AMDからRDNA 2アーキテクチャーを採用したエントリー向けGPU「Radeon RX 6500 XT」が登場し、搭載ビデオカードも数多く発売されている。エントリー向けGPUは消費電力も抑えられていることからカードサイズを小さくしやすく、いわゆる短尺カードの開発もハイエンド向けモデルに比べて容易だ。
玄人志向の「RD-RX6500XT-E4GB/SF」も、そのRX 6500 XTを採用したモデルで、カード長は実測で約153mm(※突起部除く)と、かなり短いサイズを実現している。では、このRD-RX6500XT-E4GB/SFはどのような製品なのか、また、ゲームではどの程度のパフォーマンスを発揮するのか詳しく見ていきたい。
テスト環境 スペック | |
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CPU | AMD「Ryzen 9 5950X」(16コア/32スレッド、最大4.9GHz) |
マザーボード | ASRock「X570 Taichi」(AMD X570) |
メモリー | DDR4-3200 8GB×2 |
ビデオカード | 玄人志向「RD-RX6500XT-E4GB/SF」(Radeon RX 6500 XT)、MSI「Geforce GTX 1660 GAMING X 6G」(GeForce GTX 1660) |
SSD | Plextor「PX-512M9PeG」(M.2、NVMe、512GB) |
電源ユニット | SilverStone「SST-ST1200-G Evolution」(1200W、80PLUS Gold) |
OS | Microsoft「Windows 10 Pro」 |
ITXサイズを実現した短尺カード
動作クロックはリファレンス仕様
まずは、RD-RX6500XT-E4GB/SFの動作クロック設定から説明していこう。RD-RX6500XT-E4GB/SFのブーストクロックは2815MHzで、リファレンスどおり。ゲームクロックは公開されていないものの、「GPU-Z」(Version 2.44.0)では2610MHzと表示され、動作クロックに関してはリファレンスの仕様と捉えて問題ないだろう。
組み合わされるビデオメモリーはGDDR6で、その容量は4GB。メモリークロックは18Gbpsで、こちらもリファレンスから変わりはない。
カード長は冒頭でも述べたとおり約153mmほど。短尺カードといっても170mm程度の製品が多い中、150mm強というコンパクトなサイズを実現した本製品の存在価値は大きい。なお、側面には「PowerColor」のロゴが入っているが、同社のサイトには該当する製品の情報は掲載されていないので、このRD-RX6500XT-E4GB/SFはOEM向けモデルのようだ。
GPUクーラーは、2スロット占有タイプで、最近は2スロット以上の厚さの製品も多く、それらに比べると、十分厚みも抑えられているといっていいだろう。さらに、カードの高さも低いことから、RD-RX6500XT-E4GB/SFの外観は、数値以上にかなり小さいという印象を受ける。そのGPUクーラーには、90mm角相当のものを1基のみ搭載しており、GPUコアの温度が低い状態ではファンの回転を停止し、静音性を向上させる機能も用意されている。
GPUクーラーを横からのぞくと、6mm径のヒートパイプが2本用いられているのが確認できる。コンパクトなサイズながらも、冷却性能を高めようとしているのが伺える。また、基板裏面を見る限りでは、電源部は4+1フェーズ構成のようだが、その電源部にヒートシンクが装着されていない点は残念。その一方で、メモリーチップにはGPUベースが密接する構造となっており、こちらの冷却はしっかりと配慮がなされている。
補助電源コネクターは6ピンが1基と、電源ユニットに対するハードルはかなり低く、電源ケーブルの取り回しも容易だ。そのほか、映像出力インターフェースは、DisplayPort 1.4とHDMI 2.1が1基ずつという構成。おそらくコストダウンを図るため、2つに絞っていると思われるが、エントリー向けモデルであればDVIぐらいはほしかったところだが、このあたりは時代の流れというべきだろうか。
GTX 1660を10%前後引き離す性能
フルHDなら快適なプレイを実現!
それでは、RD-RX6500XT-E4GB/SFのパフォーマンスをチェックしていこう。MSI「Geforce GTX 1660 GAMING X 6G」(GeForce GTX 1660)と比較しながら、その実力を見ていこうと思う。
まずは、「3DMark」(Version 2.22.7334)からだが、「Fire Strike」において、RD-RX6500XT-E4GB/SFは全体的に良好な結果を残している。GTX 1660との差は3~20%ほどで、とくに「Fire Strike Ultra」でその差が最も広がっている点は特筆に値する。
一方、DirectX 12のテストとなる「Time Spy」では、GTX 1660が踏ん張りを見せ、RD-RX6500XT-E4GB/SFは9~10%ほど後塵を拝す形となった。「Time Spy」においては、NVIDIAのAmpere世代やTuring世代のGPUのスコアが高い傾向があり、その例に倣ってGTX 1660のスコアが伸び、RD-RX6500XT-E4GB/SFは逆転を許してしまったということなのだろう。
では、実際のゲームにおいて、RD-RX6500XT-E4GB/SFはどの程度のフレームレートを発揮するのだろうか。
まずは、「バイオハザード ヴィレッジ」でRD-RX6500XT-E4GB/SFのパフォーマンスを確かめてみよう。ここでは、オプションのグラフィックス自動設定から、描画負荷が比較的軽めな「バランス重視」を選択。その状態でゲームをプレイし、「CapFrameX」(Version 1.6.6)でフレームレートの取得を行なっている。なお、ここでは全体のデータの1%にあたる1パーセンタイルフレームレートを最小フレームレートの代わりに使用し、グラフ中に限り「Minimum(1%)」と表記することをここで断っておく。
さて、その結果だが、RD-RX6500XT-E4GB/SFは、1920×1080ドットに限り、GTX 1660に対して平均フレームレートで約11%、1パーセンタイルフレームレートで約10%の差をつけるパフォーマンスを発揮。
RD-RX6500XT-E4GB/SFは、2560×1440ドット以上の解像度になると、ビデオメモリー容量が4GBしかない点がネックになるようで、GTX 1660に逆転を許してしまっている。とはいえ、RD-RX6500XT-E4GB/SFは、2560×1440ドットでも1パーセンタイルフレームレートは50fps台を維持しており、プレイに支障はなさそうだ。
続いて「Call of Duty: Warzone Pacific」の結果に移ろう。ここでは、オプションから描画負荷が最低になるように設定したうえで、ゲームをプレイ。その間のフレームレートを、先ほどのバイオハザード ヴィレッジと同じくCapFrameXで取得した。
こうした対戦型FPSでは、高リフレッシュレートのディスプレーと組み合わせ、1フレームでも多く描画することで相手より有利に立ち回るというプレイがトレンドになっている。その点、RD-RX6500XT-E4GB/SFであれば、1920×1080ドットで1パーセンタイルフレームレートが144fpsに迫る勢いを見せており、そういった需要も満たすパフォーマンスを備えているといっていい。
解像度が高まるにつれて、RD-RX6500XT-E4GB/SFがパフォーマンスを大きく落とすのはバイオハザード ヴィレッジと同様だが、それでも2560×1440ドットで、1パーセンタイルフレームレートが100fpsにあと一歩のところまで迫っているのは評価できよう。
「Fortnite(フォートナイト)」でも、1920×1080ドットであれば、RD-RX6500XT-E4GB/SFのパフォーマンスは優秀だ。ここでは。中プリセットを適用した状態でゲームをプレイし、フレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で計測している。
その結果だが、RD-RX6500XT-E4GB/SFは、1920×1080ドットで常時110fps以上のフレームレートを発揮。平均フレームレートは144fpsを上回っており、RD-RX6500XT-E4GB/SFの快適性は誰の目にも明らか。ただ、Fortniteでも、高解像度でのゲームプレイは、RD-RX6500XT-E4GB/SFは辛そうだ。RD-RX6500XT-E4GB/SFは、フルHDでのゲームプレイに限定して使用したほうが得策のようだ。
最後に「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果も確認しておこう。
ここで、標準品質(デスクトップPC)に設定してベンチマークを実行しているが、RD-RX6500XT-E4GB/SFはGTX 1660に21~48%も離される形となってしまった。これは、同ベンチマークはGeForceシリーズへの最適化が進んでおり、Radeonシリーズは毎回不利な戦いを強いられている。RX 6500 XTを採用したRD-RX6500XT-E4GB/SFもその例に漏れずスコアが伸び悩み、GTX 1660にかなりの溝を開けられる結果となったというわけだ。
だが、RD-RX6500XT-E4GB/SFでも、1920×1080ドットであれば、スクウェア・エニックスが指標で最高評価とするスコア15000以上のパフォーマンスを発揮しており、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」のプレイに問題はなさそうだ。
3万円を切る価格で販売するショップも
コンパクトでコスパに優れるビデオカード
さて、RD-RX6500XT-E4GB/SFを語るうえで忘れてはならないのが、実売で税込み2万9700円と、3万円を切る価格で販売されているショップがある点だ。これは、ほかのRX 6500 XT搭載モデルと比較してもかなり安価。それでいて、GTX 1660を多くの場面で上回る性能を備えており、RD-RX6500XT-E4GB/SFのコストパフォーマンスの高さはもはや誰の目にも明らか。
ビデオメモリーの容量が4GBしかないというウィークポイントはあるものの、フルHDでのゲームプレイであれば、それが露呈する場面はほとんどない。さらに、カードサイズがコンパクトであるという点に魅力を感じる人も多いはずだ。
昨今のビデオカードの高騰に嘆いているゲーマーにとって、このRD-RX6500XT-E4GB/SFは、福音と足りえる存在であるといっていい。