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TDP 65Wになり扱いやすく!AMD「Ryzen 9 7900」「Ryzen 7 7700」「Ryzen 5 7600」最速レビュー(5/5)

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

消費電力と熱

ゲームでのワットパフォーマンス検証を済ませたばかりだが、ここではCPUの消費電力について、ラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用して検証する。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、Handbrakeエンコード(設定については前述のベンチと共通)時の“高負荷時(最大)”と、処理中盤以降に出現する“高負荷時(安定)”の値をそれぞれ計測した。

システム全体の消費電力

MTPを無制限設定としたCore i9-13900やCore i7-13700の消費電力が大きいのは当然といえるが、3番手以降に登場するRyzenではX付き型番とTDP 65W版Ryzenとで消費電力の傾向が全然違う点に注目したい。

この消費電力の差がTDPの差ではあるが、TDP 65W版Ryzenはシステム全体で217Wあたりで完全に頭打ちになる。ElmorLabs「PMD」を利用しEPS12Vに流れる電力を直接計測しても、TDP 65W版Ryzenの最大値は117~125W、エンコード開始~終了までの平均値は105W前後と、見事なまでに制御されている。

そしてHandBrakeエンコードでもワットパフォーマンスを見てみよう。前掲の検証で処理時間と一緒に提示されるエンコードのフレームレートを、PMDで計測したCPU Power(EPS12Vコネクター2つぶんの合算値)の平均値で割り、それを100倍するとCPU Power 100Wあたりのフレームレートが算出できる。

HandBrake:CPU Power 100Wあたりのフレームレート

HandBrake:エンコード中にPMDで計測したCPU Powerの平均値

HandBrake:CPU Power 100Wあたりのフレームレート

エンコードのフレームレートは処理時間と連動する(当然)のでX付きよりもTDP 65W版Ryzenの方がフレームレートは落ちるが、CPU PowerはTDP 65W版Ryzenは一律105W前後に制限されてしまうため、ワットパフォーマンスではX付きよりもTDP 65W版Ryzenの方が圧倒的に高くなる。

一方、第13世代CoreはMTP無制限時はお話しにならないほどワットパフォーマンスが悪いが、MTPを定格に絞ってやるとワットパフォーマンス的には良い働きをしていることが分かる。

同梱のクーラーを使うなら圧倒的にTDP 65W版Ryzenが良好

ここまでの検証は全て360mmラジエーターを搭載したAIO水冷で冷却環境を統一して行っているが、TDP 65W版Ryzenには似つかわしくないクーラーであることも事実(下手をするとCPUよりクーラーの方が高価だ)。

そこでここでは、各CPUに同梱されているクーラーを使用した場合、どんな性能が出るかを3本のベンチ(CINEBENCH R23/ Handbrake/ Cyberpunk 2077)で検証した。第13世代Core勢のMTPは定格の値に絞った時のみを計測している。MTP無制限設定ではCPUクーラーの性能が足らないことが分かっているため、検証は見送った。

グラフ中にあるCPU名に“Air”と付いているのが同梱のCPUクーラーを使用した際のパフォーマンスであり、何も書いていなければ前掲の360mm AIO水冷時のデータとなる。両者の差が開くほどリテールクーラーでは冷却力が不足することを示している。

CINEBENCH R23:スコアー

HandBrake:Super HQ 1080p Surroundを利用したエンコード時間

Cyberpunk 2077:1920×1080ドット時のフレームレート

TDP 65W版Ryzen、およびMTPを定格に絞った際の第13世代Coreにおいては、同梱のクーラーを使うとパフォーマンスが低下するものの、せいぜい数%程度の微差であった。そしてこの基準で比較するのであれば、どのテストにおいてもTDP 65W版Ryzenは第13世代Coreの同格モデルに対し“やや上”以上の性能を発揮している。

第13世代Coreでは強力なクーラーを使ってMTPを無制限にすれば(そして無制限設定がデフォルトのマザーボードも結構多い)性能を伸ばせるというロマンがあるが、逆にTDP 65W版Ryzenはチープな(失礼)リテールクーラーでも十分なパフォーマンスが期待できる。

まとめ

まだ本稿のためにデータをいろいろ蓄積してきたが、残念なことにそのデータ全てをお見せするだけの時間は筆者に残されていない。しかし、本稿のデータだけでもTDP 65W版Ryzenの使い勝手の良さは掴めたのではないだろうか。

クリスマスから年初にかけてSocket AM5版Ryzenの値段が激しく下がったため、TDP 65W版Ryzenの価格設定の妙が消えかけてしまった感はあるものの、第13世代Coreと比較すると「CPUの」コストパフォーマンスは良いものに仕上がっているといえるだろう。

しかし、問題はマザーボードの価格だ。Socket AM4は既に終息へ向かっており、新しいコンセプトの製品(例えばASRock「LiveMixer」シリーズのようなもの)はほぼ期待できない。より優れた設計のものを手にしたいならTDP 65W版Ryzenと一緒に乗り換えるのが一番だが、まだ割高感は残っている。第13世代CoreのようにDDR4版がないというのも辛いところだ。

とはいえ、値段の問題はSocket AM5プラットフォームの寿命という点を考慮することによって緩和できる。今後登場する3D V-Cache版Ryzenや次世代RyzenがSocket AM5用にどれほど出るのかは分からないが、ここで乗り換えておけばCPUを最低ひと伸び、あるいはふた伸びさせるチャンスも得られる。長期的に見ればコストパフォーマンスは決して悪くないと考える。

ただ惜しいのは同梱されているリテールクーラーのチープさだ。リテールクーラーだから安っぽいのは当たり前だが、高負荷をかけるとやはりファンが高回転する音が耳につく。特にWraith Prism w/LEDはマザーボードとPCケースの天井との間にクリアランスがないと取り付けに苦労する(特にEPS12Vケーブルの接続など)。QOL向上には4000円程度で良いので定番CPUクーラーを購入することをお勧めしたい。

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