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IPCはベース13%向上、クロック上昇含めれば29%向上が期待できる?
続いてパフォーマンス面について。Zen 2→Zen 3ではCCXあたりのCPUコアを4→8基に増やすほかに、命令実行に関係するコア内のさまざまな要素を改善して性能を向上させたという実績があった。今回Zen 4でもさらなる改善を追加することでIPC(Instruction Per Second)を伸ばすことができた、とAMDは主張する。
さらにRyzen 7000シリーズでは動作クロックが前世代よりも最大800MHz引き上げられているが、これを含めるとトータルで30%近くの引き上げとなる。さらにスライドには書かずに口頭でサラッと述べるだけにとどめたが、初代ZenからのIPCの伸び率は実に235%にまで到達したとしている。
まずIPC13%向上の意味だが、これはさまざまなシチュエーションにおけるパフォーマンスを8コア/16スレッド、4GHzで固定したZen 4とZen 3で計測し、Zen 4の伸び率の「幾何平均」をとったら13%になった、というものになる。つまり処理によってはZen 3と大差ない部分もあるし、もっと伸びる部分もある。
そしてこの13%のIPC向上を果たした理由についてだが、結構興味深い点がある。まずスライド(下図)から分かる通り、フロントエンド部分の強化が4割程度を占めている。さらにL2キャッシュの増量や分岐予測の強化などを積み重ねているが、これらの積み重ねにより同じ時間内により多くの命令を実行できるようになる。これも口頭で述べただけにとどまったが、OPキャッシュのヒットレートも1.5倍に向上しているという。つまりキャッシュが効く処理に関しては猛烈に速くなることを示唆している。
このほかAVX-512のサポートもZen 4の大きなポイントだが、こちらは物理シミュレーション、(CGレンダリングにおける)レイトレーシング等で最大1.3倍高速に、さらにAVX-512 VNNIも前世代より2.5倍高速に実行できるとしている。インテルは第12世代CoreでAVX-512を切ったこととは対照的である。
AMDは消費電力を度外視して性能を引き上げるというインテル的なアプローチは採用せず、エネルギー効率(ワットパフォーマンス)も改善している。Ryzen 9 5950Xと7950Xを同じTDPで比較した場合7950Xの方が性能が高くなると主張する。TDPを65Wに絞ってもなお性能向上が期待できる。
同じ性能ならZen 3よりZen 4の方が最大62%消費電力が少なく、同じ消費電力なら性能は49%高くなるとAMDは謳っている。この62%と49%の数値は「CINEBENCH R23」のマルチスレッドスコアーで計測されたものだが、片方はDDR4-3600、もう片方はDDR5-6000である。
第12世代CoreではDDR5で運用すると消費電力が激増するというデータがあるが、定格よりもOCされたDDR5-6000モジュールを使ってもなお、Ryzen 7000シリーズは高いワットパフォーマンスを維持できるようだ(この辺は実際に実験できていないので、眉唾くらいの気分で見ておきたい)。