拡張性はMini-ITXなり
一般用途はカバーできるが特殊な用途では不足も
Mini-ITXなのでメモリは2スロット。最大64GBだ。32GBモジュールも出ているので最大容量的に一般用途までは十分にカバーできるだろう。ただし、4スロットなら64GBを16GB×4枚で実現できるところを、2スロットでは32GB×2枚とするというように、コストがかかる傾向にあることは気に留めておきたい。
ストレージはM.2×1、Serial ATA 3.0×4。M.2スロットは裏面で、位置はPCI Express x16スロットの少し上。実装の際にはここの冷却も考慮したい。PCケースとしては、右側板がメッシュ仕様のように通気性のよいものが安心だ。SSD自体も発熱が大きい高性能モデルより、発熱が小さい2GB/s級のメインストリームモデルやさらに低発熱のSerial ATA接続モデルがよいだろう。
Serial ATA 3.0も4ポート止まりなので、チップセットのスペックをフルに使用しているわけではない。NAS風ケースなどで4ベイのものならばまかなえるが、ストレージベイが豊富なミドルタワーと組み合わせたストレージサーバー用途には少し足りないだろう。
ファン用端子の数を数えると、CPUファン用が1基、ケースファン&水冷ポンプ用が2基で合計3基。最近はMini-ITXでも3基程度搭載するものが増えており、本製品も標準的な数をサポートしている。空冷CPUクーラーとの組み合わせなら、プラスしてフロント・リアファンを直結できるので一般的な構成なら不足はないだろう。
ゲーミングマザーとしてネットワークやオーディオ、端子などにこだわり
ゲーミング向けの仕様を機能面から見ていこう。まずFatal1ty B450 Gaming-ITX/acは、GamingとあるがLED電飾は非搭載だ。とくに日本では光らないゲーミングマザーのニーズが高く、そうしたニーズに適している。もちろんLED用端子は、RGB、ARGBともに一つずつ搭載しているのでLEDテープなどは接続可能だ。接続したLEDは、ほかのASRockマザーボード同様にPOLYCHROME SYNCによって制御できる。
ゲーミングと言えば入力デバイスを接続するための端子も重要。Fatal1ty B450 Gaming-ITX/acのバックパネルには、PS/2端子も残されており、そのほかにも、USBマウスを接続した際にチューニングソフトの「F-Stream」でポーリングレートを設定できるFatal1ty Mouse Portも搭載されている。
バックパネルではほかにもUSB 3.2 Gen2 Type-C、ゴールドメッキ仕様のオーディオ端子、Wi-Fi 5対応無線LANなどがある。Ryzen Gを組み合わせた際に利用可能な映像出力も、DisplayPortとHDMIを備えている。
有線LANはIntel i211ATギガビット・イーサネット。実績、安定性という点でゲーミングマザーの定番だ。
オーディオ回路はコーデックにRealtek ALC 1220。これにCreative Sound Blaster Cinema 5相当の機能を加えている。オーディオコンデンサはMini-ITXなりなので2基しか搭載していないが、ニチコンのファインゴールドだ。バックパネルの金メッキ端子と合わせ、スタンダードグレードよりも上、ゲーミングマザーボードとしてこだわりを見せている。
基本機能はゲーミング級、幅広いCPUをサポートできるMini-ITXマザーボード
このように、Fatal1ty B450 Gaming-ITX/acは、ゲーミングマザーボードとしての押さえるべきツボは押さえつつ、比較的機能を絞り込みコストを抑えた製品だ。そのため、たとえば上位モデルのX570 Phantom Gaming-ITX/TB3にはThunderbolt 3が搭載されていたが、Fatal1ty B450 Gaming-ITX/acは非搭載。電源回路設計もASRockのMini-ITXマザーボード「X570 Phantom Gaming-ITX/TB3」と大きく異なる。ハイエンドを目指す方には少しもの足りなく感じるかもしれない。
ただし、AMD X570マザーボードと比べてメリットもある。AMD X570では第1世代Ryzenがサポートから外れた。Fatal1ty B450 Gaming-ITX/acならPCI Express Gen4など機能制限はあるものの、第1世代~第3世代までのRyzen/Ryzen Gを幅広く利用できる。第3世代Ryzenを組み合わせる場合でもサイズに対してパフォーマンスを最大化できるが、余ったCPUやお下がりのCPUを活用するサブPC用マザーボードとしても利用できコスパもよい。
そのコスパだが、単にAMD B450マザーボードとして見れば1万円を切るモデルもあるので激安ではないが、高価になりがちなMini-ITXマザーボードの中で見ればAMD B450で最廉価クラスだ。小さな高性能PCでコスパ重視の方は検討していただきたい。