16スレッドタイプで、ベースクロックは1.8GHzと抑えめながらも、最大ブーストクロックは4.2GHzと、ゲーミング用途で十分なスペックを誇る。

「ONE XPLAYER AMD」の主なスペック
ディスプレー 8.4型(2560×1600ドット、IPS、10点マルチタッチ対応、NTSCカバー率72%)
CPU AMD「Ryzen 7 4800U」(8コア/16スレッド、最大4.2GHz)
内蔵GPU AMD Radeon Graphics(1750MHz)
メモリー 16GB(LPDDR4x-4266)
ストレージ 1TB M.2 SSD(PCIe3.0)
無線機能 Wi-Fi6、Bluetooth 5.0
バッテリー 15300mAh
インターフェース USB 3.2 Gen2(Type-C)×2、USB 3.2 Gen1(Type-A)、3.5mmオーディオインターフェース、TFカードスロット
サイズ/重量 288(W)×130(D)×21(H)mm/約819g
OS Windows 11 Home 64bit

なお、ONE XPLAYER AMDには、TDP切り替えボタンが用意されており、TDPを20Wと28Wに場面に応じてユーザーが選択することが可能だ。

CPU-Z(Version 1.99.0)の実行結果

右スティックの下にある「Turbo」と記されたボタンを押すと、TDPが20Wから28Wに引き上げられ、より高性能な動作が期待できる

そして、Ryzen 7 4800Uの最大の特徴は、Vegaアーキテクチャをベースにした強力なグラフィックス機能を有している点だ。このグラフィックス機能は、8基のCompute Unitを有しており、もちろんONE XPLAYER AMDでも、同機能を用いて描画を行っている。なお、冷却には2基のファンが備わり、それらの間を2本のヒートパイプが熱平衡を行う仕組みだ。

GPU-Z(Version 2.43.0)の実行結果

システムメモリには、4266MHz駆動のLPDDR4Xを16GB搭載。デュアルチャネルアクセスで、データ転送レートは34.1GB/sと広帯域だ。さらに、Ryzen 7 4800Uに統合されたグラフィックス機能は、システムメモリの一部をグラフィックスメモリとして利用するため、メモリクロックも4266MHzということになる。

ストレージにはM.2タイプのSSDを1TB装備。NVMe接続でOSやゲームの起動、それにゲームのロードでストレスを感じることはまったくない。また、ONE XPLAYER AMDでは、システムドライブとデータドライブに500GB割り当てられており、容量面での不安もない。

CrystalDiskInfo(Version 8.13.3)の実行結果

そのほか、有線LANこそないものの、無線LANはWi-Fi 6をサポート。対応ルーターが必要になるものの、場所を選ばず最大通信速度9.6Gbpsの高速データ転送が利用できる点は魅力的だ。Bluetooth 5.0に対応しており、周辺機器との接続も懸念はない。また、OSにはWindows 11を搭載しており、最新OSが用意されている点もトピックとして挙げられよう。

テスト中はエレコム製のBluetooth対応マウスを使用していたが、まったく問題はなかった

ポータブルゲーム機らしくコンパクトな筐体
8.4インチでIPS方式の液晶パネルを採用

それでは、ONE XPLAYER AMDの外観を紹介していこう。全体的に筐体は黒色でまとめられ、ボタンや文字にオレンジを配したデザイン。ポータブルゲーム機の形状を採ってはいるものの、派手さはあまりない印象だ。

本体サイズは288×130×21(W×D×H)mm。任天堂のポータブルゲーム機「Switch Lite」が208×91.1×13.9mmなので、それより一回り大きいと言えば、イメージしやすいのではないだろうか。

とはいえ、エルゴノミクスデザインを採用したということだけあって、両手で持ったときの収まりは非常に良好で、各ボタンを押し難いと感じることはまったくない。重量も約819gと、ポータブルゲーム機と比べると重めながらも、実際ゲームをプレイして、重いと感じることはなかった。

ONE XPLAYER AMDを横から見たところ。高さは21mmとあまり厚いと感じることはない

液晶ディスプレイは、8.4インチのIPS方式のものを採用。表面はフルラミネーション加工が施されており、液晶パネルの傷を気にする必要がないあたりは、ポータブルゲーム機としての利用を意識してのことだろう。また、NTSC色域は72%をカバー、sRGBのカバー率は100%を誇り、色味はきめ鮮やかな印象を受けた。なお、ネイティブ解像度は2560×1600ドットで、タッチパネルに対応しており、操作性は良好だ。

8.4インチの液晶パネル。視野角は公表されていないものの、IPS駆動だけあってかなり広めのようで、実際に横から覗き込んでみても色ムラなどはまったく見て取れない

ボタン配置はXboxコントローラを意識した、左右でアナログスティックが前後にズレているタイプ。実際に手に持つとグリップ感がかなりしっくりとくるため、ゲームの操作性も言うことなしだ。

そのアナログスティックには定評のあるアルプス電気製のものを採用し、操作感は抜群だ。ただ、背面にもいくつかのボタンが用意されているのだが、それらは正直押し難いと感じた。ただ、それらのボタンは、サウンドのミュートなど頻繁に使用するものではないため、さほど問題になることはないだろう。

左側はアナログスティックを奥に、右側は手前にと、Xboxコントローラに準拠したボタン配置

さらに、ONE XPLAYER AMDではソフトウェアキーボードを起動する「キーボード」といったいくつかのファンクションキーが用意されている。中でも、左側のオレンジ色の「ホーム」と右側の「Turbo」と記された「ターボ」を同時押しすることで簡単にスクリーンショットが撮れるのは使い勝手いい。

十字ボタンの右下にはオレンジ色のホームボタンを配置。このボタンを押すことでデスクトップ画面とゲーム画面を切り替えることが可能

インターフェースについても触れておこう。ONE XPLAYER AMDでは、USB 3.2 Type-Cが2つ、USB 3.0 Type-Aが1つ用意されている。Type-Cは、映像出力にも対応しているほか、1つは充電ポートを兼ねている。microSDカードスロットも備わっており、先のBluetoothと合わせて拡張性が高いあたりは、さすがPCといったところ。

また、背面には65度まで展開できるキックスタンドが用意されており、ONE XPLAYER AMDを立てかけて使用することができる。そのほか、別売りではあるが、マグネット式専用カバーキーボードも用意されており、ノートPCのように使いたいと考えるのであれば、そちらを利用するとよいだろう。

裏側にはボリュームボタンとミュートボタンを備えるほか、65度まで調節できるキックスタンドが用意されている

Fortniteで常時80fps以上を実現
バッテリーの持ちは2時間弱

では、ONE XPLAYER AMDでゲームを快適にプレイできるかどうか確かめていこう。なお、ONE XPLAYER AMDは最も高いパフォーマンスが発揮できるようターボを有効にしてテストを行っている。

まずは、定番ベンチマークツールの「3DMark」(Version 2.22.7334)からだが、ONE XPLAYER AMDはFire Strike“無印”で3500強のスコアを発揮するものの、DirectX 12のテストTime Spy“無印”では1400程度と芳しくない。さすがに、ゲーミング向けのデスクトップPCと比べると見劣りするものの、ある程度割り切った設定であれば、ONE XPLAYER AMDでゲームが快適にプレイできそうだ。

そこで、「Apex Legends」でのテストに移ってみよう。ここでは、オプションから描画負荷が最も低くなるように設定したうえでゲームをプレイ。その間のフレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で取得した。なお、テスト解像度には、ONE XPLAYER AMDのネイティブ解像度である2560×1600ドットに加えて、1920×1080ドットと1600×900ドットの3つを選択している。

さすがに2560×1600ドットでは荷が重過ぎるためか奮わない結果となってしまったが、1600×900ドットであれば最小フレームレートが60fpsに迫る勢いを見せている。ONE XPLAYER AMDで、Apex Legendsをプレイするのであれば、1600×900ドットを選択するのがよさそうだ。

続いて「Fortnite」では、オプションから「低プリセット」を選択してゲームをプレイし、先ほどと同様にFrapsでフレームレートを取得した。その結果だが、ONE XPLAYER AMDは1600×900ドットで常時80fps以上の高いフレームレートを叩き出した。1920×1080ドットでも、最小フレームレートが60fpsまであと少しのところまで迫っており、プレイに支障はなさそうだ。

では、比較的描画負荷が大きいゲームはプレイできるのだろうか。そこで、「バイオハザード ヴィレッジ」の結果を見てみよう。ここでは、オプションから描画負荷が最も小さくなるように設定。そのうえで、ゲームをプレイし、「CapFrameX」(Version 1.6.6)でフレームレートを取得した。

その結果だが、さすがに描画負荷が大きいためか、ONE XPLAYER AMDは1600×900ドットでも平均フレームレートが35fps半ばといったところ。それでも、1%フレームレートであるMinimum(1%)は30fpsを維持しており、プレイアブルと言っていい。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果も確認しておこう。ここでは、「標準品質(ノートPC)」を選択してベンチマークを実行しているが、ONE XPLAYER AMDは1600×900ドットで6000台半ばのスコアを発揮。スクウェア・エニックスが示す指標では、スコア6000~7990は「やや快適」とされ、快適とまではいかないもののプレイはできそうだ。

1920×1080ドットでもスコアは5000強で、これも指標では「普通」とされており、標準的な動作が見込めるとのこと。ONE XPLAYER AMDで「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」をプレイするのであれば、1920×1080ドット以下の解像度に設定すれば遊ぶことは可能だ。

ゲーム以外のパフォーマンスもチェックしておこう。そこで、システム全体のパフォーマンスが見られる「PCMark 10」(Version 2.1.2525)から、無償版でも利用可能なPCMark 10“無印”のテストを実行した。

その結果だが、ONE XPLAYER AMDの総合スコアは5000程度に留まった。しかし、スコアの詳細を見ると、基本性能を知る「Essentials」が9000弱に達し、オフィスアプリケーションのパフォーマンスを見る「Productivity」で7000強のスコアを発揮し、ゲーム以外の用途でも十分な性能が期待できそうだ。

さらに、ONE XPLAYER AMDでは、バッテリーに20V3.25Aの59Whのものを搭載。この容量は14インチのノートPCでも見られるものだが、果たして持続時間はどの程度なのだろうか。そこで、PCMark 10からバッテリーの持続時間のテストとなる「PCMark 10 Battery Profile」から「Gaming」のテストを実行。つまり、外出先においてONE XPLAYER AMDでゲームをプレイし続けた場合、どの程度バッテリーが持つかを確認しようというわけだ。

ここでは、ターボが無効のデフォルト状態と、ターボを有効にしたそれぞれでテストを実施。その結果だが、デフォルトでは1時間50分、ターボでは1時間15分まで短くなってしまった。正直なところ、持続時間に関してはもう少し欲しかったところだが、それでも移動中に電車内でゲームを楽しむといった使い方では十分と言えるだろう。

最後に「CrystalDiskMark」(Version 8.0.4)を用いてストレージ性能もテストしておきたい。

その結果だが、ONE XPLAYER AMDはシーケンシャルアクセスでリードは最大2400MB/s弱、ライトは最大1900MB/sと良好な結果を残した。ランダムアクセスもリードが最大570MB/sほど、ライトが最大400MB/s弱と、十分なパフォーマンスを備えており、ゲームをプレイするうえでまったく問題はない。

ゲームを快適にプレイできる性能
価格は税込み15万5100円

以上のテスト結果から明らかなように、ONE XPLAYER AMDはじっくり腰を据えてゲームをプレイするというよりは、電車で移動中などにちょっとゲームを楽しむといった用途が適している。2560×1600ドットとポータブルゲーム機型PCとしては高解像度で、タッチパネルを有しているため、ガジェットとして非常に魅力的な製品だ。デスクトップPCと同じ快適さを求めるのは酷だが、それでも描画設定や解像度次第で快適なプレイを実現できる性能を備えている。

価格は、今回テストしたRyzen 7 4800U搭載モデルで税込み15万5100円と、ポータブルゲーム機として見ると高いと言わざるを得ない。ただし、PCとしてゲーム以外の用途に使えるほか、Discordなどでボイスチャットも簡単に利用できるなど、ポータブルゲーム機にはないメリットがONE XPLAYER AMDにはある。PCゲームを外出でもプレイしたいと考えるのであれば、このONE XPLAYER AMDは有力な選択肢と言える。


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