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内蔵GPUは全モデルに搭載
Ryzen 7000シリーズではIOD、即ちメモリーやPCI Express等のコントローラーを収容する“IOダイ”も進化した。定格でDDR5-5200メモリーへの対応やPCI Express Gen5対応などの変更点があるが、中でも内蔵GPU「Radeon Graphics」を搭載した事が大きい。今回全モデルに内蔵GPUが搭載されたことで、これまでのRyzenは内蔵GPUを持たないため、ビデオカードが利用できない極小ケースでも運用可能になった。
この内蔵GPUは現行のRDNA 2世代なのでレイトレーシングにも対応するが、CU数は2基とRX 6400の6分の1しかないため、レイトレーシング使用・不使用に関係なくゲームには向いていない。ただ回路規模の小さな内蔵GPUにも関わらずH.264/H.265(各々8bitおよび10bit)のハードウェアエンコーダーを備えている点が興味深い。
ちなみに、映像出力はHDMI 2.1を筆頭にDisplayPort 2.0やUSB Type-C (Alt Mode)対応など充実しているが、マザーボード側の出力が対応していなければ利用できないので注意しよう。
CPUクーラーはSocket AM4用と「完全」互換ではない
続いてはCPUクーラーについてだ。AMDは当初よりSocket AM5はAM4用のクーラーが使えるとアナウンスしている。ソケットの寿命も長く、クーラーの乗り換えも必要としない、エコシステムとしては理想的だ。
ただSocket AM5ではAM4用のクーラーが利用可能という情報はあまり正確ではない。その理由は2つあるが、まずマザーボードの基板表面〜ソケットに装着したCPUの表面までの高さは、Socket AM5の方がAM4よりもざっくり0.5mm程度低い。
上からネジ留めする設計ならこの程度の差は吸収できるものも多いのであまり問題にはならないだろう。だがCPUクーラーメーカーによっては最適な圧を確保するために別途AM5用スタッドボルトを有償配布または別途同梱することで対応となる可能性がある(代理店筋談)。
とはいえ先日AMDがTech Dayにてプレス向けに行ったデモでは、フックでテンションをかけるWraith Prismを普通に使っていたので、あまり神経質になる必要もないだろう。
だがSocket AM4用クーラーが絶対に転用できない場合があることも知っておく必要がある。それはソケット裏のバックプレートを取り外し、特定CPUクーラー専用のカスタムバックプレートを使うCPUクーラーはSocket AM5対応は難しい、ということだ。
Socket AM4用クーラーがそのまま使えるのは、黒いリテンションベースをそのまま使うタイプの製品(Wraith Prismと同じフック式)か、リテンションベースを外してもマザーボード標準のバックプレートは残したままで良い製品に限定される(前述のスタッドボルト対応もこちらに含まれる)。
その理由は、Socket AM5はピンの生えたソケット本体の上からソケットカバーとレバーが一体化した上物を被せネジ留めする構造なのだが、そのネジはソケット裏のバックプレートに留まっているからだ。バックプレートを外すということは、ソケットカバーも外れることを意味する。
こうした点を事前に周知せず、Socket AM4用クーラーが利用可能とだけしかアナウンスしなかったAMDは少々不誠実といえる。筆者もマザーボードの現物を見るまで気づかなかった。
もちろんCPUのTDPよりクーラーの冷却力が下回ってしまう場合や、クーラーが物理的にマザーボードのヒートシンク等と干渉してしまう場合も流用はできない。この点はCPUクーラーメーカーの情報を収集しておきたい。TDP 170Wモデルなら280mmのAIO水冷でも冷えるとAMDは謳っているので、定格で使うならそこが目標になるだろう。