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ゲーム中のクロック、発熱、消費電力を詳しく検証する
一通り検証が終わったところで、RX 7900シリーズの挙動について、もう少し詳しく検証していきたい。
ここでの検証は「Tiny Tina's Wonderlands」をプレイ状態(解像度4K、画質設定はベンチマークと共通)で放置し、その間のさまざまなデータを「HWiNFO」や「PCAT v2」を通じて取得したものだ。なぜTiny Tina's Wonderlandsを選んだかといえば、前掲の通り、どのカードでも満遍なくTBPの実測値が高かったのと、ソロプレイ可能なゲームゆえプレイ状態で長時間放置しやすい、という理由である。
ではゲーム中に各カードのTBPが実際どのような値であったかをPCAT v2の実測値を通じて見てみよう。ゲーム中の街(ブライトフーフ)で放置した際の値をプロットしている。
最も消費電力が高かったのはファクトリーOCモデルであるRX 6950 XT、続いてRX 7900 XTX、RX 7900 XT、最後にRTX 4080という結果になった。ベンチマーク時と負荷の状況が違うが、かなり近いデータがとれたようだ。
上の2つのグラフはRX 7900 XTXおよびRX 7900 XTそれぞれにおいて、補助電源とx16スロットそれぞれからどの程度電力を引っ張っているのかをグラフ化したものだ。興味深いのはどちらのカードにおいてもx16スロットから40~50W程度を引っ張っていること。
RX 7900 XTX/RX 7900 XTリファレンスカードの設計においては、スロットから電力をあまり消費しないことをAMDはアピールしているが、40〜50Wという数値は小さいと評するには過大だ(別に設計的に間違っている訳ではない)。この点VBIOSなどで変わるのかまでは現状わかっていない。
続いてクロックの推移はHWiNFOで実施した。RDNA 3ではGPUクロックはフロントエンドとシェーダークロックの2つに分かれ、フロントエンドの方が微妙に高い設定になっていると以前解説したが、HWiNFOで見ると実はShader Clockは6つ取得できる。今のCPUがコア単位でCPUクロックを見られるように、RX 7000シリーズにおいても、Shader Engine単位(RX 7900 XTX/RX 7900 XTともに6基ある)でシェーダークロックを見られるのだ。
RX 7900 XTXのフロントエンドクロックは2.5GHz、シェーダークロックは2.3GHz、そしてゲームクロックは2.3GHzというのが公式スペックだが、実測値はどちらも2.41~2.43GHz程度の狭い範囲に集まり、ほぼ同じように上下している。RX 7900 XTでは辛うじてフロントエンドクロックが一番高いが、RX 7900 XTXではその時々でシェーダークロックが上回ることもある。
熱や電力的に余裕があるならシェーダークロックがフロントエンドクロックと同クロックで動くことについてはAMDから説明を受けているが、このあたりがベンチマーク中のTBP上昇につながったことは想像に難くない。
最後に温度も「HWiNFO」で見てみよう。グラフを簡潔にするためにRTX 4080のデータは省略している。
今回のリファレンスカードの冷却力は非常に高く、GPUが2.4GHz以上で動いているにも関わらずRX 7900 XTXでは最高でも66℃(安定値は61℃)、RX 7900 XTでは最高61℃(安定値は58℃)と低いという結果になった。この冷えの結果、シェーダークロックがほぼフロントエンドクロックに近いクロックで動けていたと言えるだろう。
上2つのグラフはHWiNFOで取得できる「GPU GCD Hotspot Temperature」および「GPU MCD Hotspot Temperature」を追跡したものだ。MCD1基あたりで64bit幅のメモリーコントローラーを受け持つため、RX 7900 XTXとXTではMCDの数が違う。どちらのGPUにおいてもGCDのホットスポット温度が最も高く、各MCDの温度はそれよりもだいぶ低い。
まとめ:謎が残る挙動。ドライバーやvBIOS更新で変化する可能性もある
やや後編が遅れてしまったが、これにてRX 7900 XTX/RX 7900 XTレビューの後編を終了としたい。前編で紹介した「Call of Duty: Modern Warfare II」のようにRTX 4080を圧倒したゲームもあったが、多くのゲームではRX 7900 XTXはRTX 4080とほぼ同レベル、あるいはやや遅い程度の結果しか出せず、ワットパフォーマンスも良くないという非常に残念な結果が出てしまった。レイトレーシングを使用したゲームはRTX 4080に勝てないことはまあ予想できていたが、従来型のゲームでも負けるシーンが多かったのは残念だ。
フレームレートが少々低くてもTBP(実測値)が低ければ、ワットパフォーマンスという点で勝つ道はあったが、さまざまなデータが示す通り今回のRX 7900 XTX/RX 7900 XTのリファレンスカードは解像度を下げてもTBPがほとんど下がらず(決して下がらない訳ではない)、結果としてワットパフォーマンスでもライバルに圧倒されてしまうという非常に残念な結果になった。
ただRadeonの初期ドライバーは熟成度が低い事が多く、熟成を重ねるほどに性能が向上するというパターンが多い。OS(Windows 11 22H2)との噛み合わせの問題である可能性もあるが、22H2が出てから2ヶ月以上経過しているのだから、さすがにその線はないだろうと考えている(NVIDIAは既に“影響なし”としている)。いずれにせよ、もう少し熟成を待ち、AICパートナーによるカードが出たあたりのタイミングで再度検証してみるのも悪くないと考えている。
AICパートナーによるカードは、よりリッチなオリジナルファンを搭載し、RGB LEDで光るなどの付加機能分、高価になると思うが、今回のリファレンスモデルで言えば、20万円を超えるRTX 4080よりも安く、コスパは高い。
そのため、RX 7900 XTX/RX 7900 XTはRadeonは、最高のゲーム環境を作りたい人やクリエイターならぜひ手に入れておきたいカードであることは間違いない。