ノートPC向けCPUの性能が大きく向上したこともあり、4~5年前のタワー型デスクトップPCクラスの性能が、ノートPCで実現できるようになっている。このノートPC向けCPUを使い、片手サイズながらも十分な性能を持つ小型デスクトップPCが、ASUSの「Mini PC PN51-S1」だ。
「PN51-S1」はCPUにスレッド数が多く普段使いでも活躍するAMDのRyzen 5000シリーズのモバイルプロセッサーを採用している。今回はその中からAMD「Ryzen 5 5500U」を搭載した「PN51-S1-B-B5187MD」(以下、PN51-S1)を借りる機会を得たが、より上位のAMD「Ryzen 7 5700U」を搭載したモデルも用意されている。
こういった小型PCは数多く登場しており、それほど珍しいものではない。しかし、「PN51-S1」がユニークなのは、USB PD(USB Power Delivery)給電に対応していることだ。
USB PDは、ノートPCやスマートフォンへの給電方法として近年定番になってきた方式。最大のメリットは、ノートPC、スマートフォン、タブレットなど複数機器の給電に、同じUSB PD対応ACアダプターが使い回せること。これは、接続するデバイスに応じて電圧、電流をコントロールし、適切な給電が行なえるよう規格化されていることによる。
とはいえ、ACアダプターを接続したままにするデスクトップPCでは、このACアダプターが使い回せるというメリットは活かしにくい。では意味がないかといえば……そんなことはない。
特に活躍してくれるのが、Type-C入力を持ち、USB PD給電に対応したディスプレーとの接続だ。一般的にはノートPCを接続し、映像表示と充電を1本のケーブルで行なうというのが想定されているのだが、これを「PN51-S1」で使うと、デスクトップPCなのに電源が不要になる。
さらに、付属のVESAマウント用プレートを使って大型ディスプレーに装着すれば、一体型PCライクに利用可能。ネット接続はWi-Fi 6、マウスやキーボードもワイヤレス接続のものを選べば、必要なケーブルはディスプレーへの電源と、「PN51-S1」と接続するUSB Type-Cの合計2本だけとなる。
もちろん、せっかくのUSB Type-Cポートを電源で潰されてしまうのはもったいない、というのであれば、付属のACアダプターで動かすこともできる。大きなディスプレーと組み合わせて快適なPC環境を整えたい、少しでも机の上を広く使いたいという人には、かなり魅力的な製品といえるだろう。
なお、「PN51-S1」は完成品のPCではなく、ベアボーンキット。自分でメモリーとストレージ、そしてOSを用意しなくてはならないため、多少なりともPCの知識が必要となる。
といっても組み立ては簡単だし、OSのインストールも難しいものではないので、初心者でも迷わず使い始められるだろう。まずは簡単な組み立て手順を紹介しておこう。
「PN51-S1」の主なスペック | |
---|---|
CPU | Ryzen 5 5500U(6コア/12スレッド、最大4.0GHz) |
メモリースロット | 最大64GB、DDR4-3200、SO-DIMMスロット×2 |
有線LAN | 2.5Gbps |
無線LAN | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 |
インターフェース | HDMI 1.4、DisplayPort 1.4、USB 3.2 Gen 1(Type-C)×2、USB 3.2 Gen1(Type-A)×3、オーディオジャック |
サイズ/重量 | 115(W)×115(D)×49(H)mm/約700g |
底面カバーを開けて、メモリー、SSDを追加するだけ!
イチからパーツを集めて組み立てる自作PCと比べ、ミニPCベアボーンはほとんどが組み上がっている状態。パーツが入らないと焦って無理に押し込む……といったことをしない限り、まず失敗することはない。組み立てに用意するのは、メモリーとSSD、そしてプラスドライバー1本だ。
まず、底面四隅のネジを全て取り外す。続いて側面を持ちながら、「PUSH」とある文字方向へとスライドさせて底面を取り外そう。
「PN51-S1」に装着できるストレージは、M.2 SSDと、SATA接続の2.5インチSSD/HDD。2.5インチベイは、取り外した底面の裏側に用意されている。
.
本体側を見てみよう。コンパクトなミニPCだけに内部は非常に狭いが、下部に2つのメモリースロット、上部に銀色のヒートシンクが見えるはずだ。このヒートシンクの下に、M.2 SSDを装着できるスロットがある。
組み立てるといっても、ヒートシンクを外して(ネジ2本外す)M.2スロットにSSDを装着し、ネジ止め。そしてメモリーを2枚、スロットに装着するだけという簡単なものだ。
スロットへのパーツ装着は、斜めの角度で挿してから水平に倒す、というのがコツ。詳しい装着方法はマニュアルに記載されているので、不安がなくなるまで、しっかり読み込んで作業するといいだろう。
SSDのヒートシンクを元通り装着すれば、内部の組み立て作業はおしまいだ。あとは底面をかぶせてスライドさせて元に戻し、ネジを4本閉めれば完成となる。
あとはディスプレーを接続し、電源を入れて起動確認。問題なく起動すれば、OSをインストールしよう。