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【AMDチップセットマザーボードレビュー第10回】

GIGABYTEのクリエイター向け「TRX40 DESIGNARE(rev. 1.0)」はゲーマーにもメリットあり!(2/2)

文● 石川ひさよし 編集● AMD HEROES編集部

冷却設計もVRM回路も一つ上を目指した設計

続いて、業務で用いる際にもっとも重要な安定性部分を見ていきたい。まずはやはりCPU電源回路や冷却といった面になるだろう。

CPUソケット周辺のレイアウト

VRMヒートシンクは、同社のハイエンドモデルで用いられる「Fins-Array ヒートシンク」だ。Fins-Array ヒートシンクは、CPUソケット上部、左メモリスロットのさらに左の部分。これらをヒートパイプで結び、さらに拡張スロットの左のスペースのソリッドタイプのヒートシンクまで用いてファンレスで放熱する。

Fins-Array ヒートシンクをCPUソケットの上側、左側部分に採用したVRMヒートシンクの設計

高密度フィンを用いることで放熱面積を大きくとっている

表面からは見えないが、バックパネルカバー内部に小径ファンを1基搭載している。ソリッドタイプと比べて放熱性能に優れるFins-Arrayだが、Threadripper用VRMはさすがに間に合わなかったようだ。

また、このバックパネルカバーにはLEDも搭載している。TRX40 DESIGNAREで唯一の電飾部分だ。AORUSシリーズなどと比べると発光箇所は少なく、さらに光らせたい場合は、RGB LED/ARGB LED用ヘッダーを用いてユーザーが追加するというスタンスだ。

バックパネルカバー内に小径ファン1基を搭載。合わせてLEDとライトバーも装着されている

そのほかにLEDを接続するためのヘッダーも(念の為?)搭載している

チップセットヒートシンクは、M.2スロットを紹介した際に触れたとおり独立したタイプで、大口径ファンを1基内蔵している。面積的にはかなり大きく、裏面からは4本のネジで固定されている。静音性に優れたボールベアリング仕様とし、ファンコントロールにより低負荷時には回転を停止すると言う。

チップセットヒートシンクは独立しており、大口径ファンが内蔵されている

TRX40チップセット

ほか、マザーボード裏面からの放熱としてベースプレートも採用し、同社マザーボードではお馴染みの2オンス銅箔層も採用している。

マザーボード裏面には大型のベースプレートを装着

VRMもゲーミング向けハイエンドモデルに匹敵する豪華で信頼のおける設計だ。CPU用のVRM回路はマザーボード上辺中央にまとめられている。CPUソケットと、左側のメモリスロットの上にはずらりとチョークとMOSFETが並んでおり、その左にはPWMコントローラチップがある。

PWMコントローラはInfineon「XDPE132G5C」。500~1000A級の電力供給のためのチップであり、1つで16フェーズ(または8+8フェーズ)を制御することが可能だ。

VRMヒートシンクを外した状態。CPUソケットの上側にCPU用の16フェーズが並んでいる。補助電源コネクタは右側メモリスロットの右上に2つ並べたレイアウトだ

MOSFETはInfineonのPower Stageシリーズ「TDA21472 70A」を16個並べている。XDPE132G5Cで16フェーズまで対応するため、ダブラーは用いていない。TDA21472 70AはOptiMOSテクノロジーを採用しており、70Aという大電力を供給できる。また、Power StageシリーズではハイサイドとローサイドのMOSFET、そしてドライバーICを1つのチップに統合した高効率チップだ。

CPU用のVRM回路は、Infineon「TDA21472 70A」と「TDA21472 70A」を組み合わせている

16+3フェーズの3フェーズ側、アンコア向けは左側メモリスロットの下寄りにある。PWMコントローラはInfineonの「IOR35204」で、3+1フェーズを制御できるものだ。MOSFETはCPU用と同様に「TDA21472 70A」を採用している。このように、主要な部分はすべてがいわゆるハイエンドで用いられるInfineon製チップで揃えている。

アンコア向けにはInfineonの「IOR35204」と同「TDA21472 70A」を組み合わせている

そのほかにも3フェーズが確認できるが、こちらは台湾Richtek Technologyの「RT8120D」をPWMコントローラに、MOSFETはON Semiconductorの「4C06N」を3つ使用していた。

そのほかに確認できる3フェーズでは、Richtek Technologyの「RT8120D」とON Semiconductorの「4C06N」を組み合わせていた

ネットワークもオーディオも高機能・信頼性の高いチップを採用

業務で利用するならば、どのようなインターフェースを搭載しているのかも重要なポイントになるだろう。

バックパネルはPS/2などのレガシーを排した設計。無線LANアンテナ端子や2系統のLAN、CMOSクリアボタンや、電源のみでCPUやメモリを装着していない状態でもBIOS更新ができるQ-FLASHポタンが特徴

まず、ネットワーク機能は有線LANが1GbE×2、無線LANがWi-Fi 6。2系統のGbEはともにIntel「I210-AT」。I211-ATよりも対応するインターフェースが多い上位チップだ。2系統搭載していることで、片方が故障した場合の予備として、あるいは2つのネットワークに接続する場合など、さまざまなメリットがある。

2.5GbE~には対応していないが、現状のネットワークで利用するぶんには構わないだろう。Wi-Fi 6側はラベルからIntel「Wi-Fi 6 AX200」を採用していることが分かる。IEEE802.11acよりも高速なIEEE802.11axをサポートしている。

USB 3.2では、バックパネルにGen 2Type-C端子を備えているほか、前面パネル用にもボード上にヘッダーを備えている。Gen1 Type-A用ヘッダーも2つあるので、速度を求めるUSB機器を多数接続するニーズにはここもポイントだ。

USB 3.2 Gen2 Type-C用ヘッダーをATX24ピン端子横に備えている

オーディオでは、最近ハイエンドモデルでよく見るRealtek「ALC4050H」と同「ALC1200-VB」(コーデック)を組み合わせたものを搭載している。さらに、コンデンサにはWIMA製のオーディオグレード品を採用。DTS:X Ultraにも対応している。

Realtek「ALC4050H」と「ALC1200-VB」を組み合わせたオーディオ回路

赤く四角いコンデンサはWIMA製のもの

ガチガチのクリエイター向けだが、そのメリットはゲーマーにも響く!?

このように、TRX40 DESIGNAREは基本的にクリエイターの、それもとくに安定性が求められるニーズに向けたハイエンドモデルである。基本的な設計がハイエンドマザーボードをベースにしており、コストのかけ方がメインストリーム向けモデルとは異なる。

バンドルもSSD用のAORUS Gen4 AICカードはゲーミングでもニーズがあるが、大容量・超高速ストレージは映像制作用途ならさらにニーズが高いだろう。GIGABYTE GC-TITAN RIDGEも、クリエイターには必須。ただ、オンボードにしなかった理由は推し量ることが難しい。マザーボード側のスペースに余裕がなかったのだろうか。

ガチガチのクリエイター向けモデルだが、LED用ヘッダーを搭載しているのはこの設計がゲーマーなどにもニーズがあると読んだのだろうか。

確かにゲーマー向けモデルのデザインは似たような傾向に収まりつつあり、ほかとは少し違ったデザインを求めるならこうしたクリエイター向けモデルにも注目したい。それに、ゲームプレイ中の安定性を求めるなら、TRX40 DESIGNAREの豪華な電源回路は魅力的ではないだろうか。


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