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【AMDチップセットマザーボードレビュー第4回】

高コスパ&高耐久! 基本に忠実でバランス抜群のASRock「X570 Steel Legend」(2/2)

文● 石川ひさよし 編集● AMD HEROES編集部

大型チップセットヒートシンクはとくにSSDがよく冷え有効的

チップセットヒートシンクは、「Unbeatable Heatsink Armor」としてSSD用M.2スロットの部分と一体化した大型のものを採用している。M.2 SSDを搭載するためにはこれを取り外す必要があるが、ネジは3本だ。そのため、多少手間がかかる。ただし、かなり大型になるため、放熱効果が期待できるというわけだ。

SSD用M.2までをカバーする大型ヒートシンク

上部の大型ヒートシンクを取り外すと、チップセット側にももう一つヒートシンクが現れる。小径ファンを搭載しており、上部ヒートシンクとは熱伝導シートで熱を伝えているようだ。もっとも、この熱伝導シートは補助的なものだろう。ファンの風は小さなチップセット側ヒートシンクに吹き付けられるが、同時に上部ヒートシンクにもしっかり当たる。基本的にはこのセパレート構造で問題はない。

チップセット部分には小径ファンを搭載した小型のものが装着され、熱伝導シートで上部の大型ヒートシンクにも熱を伝える

M.2 SSD用に熱伝導シートが貼られている

小径ファンのため、動作音は多少聞こえる。ファンから20cm離れた場所での動作音は38dB。ケース内に収めればほとんど聞こえなくなるレベルだが、通気性のよいケースでは少し漏れる可能性もある。

一方、冷却に関しては十分なものが感じられる。PCMark 10を実行した際にFLIR ONEから見た温度は、上部ヒートシンクがほぼ30℃台半ば、チップセット側が40~50℃程度だった。ファンのないVRMヒートシンクのほうが温度が高いものの、室温26℃で52.2℃だった。また、マザーボード全体が赤く映るように、全体で放熱しているように見える。レイヤー数は不明だが、本製品もPCBに2オンスの銅箔層を設けていると言う。これがボード全体に熱を拡散していると思われる。

PCMark 10実行中の温度。床などもっとも青い部分が30.3℃。VRMなどもっとも白い部分がおよそ52.2℃。チップセットはセンサー上では56.5℃だったが、上部ヒートシンクはファンによってよく冷却され、とくにM.2 SSDにとって安心材料だ

コスパという点で、価格を抑えながら高機能であることが分かるのがバックパネルだ。映像出力端子はDisplayPortとHDMIともに備えており、USB 3.0端子も豊富でPS/2端子もある。USB 3.2もType-A、Type-Cとも用意されている。ただし、マザーボード上にUSB 3.2 Type-C用ヘッダーはない。まだあまり多くはないが、一部のケースではフロントUSB Type-Cに対応しはじめているが、そのままではそれを活かせないことになるので要検討だ。

バックパネルは一体型かつ端子も豊富。ここを削ってコスト抑制というわけではなさそうだ

また、LANはGbE対応までだがIntel製チップが採用されている。コスパ重視のマザーボードながら、信頼性を選択したのだろうか。Intel I211-ATチップが確認できた。

有線LANはIntel I211-AT。最近はAMDチップセットでもIntel製LANチップ搭載モデルが多い

オーディオ回路は、同社Purity Sound 4準拠だ。チップ自体はRealtek ALC1200で、シールド等もなくそのまま実装されている。組み合わせるコンデンサはニチコンのFine Gold。オーディオグレードで定評あるコンデンサを採用することで音質の向上を図っている。内面では、左右チャンネルをPCBのレイヤーで分け、アナログ回路部分をデジタル回路部分と分離する設計も採用されているように見える。

チップは定番のRealtek ALC1200

ニチコンのFine Goldを採用

最後に、ASRockが積極的なThunderbolt 3。本製品はThunderbolt 3を搭載しているわけではないが、オプションとして追加することができる。そのためのパスがThunderbolt 3 AIC用ヘッダーだ。同社から別売されている「Thunderbolt 3 AIC R2.0」カードがサポートされており、これを搭載し、ヘッダーを接続することで利用できる。

Thunderbolt 3 AICヘッダーを搭載し、将来の拡張に備える

ケチった感がないのにこの価格でこの機能。スタンダード用途に最適だ

X570 Steel Legendは、2万円台半ばの価格でありながら、一体型バックパネルやDisplayPort/HDMI両端子の装備、片ラッチのメモリスロット、Thunderbolt 3 AIC用ヘッダーなど、同価格帯のほかのモデルでは省かれているようなところもしっかり拾っている。コンデンサもFP CAPの12Kだ。こうして見ると、この価格でこの機能、コストパフォーマンスは抜群となるわけだ。

このように、機能面ではどこでコストを抑えているのか分かりづらい。となるとヒートシンクなどが要因と思うのだが、実際に動作させてみると冷却も悪くない。とくにチップセットヒートシンク側はファンの効果もあって問題なし。むしろM.2 SSDにとってはファンによって効果的に冷却され、これならPCI Express Gen4対応SSDのように発熱の気になる高性能モデルでも安心して利用できる。SSD交換のためにネジ3本という手間がかかるものの、頻繁に交換するものではないため割り切ろう。ファンのないVRM側は多少温度が高めではある。8フェーズ側のソケット左側の温度と2フェーズ側のソケット上部のヒートシンクで温度差があり、ここをヒートパイプで繋いでいればまた変わった値だっただろうと思われる。ただ、ここも50℃台前半なので、ケースにおさめてエアフローを当てれば問題ないレベルだ。

このように、多少ケース側のエアフローを補うとよいと思われる。ただ、そのほかで見ればこの価格帯にありがちな必要十分を上回る性能、機能で満足感が高い。基本的にはメインストリームユーザーのスタンダードな用途に適しているが、ゲーミングPCのエントリーとしても十分に検討できるスペックと言えるのではないだろうか。


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