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VRAMを減らした戦略は? メディアブリーフィングで明かされた「RX 5600 XT」情報まとめ(2/3)

加藤勝明(KTU) 編集●ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

上位モデルとの差別化に苦慮が窺えるスペック設定

では現時点で判明しているRX 5600 XTのスペックをチェックしてみよう。RX 5600 XTのCU数は36基なのでRX 5700と同じだが、動作クロックは大幅に押さえ込まれており、メモリーバス幅は192bit、搭載メモリーは12Gbps相当のGDDR6となっている。

Wave32に対応した新しいCompute Unit(CU)の構造や、PCI-Express Gen4や新世代の動画再生支援機能など、Navi由来の要素は全て継承されている。Typical Board Power(いわゆるTDP)は150Wに抑えられている。

原稿執筆時点で判明しているRX 5600 XTのスペックは以下のとおり(※付きは筆者の推測によるもの)。ベースクロックは不明だが、「ゲーム中はゲームクロックで動くからベースクロックは出す意味がない」とのこと。

Radeon RX 5700 Radeon RX 5600XT Radeon RX 5600 Radeon RX 5500XT
開発コードネーム Navi10 Navi10 Navi10 Navi14
製造プロセス 7nm FinFET 7nm FinFET 7nm FinFET 7nm FinFET
Compute Unit数 36 36 32 22
ストリーミングプロセッサー数 2304 2304 2048 1408
ベースクロック 最大1465MHz 不明 不明 不明
ゲームクロック 最大1625MHz 1375MHz 1375MHz※ 最大1845MHz
ブーストクロック 最大1725MHz 1560MHz 1560MHz※ 最大1845MHz
テクスチャーユニット数 144 144※ 128※ 88※
ROP数 64 64※ 64※ 32
メモリー速度(相当) 14Gbps 12Gbps 12Gbps 14Gbps※
搭載メモリー GDDR6 8GB GDDR6 6GB GDDR6 6GB GDDR6 4GB/8GB
メモリーバス幅 256bit 192bit 192bit 128bit
Typical Board Power 185W 150W 150W※ 130W
補助電源 8+6ピン 8ピン※ 8ピン※ 8ピン

RX 5600 XTの設計に新規要素はないが、Radeonの歴史を語る上で非常にユニークな存在となっている。それはRX 5600 XTは新規コアではなくRX 5700のダウンスケール版となっているため、メモリーコントローラーが192bitという中途半端な幅になっている。

192bit幅というのはGeForce系ではミドルクラスGPUによく採用されているが、Radeonで192bit幅は今までに例のない構成だ(64bit→128bit→256bitとなる。384bitは過去に存在した)。

何故192bitというRadeon史上半端なメモリーバス幅を採用したか、その理由はRX 5700に8基組み込まれているメモリーコントローラーを1基無効化したためだ。RX 5600 XTのVRAM搭載量が6GB構成となっているのは、メモリーコントローラーの削減と表裏一体というわけだ。

メモリー(VRAM)周りの仕様はこれまでのRadeonの戦略からは異質と言ってよい。これまでのRadeon、特にミドルクラスRadeonにおいては、競合するGeForceに対し、性能面ではやや劣っていたとしても、VRAM容量に勝ることを武器にしてきた。

例えば近年の売れ筋、つまりGTX 1060やGTX 1660ではVRAMが6GBなのに、RX 470〜RX 590では8GBが選択できる。Modを入れてVRAM消費量が大きくなってもRadeonなら余裕がある、というのがRadeonの強みのひとつだったのだが、RX 5600 XTはこれを捨ててしまった。

この決定に対してAMDは、RX 5600 XTの想定するゲーミング環境、つまりフルHD&最高画質プレイを想定した場合、6GBあれば十分であるとブリーフィングで伝えてきた。これはNVIDIAがこれまで言っていたことをそのまま使っているのに等しいが、そうであれば下位のRX 5500 XTに8GB版があることと矛盾する。

RX 5500 XTはフルHDを程々の画質で楽しむためのGPUだが、そうした環境では8GBも必要ないことの方が多い。RX 5600 XTの言い分を正しいとするなら、RX 5500 XT 8GB版は無駄の極みとなってしまう。

RX 5600 XTのメモリー周りの決定は、ひとえにRX 5700シリーズのスペック設定を見誤った結果のしわ寄せと筆者は感じている。RX 5600 XTが36CUで256bit/GDDR6 8GB構成のままだと単なるダウンクロック版RX 5700となってしまい、RX 5700の存在意義が希薄になってしまう。

CUを減らすとテクスチャーユニットも減るが、仮想敵であるGTX 1660 SUPER/1660Tiを性能で上回るためには少ないCU/テクスチャーユニットで高クロック化するよりも、CU/テクスチャーユニット数そのままで低クロック化する設計(TBPも低くできる)を選んだということだ。

このような設計にすることで、RX 5700シリーズとRX 5500 XTの間のパフォーマンスを得て、さらに価格的に競合するGTX 1660 SUPERやGTX 1660Tiよりも上回れる、とAMDは主張している。

RX 5600 XTはメモリー帯域においてRX 5500XT(224GB/sec)よりも29%広い。さらにRX 5700シリーズのメモリー帯域はRX 5600 XTよりも56%広い。CU数はRX 5700と同じだが、クロックとメモリー帯域で性能のマージンを確保しているというわけだ

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