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AMDはWQHD向けGPU「Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT」で優勢を取れるか?【後編】(3/3)

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

メモリーバス幅の違いが差に出た「BIOHAZARD RE:4」

「BIOHAZARD RE:4」ではレイトレーシングを含め画質系はすべて最高に設定。ストランドヘアーも有効、FSR 2を使う場合は“バランス”に設定。ゲーム序盤で訪れる教会のある村〜次の集落へ続く道を移動した際のレームレートを計測した。

BIOHAZARD RE:4:1920×1080ドット時のフレームレート

BIOHAZARD RE:4:2560×1440ドット時のフレームレート

BIOHAZARD RE:4:3840×2160ドット時のフレームレート

このゲームは最高画質設定ではVRAMを鬼のように食いまくるため、RX 7700 XTおよびRX 7800 XTのような安くてもVRAM搭載量の多いGPUが望ましい。VRAM 12GBを搭載したGPU(RX 7700 XT/ RX 6700 XT/ RTX 4070 Ti/ RTX 4070)で眺めると、RX 7700 XTはRX 6700 XTを大きく引き離す一方でRTX 4070にわずかに及ばなかったが、レイトレーシングを含めた処理でここまで肉迫すれば上出来と言えるかもしれない。ただ最低フレームレートはRX 7700 XTよりもRTX 4070の方が大幅に高いなど、平均では迫れていても総合的な快適度は今ひとつの点があるのは残念だ。

一方、RTX 7800 XTはAMDの目論見通り、RTX 4070を平均フレームレートで上回り、かつ最低フレームレートでもRTX 4070を上回る活躍をみせた(4K時のみだが……)。RX 7700 XTは4Kだと激しくカク付きが発生するため、RX 7800 XTはWQHD向けだが、ゲームと設定によっては4Kも狙えるGPUと評価してよいだろう。

BIOHAZARD RE:4:FSR 2“バランス”、2560×1440ドット時のフレームレート

BIOHAZARD RE:4:FSR 2“バランス”、3840×2160ドット時のフレームレート

FSR 2を併用すれば最低フレームレートも底上げされ、より滑らかな描画が堪能できる。ただここでも4K解像度ではRX 7700 XTよりもRX 7800 XTの方が圧倒的に適性があると言ってよい。

BIOHAZARD RE:4:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位fps)

BIOHAZARD RE:4:FSR 2を利用したベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位fps)

ワットパフォーマンスにおいてはRTX 40シリーズが安定して強いが、RX 7800 XTのワットパフォーマンスはRDNA 3世代の中でもかなり優秀だ。

話題の「Starfield」では?

ゲーム検証の最後は話題作「Starfield」で締め括ろう。画質は“ウルトラ”に設定。解像度はHogwarts Legacyと同様にデスクトップの解像度を変更することで対処しているが、デフォルトでFSR 2が有効になっているため、あえてFSR 2を無効化+レンダースケール(RS)を100%に設定した設定と、ウルトラをベースにFSR 2を有効化(ほぼデフォルト)した設定の2通りで検証する。

また、StarfieldのFSR 2実装では一般的なFSR 2の画質設定ではないため、RSはデフォルトの75%(恐らく“クオリティー”相当の設定だと思われる)とした。プレイヤーが最初に降り立つ都市(ニューアトランティス)のMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。

このゲームのみGeForce勢の結果がないが、これはStarfieldをベンチマークに使用する際のレギュレーション(StarfieldのAMDによる独占パートナーシップに関連している)を根拠としたAMDからの要請を受けた結果である点はご了承いただきたい。

Starfield:1920×1080ドット時のフレームレート

Starfield:2560×1440ドット時のフレームレート

Starfield:3840×2160ドット時のフレームレート

ここでもRX 7800 XTは安定したパフォーマンスを発揮。フルHDではRX 7900 XTと大差ないフレームレートである点から、まだStarfieldにはグラフィックパフォーマンスを洗練する余地が残されている可能性がある。ただこの余地がGPUにあるのか、CPUにあるのかまでは不明だ。

一方、RX 7700 XTはRX 6800には負ける一方で、RX 6700 XTやRX 5700 XTといった旧世代の“700番台Radeon”には圧倒的優勢を保てている。

Starfield:FSR 2オン、2560×1440ドット時のフレームレート

Starfield:FSR 2オン、3840×2160ドット時のフレームレート

アップスケーラーなし、かつフルHDであればRX 7700 XTでも最高画質で快適に楽しめるが、WQHDとなるとRX 7800 XTが欲しくなる。今回の検証では、FSR 2とレンダースケールがちゃんと連動しているか検証する時間すらなかったのでデフォルトの75%設定で検証してしまったが、FSR 2を使えばRX 7700 XTでもWQHDで平均60fpsの大台に乗せることはできるようだ。

Starfield:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位fps)

Starfield:FSR 2を利用したベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位fps)

注目したいのはフルHDにおけるRX 7900 XTおよびRX 7800 XTのTBPとワットパフォーマンス。RX 7900 XTは電力を食っている割にはワットパフォーマンスが低いことから、GPU側で何らかの理由で処理が無駄に回っている事を示している。ただStarfieldは出たばかり(検証時は先行アクセスが解放された直後)のゲームであるため、今後はもっと改善される可能性もある。

消費電力、熱、クロック

ベンチマーク中のTBP、即ちカード単体の消費電力については散々検証してきたが、システム全体の消費電力はどうなのか、650W程度の手頃な電源では動かすことはできるのか、という点を軽く見ておきたい。

次の表は、今回検証したゲームのベンチマーク中にシステム全体が消費した消費電力の平均値をゲームとGPUごとにまとめたものだ。さらにアイドル時の消費電力も表に加えている。

システム全体の消費電力:Powenetics v2を通じ、アイドル時ならびに各ベンチマーク実施中の平均値を比較したもの。解像度WQHD時のデータで比較している

今回の検証では、ハイエンド級のRX 7900 XTとRX 6800 XTの消費電力が突出しているが、RX 7700 XTおよびRX 7800 XTはシステム全体でも350W程度にとどまる。消費電力の傾向はゲームにより異なるが、Cyberpunk 2077やHogwarts Legacyといった重量級ではRX 7700 XTの消費電力が抑えられる反面、Call of Duty: Modern Warfare IIやOverwatch 2といったフレームレートが比較的出るゲームについては、RX 7700 XTとRX 7800 XTの差が小さくなる傾向が確認できた。

次に今回試用したRX 7800 XTおよびRX 7700 XTのカードにおいて、ゲーム中(Cyberpunk 2077、解像度WQHD)のGPU温度やGPUクロックはどの程度になったのかチェックしよう。温度などの追跡は「HWiNFO Pro」を使用した。

ゲーム中のGPU温度およびGPU Hotspot温度の推移

まずGPU温度に関しては、RX 7700 XTでは63℃近辺、RX 7800 XTでは74℃近辺で頭打ちとなった。クーラーのデザインからするとRX 7800 XTの方が重厚でいかにも冷えそうな感じがするが、GPUのスペックが高いぶんGPU温度も高めになるようだ。

ただGPU Hotspot温度に関しては両者ともかなり高めで、どちらもGPUも90℃台前半となっている。今年の春頃話題になったRX 7900 XT/ RX 7900 XTXのホットスポット問題の時よりも制御されているようだが、やや高い値であるという印象は拭いきれない。これが果たして正常範囲なのか否かという情報はまだ得られていない。

ゲーム中のGPUクロックの推移。RDNA 3なのでFront EndとShaderそれぞれを追跡している

ゲーム中のFront EndクロックはRX 7700 XTでおおよそ2550MHz、RX 7800 XTで2670MHz付近で上下している。高クロックで回るのがRDNA 3の特徴であるが、今回のRX 7700 XTおよびRX 7800 XTも、過去の例に盛れず高クロックで回るようだ。

一方、ShaderはRX 7700 XTが2500MHz前後なのに対し、RX 7800 XTだと2330MHzとだいぶ低め。CU数の少ないRX 7700 XTはShaderも高クロック化して性能を稼ぎ、CU数の多いRX 7800 XTはShaderを抑えることで消費電力とのバランスをとった、という感じだろうか。RX 7800 XTが今ひとつ伸びきらないのは、このShaderクロック設定にも理由がありそうだ。

まとめ:4Kも狙えるRX 7800 XTと、WQHDの範囲内に無難にまとめたRX 7700 XT

以上で前後編に渡るRX 7700 XTおよびRX 7800 XTの検証は終了だ。全体を通じて、RX 7800 XTは4Kも狙えそうな性能を出してきたのに対し、RX 7700 XTはWQHD向けという設計目標を見事達成した、という感じだ。

ただRX 7800 XTは今ひとつ性能が伸びず、ゲームや設定によってはRX 6800 XTと大差なかったり、RX 7700 XTではRX 6700 XTに勝つのがやっとの場合もあれば、RX 6800 XTに(勝てないまでも)肉迫するというブレの強さが気になった。新Radeonの性能が伸び悩む理由については前編でも軽く考察しているが、メモリーコントローラーというよりはInfinity Cacheの搭載量を絞りすぎたことによるキャッシュ帯域不足が原因ではないかと考えている。

RX 7900 XTXやRX 7900 XTはメモリーコントローラーが多いため同じダイに格納されるInfinity Cacheも増えるが、メモリーバス幅を絞ったRX 7700 XTやRX 7800 XTでは、Infinity Cacheも相応に少なくなってしまう。メモリーコントローラー1基あたり(正確にはMCD:Memory Cache Die1基あたり)に付帯するInfinity Cacheの量がもう少し多かったら性能が上振れしていたかもしれないが、これは検証のしようのない(AMDしか知らない)仮説だ。

本稿執筆時点では、RX 7700 XTとRX 7800 XTの価格は、事前にリリース情報をお聞きしていたASRock製品分(前編記事を参照)しか分かっていない。ただ市場には、まだRDNA 2世代の競合カード(RX 6700 XT~RX 6800 XT)が存在している。特にRX 6700 XT~RX 6750 XTはまだ相当数が存在していると推測される。この価格を下回ることはまず考えられないので、RX 7700 XTの滑りだしは厳しいものになるだろう。

一方、RX 7800 XTは競合する旧世代の流通量が少ないため、GeForce RTX 4070やRTX 4070 Tiとの価格差をアピールすれば良い。レイトレーシング性能が弱いものの、どんなゲームでも最高設定かつフルHD~WQHDで高フレームレートが期待できる。Starfieldを筆頭とする2023年の注目ゲームに合わせPCのスペックアップをしたいなら、新Radeonは十分検討に値するGPUといえるだろう。価格が“程々”であれば。

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